<歯の治療>から顔を顰めて帰宅、折りよく宅配便が届いた。
箱には、 “ おぶせのくだもの ” とあって、空ける前から林檎の甘い香りが漂っていた。
送って下さったのは奈良在住のMuさん。
ドライブが好きな彼、奥さんと信州・木島平の馬曲(まぐせ)温泉に行かれたのかも知れない。
なにせ、山の中腹にあるこの露天風呂からの眺望、特に、紅葉と雪の季節はのぼせるほど浸かっていても飽きないのだから。
話がそれたが、Muさんのお志に感謝しながら、十数年ばかり前に訪れた小布施の町を懐かしく思い出した。
愚息が就職して初めて着任したのが信州・長野。
その彼を訪ねて、「臥遊録」に詠う、“ 山笑ふ春、山滴る夏、山粧ふ秋、そして、山眠る冬 ” にと、「また来たの」と呆れられながら足を運んだ。
季節は、その “山粧ふ ” 頃だったと思う。
小布施町の岩松院に、葛飾北斎の天井画「八方睨み鳳凰図」を拝見に行った。
小さな町ながら、「北斎館」という美術館や彼のパトロンでもあった高井鴻山の記念館などがあって、静かで落ち着いた佇まいだったように覚えている。
それはさておき、Muさんのことに戻る。
彼との初対面は、二人とも営業所の係長で30歳前後、管理部門への登用試験の面接会場だった。
翌春の定期人事、何の加減か合格して某部の大阪圏担当として着任すると、彼も大阪を除く近畿圏担当に着任していた。
以来、同職の誼みもあり、また、馬が合ったのか公私にわたって懇意にして頂いた。
圭角があって生意気が服を着たようなペトロ が、30年以上も付き合って貰えたのは、彼の穏やかで人を謗ることを知らない資質に拠るところ大きく、感謝の他ない。
カタリナ の<亡父>、仕事から帰った秋の夜長、文机に林檎をひとつ置き、仄かな香りを楽しみながら本を読むのを喜びにしたという。
この月の末、義母の25回忌と併せ義父の50回の遠忌を兄弟と営んだ彼女、仏前に瑞々しいその林檎を供え、R君やI君のことなどを報告したらしく、重ねて感謝である。
高槻のNaさんが稽古にお持ち下さった「お茶の花」を傍らに、芳しき林檎を頂きながら、静かにゆく神無月・10月を惜しんだ。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.398
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