由布岳が田圃の水に写って。
九州は温泉が多く、それ程の時間を要しなくても、久住・阿蘇のような近いところ から南は鹿児島・宮崎、西は長崎・雲仙・島原など。だが、なかなか機会が出来ない。ましてや、関東以北は遠すぎて。ネットを通じて楽しませてもらっている。
久しぶりに”湯布院温泉”へ。知人(大分のラムネ温泉や、阿蘇五岳を眺望におさめる露天風呂の宿などはこの方の情報である)が『安いけどなかなかいい』と教えてくれた。
実はととろ夫婦5月23日は結婚記念日。ところが、この日予定有り。で、その前に前祝と。豪華絢爛フランス料理いや懐石料理つきの華やか温泉宿・・・と洒落る気はなく、近頃二人ともやけに忙しいので(実は記念日のことをケロリと失念していたととろサン。夫サンから言われて、はっと思い出したくらいであった)
とにかく静かな宿で、ゆっくり露天風呂に 入りたい!なまじなプレゼントより、温泉大好きのととろサンは、小さくとも温泉らしい温泉なら最高!
広大な麦畑(麦秋)みんなビールになるのね。 五月ごろに咲く【ミヤマキリシマ】
ドライブ途中の筑後平野は、両側とも見渡す限りの麦畑。色づいて綺麗なこと!『麦秋』とは良い表現だと思う。この近くにはSビール工場などがあり、この麦畑は全てビールに。それにしても何と広いこと!。
”やまなみハイウエイ”を走り阿蘇を掠めて、飯田高原で暫し遊んだ。
三股山がくっきりと。 山藤も盛り。天ぷらに出来るんだよね。
『下城の大銀杏』も若葉に包まれていた。小さな銀杏の葉が生意気に(笑)一人前に銀杏の形をしているのが、なんとも可愛い!。その脇の小さな雑貨屋さんでは、オジイチャン(家の中でした)とオバアチャンにいつも声かける。随分耳が遠くなられたが、元気だと嬉しくなる。おじいちゃんの作る落花生も、他の豆類も美味しいので、このルートの時は、いつも立ち寄る。100円均一。竹筒の中にお金は入れておく無人スタンド形式だ。
おばあちゃんとお友達、『写真撮って!』と。遅くなったけど、昨日送りましたよ。元気で美味しいお豆作って下さいね。
やまなみハイウエーは緑色の芝生を一面に敷き詰めたような小高く、なだらかな丘陵地帯(阿蘇のカルデラ)がどこまでもどこまでも続き、草が眩しく輝き、日差しの中で牛馬がのんびりと草を食んだり、休んだり。このハイウエイは『牛馬優先道路』。時々牛や馬さんが道路をのんびり道を横切る間、車は大人しく待っている。
この広い広い柔らかで、なだらかな緑の平野を眺めながらのドライブは、本当に気持が良い。ミヤマキリシマが咲き始めてた。久住のあたりは、まもなく全山この濃いピンクの花で彩られる。親指の先より、ちょっと大きいくらいの花。可愛い花!
・硫黄山は、風の具合で噴煙が左右に。今日は余り風もなくおだやか。硫黄の匂いが風に乗って漂ってくる。でも温泉気分が高まってきて、悪いものではない。
さあ、湯布院へ
湯布院温泉は若い女性向の雑誌に紹介されて以来、ブーム到来の丁有名温泉地と化してしまった。高く聳える由布岳のふもとの小さな盆地、小さな綺麗な川辺には蛍が飛び交い、緑に包まれて、かけ流しの温泉の宿が幾つか。『隠れ宿』のような風情の、鄙びたとて素敵な温泉地であった。
11月や12月初旬は、空気が澄んで朝霧が発生し易く、湯布院の町はすっぽりと朝霧に包まれてしまう。ロマンテイックな光景である。
大好き!だったのだが。でも、今は・・・もう随分前から常時観光客がぞろぞろ、雑多な小さなお店が並び、地元名産ではない品が並べられ、落ち着かない町となってしまった。我が家に遠方から来る女性客の殆どが『湯布院に行きたい』とおっしゃる。
最初の頃は案内していたが、最近は・・・他のところの方がいいよ。と別の温泉へ。この小さな温泉町に130軒くらいの宿があるそうだ。勿論価格を問わねば、リッチな風流なお宿も、洒落た美味しいレストランも色々ある。だが、雑然として、わけのわからないようなお店が立ち並んでしまったことも事実だ。だからつい足が遠のく。それでも、今の時期は、新緑がどこも美しい。若葉の季節が大好きなととろサンは、嬉しくてうれしくて。若緑の輝きに目を細めました。
さて、今回の宿は駅からすぐなのだが、まず静かだった。庭に一戸建ち。10戸く らいか?民宿”牧場の家”(何で牧場かは・・・わからなかった?)わらぶきの家が本館で食事どころ。お風呂は家族風呂が幾つか個別にあり、大浴場は男女とも露天風呂。これがなかなよかった。見上げると由布岳が聳え、新緑を渡る風が心地よい。
部屋は・・・和風に作られた庭の中に、ごくごく普通の簡単な建築の家が何軒 か。玄関入ると六畳二間に小さな縁側。(若い頃住んでた借家に似ているなあ。) ちょっと回りの風情とそぐわないのがおかしい。
そういえば、ここの庭にはやたらに石碑があったなあ。川柳の番傘(有名な川柳の雑誌)の会主の碑とか、『平家物語』の”祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り・・・」の書き出しなどが彫られた石碑も。これもまた、なんか”オモシロイ”感じ。更に囲炉裏を模した昔風のフロントには、あれま、有名人がいっぱい。北島三郎・坂本冬美・夢何とか旅番組のスター・目黒祐樹・古くは津軽三味線の高橋竹山(余談だが、この人の演奏会素晴らしかった)などなど。この宿の社長さん(おじさん風な)と並んだ写真がずらりと掛けてあった。一時期、こんな田舎屋風な風情が温泉ブームの時代に、テレビなどで受けたのだろう。庭にはオオヤマレンゲ(椿かな?)の香りが漂っていた。
宿泊の人数が限られているのがよかった。豊富な湯量の、広い露天風呂は早朝も夜も独り占めである。由布岳を眺めながら”最高の贅沢だなあ”とつぶやいたととろさんであった。部屋も寝るだけだもの。床の間付きだし(関係ないか)、これで充分。民宿だから、お布団は自分で敷き、お茶も自分で入れるが、仲居さんが出たり入ったりするよりいいかも。借家時代の若い頃を思い出させた部屋は、結婚記念日に相応しい感じがして、おもわずしみじみと、昔語りに夜は更けていった。43年・・・よくここまでたどり着いたものだ(爆)。若い時の苦労は買ってでもしろ、終わりよければ全て良し。昔の人は、良い言葉を残したものだ。
露天風呂 金鱗湖で。
食事は『お肉がいいですよ』知人の言葉に『焼肉コース』を頼んでみた。確かに!豊後牛は柔らかく美味。大きなお皿にはお肉・地鶏・生椎茸などきのこ類・定番のキャベツ・にら・人参・ピーマンなどなどがずらり。これに、『酢の物・茶碗蒸し・サトイモ・蒟蒻などの煮しめ・お刺身(新しくて美味。九州は山でもお刺身が美味しかったりする)・鮎の塩焼き・椀蕎麦』だったか。とにかく、『ご飯お持ちしましょうか』といわれても・・・おなかは満杯で。
洒落た献立ではない、ごくシンプルな素朴な料理だけど、焼肉にこれだけつくと・・・。多すぎる程。一泊二食で8,000円から。値段の違いは、一戸建て借家風宿がどこに面しているか。山側か道側かなどで違うそうで、食事は全く一緒だとのこと。
食事処の、お揃いの赤いエプロンのオバサンたちは、バイトの方達かな、なんか余りととろさんと年も違わないような。食事の時に一緒になったのは、韓国からの若い女性。浴衣の着方が解らないと手真似で。オバチャンが、ちゃんとつくろってあげて帯を結びなおして、気さくに話しかけ(勿論日本語で)「いっぱい食べてね」なんて優しい。身振り手振りと笑顔は万国共通の言葉だなと再認識。
そのお嬢さん、立派なカメラで、献立の一つ一つを撮っていた。。ととろサン達にも笑顔で・・・ハッキリした日本語で話せば、挨拶程度は解るらしい。翌朝も一緒になったが、『お会いできて 嬉しいです』と一語一語はっきりと言ってくれた。『とても上手ですよ。日本語 勉強しているの』『ハイ』旅の小冊子かな、辞書かなを片手に。浴衣着て下駄を履くのが、とても楽しそう。可愛い美人さんでしたので、写真撮りたかったけど・・・やっぱり遠慮しちゃった。笑顔が輝いていました。。きっと素敵な日本の旅を、体験してくれることでしょう。
九州はアジアと一番近い国。昔から交流の多かった地方です。韓国とも中国ともその交流には、さまざまな歴史上の問題などもありますが、『近くて遠い国』ではなく、最近はとても近い国・・・になっています。太宰府天満宮でもそうですが、九州のみならず、日本のあちこちでアジアの旅行客を見かけるのが、当たり前の風景になってきました。良い交流関係を結べることを祈りたい気持でいっぱいになった。
翌日はガイドブック片手の若い女性や、観光バスからぞろぞろの観光客を避け て、人気のない昔の雰囲気の残るあたりを散 策。でも、好きな喫茶店は有名な宿の傍だし、金鱗湖も近くだし、やっぱり行っちゃいました。人だらけだけど、休日ではなかったので、まあまあってところかな。
湯布院散策ののち、湯布院の町を右下に見て、山手の方へ100Mくらい登ると 小さな緑に囲まれたレストランがある。(有名な”無量塔・・・むらた・・の手前横かな)笑顔が優しいひげのマスター(『ムスタッシュ』とはイタリア語で髭のこと)と奥さん、お嬢さんの家族で経営するお店兼宿でもある。パンを作るのはお嬢さん。マスターはじめご家族が優しくて、居心地の良い家庭的な雰囲気が嬉しい。数年前友人夫婦(彼らが由布岳に登る時の定宿)と初めて来て以来、湯布院高原の山野草散策の時には立ち寄ることが多い。
緑の樹木や花々に囲まれた、小さなレストランはイタリア料理がメーン。宿泊はお店の奥。天蓋の付いたベット・ルームと音楽を楽しめる居間。小さいけどお湯がいつも溢れている温泉。(全てがこじんまりとして、静かでお気に入りの宿でもあり、ちょっと昼食に立ち寄ったりもするところだ。外のテラスに若い二人連れ、店内には外国の人達。大分大学に招聘されたアメリカの教授夫婦達と日本の先生方が10名ほど。
湯布院の町中は盆地なので、今日も汗ばむほどに暑かったが、ここは少し山手だから、気温も低く、緑の木々を吹き抜ける風が心地よい。英語の会話が流れてきて、アメリカにいるような感じだね・・と夫サン。娘のことに想いを馳せる。横浜とアメリカに暮らす娘達。その日々の健康と幸せを願う想いを、湯布院の緑陰からはるかに祈りながら、時間がとまったような空間に身をおいていた。
結婚記念日のお祝いにと、心遣いのワインを頂き、マスターの笑顔に送られて湯布院への小さな旅は終わった。