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わたしはこの生涯で法華経に出遭っている。それを有り難がっている男だ。法華経はお釈迦様の説法の経典である。だから、この男は、お釈迦様の教えが聞けた男だということになる。なに、ちっとも分かってはいないのである。仏の智慧が頷けるような素質は皆無である。だからただ「出遭った」というだけである。出遭いをよろこんでいるというだけである。早食い競争みたいにして口に詰め込んでみたが、不消化もいいところ。ちんぷんかんぷんなのである。これから万年億年そうやって口中に含んでいれば、栄養分が滲みだして来るに決まっていると高を括っているような、そういう不届き者なのである。
不届き者の仰ぐ大空と背振山脈と八天山と巨岩と滝と、見初める沢蟹。それがすべてこの不届き者には勿体もないのである。
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