李白の詩「贈汪倫」
李白乗舟将欲行 李白 舟に乗って将に行かんと欲す
忽聞岸上踏歌声 忽ち聞こゆ 岸上 踏歌の声
桃花潭水深千尺 桃花潭の水 深さ千尺
不及汪倫送我情 及ばず 汪倫の我を送るの情に
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今日は午前中、公民館で詩吟をお習いした。李白のこの詩をお習いした。秋の市の文化祭でこの詩を吟じることになった。李白はわたしの好きな詩人である。李白の詩の中でもとりわけこの詩が好きだ。美しい景色が見える。こまやかな情が流れている。
わたしは腹一杯に息を吸って、腹式呼吸をして、腹の底から大声を出して、李白になってこの詩を吟じた。
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この詩を贈られた友人の汪倫も、この詩をもらってさぞかし感極まったことであろう。桃花潭の潭水の深さは深い。深くて青い。青玉の色をしている。底が見えない。しかし、その深さは我が友人の汪倫が、潭水を見上げる岸の上で歌を歌ってわたしを見送っているこの親愛の情の深さには及ばないだろうと言って、李白ははらはらと落涙をした。
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桃花潭(とうかたん)の潭は水の深いところ。桃花潭は固有名詞。近くに桃の畑でもあるのだろうか。陶淵明の「桃花源記」に描かれているような桃源郷かもしれない。
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わたし李白は幸福者である。桃花潭の地を離れていこうとして舟に乗っているわたしに、絶壁の岸の上から足踏みをして歌を歌う別れの曲が届けられた。此処の船着き場の、千尺の潭水を鏡にして友人の顔が映っている。潭水の深さは推し量れないほど深い。わたし李白は幸福者である。その潭水の深さよりも我が友汪倫の、送別の、親愛の友情がもっともっと深いのだから。
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