ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

ダ・ヴィンチ ‐ ナショナル・ギャラリー(2)

2014年02月10日 |  ∟イギリスの美術館

 ロンドンのナショナル・ギャラリー、記念すべき最初の絵は?
 イタリア・盛期ルネッサンスの三大巨人のひとりレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519 )の「岩窟の聖母」が架かる壁の後ろ、そこに小さな部屋があって、壁に “ Carton da Vinci ” と表示されている。

 カタリナ、同じ展示室に架かるダ・ヴィンチの生涯のライバル、ミケランジェロ(1475-1564/イタリア/盛期ルネサンス )の未完作品、「キリストの埋葬」を探していたので、一足先にこの部屋に入った。

 こA_3の傑作を保護するため、太陽光を完全に遮り、かつまた、照明が殆ど施されていない空間。
 その部屋の中央に、「ダ・ヴィンチのカルトン」(上)は架かっていた。

 ちなみに、カルトンとは、“ イタリア語のカルトーネを語源 ” とし、幾つかの意味があるらしいが、美術用語としては、“ 絵画の仕上げの画面と同寸に描かれた素描、下図 ” とある。

 薄暗い暗い空間に浮かぶイエスと聖母マリア、そして、聖母子を見守る聖アンアと寄り添う幼い洗者聖ヨハネ。
 天才が描こうとしたものは、ルーブル美術館が所蔵する傑作、「聖アンアと聖母子と幼児聖ヨハネ」の下図。
 この習作、継ぎ合わされた8枚の紙に描かれている。

 ルーブル美術館、グランド・ギャラリーに架かる本絵(下/右端の絵:09年)にも優るとも劣らない、「ダ・ヴィンチのカルトン」。

 部屋に入った者は等しく、声は勿論のこと、咳(しわぶ)きひとつなく見入り、そして、ひとくさり何かを語ろうと思うのだろうが、結局は無言で、挙句、肩をすくめながら半ば呆れ顔で引き下がる。

 白B_3チョークと木炭を褪色から守るために薄暗く絞られた照明、それが作り出す敬虔な雰囲気はこの作品にこそ相応しく、一層厳かにさせる。

 余談だが、この目を凝らせなければよく見えない薄暗い部屋、オルセー美術館のルドン(1840-1916/フランス/象徴主義)やドガ(1834-1917/フランス/印象派)のパステル画の架かる部屋でも体験した。

 ひとしきり唸った後、展示室で他の絵を見ているカタリナに、この絵があることを告げた。
 カタリナ、部屋に入ったきりなかなか出てこない。 
 暫くして、「・・・・・」、深い感銘を受けたのだろう、そのことがありありと見て取れる表情で、その小さな部屋から出てきた。

 美術館の案内書にも、“ この作品を見るためこの美術館を訪れる人も少なくない ” とある。
 「岩窟の聖母」と並んで、まさに、高がカルトン、然(さ)れどダ・ヴィンチのカルトンであった。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.764

 ※ ロンドン・ナショナル・ギャラリーの旅(1)へは(コチラ)から入れます。

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