生まれ育った博多の街は海沿いの街。いつもほのかに潮の香りが風に交じっていた。福岡大空襲で田舎に疎開、その後福岡に帰って、小学生の頃百道の浜近くに住んだことがある。今は埋立地となって、シーホークホテルや高層マンションが立ち並ぶ近代的な街並みとなっているが、その頃は家から続く松林を抜けると、静かで美しい百道の浜が目の前に広がっていた。まだまだ海も透き通ってきれいな状態で、波はキラキラ。白い細かな砂浜で、空と水平線の交わる広い広い海原と打ち寄せるさざ波の音は心地よく、朝焼け・夕焼けを眺めるのが大好きだった。以来「海がみたい!」気持ちが憧れとなって、胸の中に住み続ける。
山の自然に囲まれた太宰府の緑も好きだが、時々「海に会いたくなる病」が胸の中から湧き上がってくる。蔓延防止が解けたので「福岡県避密の旅・キャンペーン」の残りをどこへ?「じゃあ、海辺に連れて行って!」とご隠居に懇願(はオーバーだが )海鮮を楽しみに【芥屋の大門(福岡県糸島市)】までドライブ。太宰府から都市高速走って、糸島方面へ。コースはご隠居任せ。いつもながらの「助手席の女」の私(単に運転できないだけ)。
都市高速→西九州自動車道へ。まずは【二見ヶ浦】平日にも関わらず若いカップルの姿が多い場所だ。今日の空は一面グレイ、曇り空。海もキラキラ蒼くという訳にはいかない。明日に期待しよう。
岩場で少し遊んで【桜井神社】へ。
カリフォルニアに住む次女は以前から熱い「嵐」フアン。特に櫻井翔くんがごひいき。ご隠居はこのあたりの「嵐」三社巡り(二宮神社などもある)の案内役させられたことがある。東区の宗像大社の海へ続く「光の道」や糸島の嵐?神社巡りは、鬼滅の刃の太宰府の「竈門神社」などとともに好きなグループやタレント「推し」の若い人たちでにぎわっていた。櫻井神社はこのあたりの人達が初詣に行く神社。「ちょっと寄って行こうか」と。古色蒼然とまではいかないが、鄙びた感じの大きな神社で、たたずまいがなかなか良い。私は派手な色などの神社より、こんな感じの方が好きなので、詣で客も2組くらいなので、ゆっくり境内を回って楽しんだ。つつじをはじめ、幾つかの花たちも静かに季節を彩っていた。ゆったりした気分を味わえる神社の雰囲気だった。
八重桜。なんと言う品種だろう。重なった淡いピンクの花びらは下を向いている。真っ盛りでほんとに可愛かった。
→芥屋大門へ
「民宿磯の屋」民宿と言っても4階建てのホテル風外観。もっといかにも民宿という宿を想像していた。部屋は三階。平日を選ぶので客数は少ない。今日も2組だけなので3階には私達だけ。15畳の部屋は海に面している。嬉しい!食事はお刺身やサザエなどは新鮮でさすが!だが、料理的には定番会席という感じ。お値段も一人一泊8千円と安い。避密の旅で料金はすでに払い済み。追加の料理やお酒代などを支払うだけでよい。
小さな漁港(船だまり)の前の宿で、目の前に「芥屋大門観光案内所」がある。海に突き出した堤防には釣り人達の姿。鯵やすずきなどが釣れるらしい。
この猫ちゃん、釣り人のおじさんと同じ格好で、海をのぞき込んでいた。魚が上がってくるのを待っているらしい。いつもおこぼれ頂戴で丸々と太っていた。のどかでユーモラスな風景に思わず笑ってしまう。
夕食の部屋は広々としているが、客は二組だけ。三密の心配全くなし。黄昏の海、久しぶりに眺める海の夕陽は素晴らしかった。空をオレンジ色に染めて丸い夕陽が沈んでいく。この情景を見ているだけで、今度の旅(という程ではないが)の目的は達した気がする。くれなずむ空と海を眺めながら地酒を少し味わう。新鮮な海の幸はやっぱりいいなあ。海の見える景色はいいなあ。充足感たっぷりな宵だった。昔・昔、進むべき道を右に?左に?悩んだりした時、私は一人で浜辺に来た。空を染め水平線に沈む夕日を、潮風の中で眺めながら、涙したりしたこともある(乙女チックと笑われそうだが)自分のことは自分で決める私だったが、結論を出しかねることもあった。
そんなときは浜辺で夕陽を眺めて自問自答したりしたものだった。純粋で多感な青春!今は遠く遥かな彼方のこととなり、良い想い出だけが残っている、不思議なものだ。
翌日は風もなく快晴。陽ざしはもう夏!穏やかな海が広がっている。僅か25分くらいだが「芥屋の大門」巡りの観光船(小さな船)に乗る。「磯の屋さんに泊まってるなら100円引きです」と一人800円が700円に。ささやかだが、なんだか嬉しい。船にはもう一組だけ。4人で出発。真っ青な空、海が輝く。キラキラと。風が心地よい。あっという間に芥屋の大門へ。
この洞窟の中へ小さな船は入れる。エンジンを止めて・・・。水深7メートルまで透き通って。周りの柱状岩石は、TVの『ブラタモリ』で「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」というのだと知った。柱のような岩が並んでいる、それを眺めるだけでも面白い。前にここに入ったのは・・・結婚前の頃だったな、随分久しぶりで来たものだと感慨深い。波が高ければ船は入れない「今日はほんなこと、良か日ですよ」と船長?サン。
『七ツ釜』のように幾つかの洞窟をめぐるのではないで、アッという間に港へと帰ってきたが、潮風と穏やかな海と空、ともすれば日常が切ないことの多い世情なので、ほっとする時間だった。
若い頃海水浴に来ていた松原もなくなりマンションなどが建った。その発展は目を見張るものがある。九大(国立九州大学)の一大キャンバスが糸島に移り、お洒落なお店なども多くなり、「伊都菜彩」や「志摩の四季」などは産地の新鮮野菜や海鮮で、沢山の客がいつも訪れ、糸島野菜などは全国的にも有名になってきた。
帰路「伊都菜彩」に立ち寄り、新鮮なお魚や野菜、お花などを友人へのお土産も、我が家用にも、色々買ってきた。実は一人千円也の買い物券がこの企画にはついているので、それを使う楽しみもあって立ち寄ったのだが、使用できないという。「使えるところありますか?」「近くのドラックストアなら」「えっ」でも仕方がない。ドラッグストアで使いました。苦笑いするしかないですね。
余談:また、やっちゃいました。「福岡県避密の旅」払い済みを利用して行ったので、宿泊料はもう支払いの必要はないのに、うっかり、宿泊代も払ってしまって、家について「はっ」と思い出した。「二重払い」したのです。慌てて電話。銀行口座に戻っては来ましたが。相変わらずなととろサンでした。
でも・・・一泊二日にしては、楽しい旅でした。海ni会えた!海の夕焼けに会えた!