山口から帰った日の夜、NHKアーカイブスという番組で、ある昆虫画家の人生が流れていた。10年ほど前の番組だろうか。80過ぎの画家がファーブル昆虫記の虫たちを淡々と描いている。その質素で慎ましい暮らし振りが映し出されている。必要なものしかないような家に住み、ひたすら描いている。私の心を打ったのは、そのお顔の高貴さである。その美しさに思わず惹きこまれてしまった。番組終了後、現在の姿が出ていた。95歳 (?)。まだ矍鑠 (かくしゃく) としている。小学生に自然の大切さを輝く目で語りかけている。かくありたしと思わせてくれる一瞬であった。ファーブルの絵はまだ完成していないという。
その画家は、熊田千佳慕 (くまだ ちかぼ) という。
知る人ぞ知る人なのだろう。
嬉しい出会いであった。