パパと呼ばないで

再婚した時、パパと呼ばないでくれと懇願した夫(←おとうさんと呼んで欲しい)を、娘(27)「おやじ」と呼ぶ。良かったのか?

街結君と太郎君25

2016年09月30日 | 野望
夏休み。
オレたちは、毎日漫才の練習に励んだ。
ネタはだいぶ前から収集しており、それを夏休み前半に二人してまとめた。
いや、ほとんど太郎が作るんだけど、オレが言うセリフがあまりに過激過ぎて言えなそうな場合のみクレームをつける程度。
それにしても、どうしてこんなに母親という生物はおもしろいのか。
いい間違いに勘違い、思い込みに殴り込み。
しかし、それを漫才にするってのはすごくむつかしい。
太郎は『言い間違い』を延々と言いつづけるというパターンにしたいらしい。
オレは、漫才に関しては全くの素人だから何も言えないのだが、ここだけの話、太郎だってそれほど詳しいわけでも勉強してるわけでもない。
うちのテレビのチャンネル権はママ猿にある。
今は、ほとんどうちでテレビなんか見ないが、土日の御飯時は一緒にテレビを見る。
ママ猿は「笑点」の大ファンだ。
観覧募集のハガキも毎週出しているらしい。
ヒキコモリ主婦のくせに。
でも、当たらないらしい。
「笑っていいとも」の観覧ならわかるが、「笑点」も希望者が多いのか?

太郎の笑いのセンスは、どちらかというと「笑点」に近い。
それを言うと「心外だな。」と言い、オレの笑いの基本は「ボキャブラ天国だ。」
なんじゃそれ?
小学校の頃、ずっと見てたっていうんだ。
「爆笑問題にネプチューン、テイク2に海砂利水魚、海砂利水魚ってのは今のくり~むしちゅ~のことね。
みんなボキャ天から出てきたようなもんだぜ。
爆笑問題のネタで『ストーカー?』を『須藤か?』っていうのは名作だよな。
今でも笑える。
あと、オレは金谷ヒデユキが大好きだったんだけど、引退しちゃったんだよなあ。
あいつ、すんげー才能あったと思うんだ。
つぶやきシローもオレは好きだったなあ。
プリクラが出たばっかりの頃、つぶやきシローのフレームのやつがあってさ、かあちゃんに頼み込んでオレ、一人で撮ったこともある。
見るか?多分まだオレの宝箱の中に入ってると思うぜ。」
なんだよ、その宝箱って。
太郎の言ってることの半分以上理解できないし、半分以上の人を知らないオレは早く話を終わらせるために「わかったわかった。おまえの原点はそのぼきゃ、ボキャ、ボキャブラリー天国なわけね。
言葉でいじることによって笑いを生み出すわけね。
わかったけどさ、西村んちの母親がよそんちの高級小型犬を捨て犬だって連れて帰ってきた話とか、
市来んちの母親が運動会の朝までかけっこの特訓をさせてた話とか、おもしろくないか?
あと、有拓のキャラ弁も写真撮ってスライドショーで流したいくらいだ。」
「ボキャブラリー天国じゃなくて、ボキャブラ天国ね。」と修正してから「作り始めて思ったんだけど、漫才の台本作りって、難しいんだよ。
おもしろかった出来事をただ並べても、教室で聞いた時の半分も笑えないんだよなあ。
だからもう、言い間違い勘違い路線で、ボケをたたみかけるようにこれでもかこれでもかって言い続ける方がいいと思うんだよな。」と太郎。
「ナイツ方式か。いやどっちかというとハライチかな。」というと「なにそれ。」
え?おまえ、ナイツ知らないの?ハライチも?

どうやら太郎のお笑いは、小学生の頃に見たテレビで終わっているらしい。
中学に入ったら、ずっとスマートに入り浸って、野球か相撲かニュースしか見てないもんな。
あとは常連おやじたちのエロトーク。
オレは少し不安になってくる。
こんなんで果たして客はウケてくれるのか。
さらには、太郎の当初の目的である、母親と思春期の男子の架け橋になれるのか。
オレの不安そうな顔を見た太郎が「大丈夫大丈夫。ウケなくても、最後にとっておきの作戦も考えてあるから。」
どこからその自信がくるのか知らないが、太郎は台本を作り上げ、夏休み後半はとにかく必死でそれを憶えた。
その練習の合間に、文化祭のポスター用の写真を撮ったりする。
予備校漬けの亜美ちゃんの予定に合わせて、亜美ちゃんの家の近くや、予備校の近く、学校の図書館などで撮る。
こだわる亜美ちゃんは、1枚ぐらいじゃ許してくれないのだ。
電車酔いしなくなった太郎のフットワークは軽い。

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