皐月末の休日、白金台の【畠山美術館】に行った。【花ひらく茶と庭園文化】というテーマ。前にも書いたかもしれないが三井・三菱などの財閥が、収集した日本の文化をこのような形で残してくれているのは、嬉しいことだと思う。「畠山美術館】は茶道やお能の好事者、荏原製作所創始者の荏原一清氏(号は即翁)が集めた茶人としても有名な8代目松平当主松平不味公の愛した茶碗などが一堂に集められている。昨年秋リニュアルオープンしたのを記念しての今回の展示会だった。
私は茶道や茶道具に詳しいわけではない。ただ、昔中学生の私に、母が「習いに行きなさい」と何故か勧めてくれて、すんなり私と小学生の妹は、博多の町の路地奥の閑静なお宅にお稽古に通ったことがある。母の実家の縁に繋がる裏千家のお師匠さん、もう随分と高齢の方で私達を孫のように可愛がって、教えることはちゃんとちゃんと教えて下さった。とても品の良いおばあちゃま(私達にはそう思えた)だった。良い体験、良い方との巡り合いだった。
だが私は高校2年ともなると、舞台や映画を観ることや他にもいろんなことに興味が移り、自然と茶道からは足が遠のいた。真面目な妹はずっと通って、いずれはその道を進むかなと思っていたが、思いがけない事故のため、正座が出来なくなり断念した。妹の気持ちを思うと本当に辛かった。
といった茶道との少しだけの関りではあるが、日本古来の文化には歌舞伎などを初め興味があって、観るのが好きで心惹かれる。展示会の後は名器とされる、戦国武将憧れの【井戸の茶碗】を題材とした落語が待っていた。演者は三遊亭遊雀師匠。飄々とした雰囲気のお方である。前座は雷門音助さんの「最後の袴」暫く寄席にも行っていないので、久しぶりに面白かった。話芸、凄いなと思う。
雨に濡れる吸い込まれそうな緑の美しさを眺めた。これもこの季節ならではの風景。5月最後の休日は心豊かな時間の中だった。(不思議なものでこういう時は、日頃悩まされている肩や坐骨神経痛の痛みを忘れている)さあ、明日から又、元気で過ごそう!と前向きな気分になるから不思議だ。佳き時間は心身にとって何よりの良薬なのだろう。静かに煙る新緑の深い木立を後にした。
娘の和菓子は「紫陽花」私のは「水のしずく」お茶碗は好きなのを選べる。焼いた人のお名前失念。どっしりと手に馴染むお抹茶茶碗だった。日本の文化って凄いなと又思ってしまった。