温泉クンの旅日記

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網張温泉 岩手・雫石町

2010-06-27 | 温泉エッセイ
  <網張温泉>

 突然発生する災厄もあとから思えば、
「ああ、あれがその予兆だったのか・・・」
 と思える兆しというものがあるものだ。

「あれれ!」
 ナビ画面をみてぎょっとした。
 画面が明るい緑一色になっている。いよいよ壊れたかな・・・と思ってしまったほど鮮やかな緑色だ。
 そうか、牧場のなかを突き抜けている道だからだ。
 ここは岩手県盛岡の近郊、小岩井牧場が左右に広がる道である。
 やがて牧場を抜けたところで元の色にもどって、ほっとする。



 雫石盆地を見渡す標高七百五十メートルの高台に休暇村「岩手網張温泉」はある。
 広い駐車場に車を止めて、ドアを開ければ温泉の硫黄臭が漂ってくる。温泉好きなら香ばしく感じるはずだ。
 温泉よし、眺望よし、清潔で居心地がたまらなくいい。それでいてお値段手頃な一軒宿だから、週末などはまことに予約がとりにくい。

 眺望のいい側の部屋は早くからの予約ですぐ埋まってしまい、わたしはいつも眺望の悪い山側であった。ひとりだし、直前の予約だからしょうがない。それでも部屋は広さも申し分のないものだ。

 ここは水もおいしい湧水を使用している。部屋のポットにもはいっているので、酒呑みならこれで水割りをつくるとひと味違う。
 欠点をあえてあげるならひとつある。禁煙の宿なのだ。
 だが、これもじつは心配いらない。各フロアーに探せば広めの喫煙室がある。案内図にも載っていないのはわざとだと思うが、訊いたひとだけに教えるというスタンスなのだろう。



 白濁、硫黄臭の強い温泉は自慢するだけのものはある。
「千年の名湯」といわれるその開湯は、千三百年前とさすがに古い。





 館内には内湯と露天風呂、離れたところに内風呂がもうひとつある。



 ところがこの豊富な源泉の出が、わたしが泊まった翌日の朝方、突然に悪くなった。
 フロントのひとの説明では、こんなことは初めてだという。昨日の到着以来、たっぷり温泉にはいっていてよかった。



 このときはまったく気にとめずに網張温泉から十和田湖方面に向かった。
 途中、奥入瀬で散策して蔦温泉で立寄り湯をしているうちに雨が降りだした。

 十和田湖畔の宿で夜半に、目の前に延々と繰り広げられる雷によるゴロピカショーと、圧倒的な量で地面を河に変えてしまうほどの豪雨を、唖然と眺めながら酒を呑んでいた。高所 だから、雷がすぐ目の前で轟音とともに炸裂するのだ。
 突然といった感じで襲ってきた雷雨であった。



 そして次の朝、あの大地震がやってきたのだった。
「岩手・宮城内陸地震」と名付けられた地震だ。



 絶え間なく豊富に湧き出ていた網張の温泉が、突然に温泉の出がおかしくなったのは、せったいにこの地震の予兆と思えてならない。



  →「小岩井牧場」の記事はこちら
  →「蔦温泉」の記事はこちら


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