傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

元空将の緊急提言:日米同盟を漂流させる愚かな日本・・・究極は日米中関係?

2010-05-14 10:03:01 | 沖縄基地

元空将の織田 邦男氏が「JB-Press」に『日米同盟を漂流させる愚かな日本第1次漂流の危機を忘れたのか!~元空将が緊急提言』を寄稿し、「日米同盟なくして日本の安全保障政策は成り立たない。鳩山由紀夫政権の対米姿勢や普天間問題に対する優柔不断とブレで日米同盟は再び漂流し始めたとし、国家の危機そのものである」と鳩山政権への危惧と日米同盟が国益の基幹とし、日米同盟の再構築を提言しています。
当方には、織田邦男氏の提言は、鳩山首相の言動で日米同盟が揺らぎ、漂流し始めたという見解での論考で、当方とは見解の相違はありますが、日米同盟、安全保障、対中国に関しては、国防を携わってきた現場の人間の声として参考になりました。

織田邦夫氏は、冷戦後の90年代は日米関係の最悪の「失われた10年」とし、湾岸戦争で、各国が血と汗を提供する中、日本は総額130億ドルのカネで済ませ、汗も流さず、冷戦最大の受益者と揶揄された日本は、国際社会から「小切手外交」の汚名と侮蔑を受け、米国でも「カネにしか価値観を有しない」と顰蹙(ひんしゅく)を買い、日米同盟は漂流したと。
1992年、選挙に勝利したクリントン大統領がまず手がけたのは「国家経済会議(NEC)」を設置したことだ。目的は冷戦最大の受益者、日独から「平和の配当」を回収することであり、政権最大の経済戦略とし、法と秩序を口実とした恐喝まがいの巨額訴訟で大損害を被った日本企業も多い。

その後、日米同盟の漂流の回復は、自助努力でなく、国際情勢の変化によるところが強く、日本が同盟漂流に危機感を感じて努力したわけではない。幸運以外の何者でもなかったのであると。

織田邦夫氏は、「国家の安全保障に「僥倖」や「幸運」を期待してはならない。安全保障政策に必要なのは徹底したリアリズムの追求である。」とし、日本は自国の弱さを真正面から認識し、徹底してリアリズムを追求する以外に生き残る道はない。
友愛では日本の安全と繁栄は確保できないのだと言及し、「残念ではあるが日米同盟なくして日本の防衛は成り立たない。日本独自で尖閣諸島も日本海も守れない。北朝鮮の核の恫喝にも自力では為す術もない。」と論じています。
日本は核も攻撃力も持たない。にもかかわらず専守防衛という軍事的に見て非常識な政策が取れるのも、日米同盟があるからだ。情報分野もほとんど米国頼りであるとし、日米同盟は不可欠と。

織田邦夫氏は、日本の安全保障の最大の懸念を「中国の軍拡」とし、
"「日中友好を叫ぶのは結構だが、外交には「棍棒を片手に穏やかに語る」というリアリズムを忘れてはならない。友愛では中国の軍拡に対応できないのだ。中国の脅威から日本の安全を確保するには、やはり米国の抑止力と我が国の防衛力強化しかない。」”
と今後の中国を予測するには、中国の本質を見据える必要があると論じています。

中国は、尖閣諸島はもちろんだが、中国は沖縄の日本帰属も認めていないことはあまり知られていない。日本の主張する日中中間線も認めない。沖ノ鳥島も「岩」だと主張し、日本の排他的経済水域を認めない。
それには、力の空白には躊躇なく入り込むのが、力の信奉者の常識である。
力の空白を作らぬよう日米同盟を緊密化させておくことが、今一番必要なことであるが、鳩山政権は稚拙な政策で普天間問題という「パンドラの箱」を開けてしまい、同盟深化どころか新たな「同盟漂流」は既に始まっており、日本にとって安全保障上の深刻な危機を迎えていると論じています。

現在、日本が努力すべき方向については、今年2月、米国国防省が議会提出した2010年QDR(「4年毎の国防計画見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review) にヒントが含まれていると。

QDRは、「米国ほどの強国であっても、1国でできることには限りがある」と率直に述べているように、これからの脅威は米国1国では対処できない。まして米軍だけでは手に余ると2正面戦略の放棄の戦略転換が提起されていると。
米国は冷戦後、一貫して2つの大規模地域紛争を同時に対処できる能力の保有を目標としてきたが、今回のQDRでその2正面戦略は放棄し、中国を「最大の軍事的な潜在的競争国」から、「米中両国は、対立のリスクを管理し、究極的にはリスクを削減するため、合意に至らない事項に対しては開かれた対話のチャネルを維持すべき」といった具合に、将来、米国が中国と「手を結ぶ」可能性もなくはないと。

そして、「中国と事を構えないことを最優先する戦略を米国が採るなら、中国は太平洋に堂々と進出してくるだろう。その時、日米同盟は有名無実と化し、日本の死生存亡に直接の影響が出るのは明らかである。」とし、日本の防衛力強化とともに在日米軍再配置により抑止力を高め、日本が米国と手を携えて中国をヘッジできる方向性が我が国の安全保障政策に求められているのだと

”「中国の台頭に最早単独ではヘッジできない米国が日本に対し強い協力、支援を求めているメッセージなのである。早急に普天間問題の解決を図り、このメッセージに応えることが日本の安全保障に資するのである」”

と、鳩山政権が普天間問題で、日米同盟を漂流させると論じている。

織田邦夫氏の結びの「反米感情は百害あって一利なし」を転載すると、

”「独立国に外国軍隊が長期間駐留するのは異常だ」と言う。俗耳に入りやすい言葉だが、反米感情の単なる理由づけに過ぎない。政策に感情は無用である。感情や観念を捨て、賢明か愚昧かという冷静な選択が大切なのだ。

 外国軍隊駐留の是非は、日本の国益に照らし判断すべきことだ。強い米国が許せない、米国に従属しすぎた、離れたい。こういった反米感情は百害あって一利なしだ。

 「永遠の敵も、永遠の同盟もない。あるのは国益であり、これを追求するのが我々の使命である」と19世紀半ばの英国の首相パーマストン子爵ヘンリー・ジョン・テンプルが言ったように、重要なのは国益なのだ。

 今、日本に求められているのは「親米」でも「反米」でも「嫌米」でもない。日本の国益追求のためにどのように米国を活用するかという「活米」の知恵、「弱者の知恵」が求められているのである。

 2010年QDRの結言には「今米国が直面している課題は急迫している。だが、同時にチャンスでもある」というくだりがある。そのまま日本にも当てはまる言葉だろう。

 日本は天文学的数字の財政赤字を抱えている。今、日本が抑止力強化のために防衛費を2倍、3倍に増やすことは不可能に近い。だとすれば日米同盟の再構築しかない。

 2010年QDRには傷ついた日米同盟再構築のヒントが多く提示されている。2010年QDRをひもとき、政策に反映させ、早急に「同盟漂流」から回復させることが求められているのだ。
」”

と結んでいます。

織田 邦男氏の略歴は、
1974年、防衛大学校卒業、航空自衛隊入隊、F4戦闘機パイロットなどを経て83年、米国の空軍大学へ留学。90年、第301飛行隊長、92年米スタンフォード大学客員研究員、99年第6航空団司令などを経て、2005年空将、2006年航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)、2009年に航空自衛隊退職して現職は三菱重工業航空宇宙事業本部顧問
とあります。

当方は、安全保障、沖縄基地問題も他人事で傍観者でしたが、「日米同盟の真相」の著者の孫崎亮氏の存在を知り、普天間移設に関しては、前政権の現行案は反対者であり、閣内不一致が露見しても鳩山首相の「海外、県外の移設」の固執・「腹案」の公言に期待しましたが、やり方が下手と思いましたね。
5月に入り、「週刊ポスト」のスクープした鳩山首相の「腹案」が知り、鳩山首相の軽言は、全体像の一部であり、ブレていなかったと思いましたね。
沖縄での「勉強して沖縄基地に抑止力がある」発言から、メディアから轟々の批判がありましたが、織田 邦男氏の安全保障の専門家の意見を読めば、軍事的な見地での「抑止力」は簡単な話しではないと思いましたね。

今、問われている「抑止力」とは、日米同盟を絶対視する安全保障の側面だけでなく、日米同盟の深化であり、日米中の友好同盟も一考かなと思いましたね。
逆に、「友愛」の「自立と共生」精神が肝要かと思いますね。
鳩山首相の「海外・県外移転」公言は、普天間移設問題から日米同盟、日米中関係、安全保障を、国民全体に問うことになった功績になりますね。





2 コメント

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Unknown (徳永基二)
2010-05-15 13:34:40
織田氏の見解はよく判るが逆に中国に対して感情的接しており、米国の軍隊を何故日本に対して脅威と思わないのかと逆の視点も成り立つ。
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Unknown (天邪鬼)
2010-05-16 13:07:38
織田氏の見解で重要な要素は・・・

中国と米国の接近という政治的問題を多分、故意に見ぬふりをしている事だろう。
まさに軍人脳だと感じる。

例えば、地域紛争や領土問題が全て『力=軍事の力学』によって発生し、左右されるというかなり固定的な軍人視点に支配されている。

例えば尖閣問題や沖ノ鳥島問題は、現状でのアメリカの態度は『地域紛争で戦争・脅威でない』という認識を軍人脳では見落としがちだ。

政治的に接近した米中では、日米同盟や沖縄駐留米軍があったとしても、尖閣や領土的問題は政治的に中国がアメリカに話を付けてしまうという方向性を経た後でしか進出しないという現実があり(つまりは軍事的力学でなく、政治的力学だけの問題)、それには米軍の存在など言ってしまえば関係ない。

竹島が良い例だろう。

国益を叫ぶのは勝手だが、その担保をアメリカの国益を無視して叫ぶのは、反米・親米側ともに無責任すぎる。

アメリカの国益が、地域紛争レベルで(尖閣・沖ノ鳥島海域問題)日本を中国と戦争・事を構えてまで守る気があるのか?

織田氏の心配を解消する最善の策は・・・
アメリカに尖閣・沖の鳥島海域は日本の固有な領土・領海だと宣言させるだけで事が足りる。

それをせずに軍事的な視点ばかり提供するのはもはや聞き飽きた。
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