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温泉クンの旅日記

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天国と地獄(1)

2015-03-04 | 温泉エッセイ
  <天国と地獄(1)>

 熱海から乗りこんだ伊東線で伊東駅に降り立った。
 東京からだと快速アクティーを使っても約二時間二十分かかるのだが、慣れた東海道線だからそんなに遠く感じられない。



 祇園の立ち食い蕎麦の出汁のいい匂いが漂ってくるが、東京駅で京風きつねうどんを食べてしまったので、素通りする。
 改札脇にある窓口で戸塚駅までの定期を提示して差額を払うと、駅を抜け確かな足どりで宿へと歩きはじめる。迷いはいっさいない。伊東の町の地理は住んだことがあるように隅々まで知っている。



 途中のコンビニで煙草と飲み物類を、江戸屋でパンを購入した。
 江戸屋のすこし先の左側にあった、わたしも何度か買い物をしたスーパーマーケットが潰れて建物が封鎖されている。売りにだされているのだろうか。この時代、商売を永く続けるのは大変だ。温泉町も常にどこかでこうした新陳代謝が行われているのだろう。



 一本の満開に咲いた河津桜に思わず足をとめる。



 たわわに実った香りたつ八朔も、河津桜や水仙や菜の花と同じくこの時期の真に伊豆らしい風物詩である。

 途中にある高級旅館が、買収されたのだろうか有名リゾートホテル系列の看板にいつのまに変わっていたのに驚く。それにしてもその看板の稚拙で貧弱な文字がなんとも似つかわしくないなと苦笑する。

 土日は別だが、平日の「大東館」はその手頃な料金からビジネス客が多い。



「こちらへの御宿泊は初めてでしょうか」
 チェックインをしている時にフロントが尋ねた。「いえ、何度か泊っています」と答えると、宿の説明を省き鍵だけ渡された。
 部屋に入り、一分とかからず着替えるとまずは大浴場に向かう。ビジネス客は仕事で出払っているからチャンスなのだ。



 掛け湯をいつものようにして、湯舟に身体を沈めていく。
 身にびっしりと纏ったしがらみがみるみるうちに溶けだし、温泉に抱きすくめられ、何ものにも邪魔されない一種<無>の状態になる。
至福の瞬間といっていい・・・これこそが温泉の醍醐味だ。誰もいないのをいいことに思わず「うーむ」と呻いてしまう。若い女性が使う言葉を借りるなら「リセットできた」ということだ。



 冬の露天風呂にいきなり入るのは無謀である。たっぷり温まってから、露天風呂に移動するのが温泉好きなら上策だ。



   ― 続く ―


  →「河津桜 2010年」の記事はこちら
  →「爪木崎の水仙」の記事はこちら
  →「下賀茂の花見」の記事はこちら

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