温泉クンの旅日記

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伊豆長岡温泉 静岡・伊豆の国

2009-01-12 | 温泉エッセイ
  <南山荘>

 伊豆長岡温泉にずっと気になっていた宿があった。
 それが南山荘である。



 もともとは明治四十三年(1907年)創業と、百年を越す由緒ある宿である。
 敷地は八千坪と広大で、客室は山というか丘の斜面に点在しており、それを渡り
廊下が結んでいる。自家源泉をふたつ持ち温泉もかけ流しである。川端康成や北原
白秋など文人墨客に愛された、一般客には敷居の高かった宿だ。


 
 それがなんと、いまは素泊まりなら六千五百円で泊まれるのだ。いまから五年ほ
ど前から、このようなセルフサービスシステムで営業している。部屋数は三十三室
である。
 夕食は持込でもいいし、出前でもいい。他に外の店での夕食つきのコースも用意
されている。素泊まりでも朝食はただである。
 わたしが選んだのは、鮨屋での夕食つきの一泊で九千五百円のコースだ。

 玄関をはいったところのフロントで、まず料金を前払いする。予約した名前を
つげると、「六千五百円に、三千円、ですから九千五百円いただきます」と言わ
れ、夕食の鮨屋が三千円だということをここで再確認する。
 フロントの年配男性のほうが、大学生らしい若者の一団を部屋に案内していっ
た。

 ロビーでしばらく煙草を吸ってまっていると、男性のほうが息をきらしてフロン
トに帰り着き、やがて部屋への案内の順番が廻ってきた。年配女性のほうが連れて
いってくれるようだ。

「どうしますか? 部屋まで歩いていきますか。それとも車でいきますか」
 とっさになにを言っているのか飲み込めない。
「なかを通っていくと登りの階段が多くて大変ですから、上にもうひとつ入り口が
ありますから、そこまで車でいったほうがいいかと思いますけど」

 たしかにパソコンが重いので、そのほうがよさそうだ。
 荷物を持って駐車場に戻り、白壁が切れたところで曲がり敷地の脇の坂道を登っ
て玄関前の駐車場に車をいれた。
 敷地内だから、道だろうがどこにとめてもかまわないようだ。



 上の玄関のところでは、階段を駆け上がってきたのだろう、さきほどの年配女性
が待っていた。
「では、ご案内します。靴のままでけっこうですから」
 短い階段と急傾斜の階段とふたつあがったところに部屋があった。
「こちらの部屋になります。テーブルの上に説明書がありますので、それをお読み
になってください」
 案内する女性の喋る声も息があがっている。
「ほんとうに、大変ですね。お疲れさまでした」
 鍵を受け取り、思わず言ってしまう。



 宿泊客が少なかったせいか、この宿では離れと呼ばれている数寄屋造りのいい
部屋だ。ありがたいことだ。この部屋には、きっと名のあるひとたちが泊まった
ことだろう。



 広い窓辺にある椅子からは見晴らしもいい。部屋の周囲に板敷きでめぐらせ、
そこに鏡台もあった。トイレもふたつ、風呂場もあるが使えないようだ。部屋の
造作をじっくりみると、老朽化はかなり進んでいる。火災だけが怖いが、飛び降り
ればなんとかなりそうだ。
 
 次の間つきで、部屋は広い。暖房はだいじょうぶだったが、冷蔵庫はあるが、
活きているのだろうか。なにもはいってないから、勝手に使えということだろう。
 さて、まずは温泉だ。三つあるが、この時間は、内湯の岩風呂と露天風呂のふた
つで、内湯の富士見風呂は女性専用である。
 着替えて、露天風呂にいってみる。





 太鼓橋のような廊下で別棟に渡り、たどり着くまでいくつもの階段を使い、かな
り歩く。



 先ほど見たにぎやかな若者の一団がはいっていて、邪魔にならないように隅っこ
のほうで温泉に浸かった。たっぷり温まってから、一度部屋に戻り、コンビニに
買出しにいった。

 坂道と階段をあがって部屋に戻って、買ってきたビールを開ける。
 焼酎の水割りをチビチビやっているうちに、夕食の時間になったので、布団を
敷いて鮨屋に向かった。

 朝までに、一番近い岩風呂に三回入浴した。自家源泉だけのことはある濃い温泉
で、たっぷり満足した。
 朝食は、フロントの横に食パンがありトースターで焼いて食べる。パンはなかな
か上物である。パンも珈琲も自由に何枚でも何杯でも飲めるようになっている。
これでゆで卵でもあれば、わたしなどはかなり満足してしまうのだが。

 いずれ、機会があればまた来てもいいかもしれない宿である。


  →「ひょうたん寿司」の記事はこちら

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