のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

情人

2009年02月10日 | 日記・エッセイ・コラム

  西洋情人節(チンレンチエ)と書くとなにやら怪しげな印象を受けますが、中国ではバレンタインデーのことです。中国では”恋人”を”情人”と書いたり、”愛人(アイレン)”が夫や妻を呼ぶときの”あなた”や”お前”に当たる言葉で会ったりと、同じ漢字を使っていてもニュアンスは異なります。

 日本人には”恋人”よりも”情人”のほうが一歩踏み込んだ関わりのように感じてしまいますが、七夕も”伝統情人節”と呼ばれる恋人のための記念日の意味を持ちます。中国の伝統行事には艶っぽいものがないので特に目立つように思えます。

 中学生3年生の時、バレンタインデーの朝、下駄箱の中にチョコレートとラブレターが入っていました。早速トイレの中に駆け込み、ラブレターをあけてみると、後輩の女の子からの熱烈なファンレターでした。

 私が卒業することに胸が裂けるほどの悲しみを覚えている、他の人に渡したくないなどと、熱い言葉でつづられていて、”やっぱり俺ってもてたんだ!”放課後、校舎の裏の川原で柔道着を来て待っていてくれと書かれていたので、そりゃもう大喜びで授業が終わるのを待って柔道着に着替えました。

 既に受験勉強で現役引退しているはずの3年生がなぜ部活に顔を出すのか?後輩は怪訝な顔をしましたが「たまには体を動かさないと」と、武道館の裏の北風が吹く寒い川原に出て行きました。

 今にして思うと誰がどう見ても恋人を待つ少年と言うより、決闘相手を待つ柔術家にしか見えないと思いますが、そんなこと気にするような余裕もありません。

 寒風吹きすさぶ中「誰が来るのだろうか?」「どう彼女の事情に答えるべきか?」考えながら夕方まで待っていました。

 この日に限ってソフト部やバレー部などあらゆる部活の女子チームがランニングして通り過ぎていきました。「逢引を見られたらまずいかな?」「みんな部活に熱心だな」と川原にたたずんで眺めていましたが、待ち人は来ませんでした。

 きっと、部活の連中が見ているからだろうと前向きに考えていましたが、後ほど後輩の女子たちにからかわれたことを知りました。つまり彼女らは私に偽のラブレターを書き、私が柔道着を来て寒い川原に立っているのをランニングしながら眺めて喜んでいたわけで、腹が立つより、それに乗ってしまった自分のおろかさが面白かったです。

 体力があるから風邪も引きませんでしたが、受験前に風邪でも引いたらどうすんの?と仕掛け人の一人に言ったら「馬鹿は風邪引かないですよ!」

コメント
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