フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

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マブソン青眼 - 風韻 SEEGAN MABESOONE "FU-IN"

2006-11-04 11:03:58 | 俳句、詩

マブソンさんの本を読んでいると、響きの美しい言葉に出会う。例えば、「風韻」。

手元の辞書には、趣、風雅、雅致、風趣などとあるが、これでは同義語辞典になる。ネットを探してみると、「風貌、風采、風体が外に表された人の姿なら、風韻、風格、風雅はさしずめ内から滲み出たオーラの如きもの。風韻とは、すれ違った時、ほのかに漂う香しい精神の香とでも申せましょう。」 (長澤雅夫氏の書のページ)、あるいは「『風韻』とは、俗離れした超越的な人間を表し、神の声がよく聞き取れるという人間の理性的な美しさを表した言葉であろう。」 (冨田疑研活動報告) などが見つかる。

この言葉は、福沢諭吉の 「文明論之概略」 にも2ヶ所に使われている。 

《世間に書画等を悦ぶ者は中人以上字を知て風韻ある人物なり。其これを悦ぶ所以は、古器の歴代を想像し書画運筆の巧拙を比較して之を楽むものなれども、今日に至ては古器書画を貴ぶの風俗洽く世間に行はれて、一丁字を知らざる愚民にても少しく銭ある者は必ず書画を求めて床の間に掛物を掛け、珍器古物を貯へて得意の色を為せる者多し。笑ふ可く亦怪む可しと雖ども、畢竟この愚民も中人以上の風韻に雷同して、識らず知らず此事を為すなり。其外流行の衣裳染物の模様等も皆他人の創意に雷同して之を悦ぶものなり。》 

「野蛮の横行漸く鎮定して割拠の勢を成し、既に城を築き家を建てゝ其居に安んずるに至れば、唯飢寒を免かるゝを以て之に満足す可らず、漸く人に風韻を生じて、衣は軽暖を欲し食は美味を好み、百般の需要一時に起て又旧時の粗野を甘ずる者なし。」

また、雪解を 「ゆきげ」 と読ます。一茶全集にある言葉として、「熟柿仲間」 (歯が悪くて、よく熟れた柿のような柔らかいものしか食べられない老人仲間)、「下手鶯」 (田舎俳人の揶揄)、「げっくり」 (がっかりの誇張) などが出ている。日本語を今使われているものだけに限ってしまうのは、いかにも勿体ない。その生誕からの蓄積に目をやると、そこには豊穣の海が横たわっていることを感じる。


ところで、マブソンさんも葉巻をやられる。友人を招いての食事メニューにシガーが組み込まれ、食後にゆったりした語らいが待っている様子が伝わってくる。味な計らいだ。葉巻が出てくる俳句をいくつか。

「ザビエル忌 葉巻の灰に 葉脈あり」   青眼

   La fête de Xavier
     y'a la veine de feuille
       dans la cendre de cigare

       「シガーケース 父の匂ひや 梅雨湿り」   青眼

          La boîte à cigares
            l'odeur de mon père
              la saison de pluie mouille
                 
         (traduit en français par paul-ailleurs)


2006-11-03 マブソン青眼 「一茶とワイン」 "UN VERRE DE VIN AVEC ISSA"

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