ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第17次支援活動<東松島市・陸前高田市>(その4)

2013-11-02 00:10:19 | 能楽の心と癒しプロジェクト
定刻16:30より「能とピアノの夕べ」公演開始。ホントはピアノを弾いて頂いている30分後に日没時刻を迎えて、次第に暮れてゆく空の下で公演は進行するつもりだったのですが。。外は大雨。くやしい~

でも集会所の電灯を消して持ち込みのスポットライトを灯すと、不思議となかなか良い雰囲気になりました。40個灯したLEDキャンドルも なかなかのもの。。ほとんど見えないか。それでも大勢の住民さんが雨の中集まってくださいまして、御子柴さんが司会を兼ねてピアノ演奏を始めました。

ここ東松島市の「グリーンタウンやもと」住宅は250世帯の住民さんが暮らす大きな仮設住宅で、その中に今回の会場となった「ひまわり集会所」はあります。面白いのは仮設住宅の自治会のほかに、この集会所にもまた「ひまわり自治会」があること。どういうわけで集会所に自治会組織があるのか、よくわかりませんのですが、ともかくこの集会所、とっても活気がありました。ぬえたちが到着したときも住民さんたちが盛んに作業をしておられ、やがて御子柴さんと内野さんが開演前のリハーサルを始めると、早速作業の手を止めて歓声を上げられました。

今回は東松島市のサポートセンターよりこちらの仮設を紹介して頂きましたため、受け入れは市ということになっていまして、担当者さまと自治会長さんのご挨拶を頂いての開演となり、雰囲気を大切にしたいため、司会の御子柴さんに我々の活動の内容の説明などを少々アナウンスして頂いたほかは、とくに能は無言で上演するようにしました。

控室としてご用意頂いた部屋は子どもの遊び場として集会所に併設された建物で、まるでオモチャの家のようなメルヘンチックな外観です。本来ならばこの「こどものみんなの家」をバックに屋外で上演し、この家をライトアップする予定だったのですが。。それよりも、この控室と上演会場の集会所との間が、併設されているとはいえ2mほど離れていて、渡り廊下で繋げられています。上にはなんとかビニールシートが掛けられていたのですが、この大雨でどうしても雨が漏る。。とくに面は水に弱いので かなり心配したのですが、登場の直前に渡り廊下を拭いて頂き、そこを通るときに傘をさしかけてもらって、無事 上演会場に出ることができました。

。。このとき。姿を現した ぬえ。。『羽衣』の天女の姿を見て、最前列に座っていた おばあちゃんがニッコリと、音のしないように指先だけを打ち合わせて拍手してくださったのを見て、ぬえもようやく安心。『羽衣』を舞い終えて、この日は仮設住宅での活動ですけれどもロマンチックなコンサートを行う催しなので、装束の着付け体験コーナーはナシ。引き続いて再び御子柴さんのピアノ演奏になりますが、こちらにはじめて内野さんのフルートも参加します。リハーサルを見ていた ぬえは、この2人のコラボを見て公演の成功を確信しました。いつもはクラシックの曲だけですが、今回は演奏者が2人ということで新しい展開も見せ、ピアソラの曲なども演奏されました。フルートでピアソラ! でもとっても美しい曲でしたね~

ぬえは控室で面と鬘だけをはずして待機、やがて『花は咲く』の演奏となって、その終わる頃を見計らって笛のTさんと一緒に再び登場、用意してあった花束を住民さんの代表に捧げました。ぬえはもちろん、ぬえが登場したときに小さく拍手をくださった、あの おばあちゃんに。

これで終わろう。。としたのですが、思わず住民さんからアンコールの要望が出ました。え~、もちろん ぬえたちに、ではなく、御子柴さんと内野さんへ。「え~、どうしよう」とちょっと困る2人。そりゃそうでしょう、おふたりは東京と茨城と離れて住んでいて、今回は ぬえの所望で初めて顔を合わせて練習して、そしてこの日の上演を迎えたのですから。。

ところが住民さんから「じゃ、ふるさと やってよ」という声が掛かり。。するとお二人はすぐさまそのリクエストに応えて演奏を始めたのでした。んん~~、いくら『ふるさと』だとはいえ、キーも何も決めないで こんなに即座に演奏できるものかしらん??

。。こうして公演は、かなり良いレベルで終えることができ、住民さんにも喜んで頂けたと思います。でもなあ、なんかフルートの内野さん人気に能が負けた、というか。。微妙に「能とピアノの夕べ」、というよりは「フルートとピアノと、そいからちょっと能もね、の夕べ」みたいになったのは気のせいか。。

終演後、大雨の中装束や機材を撤収。集会所では住民さんの宴会が始まるみたいで、お誘いも頂いたのですが、今夜の宿泊地。。80km離れた気仙沼に行かなきゃならんとです! もう全身ずぶ濡れ状態で、でも荷物は濡らさずに出発することができました。(今回は写真撮れませんでした。。)