温泉クンの旅日記

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函館、湯の川温泉(1)

2020-12-20 | 温泉エッセイ
  <函館、湯の川温泉(1)>

 函館で今回泊まることにしたのは、登別温泉、定山渓温泉とともに北海道三大温泉郷のひとつに数えられる「湯の川温泉」だ。
 わたしが湯の川温泉に泊まったのは温泉初心者のころの一度だけ、珍しくツアー旅行での「湯元啄木亭」だったと記憶している。“湯の川”という語源は、アイヌ語の「ユ(湯)、ベツ(川)」に由来しているという。

 

 昭和二十年ごろまでは“函館の奥座敷”と呼ばれたそうだが、湯の川は市街地からもバスや市電を使えるし、函館空港からもバスで6分と、今やとても便利な温泉地である。新幹線函館北斗駅からもシャトルバスが運行されている。

 函館駅から湯の川温泉に向かう、砂浜沿いの国道278号線は「漁火通り」と命名されている。その名の通り、イカ漁の季節には、暗くなると津軽海峡に漁火が浮かぶのが見え、地元の人は「海岸通り」とも呼ぶ。

 

 宿に決めた「湯の川プリンスホテル渚亭」は、その漁火通りの海沿いに建つ人気のホテルである。ホテルの前、国道を挟んでコンビニがあるのを横目で見てしっかり頭に刻む。
 エントランス前には、身なりを整えたホテルマンとホテルウーマンが待機をして出迎えてくれた。

 

 海が一望できるラウンジで、ウェルカムドリンクのスパークリングワインをいただきながらチェックイン手続きをすませる。

 

 

 ロビースペースは奥行きがあって、こちらにもゆったりとしたラウンジスペースがあった。

 

 

 案内された部屋はまあまあの広さの和室で、眺望は“悪い”の一語だが、これは折り込みずみである。なにしろ訳あり、格安でのB&B泊なのだ。函館では夜は外食に限る、だから二食付き宿泊はもったいない、というかありえないとさえわたしは思っている。
 浴衣に着替えるとエレベーターで一階に降り、フロントの前を通って大浴場へ急ぐ。

 
 
 脱衣所に入り一瞬で裸になり、浴場へ向かう途中で壁の掲示をみてピタリと足を止め「源泉100%」だけ食い入るように読み、先を急ぐので小さい文字は後回しにする。

 

(えっ、ここって源泉100%なのか・・・)
 おっほっほっ、こりゃまたビックリだ。てっきり、大箱ホテルにありがちな薄っちい“循環クルクル温泉“とばかり思っていたが、よしよしとっても嬉しい誤算だ。

 

 大きな洗い場スペースを通り抜けると、内湯があった。
 内湯のヘリで、ルーティンの掛け湯をして湯船に身を沈める。

 

 温まったところで、渚亭の売りである露天風呂へ素早く移動する。
 さあ、思う存分に、350年余の歴史を誇る名湯「湯の川温泉」に浸かろうじゃないの。

 

 源泉温度は平均して65度の高温、湧出量は日量七千トン(毎分4,861リットル)以上の湯量を誇る。市が管理する源泉が9本、民間所有が13本の計22本。湯の川では井戸水を掘ろうとしても温泉が出てしまうというから驚く。

 天気が良ければ、すぐ目の前の砂浜に打ち寄せる津軽海峡を隔て、下北半島の山々を望むことができるのだが今日は霞んでいる。砂浜を辿って右をみていくと函館山が見えた。

 大箱のホテルで浴場が上階や屋上にあるところは循環の温泉だが、湯量豊富なので多くは「放流・循環併用式」を採用しているそうだ。放流式とはいわゆる「かけ流し」、「完全放流式」とも呼ばれる。

(たしか、湯元啄木亭の露天風呂は屋上だったな・・・)
 ということは循環クルクル温泉だったわけで、思いだせないのも無理ないか。それに大嫌いな飛行機ツアーの最終泊だったせいもあるだろうな、きっと。たしかあれが人生最後の飛行機旅になってしまった・・・。

 

 一定のリズムで砂浜に波が打ち寄せるのを、ぼんやり見ながら温泉の湯にたゆたうように身をまかせていると、身も心も疲れがほどけて時間がたつのも忘れてしまう。
 波音を聞きながら湯のなかでゆったりと弛緩させていると、心の水面が穏やかに鏡のように静まってその底のほうからふつふつと活力が湧きだし、じわじわと満たされていく。
(昼メシをいつもの五島軒を捨て滋養軒を選んだが、あの選択はなかなか良かったように思えるな・・・)

 掛け流しの源泉・・・部屋は訳ありの眺望難ありだが、温泉で贅沢できればわたしは大満足、文句なしだ。


  ― 続く ―


   →「函館、滋養軒の塩ラーメン」の記事はこちら
   →「五島軒のイギリスカレー」の記事はこちら


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