温泉クンの旅日記

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頑固な客

2006-07-12 | 食べある記
 < 頑固な客 >

 ふだんは沈思黙考、まことに寡黙でジツに穏やかな性格である。穏健派で平和主
義者だ。ホント。

 そんなわたしにも、チラホラと逆鱗はある。

『残した場合には、次回からのご来店をご遠慮ください』

 埼玉の寄居にある「I」という讃岐うどんの店の入り口の外にある、張り紙の一
文である。
 辺鄙で車でしかいけない店まで来て、外にならんでいる客に読ませる文章だろう
か。無神経極まる。ふざけるな、なんたる傲慢、なんたる言い草。讃岐うどんブー
ムでテレビに取り上げられ客がチョット増えたからといって、のぼせ上がるにも
ほどがある。見た瞬間に、眼の奥で大量の火薬が点火されたようにわたしは逆上し
た。

 ここに来たのは今日で三回目である。曜日と時間帯が悪くいつも空振りであった
のだった。土曜日の午前十時五分、開店早々だというのにもう、店の中は客でいっ
ぱいである。外にも四組ほどが待っていた。店の中にはいりノートに名前を書き、
寒い外で待っていたときその文章を見ちゃったのである。記帳するときに気がつい
たが、店の中にも貼り紙は多い。

 そのまま帰ろうと思ったが、名前も記帳したから味だけは一度だけ試してみる
か、と珍しく思い直してすこし待ち、呼ばれて席に着いた。
 残すんじゃねえぞ、のプレッシャーがあるので「だしかけうどんのあつあつの
小」というのを頼む。麺も熱い、かけるダシ汁も熱いというかけうどんだ。地元
讃岐なら百円のところここは三百五十円である。腰だけは農夫のように強い。ふむ
ふむやはり、どうということはない味だ。頭にきているせいだけではない。黙って
提供すればいい、関東での讃岐うどんベスト一〇〇以内、その程度だ。



 煙草を遠慮してくれという蕎麦屋は許せる。蕎麦の香りは繊細であえかなもの
だ。香水、会話、携帯電話を遠慮してくれ、というラーメン屋はわからない。最高
の状態で食べて欲しい一心からと、無理無理考えられないこともない。ラーメンの
鬼の店がそうらしいが、まるで行く気は起きない。まあ、まだ行く客がいるのだか
ら、それでいいのだろう。ひとはサマザマである。

 だが、スープを残すなとかいうラーメン屋は金輪際許せない。行くつもりもな
い。
 残した場合は次回から来るな、のこのうどん屋は最悪である。史上極悪のオキテ
破りだ。手打ち蕎麦とかいって、乾麺を湯がいている店のほうが可愛い。残される
ような料理を出さない努力を、オノレがやるべきである。トウのゼンだ。

 ホームレスにホドコシをしているつもりなのだろうか。店側は作ったものをとり
あえず、ぜひ召し上がっていただきたい。気に入ったらぜひまた来店していただき
たい。それが基本であろう。
 出された料理は、味はどうあれ量もどうあれ残さず食べるひとがいる。きれいに
平らげられた皿をみて、発展途上の料理人は、これでよし、とさぞかし自信を深め
ることだろう。

 わたしは、違う。
 料金を払う料理は、ウマいかマズイかだけではないか。それとすこしのサムスィ
ングをもとめる。店の応対、気働き、雰囲気などである。美味しいか標準レベルの
味であればテキ量を食べるが、不味ければ誰がなんと言おうが残す。奢られてもで
ある。新鮮そうでない魚介類は、とくにそうだ。べつに店を育てようという「師
客」たらんとしているわけでもない。それがわたしは、フツーの客だと思うのだ。

 食べ物を粗末にするな、という教えはひとそれぞれがさまざまな形で、骨がらみ
で持っている。これは、生まれつきの骨格のように未来永劫変わらない。わきまえ
たうえで、あえて残すこと、のどこが悪いのだろう。
 残さないのも礼儀・信念・生きざまであるなら、残すのも強固な信念であり、確
たる生きざまである。

 書き出して、シマッタアと思う。止まらない。チョコっと、と思ったのが三十枚
ぐらい書けそうだ。やーめた。これぐらいにしておこう。小出し方式がよさそう
だ。
 あの店には、一文が消されない限りもう行くことは決してない。人生にはいろい
ろ一筋縄ではいかないことは多い。だから、明快なことも少しはあってもいい。
そういうことだと思う。簡単である。

 いろんな意味で頑固な店があるのだから、頑固な客がいてもいい。これは道理で
ある。とにかく掟破りの場外乱闘はやめて、味のリングで勝負しようよ、ねえ、
ご主人さん。
 もっとも、レフェリー役の常連がいなければしょうがない・・・か。

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2 コメント

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他にもあるぽ (にゃぁ)
2006-07-22 16:20:49
『お客と勝負!』

って、あ~た、あたしゃ、ただ腹へってラーメン食べに来ただけなんだから、勝手に勝負を売らないでほしいぽ。売るのはラーメンだけで、いいぽ。

一体、店主は、どういった状態を、お客を負かして自分が勝ったと考えるのか、理解に苦しむぽ。

うまくてもまずくても、お金は取るんでしょ?

スープ一滴残さずに飲んで、言ってやりたいぽ。

「う~む、まずい!」

そしたら勝負はどっちが勝ちで、どっちが負けで、そのあとの展開をどうしたらいいのか、是非是非、店主に教えてもらいたいぽ!
返信する
たしかに同感です (温泉)
2006-07-29 19:46:23
にゃあさま

コメントいただき、ありがとうございました。

また、返信が大変遅れたことご容赦ください。



ラーメンがお好きなようですが、わたしも大好きです。

ただ血圧が高いことから、なるべく避けるようにしています。

食べてもスープは呑まないように(つまらないですが)しています。



いずれにしても、おアシをいただく限り「客」のことを第一義に営業してほしい、その一点であります。

勝負を売らずに商品(蕎麦なりうどんなり)を売ってキボンヌであります(ああ、無理してるぽ)

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