ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

ACL2016グループステージ第5節FC東京vs全北現代@東スタ20160420

2016-04-23 19:56:05 | FC東京

桜が過ぎますと、藤の花が咲く候になりました。

ようやく九州新幹線が復旧の目途がたち、少しずつインフラが整備されつつあるようです。まだまだ余震が続いていいますのでとても不安な日々を送ってらっしゃると思います。You'll Never Walk Alone!。がんばってください!。

まだ春遠い2月上旬に、ひと足はやくプレーオフから始まった東京のACLの闘いは、期待以上にがんばってグループステージを突破しようかという勢いです。今日勝てば、ひと試合残してトーナメントへの進出が決まります。

とは言え、今日の相手はKリーグチャンピオンで、グループステージ初戦で負けている全北現代モータース。ステージ唯一の黒星を喫した相手に、守備のミスを重ねての敗戦です。トーナメント進出は最終節に持ち越しになりました。

東京はターンオーバーです。ACLのほうが上位進出の可能性が残されているのですけど、メンバーを見るとやはりリーグ重視のようですね。モリゲがサスペンションで不在です。シフトはいつもの4-4-2。GKは今日は圍です。長崎出身で高校時代熊本で過ごした圍ですから、圍自身のビッグチャンスでもありますし、気持ちが入っていたことでしょう。今日のCBはカズとまるです。SBは駒野がアウェイ全北戦以来の復帰で左に入り、右は徳永。ボランチはハビとヨネ。今日のメイヤは右に宏太左に羽生。今日の2トップは遼一と慶悟です。

全北のシフトは4-1-4-1。オリジナルの布陣をまったく知らないのですけど、ベストメンバーだったのかな。GKはクォン・スンテ。今年韓国出身のGKがJリーグに一気に増えました。スンテもキック力があって良いプレイヤーですね。CBはイム・ジョンウンとチェ・ギュベク。SBは右にチェ・ジェス左にチェ・チョルスン。アンカーはチャン・ユノ。IHは右にイ・ジェソン左にキム・ボギョン。WGは右にリカルド・ロペス左にレオナルド。1トップはイ・ドングッです。

 

テレビ観戦なので要点だけの簡易版で失礼します。前述しましたように全北の予備知識はゼロです。初戦もほとんど観てないのでオリジナルの闘いかたがどんななのか、まったく分かりません。でも、今日のシフトのこなれている感からすると、メンバーの多少の入れ替えがあっても、基本的にはKリーグを征した昨年の闘いかたを継承しているのだと思います。

いっぽうヒロシ東京は、最近の試合は相手によって闘いかたをアジャストしているような気がします。今日は全北の個性的な守り方への対策を念頭にしていたと思います。

というわけで、全北の基本的な守りかたから観てみます。全北を総括すると、攻撃を前提とした守備のチームと言えると思います。具体的には、中盤でのトランジションからショートカウンターを狙う闘いかたと言えます。全北のチームとしての個性が最も見られるのは、やはり中盤の構成です。アンカーのユノの前に、壁のようにジェソンとボギュンを配置します。Jでもフィッカデンティさんと吉田さんが3センターを好みますけど、全北のそれは、Jで見られるものとは少し様相が異なります。アンカーのチョイスがコンダクターではなくハードチェイサーな点も異なるのですけど、おそらくむしろIHを重視しているのだと思います。目的は、守備時のパスコースの遮断です。3センターシステムの泣き所は、我々東京サポにとっては言わずもがなですけど、アンカーの両脇です。ここに良いかたちで一次基点を作られると、守勢に回ることを余儀なくされます。フィッカデンティさんは、IHをフォアチェッカーとして使うことでリスクをチャンスに変えます。吉田さんはIHとアンカーの距離を狭めることでリスクマネジメントします。全北の場合は、IHを壁にします。これは、東京がバイタルエリアで一次基点を作るかたちですので、その対策でしょう。もっともバイタルエリアで基点を作るのはほとんどのチームがやることですから、東京対策というよりかは、これが全北の基本的な守備プランなのだと思います。

中央のパスコースをクローズする目的は三つ。まず縦にはやいつなぎを許さず、攻撃をディレイさせること。つまりある程度ボールを持たせることです。次に中央を固めてサイドに攻撃ルートを押し出すこと。もともと4バック+IH+WGでサイドに数的優位のある全北ですから、サイドを主戦場にすることに合理性があります。それからIHの壁の位置を保つことで、重心が下がり過ぎることを予防しています。

極論すると、全北がこの試合で東京を意識して施した策はこれだけだったと思います。東京はこの作戦にまんまとはまります。てか、もしかするとヒロシは、意図してはまりに行ったのかもしれません。長所と短所は表裏一体。3センターシステムは、この陰陽がとてもはっきりするやり方です。つまり東京は、やはりアンカーの両サイドを狙います。ちなみに今日の東京は、前半と後半でまったく違うチームのようでした。闘いかたそのものは、後半になっても最後まで変えなかったので、前半と後半の彼我の差を分けたのは、とても厳しいようだけど、選手の人選に拠ると思います。

東京はバイタルエリアを狙うにあたって、4つのパターンを用意していました。まずは、順番が逆になってしまうのですけど、バイタルエリアを狙うためのカウンターとして、直接最終ラインの裏を狙うオプションを組み込んでいました。担うのは慶悟です。慶悟はしきりに右のCBとSBの間を抜け出す動きを見せます。ここに後方あるいは宏太からダイレクトに長いパスが届けられます。もちろんこれは、裏を取ってチャンスを作る意図もあったと思うのですけど、おそらくホントの狙いは別にあって、つまりブラフだったと思います。もし本気でメインパターンにするなら、バーンズを選んでいたと思いますから。

というわけで、東京の狙いはあくまでもバイタルエリアです。バイタルエリアの使いかたに2パターンあります。トップが下がってくるパターンと、メイヤが絞るパターンです。どちらにしろ、本来の意図通りであれば、中盤を起点にバイタルエリアに付けるのですけど、ハビとヨネの前にいるIHがとても効いていて、少なくとも前半はまったくチャレンジできません。そこで東京は、最終ラインからトップに直接付ける選択をします。もしかすると、この東京の選択を全北は予見していたのかもしれません。

全北の守備の基本プランはリトリートではけしてありません。むしろ東京の攻撃ルートを、自軍が数的優位を作り易いサイドに追い込むことで、中盤のトランジションを機能させ易くしようとしたのだと思います。全北の攻撃面での特長は二つ。WGにテクニックのあるブラジル人選手を配置していることと、そしてやっぱりIHです。サイドにテクニシャンを置くことは、高い位置での基点とする意図があります。東京が一次基点を中央に置く考えかたに対し、全北はサイドを主戦場とします。守備においても攻撃においてもサイドを基調とすることは、攻守の切り替えの連動性において、とても合理的だと思います。もうひとつの特長であるIHは、攻撃時はドングッを軸に据えて動いているイメージがあります。ドングッが下がって二次基点になる場合は、逆にIHがゴール前に出ます。ドングッがゴール前にはる場合はそのフォロー。先制点は、まさにそんな全北の思惑通りのゴールでした。

35分。失点のポイントは五つ。一つ目は中盤でヨネの横パスをボギョンにカットされたこと。このヨネのプレーは、サイドアタックを意図した結果でしょうから仕方なかったとしても、失点の最大の要因になりました。これで全北の高い位置からのショートカウンターが成立する条件が整います。次はボギョンが密集している右サイドを選択したこと。このパスで4on4の数的イーブンを右サイドで作ります。三つ目はレオナルドのタメです。このタメによる時間で東京は守備網を整えることに精一杯でしたけど、全北のアタッカーはレオナルドを軸にアイデア溢れる動きを見せます。四つ目は東京守備陣のプレー選択です。この是非は正直自分の知識では分かりません。見識のあるかたのご意見を伺いたいです。東京は下がり加減の守備を強いられますけど、この時ラインを意識しようとします。とくに宏太とカズ。この場面は、東京が選択したようにゾーンを固めるべきなのか、それともマンマークに切り替えるべきなのか、分かりません。素人考えですけど、すでに全北の攻撃陣、ジェソンとボギョンにペナルティエリア内のスペースを取られている状況でしたし、全北のパス回しにゾーンが対処し切れていませんでしたから、マンマークにすべきだったと思います。その意味で、ボギョンを離す選択をした宏太の守備が決定的な状況を作ったと言えます。最後の仕上げはロペスのパスが素晴らしかったです。

今日の内容を形而上的に観ると、結局は中盤の構成力の差なのだと思います。つまり、中盤の高い位置で攻撃を開始すること。言い換えると、中盤でのトランジション争いの覇者が、今日の勝者になるということです。その意味ではガチ勝負でした。トランジション後の攻撃の考えかたは、東京と全北では大きく異なります。全北は、先制点にその志向が凝縮されているように、ショートカウンターです。一方の東京はビルドアップ。より詳細に言うと、アタッキングサードを横に三分割し、サイドゾーンで作ったトライアングルの連携から、中央ゾーンにスペースギャップを作ることを意図しています。そのためには、アタッキングサード付近で一次基点を作らないと効果がありません。前半はつまり、中盤の主導権争いで後手に回り続けたことが、攻撃においては重心を低くさせ、守備においてはカウンターに対し後追いの守備を余儀なくさせることになったのです。

さてヒロシは、後半に入ってアジャストします。打ち手はメンバーの交代でした。宏太を下げ拓馬を入れます。さらに負傷した羽生に代わって前半から左メイヤに入っていた草民を右に持ってきて、拓馬は左メイヤに入れます。その上で、ビルドアップのパターンをひとつに絞ります。拓馬に左の中盤を広範囲に浮遊させ、スペースメイクを担わせます。この動きで、中盤の壁になっているジェソンの存在を無価値にします。さらに遼一あるいは慶悟にギュベクを狙わせます。ギュベクは人についてくる動きをするので、ギュベクの背後を狙うことで、ラインに留まらせます。この事で、ジェソンの背後に大きなスペースができるようになります。ここに拓馬、遼一、慶悟が入り込むことで、一次基点が安定的にできるようになります。

この策が奏功します。全北の守備網を全体的に押し下げることに成功します。全北はバイタルエリアをケアするためリトリートします。対する東京は、最終ラインを高く押し上げ、前線との縦の距離を狭めることができるようになります。副次効果として、中盤でのトランジションも機能します。さらに拓馬を上下に動かし、ボランチの位置まで下がる動きを加えます。この事で、ヨネが前線に絡むことを可能にします。中盤の支配度が上がり、前線でボールを持てるようになると、両SBも高く位置取れるようになります。これで、ハビを扇の要に置いて、6人が自在にスペースメイクを連携する、ヒロシ東京が本来目指すかたちができるようになります。東京が、前半と打って変わって攻撃を活性化し、同点も時間の問題かなと思わせていた矢先、水を差す事件が起こります。

60分。拓馬の横パスをジェソンがカットしてショートカウンターが成立したことが最も大きな要因です。ディテールを見ると、ペナルティエリア内では、ドングッ、ジェソン、ボギョンに対し、カズ、まる、拓馬がいて、いちおう3on3の数的イーブンです。ただ、大外から入ってくるボギョンのケアが遅れるのは致し方ないところ。あえて言えば、最終的にゴールを決めるジェソンの細かい動き直しに対し、誰もケアできなかったことは課題です。ボールを持つドングッに対し、カズとまるの二人もついてしまった故です。ただし、全北のスピードあるカウンターの状況ですから、この失点はジェソンがカットした時点で決まっていました。

好事魔多しとはこのこと。おそらく全北は、リトリートしながらインターセプトの機会をうかがっていたのでしょう。東京のポゼッションが高まるにつれ、ハビをハブで使うことが増えることを予見していたのだと思います。そのハビへのパスルートを狙われました。東京はそれでも、この失点以降も攻撃権を持ち続けます。ただ、惜しむらくは、もう5mが足りませんでした。もう5m高い位置で基点を作れていたら、もっとアタッキングサードに入る回数が増えるし、シュートアテンプトの機会も増えたと思います。これは、確認したわけではありませんけど、全北の守備網の位置がもしかすると絶妙だったのかもしれません。東京にボールを持たせるリトリートをしつつ、最後の5mを許さないラインコントロールをしていたのかもしれません。最後の3点目は、全北のチームとしての攻守の練度の高さに対するご褒美みたいなものかもしれません。

後半アディショナルタイム。スンテの自陣からの長いFKが、一気にペナルティエリア内のギョウォンに届いてしまったことで、いきなり後手に回ったのが失点の主因です。駒野が振り切られたためカズがギョウォンをケアせざるを得ず、ゆえにムヨルがどフリーになります。

チャンピオンはチャンピオンだけのことはあります。チームとしてのコレクティブネスの差をまざまざと見せつけられた試合でした。確かに完敗でしたけど、こうして直接肌感覚で、完成度の高さの基準を測れる機会を得ることは、これからのチーム作りのなかで必ず活きてくる経験だと思います。

方向性が正しいか間違っているかを論じるにはまだはやいと思います。それよりも、今日見えた課題、今日だけじゃなく今年これまで捉えた課題に取り組み、攻守の闘いかたのディテールを積み重ねることが、強いチームを作り上げる遠くて最短なルートなのだと思います。今年はまあそこそこに、くらいにおおらかに構えてあげたほうが、最終的に獲られるものは大きいのかもしれませんね。