「誇」-URAWA REDS-
共に…
 



「えっ!?」
仲間からのメールに我が目を疑う。
『森孝慈氏、逝去』
浦和になくてはならない人。
これからも陰日向となり支えてくれるはずだったのに。
「絶対に勝つ、勝つんだ」
少し飲み過ぎたことを後悔しながら、階下に降りる。
「森さんが…」
何度も空を見上げる。
あの空の向こうに、あの空の向こうで見守ってくれているはず。
どうしても勝ちたい、どうしても。

GK加藤
DF峻希・スピラ・永田・平川
MF柏木・啓太・原口・マルシオ・セルヒオ
FW高崎
リザーブ山岸・宇賀神・暢久・達也・マゾーラ・ランコ
達也に代わってセルがスタメン。
リザーブには新加入のデスポトビッチ。
「直輝は?」
ベンチ入り6人で戦う浦和。
「痛いな、これは」

真夏の戦い。
どうしても欲しい先制点。
ウチはどこまで我慢して、どこから仕掛けるのか。
どんな内容でもいい。
勝って欲しい。
いつになく気負っている。

「流石に川崎ほどではないかな」
「今のところはね」
前線の迫力は前節の方が上か。
スピラが顔を覆っている。
「肘打ちだろ!カードは?」
お咎めなし、主審は西村SR。
審判に左右される荒れた試合になってしまうのか。
不安が脳裏を過ぎる。
再びスピラと前田が交錯。
「汚ねーぞ!」
12分、前田に警告。
「本当はこれで退場だよな」
突破を図るマルシオ、囲まれる、倒される。
「流すのかよ」
早くも嫌な予感が的中しそうな展開。

中盤の潰し合いからサイドへ、前線へ。
「無理して繋がなくてもいいのに」
柏木が動く、峻希が上がる、原口が仕掛ける。
「マルシオ、ボール触ってないよね」
要を経由しない浦和。
前線をDFに封じ込められる磐田。
「どっちも苦しいのかな」
前線に収まらない浦和、後ろで回す磐田。
早くも喉が涸れる。

峻希のクロス、ニアに飛び込む高崎。
「厳しかったか…」
少ないチャンスを生かしたい。
蒸し暑いエコパ、先に奪って優位に戦いたい。

相手選手と交錯し倒れる柏木。
「これ以上勘弁してくれよ」
磐田が荒いのは仕様なのか、夏の疲れからなのか。
「前田!ふざけんな!!」
三たびスピラが倒される。
それでもSRのポケットからは何も出ない。
右に大きく空いたスペース、峻希が駆ける。
「峻希、走れ!」
折り返しのパス、柏木が受ける。
「コースあるぞ!」
29分、浦和先制0-1。
待望の得点、嬉しい、嬉しい。
空を見上げる。
「絶対勝つんだ」

原口がボールをカット。
「行け、打ってもいいんだ」
高崎へのパス、決めきれない。
「ヨシカツだからなぁ」
そう簡単に追加点は奪えない。

アディショナルタイム1分。
「え?1分だけ!?」
SRの基準が理解出来ない。

前半終了、磐田0-1浦和。

「ノブヒロ!」
FWの飛び出しに順大が反応。
「原口、突っ込め!」
カットインからのシュートはバーの上。
「いい位置だ、頼むぞ」
左PA外からのFKは枠を越えていく。
「足、治ってるのかな」
中央からマルシオのミドル。
「いいもの持ってるんだよな、やっぱり」

59分、17番outジウシーニョin。
「FWひとり、諦めさせたな」
永田、スピラが相手FWをベンチに追いやる。
「こっちの方が嫌だけど…」
駒野の侵入を阻止する原口。
「だ、大丈夫か?」
65分、高崎outデスポトビッチin。
「今日の高崎よりはいいかもね」
浮沈のカギを握る選手が入る。
「原口、足引き摺ってないか?」
68分、原口out達也in。
「これで2枚目か、厳しいな」
セルの動きが鈍っている、
マルシオがフィットしていない。
「頑張れ、しっかり」
圧力を掛ける磐田、堪える浦和。

セルが倒される。
「ゆっくり、時間使って」
リスタート。
「あれ、何で?」
セットしたボール、磐田がそのまま攻め上がる。
「おかしいだろ!」

ランコのポストからカウンター。
左に流れるランコ、角度のない所からシュート。
「惜しい!」
ポスト直撃、こぼれ球に達也。
「入った!」
DFがクリア、天を仰ぐ達也。
82分、セルヒオout暢久in。
「逃げ切りだ、暢久頼むぞ」

左から達也がシュート。
「狙い過ぎか…」
勢いなくバーを越えていく。
ランコのヘッドは枠の外。
「暢久は誰のマークなんだ?」
主導権は完全に磐田。
「危ない!」
ゴール前の混戦は順大が制す。


アディショナルタイム5分。
「は?何で?どこが!?」
不可解なロスタイム。
一方的に攻められている。
「頑張れ、もう少しだ」
「勝つんだ、勝って森さんに捧げるんだ」

「何?PK??」
SRがスポットを指している。
「なんだよ、どうしてだよ」
キッカーは前田。
「本当だったらいない選手だよな」
「ノブヒロ、頼む」
左へ飛ぶボール、左に反応する順大。
その先を掠めるボール。
90+3分、磐田同点1-1。
「時間ある、まだある、諦めるな!」
勝ちたい、どうしても勝ちたい。

達也のミドルが浮く。
「もう終わり?」
今度は短いロスタイム。
試合終了、磐田1-1浦和。



悔しい。
勝てなかった。
もうちょっとだったのに。
あんなに頑張ってたスピラなのに。

それでも戦い続けなきゃいけないんですよね。
そうですよね、森さん。
汗なのか涙なのか、分からなかった。

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