温泉クンの旅日記

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京都、大原三千院(2)

2022-03-27 | 京都点描
  <京都、大原三千院(2)>

 南禅寺も銀閣寺も、京都市の向かって右側(東側)に存在する。大原三千院もだ。
 京都の地図を見ると、左京区は右側(東側)に、右京区は左側(西側)にある・・・。
(なんで京都では「左右」が逆なんだろう・・・)

 数度目かに訪れたときに不思議に思い、調べてみると、そのわけは「天子南面す」という考え方に基づいているからと知って腑に落ち、すっきりした。

『「天子南面す」という言葉は中国古来からの考え方で、君主は北を背に、南に向かって君臨し、政務を司るというきまりがある。だから長安をはじめとする古代中国の王城都市は、都の北部中央に王が鎮座する宮城があり、南に向かって区画が広がる構造になっている。
 京都の平安京は、中国の都にならって造営されたため、北側中央に天皇が居住する内裏が設けられ、内裏から南に向かって都を見渡した天皇の視点を基準に、朱雀大路より左手は左京、右手は右京と呼ばれるようになった。』

 

 

 客殿を抜けて、御所の紫宸殿を模した「宸殿」から降りて、いよいよ今日の目当てである「有清園(ゆうせいえん)」をゆっくり散策することにした。

 

「有清園」は宸殿より「往生極楽院」を眺める池泉回遊式庭園で、中国の六朝時代を代表する詩人「謝霊運(しゃれいうん)の「山水清音有(山水に清音有り」より命名された。
 園は青苔に杉や檜などの立木が並び、山畔を利用して上部に三段式となった滝を配し、渓谷式に水を流して池泉に注ぐようになっている。

 

 緑のビロードのように広がる苔をみていると、眼から安らいでいく。苔の緑は暑い日には眼に涼しく、その同じ緑が濃淡の差こそあるが不思議と寒い日にはあたたかい。
 苔の上を時間はいかにもゆっくりと流れている。そのたゆたうような進みは時間の質が違うせいかもしれない。

 わたしが苔好きになったのは、たぶん西芳寺(苔寺)からだと思う。以来、苔むした庭や門、庭石などがたまらなく好きになった。
 西芳寺の庭園を作庭したのは、禅庭・枯山水の完成者として世界史上最高の作庭家の一人、禅僧・漢詩人・歌人でもある「夢窓疎石(むそうそせき)」で「夢窓国師」の名でも知られる。
 西芳寺も代表作であるが、世界遺産・天龍寺庭園もある作庭していて、わたしは若いころどちらの庭も観賞したので夢想国師の名は忘れられない。

 

 日本には二千種近くもの「苔」があるといわれ、雨や湿り気の多い梅雨時季が一番美しいが、ジツは新芽が芽吹く春や秋もおすすめだそうだ。

 春は山桜と石楠花が庭園を淡く染め、夏は新緑、秋は紅葉、そして冬の雪景色と、季節ごとに真に美しい庭園である。

 

 三千院の歴史の源とも言える簡素な御堂「往生極楽院」。
 平安時代の『往生要集』の著者で天台浄土教の大成者である恵心僧都源信が父母の菩提のため建立したと伝えられる。院内には阿弥陀三尊像が祀られている。

 

 往生極楽院南側、弁天池の脇にたたずむ小さなお地蔵さまたちがジツに味わい深い。

 

 

 弁天池周辺には、 別名「イタチノシッポゴケ」という毛足が細くて柔らかい「ヒノキゴケ」が多く見られる。これは山の中でも滝や川の近くなど、常に湿った空気が流れている場所でないと育たない。
 太陽の光が木立によって遮られて、半日陰になっていることが多いこの三千院の庭園は、他にもさまざまな種類の苔が見られる苔の宝庫となっています。

 

「わらべ地蔵」と名づけられたこのお地蔵さまたちは、石彫刻家の杉村孝さんが手がけたものである。
 有清園の苔と一体となってきれいに苔むしており、まるで幾星霜を経ているようだ。

 

 御殿門前の参道に戻り、歩きだそうとして思わず振り返る。
 参道奥の、突き当たりに勝林院(大原寺)本堂がある。その塔頭「宝泉院」には、有名な五葉松と「額縁の庭園」があり、水琴窟の音に耳を傾けながら抹茶も味わえる。
 まあ、宝泉院の「額縁庭園」と抹茶は次の機会の楽しみとしておこうと呟き、歩きだす。



  →「京都、大原三千院(1)」の記事はこちら

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