すつくと狐すつくと狐日に並ぶ 中村草田男
*
「すっく」はオノマトペア、擬音語。575の俳句の中にそれが二回も繰り返し使われている。場所は丘の上。丘にはススキ。ススキは巌のまわりを回っている。そこへ狐が現れて巌に飛び上がって立つ。すっくと立つ。するともう一匹が後を追いかけるようにしてやって来て、またすっくと立つ。二匹は昇ってきた朝日の高さに並ぶ。背後の朝日が狐の背丈を超えて上がってくる。作者はどの位置に身を潜めてこれを凝視していたのだろう。大向こうには瀬戸内海の海の青が見えてくる。ぽんぽん船のぽんぽんが聞こえてくる。575の俳句は仕掛け花火だ。大空に打ち上がってそこで咲き誇るさまざまな情景。打ち上がった俳句の情景を見ているのは読者である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます