ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第17次支援活動<東松島市・陸前高田市>(その12)

2013-11-30 13:54:13 | 能楽の心と癒しプロジェクト
この日は陸前高田市の「産業まつり」が第一中学校の校庭にて開かれていました。じつは今回の活動はこのイベントに出演するのが唯一の目標でありました。先日「奇跡の一本松」の前で能『羽衣』を奉納させて頂きましたが、これからは市民に能について親しんで頂き、今後の活動に繋げていきたい、というJIN'S PROJECTさんの要望に沿う形で ぬえたちプロジェクトが協力させて頂きました。もとより陸前高田市は震災の年の暮れ頃に視察に訪れて以来、ご縁がなくてまったく活動の実績がありませんでしたので、これは私どもプロジェクトにとっても願ってもない計画でした。

「産業まつり」は、広い会場に所狭しとテントが張られて、その下にいろんなお店がひきめきあって、じつに賑やかでした。イベント会場はステージ・トラックです。ああ、去年の夏に石巻市・雄勝の花火大会イベントに出演した時以来だな。あのときはステージへ上る階段もなくて、ビールケースをどんっ!と置いて、よっこらしょとケースを踏み台にしてステージに上ったっけ。今回はちゃあんとステージ脇に、パレット(フォークリフトで荷物を運ぶための木製の台)を積み重ねたものとはいえ、ちゃんと階段がついていました! よしっ、今回は装束を着たままお客さんにお尻を向けて「よっこらしょ」とステージに上らなくていいんだ。

午前10時前には会場に到着していた ぬえらは、「産業まつり」の開会式から見ることができました。市長さんや実行委員長さんの挨拶、テープカットなどの一連の行事が進行して、さて ぬえたちは上演の準備を進めました。控室はテントのほんの小さなスペースのみ。。これは仕方のないことですけれど、装束が土ぼこりで汚れることがないよう、細心の注意を払いながら準備をするのは、狭いスペースでは本当に大変です。しかもこの日は控室に陸前高田の ゆるキャラ「たかたのゆめちゃん」まで一緒だったもんだから、ほんの3畳少々のスペースに4人がひしめき合い、そのうえ装束やらキャラクターの着ぐるみやら荷物まで。。譲り合いながらなんとか準備を進めました。



大船渡市出身の歌手 濱守栄子さんも登場、復興ソングのひとつである『国道45号線』を歌うのを聞いて、これは ぬえの心にも響きました。国道45号線は三陸の沿岸部に沿って仙台から青森までをずっと500kmに渡り南北に走る幹線道路のことです。石巻~志津川~歌津~大谷~階上~気仙沼~陸前高田~大船渡~釜石。。ぬえたちプロジェクトが過去に活動した街はすべてこの国道によって縫い繋がれて結ばれています。すべての被災地を結んでいることからも分かるように、震災時には大変なダメージを受けました。この国道に平行して南北を貫く道路は60kmも内陸にあって一関や花巻、盛岡などの都市を結ぶ国道4号線と東北自動車道しかなく、震災時はこの45号線が寸断されたために陸の孤島となってしまった街がいくつもあったのです。45号線は、そのようなこの地域の幹線道路であると同時に沿岸の市民にとって身近だったです。濱守栄子さんの『国道45号線』は、そんなこの道路にまつわる思い出を綴った歌でした。

それから高田のゆるキャラ「たかたのゆめちゃん」も登場。控室では中の人も(あ、これ言っちゃいけない? えと、ゆめちゃんも。。そうです、ゆめちゃんご本人も)ちとお疲れ気味ではありましたが~。(^◇^;)

ぬえたちの出番となり、ステージトラックの上で能『羽衣』を上演させて頂きました。





そのステージ。。なぜか目で確認したときには気づかなかった段差があって、前に出ていくたびにこの段差に足先が触れて「!!」と思います。落ちるんじゃないか。。? と思って。。面の眼の穴から見ている限り、それから舞っている広さの感覚からいってもステージの先までまだ数十cmはあるはずなのですが。でも万が一ステージから落ちるような事があったら。。と思うと、その恐怖心との戦いになります。どうやら段差は数cmの「溝」らしい、と舞いながら考えて、途中からは「ままよっ!」とその段差を踏み越えてみました。。落ちなかった。。(^_^;)

終演後、お手伝い頂いたみなさんと記念撮影。



それから着替えて、ようやく「産業まつり」のブースを見て回りました!