ニョニョのひとりごと

バイリンガルで詩とコラムを綴っています

昨年3月31日、東成にて「共に 春のウリノレ音楽会」が行われました。

2020-03-10 19:28:41 | 詩・コラム



随筆「ともに 春のウリノレ音楽会」を終えて/ニョニョ




(高らかに歌をうたう出演者たち)


私は「ともに」という言葉が大好きだ。それは私の70年の人生そのものが「ともに」の人生だったからかも知れない。

去る3月30日、大阪市の東成区民センター小ホールで催された「더불어 ともに 春のウリノレ音楽会」には、雨にもかかわらず立ち見が出るほど多数の観客が訪れた。

決して華やかなコンサートではない。しかしベテラン声楽家が4人も出演する上、フルート、ピアノ伴奏に至るまで音楽一筋の人生を送ってきた人々のコンサートである。

若い頃、朝鮮歌舞団や音楽教員として働いていた彼らは、今は、溶接工として工場で汗を流し、夜明け前からキムチ屋でキムチを漬け、介護施設で働きながら数十年間絶え間なくレッスンを続け、舞台に立ってきた人たちである。私は彼らを尊敬し心の底から応援したいと常々思っていた。

35年前の1985年から10年間、毎年行ってきた文芸同文学部と混声合唱団「セボム」のコラボコンサート「歌と詩朗読の夕べ」にも今回の出演者全員が参加した。

12年前の2007年3月31日には、東大阪市の夢広場で「ともに 40年」というコンサートを催し、再び同じメンバーが舞台に立った。

「ともに 40年」は、フルート演奏を続ける夫と、詩を書き続けてきた私が文芸活動を始めて40年という節目を迎えた時、仲間たちが企画してくれたコンサートだった。あの日の感動は今も鮮明に残っている。

私は初めから今回のコンサートに関わる予定ではなかったが、彼らが「春に音楽会を開こう」と何回か話し合っているのを傍で見ながら、何か手伝えることが無いかなぁと思ったのがきっかけだった。音楽会のテーマが気になり尋ねると崔大弦さんが「『ともに』が良いんじゃないかな」というので、同じことを考えていた私はとても嬉しくなった。

それは長年連れ添った仲間同士のコンサートでもあるが、この困難な時代だからこそ単なる音楽鑑賞会で終わるのではなく、コンサートに来てくださる方々も「ともに」元気になれるコンサートにしなければと思ったからだった。




(公演では7年間行われてきた「火曜日行動」に関する歌もうたわれた)

私は大阪で2012年4月から7年間行われてきた「火曜日行動」と連帯するコンサートにすることを提案した。それというのも出演者のひとりである金主休さんが作曲し文春一さんが録音してくれた火曜日行動の歌「君たちが大きくなったら」「この坂を上れば」の動画を作り2013年から毎週火曜日にFBで流し、火曜日行動終了時にみんなで歌っていたからだ。




(詩の朗読をする陶山喜代子さんは「火曜日行動」の仲間だ)

2018年から火曜日行動のたびに歌い続けている「勝利のその日まで」、また昨年からオモニ会の皆さんが毎週歌っている金曜日行動の歌「声よ集まれ 歌となれ」、これらの歌を歌うだけでもどんなに良いだろう、舞台と会場が一体となって共に歌うならば必ず力になれると思ったのだ。

私は7年間撮り続けた2万5千枚もの写真の中から、歌の内容に合う写真を100枚ほど選び、ドキュメンタリー映画「60万回のトライ」共同監督の朴敦史さんにスライドを作ってと依頼し、詩「ここに立つ」の朗読を火曜日仲間の陶山喜代子さんにお願いした。

ついに迎えた3月30日。「ともに 春のウリノレ音楽会」は大成功だった。






1部では昨年一気に高まった統一気運を反映して選曲された歌「青い柳」、「白頭と漢拏は我が祖国」、「臨津江」を女声二重唱,男声二重唱、4重唱で歌い上げ大きな感動を呼び起こした。



元福実さんは「サビスー白馬江」「鳥打令」を、




文春一さんは「ムンギョン峠」「千の風になって」を歌い、




金主休さんは「ハマナス」と「故郷の夜」をフルートで演奏した。



李明玉さんは尹伊桑の歌曲「月の暈」、「ブランコ」を、



そして崔大弦さんは、祖国解放前の歌「異郷暮らし」と、南の声楽家呉鉉明氏が楽譜をくれた「帰天」を朗々と歌い上げ、



17曲全てを金文淑さんがピアノの伴奏で支えた。



年輪を重ねた素晴らしい歌声はマイクが無くとも会場の隅々にまで響き渡り満員の観客を魅了した。このコンサートをハルモニ会とオモニ会の皆さんが後押ししてくれたことはいうまでもない。

奈良から駈け付けた森本さんは「音楽を楽しむことと、共に闘う想いが一つになって勇気と感動を戴きました」と熱い感想を寄せて下さった。

生涯「ともに」を大切にしたい!










(文芸同大阪顧問)



愛と闘いの歌声に勇気

音楽会の感想

「共に 春のウリノレ音楽会」に寄せられた感想のうちいくつかを紹介する。

◇素晴らしい音楽会でした。音楽を楽しむことと共に闘う思いが一つになって勇気と感動を戴きました。「一員であってよかった信頼と絆の仲間火曜日行動」(森本忠紀、70代)

◇素晴らしい音楽会に癒されました。普段仕事ばかりしていると聴くことのないウリノレ。その価値を改めて胸に刻んだ思いです。ピアノもフルートも良かった。心温まる司会も、最後の連帯も素晴らしかった。これからも是非続けてほしいです。(韓哲秀、50代)

◇コンサートはとても温かくて、歌もフルートもピアノも司会進行も良かった。みんなが日本という国に疲弊する前に補助金が再開され、朝鮮学校の子どもたちに「日本が大好き」と言って欲しいです。(大橋清美、40代)

◇春のウリノレ音楽会は、素晴らしい歌声と仲間の友情と絆を確かめる感動の集いでした。最後に火曜日行動の闘いのなかで生まれた歌がうたわれると、この7年の厳しい年月を手をとりあって歩んできた仲間の顔が浮かび涙がでました。またホンギルトン基金への寄付も心から感謝致します。(長崎由美子、60代)

◇オルシン方の歌声が圧巻でした! 「君たちが大きくなったら」の歌と共に映されたスライドに三男坊とオモニの写真が‼ 思わず涙が‼ オモニの意志を継いで最後まで闘います‼(宋寿賢、50代)

◇知らぬ間に時間が過ぎ去ったコンサートでした。ピアノの音色、フルートの音色、素晴らしい歌声…心の中に温かい光が差し込んできたような時間でした。(張順任、30代)

◇アットホームな雰囲気の中で春の訪れを感じられるコンサートでした。年輪を重ねた歌声と演奏がゆったりと会場を包み込むにつれて、朝鮮学校への深い愛情と、差別を許さない決然たる思いが共有される空間になっていきました。火曜行動の歌も一挙に聴け、7年に渡るこの長く困難な活動に改めて思いを馳せ、敬意を新たにしました。(藤永壮、50代)





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