今月末で閉館・・・寂しいなあ。
福岡市の西区、TNC会館(テレビ西日本)の中に『シネサロン・パヴェリア』という映画館がある。サロンというだけに大きな映画館ではなく、こじんまりとした、まさに映画サロンの趣きである。そのサロンが来月末で閉館するという。
『寂しくなるなあ』と夫サンも言う。このサロンは、メジャーではないが、優れた映画を上映する館であった。映画といえばハリウッド、マイカル系の上映館が多い中で、稀有な存在であった。(都市高速で20分。やや遠いけど博多の海沿いの景色は、ドライブ気分で心地よい。
『父と暮らせば』(井上ひさし原作・宮沢りえ・原田芳雄)や『初恋の来た道』(中国)もここで観た。イラン・イタリア・フランス・インドなどさまざまな映画が上映された。
友の会会員になると(会費は年間1000円だったか)小冊子とともに原稿用紙が送られて来る。”よかったなあ!”という映画を観ると、感想を綴ってみたくなり投稿。掲載されるとペア招待券が届く。嬉しいプレゼントだ。誕生月にもペア券。10回観るとペア券のおまけが。映画フアンには、まことに嬉しい企画であった。映画好きな人が経営しているんだろうなあ。と贔屓の映画館であった。
高校生の頃、映画の会で試写を見て感想文を書くという企画があった。せっせと見てはせっせと書いた。良いものは封切洋画館の招待券がご褒美としてもらえる。更に地元の映画雑誌に掲載されたり、高校生の私にとっては、格好のアルバイト(?)のようなものだった。これで、随分と映画を観たものだった。※広島在住中にも、そんな感じの映画館にめぐり合った。鷹野橋という古びた商店街の一角にその映画館はある。(広島のネット友人に尋ねると、まだ元気で存在しているという。嬉しいことだ)初めての時は、少なからず驚いた。飲み屋さんのような小さな店が~。なんだか昭和30年代のようなレトロといえば聞こえはいいが。”この上に本当に映画館があるのかしら?”半信半疑でこれまた古びた階段を登ると、奥まった一角にその映画館はあった。
中に入ると驚いた。少人数の上映室が確か二つかな。中は椅子もゆったりリラックスできる仕組み。天井には絵柄もあって。あの階段下の雰囲気からは、想像できない喜ばしい風情であった。ここも映画大好きな人が、経営しているのだろう。手のひらに入る位の 小冊子、確か『The End』だったか『End Mark』だったか。映画に関してさまざまな企画が用意されていた。深夜マラソン・監督特集などなど。他の館では上映されないような映画も随分観ることが出来た。映画・演劇・音楽フアンのととろサン夫婦にとっては、格好の楽しみの場所であった。ウオーキングを兼ねながら、歩いて出かけたりしたものである。
※『パヴェリア』から友の会会員の皆様へ~と夫サンと私それぞれに、ペア招待券と閉館挨拶が届いた。3月はリクエストに答えて、希望の多かった映画5作品を上映しますからリクエストをと。また、25日には『さよならイベント』を行うのでと出欠のはがきも。淋しくなるなあ。とまた、つぶやいた私だった。
映画『華麗なる恋の舞台で』(シネサロン・パヴェリア)
久しぶりで大人の鑑賞に値する映画だった。期待通り。
映画の舞台は、1930年代のイギリスはロンドンの演劇界。主人公は舞台の大スター、40代のジュリア。演じるのは私のご贔屓の女優の一人アネット・ベニング。(『アメリカン・ビューテイ」「心の旅」など。)
主人公の夫は、元俳優で今は劇場経営者(演じるのは、イギリス生まれのロイヤル・シェ-クスピア・アカエミーの舞台で有名なジェレミー・アイアインズ・・・「仮面の男」以来ご贔屓デス。「ベニスの商人」にも出演)
脇がまたいい!ローレンス・オリビエ賞2度受賞の名優マイケル・ガンボン(ハリー・ポッターの校長先生も彼) 主人公の付き人で目立たないような役でいながら”上手いなあ!”と感心させられたのは、ジュリエット・スティーヴン(やはりロイヤル・シェークスピア・アカデミーでの第一人者。映画などでは脇で見事な自然体の演技を見せてくれる女優だ)他にブルース・クリーンウッド(『13デイズ』のJ・Fケネデイ役など)
原作は実力と美貌を兼ね備えた大女優として人気を博し、包容力のある夫と優しい大学生の息子という恵まれた状況にありながらも、女としての40代、満たされない心と何もかも投げ捨ててしまいたいような焦慮感じの中にあるジュリア。
登場するは若く積極的で熱烈な彼女のフアンのアメリカ青年・・・愚かとは解っていながらの恋が始まる。青年に更に若く野望に満ちた明日の女優を目指す若い女性が登場し、三角の線上で・・・ジュリアの恋の行方は・・・絶望の中から自分を見つめ、未熟な恋人と野心の塊の青年の新恋人で、出世のために夫を奪った新米女優に、彼女はどう対応するか?歓喜・苦悩が交錯する。ゴシップにまみれ、やり場の無い日々。しかし、人間喜劇の要素もあって、ユーモアもただよう。原作は、サマセット・モームの『劇場』 なるほど!
クライマックスは終幕の舞台の上で。どんでん返しの面白さ。火花のような激しく、息を呑む舞台である。ジュリアの女優魂の見事さ。そして、彼女は華麗なる舞台で、、女として女優として見事に蘇る。とにかくアネット・ヴェニングの上手さに圧倒された。さまざまの表情、時に女優として華やかに、時に女としての切なさを素顔のままでさらけだす。英語はわからなくても、台詞の上手さは伝わってくる。
それに脇を固める俳優達の、控えめで抑えた演技の中にきらりとひかるもの。舞台劇・・・ともいえよう。舞台は主人公が上手くても脇役の俳優が駄目だと、つまらない舞台となってしまう・・といつも思うのだが、この映画は見事。ひきつけられながら、最後のあのクライマックスへと。充分堪能した。早速友人にこの映画のことを?。 友人からのメールがきた。『久しぶりに良い映画を観たわ。全身から嫌味のない色気と魅力が溢れ、泣き笑い、そして最後にはスカートを翻して微笑む・・・アネット・ベニングはエレガントで上手い俳優ね』と。同感。今の時代でいうと、アネット・ベニングやケイト・ブランシェットは、いいなあ・・・と思う女優サンなのです。
お勧めの映画でした。1930年代の衣装もまた素敵!でした。周りの登場人物もなかなか!若い青年と女優の卵が未熟に見えるのは、あえてそんな感じで登場させたのか。
人生の機微を重くならずに、内容は深くお洒落に描いた見ごたえのある映画だった。