私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 



A Chioce Collection: Music of Purcell’s London
LINN RECORDS CKD 041
演奏:Palladian Ensemble

ヘンリー・パーセル(Henry Purcell, 1659 - 1695)が活躍した当時のロンドンは、植民地搾取によって得た富によって繁栄し、王政復古(1660年から1688年、チャールズII世の即位から名誉革命によってジェームスII世が追放されるまで)の時代に、次第に発展した公開コンサートによって、音楽の享受が大衆化していった時代であった。パーセルは、ジョン・ブロウの教えを受け、1679年にその跡を継いでウェストミンスター・アベイのオルガニストに就任し、同時に鍵盤楽器のための作品、オペラや劇中音楽を作曲して、36歳で死亡するまで、ロンドンの音楽界で中心的な活躍をしていた。
 ここで紹介するCDは、パーセルの作品ではなく、彼が活躍していた当時の、繁栄するロンドンの音楽界を象徴するような作品を紹介するものである。マシュー・ロック(Mathew Locke, 1621/22 - 1677)のブロークン・コンソート(管楽器や弦楽器だけの合奏ではなく、これらを混合した合奏曲)2曲、ニコラ・マッテイス(Nicola Matteis, 1714年頃死亡)のアリア集3曲をはじめ、ジョン・ブロウ(John Blow、1649 - 1706)、ジョン・バニスター(John Banister the Elder, 1624頃 - 1679)、無名の作家によるグラウンドやディヴィジョンといった、肩の凝らない、その多くはアマチュアにも演奏できる作品が収められている。トーマス・バルツァー(Thomas Baltzar, 1630年頃 - 1663)のヴァイオリンと通奏低音のためのディヴィジョン、”John come kiss me now”や作者不詳のリコーダーと通奏低音のためのディヴィジョン、”Old Simon the King”などがその代表的なものである。
 演奏しているパラディアン・アンサンブルは、リコーダーのパメラ・ソービー(Pamela Thorby)、ヴァイオリンのレイチェル・ポッジャー(Rachel Podger)、ヴィオラ・ダ・ガムバのスザンヌ・ハインリヒ(Susanne Heinrich)、テオルボ、ギターのウィリアム・カーター(William Carter)の4人からなる、バロック音楽を専門とするグループである。1992年に結成されて以来、その演奏は高く評価されてきた。パメラ・トービーは、Dソプラノ(sixth flute)、Cソプラノ、Fアルト、ヴォイス・フルート(D管)の4本を使用している。Dソプラノは、イギリスのティム・クランモアの作、あとの3本は、フレッド・モーガンの作である。あとの楽器も復元楽器である。なお、パラディアン・アンサンブルは、2007年にパメラ・トービーが抜けて、パラディアン・トリオとして再出発したそうだ。
 このCDは、17世紀後半の、ロンドンの音楽を概観できる好企画である。

発売元:LINN Records
LINN Recordsは、1972年創立のオーディオ機器メーカーLINN Productsの子会社として1983年に設立されたレーベルである。もともと自社のオーディオ製品のテストに十分に応えられるレコードが無いことに不満を持っていたことから、自らレーベルを持つことになった。その出自から期待されるとおり、音の良さでも定評がある。

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コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (木曽のあばら屋)
2007-12-30 08:35:58
こんにちは。はじめまして。
パラディアン・アンサンブル、パメラ・トービー抜けたのですか、残念です。
このアルバム、"music of Purcell's London"と題しながら、
あえてパーセルを1曲も入れていないのは一種の遊び心でしょうか。
彼らの演奏は、テクニックも見事ですが、暖かみがあって楽しそうで好きです。
 
 
 
コメント、ありがとうございました (ogawa_j)
2007-12-30 11:54:30
パメラ・トービーだけでなく、レイチェル・ポッジャーなど他のメンバーも、ソロ活動や別のアンサンブルにも属するなど、多忙な活動をしていましたので、歩調のそろわない部分もあったのかもしれませんね。
 イギリスの古楽演奏家は、あまり自己主張の強くない、悪く言えば平凡な人たちが多いなかで、このパラディアン・アンサンブルの人たちは、個性的でもあり、そういう人たちだからこそのアンサンブルがあったように思います。個性ある人々が一緒に活動することの難しさなんですかね?
 「木曾のあばら屋さん」のブログは意見しました。幅広い曲、演奏の紹介、ゆっくり読ませていただこうと思っています。
 これからもよろしくお願いします。
 
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