ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ1stステージ第6節柏レイソルvsFC東京@日立台20160410

2016-04-11 20:04:29 | FC東京

日本列島の4分の1くらいを横断すると、ところによる桜の盛りの違いを体感できます。あさが来たのロケ地巡りで訪れた淡路島から一気に東に。

東京も通過して、今回の旅最東端は、柏でございます。柏はハナミズキが咲きはじめてます。

旅の〆はアウェイ柏戦。今シーズンまだ勝ちの無い柏ですから、思い切ったモデルチェンジができます。勝ちたい気持ちとチャレンジで満ちていると思ので、去年の鹿島といい、嫌なタイミングで当たるなぁと思ってました。本日のYou'll Never Walk Alone♪日立台に舞う桜吹雪

はからずもロジカルとフィーリングの対決になった構図は、PKのスミ1で悔しい敗戦です。

東京はモリゲがサスペンションで不在。ムリキがついにメンバー入りです。シフトはいつもの4-4-2。GKは秋元。今日のCBはまるとカズです。SBは徳永と諒也。ボランチはハビとヨネ。メイヤは右に広貴左に慶悟。2トップは遼一と拓馬です。

柏は布陣の試行錯誤の最中だと思います。シフトは下平さん就任以来一貫して4-3-3です。GKは航輔。CBは中谷と増嶋。SBは右に伊東左に輪湖。3センターは右から茨田、大谷、祐介。WGは右に中川左に武富。1トップはディエゴ・オリヴェイラです。

下平さん就任以降の柏は、リーグ戦0勝2分0敗。ナビスコ杯1勝1分1敗。ミルトン・メンデスさんのハードプレス基調のサッカーは、それまでの柏の路線からドラスティックに乖離し過ぎたようで、失敗しました。下平さんの思考は、ご自身のサッカー感はいざ知らず、いったん昨年のかたちをベースとしたアジャストに舵を切り直したのだと思います。

シフトの上では吉田さんの4-3-3を踏襲しています。ただ中身は昨年よりもコンサバティブ、てかシステマチックなテイストに味付けされている気がします。

まず守備は昨年までの基本プランに戻しました。攻撃がビルドアップスタイルになりましたから、守備はリトリートスタイルです。下平柏最大の特長は、攻守でシフトが変わることにあります。基本シフトとして先ほどご紹介したのは、実際に現場では使われていません。なんて言うか、系統?。同様に攻守でシフトを変えるチームは広島と浦和ですけど、オリジナルシフトが現場に存在しないのは柏だけでしょう。

守備時の柏は、武富が左メイヤに入って4-4-2のラインスタイルになります。まずはピッチ幅にセキュリティホールを作らない安定したゾーンシフトを構築したいということなのだと思います。ただゾーンと言っても極端なリトリートではなく、守りかたのかたちそのものはとてもオーソドックスです。ボールホルダーに前線がプレッシングし、中盤でトランジションすることを目指しています。

闘いかたのベースにコンサバティブな守備スタイルを置くことで、シーズンを通した視点で成績を安定させようということだと思います。さてオーソドックスにまとめた守備に支えられて、攻撃はとても個性的です。まずはシフトから。攻撃時の柏は、大谷がリベロに下がり増嶋と中谷が開き3バックになります。両SBが押し上げられますから、3-4-2-1になります。前線の並びはバリエーションがあります。というよりも、前線の動きかたそのものが、もっと言うとそこだけが下平柏の個性の源泉です。

序盤の柏は、3トップを中央に固めました。ディエゴのポストをつなぐ役割を確実にすることと、シンプルなサイドアタックを意図したのだと思います。大谷が左右の攻撃ルートを決め、中谷と増嶋が高くはったWBにつけることで攻撃スイッチが押されてました。ただこのプランは成就しません。そもそもディエゴのポストが安定しませんから、サイドアタックと言っても東京に押し出される形でサイドにボールを回しているだけなので、アタッキングサードに入るほどの推進力を持ちません。

そこで柏は前線の配置を2トップ+トップ下に変えます。トップ下には中川が入ります。ポスト役に武富を加えて、2拠点化で東京の守備を分散する意図だと思います。加えてバイタルエリアに中川を置き、ビルドアップのコースに中央を加えようとしたのだと思います。しかし、このプラン変更は裏目に出ます。東京の守備プランに逆にはまりにいったようなかたちになります。今日の東京は、柏がビルドアップスタイルということで、フォアチェックではなく受けを優先します。東京の守備も柏同様、中盤でのトランジションを意図します。柏が2トップにすることで、かえって攻撃ルートが固定化されます。とくに左サイドは、武富を軸に輪湖と祐介が縦を意識したパスをつなぎます。一度武富に預けるのが素人目にも分かるのでおそらく現場では線を引いたように読み易かったでしょう。柏のBプランが発動した20分から、ヨネとハビを中心とした中盤でのインターセプトがおもしろいようにはまりはじめます。

結果的に東京にとっては、ここから柏がCプランに切り替えるまでの5分間が勝負でした。今日の東京は右加重気味の、右で仕掛けて左で仕留める主旨だったと思います。トランジションすると広貴がサイド際高い位置に構えます。東京は遼一のポストを経由したビルドアップで、広貴が仕掛けられるかたちを用意します。この時間は、もっとも広貴が躍動していて、対峙する輪湖と武富のプレスをかわして縦横に仕掛けることができていました。広貴がボールを持てるので、徳永とヨネの攻撃参加を促すこともできます。東京が、この試合唯一、アタッキングサードで有効なかたちを見せることに成功します。

柏は、その先を用意していました。最終的にはまり、以降のこの試合を決定づけたのは、25分あたりからの柏のCプランです。やはり発動は前線の動きかたです。柏はふたたび1トップ2シャドウに戻します。今度は中川と武富が、バイタルエリアに下りて左右に開きます。この動きが非常に効果的でした。東京はゾーンなのですけど、シャドウに対してボランチがマンマーク気味につきます。東京の中盤の守備が、個の対人防御を前提としているが故です。両シャドウが外に開くと、ボランチもそれに合わせ開きます。中央が空きます。

柏のCプランが出色なのは茨田の役割です。茨田は中川の動きに連動して、中央右寄りの高い位置に入ります。これが効きます。中川のスウェーブにハビ、慶悟、諒也が引っ張られますから、もちろん中央が空くのですけど、茨田はあえてど真ん中ではなく、少しずらして中川に寄せます。中央はディエゴに対してまるとカズの1on2ですから、仮に茨田が入っても数的にはイーブンですし、マッチアップでも不利です。その点中川が動いた直後の右寄りは、東京にとって一瞬の空白で、おそらく中川と茨田は、そこを意図して狙ったのだと思います。このやや右加重気味の攻撃プランが、柏のリズムとポゼッションを安定させます。以降、この試合は完全に柏がオーガナイズすることになります。

興味深いことに、ポゼッションが高まることで柏の守備のタイミングも良くなります。東京の重心が下がり、縦パスもホスピタル気味になったことが影響しているのですけど、東京のポストとそこからのつなぎを、逆に柏が読むようになります。

今の東京のスタートスコッドには、残念ながら裏を常時狙えるスピードスターがいませんから、チームの重心が下がった時の打開策が見当りません。広貴がボールを持てていたので、右サイドで一度落ち着かせて重心を引っ張り上げる工夫をしても良かったかなと思います。前半はスコアレスのまま終了。

後半頭からヒロシが動きます。広貴に代えて拳人を同じく右メイヤに投入します。多少強引にでも、縦への推進力をもたらしてくれることを期待したのだと思います。このはやい時間での交代にしては、ドラスティックな改変かなと思いました。柏の打ち手がとてもロジカルだったので、それと比して情緒的というか、フィーリングでの選択を感じました。それほど柏の優位性が、現場では強固に思えたのでしょう。

ここでは中川と茨田への対処を優先して、もう一度左サイドのゾーンの受け渡しを整理するかなと思いました。その意図がありやなしや確認できないほど、柏のCプランは依然有効に機能します。柏はさらにDプランを用意していました。今度は中川と武富が中盤深くまで下りてきて、交互に楔を受けるようになります。今日の柏で唯一不安定だったのはディエゴのポストなのですけど、中盤で一度基点を作ることでビルドアップが安定します。さらに茨田と祐介の可動域を増やすこともできますから、中盤で縦と横の動きが加わり、東京のゾーンを翻弄します。拳人投入もカンフル剤にはならず、柏のオーガナイズは揺るぎません。

ところがここで、柏にアクシデントが起きます。輪湖が負傷し、代わって中山を投入することになります。ただほとんどネガティヴな影響はありません。チームの闘いかたが安定しているので、サイドが事を左右するほどの趨勢を持ってなかったということでしょう。

さてヒロシが動きます。慶悟に代えて羽生を右メイヤに投入します。拳人が左に回ります。直前にヒロシが左サイドアタックの指示をしていましたから、慶悟と諒也の連携に物足りなさを感じていたのでしょう。今日の慶悟は、少し下がり過ぎていたように感じました。チームの重心が低いので致し方ないのですけど、慶悟の位置が低いと諒也も積極性を持てません。拳人の個の推進力で、左サイドに前への流れを作りたかったのだと思います。

羽生は、ボランチが狙われていたので、攻守のサポート役だと思います。是非はともかく、守備を意識したアジャストにカードを使うことは、柏がSBを代えるためにカードを切ったことによる東京のアドバンテージを自ら無くしてしまうことですから、もったいなかったなと思いました。

さりとて柏も、アタッキングサードに進入するまでのプロセスは完璧でも、肝心のアタッキングサードでシューターをフリーにする状況をなかなか作れません。武富も中川も本質的にはフィニッシャーではありませんから、どうしてもアウトサイドのシュートが増えます。

そこで下平さんが動きます。茨田に代えてTJを左WGに投入します。武富がボランチに回ります。TJはライン際に張り付いてしきりに徳永とのマッチアップを挑みます。左で仕掛けてシンプルに中央にチャンスボールを供給する意図だと思います。

同時にヒロシが動きます。ハビに代えてムリキがJリーグデビューです。トップに入ります。拓馬が右メイヤ、羽生が左、拳人がボランチに回ります。これは単純にムリキを使ってみたかったフィーリングだと思います。ムリキは独力で仕掛けて状況を打開するプレースタイルなのか、アデミウソンを初めてみた時に衝撃だった優雅さはありませんけど、ゴリゴリいけるパワーアタッカーなのかもしれませんね。再三果敢なドリブルを見せます。でもまだコンディションが整わないのか、同タイプのアタッカーはカイオやクリスティアーノですけどその域にはなく、囲まれても突破できるだけのパワーはまだないようです。シュートのタイミングを見ると、フィニッシャー独特の潔さを感じられますし、コントロールも丁寧そうです。これからですね。

ロジックとフィーリング、両監督の采配は今日ばかりは対極に分かれました。不確実性の高いサッカーでは両極の優位性に定説はないと思います。なので一般的には、勝敗の行方がどちらに転ぶかは神のみぞ知るところです。そして今日は、ああ女神さまは下平さんに微笑みかけました。

82分。東京陣アタッキングサードで柏が攻めるなか、まるが楔をカットしたところから。東京は遼一に当てて反撃を試みます。遼一はヨネにフリックしますけどこれが流れ、ヨネ、武富、祐介がチャレンジ。こぼれたボールがディエゴに渡ります。ディエゴはペナルティエリア左を目指して突進します。これを拳人がエリア内で倒し、PK。ここで下平さんが動きます。ディエゴに代えてエデルソンを同じく1トップに投入します。なので蹴るのはTJ。TJは落ち着いてゴール右に決めました。柏1-0東京。

ようやく東京が攻勢に出ますけど時すでに遅し。追いつくには運もロジックも足りませんでした。柏1-0東京。

柏の準備が周到でした。勝利に対する執念があの手この手のその先の一手まで及んで、チームに浸透することができていたのでしょう。試合後のよろこび様にそんなことを感じました。

浦和を除き、8位ガンバ、9位東京、10位広島と、ある意味予定通りにACL組が下位に沈んでいます。東京は、ACLでは他のグループと違ってどんぐりの背くらべで結果1位に押し上げられている感があって、けしてACLに偏っているというわけではないと思います。

でも激戦の影響は、やっぱりジワジワ来てるのでしょう。拓馬や慶悟に粘り強さが感じられず、コンビネーションで崩す前線のかたちが、個のコンディションが影響して見られなくなっています。選択が難しい局面に来ていますけど、結果的にはリーグ戦は勝ったり負けたりのイーブンになっているので、少なくとも1stは捨てるくらい気持ちで見てもいいかもしれません。

もとより今シーズンはエクスキューズだらけのチャレンジャーですから、どこまで二兎を追えるのか、最悪の状況になりさえしなければ、まだ焦らず騒がずのんびり見守っていいかなと思います。

次はいよいよクラシコ。絶好調で雰囲気のある川崎を迎えます。楽しみです。