傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

原発事故:「海水注入」中断問題で対策本部の実態が露見

2011-05-28 02:45:33 | 民主党(菅政権)

福島第一原発事故で海水注入が55分間中断した問題は、東電が「吉田所長の独断で注水を継続し、中断はなかった」と訂正を発表。
この度の海水注入中断問題は、現場と対策本部が遊離、組織と組織責任者の責任のあり方、組織責任者の資質、政府発表の信憑性、政府と私企業の関係、実専門家の不在、現地対策本部の機能不全など潜在している諸々の問題を顕在化させました。

海水注入の中断問題は、21日、政府・東電統合対策室が、福島第一原子力発電所1号機で3月12日に午後7時4分に始めた原子炉への海水注入を、官邸にいた東電幹部から、経済産業省原子力安全・保安院などが原子炉への海水注入について安全性を検討するとの連絡を受けたために東電側で自主的に中断し、同55分の首相指示などを受け、東電は午後8時20分、海水注入を再開。同45分に再臨界を防ぐホウ酸も加えたと発表が発端です。
(東電は、12日の午後3時20分に、保安院・官邸には、海水注入の事前報告(FAX)し、午後6時頃に、首相が注入の指示を出したと思えるメモが存在)

報道では、 吉田所長の独断は現場の臨機応変な判断で結果的に良かったが、指揮命令のルールを無視したのは事実であり、東電は、2ヶ月以上も組織ぐるみで隠し、国会で採り上げられても沈黙した隠蔽体質を批判の論調ですね。

産経新聞は、吉田所長の独断を好意的に報道していますね。
産経新聞の記事『政府発表の信頼に傷 海水問題から見える「大きな溝」』で、

”「混乱が生じているにもかかわらず、官邸には東電の発表を歓迎するムードがある。「(現場判断で注水を続けたことは)問題ない。吉田さんは信用できる人。吉田さんなら(注水継続も)さもありなんだ」

 政府高官は26日夕、吉田氏を称賛する形で幕引きを図った。統合対策室の発表訂正は政府の失点となるはずだが「結果オーライ」とむしろ満足げだ
。」”

と、吉田所長の独断を好意的に書き、

”「ただ、一件落着にはほど遠い。これだと事故当初に官邸サイドがしきりに流した「『原子炉が使い物にならなくなる』と抵抗する東電に、首相が海水注入を促した」というストーリーが完全に破綻する。

 首相の言動が海水注入のブレーキになったという疑念自体も晴れていない。
この日の東電の記者会見でも、武藤栄副社長は首相の言動が東電側に中止圧力となったと明言する。
「(東電の)官邸派遣者が『首相が判断するという感じがある』という空気を伝えてきた」
「(午後7時25分頃)首相の了解を得て、ご理解いただけるまで中止しようと合意した」

 さらに武藤氏は、首相の懸念が的外れだったことも示唆する。「(真水から)海水への切り替えで再臨界になる可能性が増えることは全くない」
「首相に海水注入が伝わり『横やり』が入ったのでは」「首相が一人で騒いだのでは」という記者団の質問には「そのようなことは認識していない」とかわした武藤氏だったが、政府と東電との間で意思疎通が欠けているのは確かだ。

 統合対策室の発表はどこまで信用できるのか。現場はなお、多くのことで沈黙を守っているのではないのか。情報が不完全なまま事故対応を続けるしかないのだろうか
。」”

と、菅首相の「海水注入による再臨界の可能性」の浅智恵が中断の騒ぎの主因と書いていますね。

当方は、この度の吉田所長の独断は、現場の英断(現場力)であったが、常識的には、政府・東電統合対策室が海水注入中断を発表する前に、吉田所長に発表内容を事前確認し、吉田所長が異議がなければ吉田所長は指揮命令のルールを無視したことの批判を甘受せざるをえず、吉田所長が事実を開示すれば、中断を発表する必要性はなく、発表するにしても、東電側は海水注入を事前報告し、海水注入を開始した後に、官邸で海水注入が再臨界の可能性を問題視されたが、現場は、菅首相の海水注入の命令以前から海水(試験)注入しており、官邸の指示で、再臨界を抑制するホウ酸を投入したと発表すれば良かったと思いましたね。
マアー、結果論ですが、中断騒ぎで、吉田所長が現場人間であることが実証され、官邸のお粗末さと対策本部と現場との遊離が露見したのは事実ですね。

吉田昌郎所長の人物像については、産経新聞の記事『「本店に盾突く困ったやつ」 福島第1原発の吉田所長』で、
”「第1原発を視察した独立総合研究所の青山繁晴社長(58)は東電社員から「自信過剰」「本店に盾突く困ったやつ」との評価を聞いたが、「あの官僚主義から抜けきれない東電にあって、気骨のある人物。現場を知らない本店に口答えをするのは責任感の表れだ」と話す。

 青山氏が「余震で津波が押し寄せた場合どうなるのか」と問うと「致命的だ」と包み隠さず答える誠実さを持ち、堤防設置などの対策をすぐに打ち出すスピード感もあったという。

 元同僚は「発電所のことは自分が一番知っているという自負があるのだろう。それがときには頑固に見える」。東電幹部は「大変なご迷惑をかけたことに違いはないが、事故が今の状況で済んでいるのは吉田の存在も大きい」とかばった
。」”
と報道しています。

当方は、本ブログ「原発事故:現場所長「やってられねえっ!」と現場反乱・・・菅首相の防衛省偏重が遠因」で、
”「「週刊文春」(4月21日号)の記事『「福島第一原発」の反乱』で、”【「やってられねえッ!」所長 東電本社幹部を怒鳴りつけた】”と東電本社、政府がひた隠す対策統合本部へ現場を担う所長の”反乱”が起きていたと報道。
当方は、原発事故の現場作業は「事件は現場で起きている」ドラマを連想したが、現場作業と対策本部とも一体感の無さの証ですね
。」”

”「吉田所長の資質については、評価できませんが、過酷な環境下で、東電・協力会社・下請け会社らの数百名を沈静化作業に統率しており、現場ノウハウに精通し、人望も厚いのでしょうね。
吉田所長とすれば、「現場は任せろ」という自負もあるのでしょうね
。」”
と書きました。

また、本ブログ「原発事故:青山繁晴氏の現場取材・・・臨場感・現実感あり」で、青山繁晴氏が吉田所長の『もうやってられねえよ』の部分について、
”「1つは、その、現場も見ないで、机の上で考えてごちゃごちゃ言ってくんなというのが1つなんです。
そんなに言うならなぜ現場に来ないんだと
、いうことがあって、だから一番最初に、ようこそこんな最前線までおいで下さいましたってことをですね、非常に柔らかい言い方ですけど、何度も何度も思わず、吉田所長の口からついて出たということだと思うんですね。

それから、吉田所長は非常に冷静な話しぶりで、あの、もう1つ指摘なさったことがあってね、
それは、何と皆さん信じがたいんですが、この非常時にあってなお、その、普段の規制を保安院がかけてきて、で、それに官邸も乗っかり、そして東電の本店も乗っかってるんじゃないかということをですね、・・・・・・・
」”
と語っていました。

青山繁晴氏の現地視察については、その後、TVが取り上げ,「フラッシュ」(5.24)の記事『政府が圧力「公開するな!」』で、青山繁晴氏のレポートに副大臣から「圧力電話」がかかってき、青山繁晴氏が心配になって吉田所長に電話し、「お困りですか」と聞いたら吉田所長は、『まったく問題はありません。私は東電本店と立場が違うんです。だからいいんですよ』であったと書いています。

面白いのは、21日に、政府・東電統合対策室が海水中断を発表し、訂正発表も、東電の武藤栄副社長が行ったが、武藤副社長は地震当日の11日の午後6時半に、現地に着き、福島第一原発から5キロ離れた緊急時の対応拠点「オフサイトセンター」で、14日の15時間まで指揮をとったことになっており、中断騒ぎの12日の午前中には、福島第一原発の免震棟で現地視察の菅首相の説明役ですね。
中断騒ぎは、現地側の責任者は武藤栄副社長だったのでしょうね
武藤副社長は東京からの連絡を受け中断を了解したが、原発現場の吉田所長は、武藤副社長の中断命令を無視(聞いた振り)したのでしょうね。

ブログ「日々坦々」様が紹介していたブログ「院長の独り言」様のエントリー『海水注入中止問題(一番悪いのは誰か)』は、東電の体質を体験していなければ書けない内容ですね。
「院長の独り言」様の言われる

”「原子力安全委員会の斑目氏が、何もわかっていないことは、東電上層部はわかっているはず。(もう、皆様もご存じのことでしょう)この人の助言は、電力会社は鼻から相手にしていないはずです」”

”「吉田所長は、保修部門出身で、理屈はわかっていないが、現場のことがよくわかっている。
武藤副社長は、技術部門出身で、理屈はわかっているが、現場のことがわかっていない
。」”
が、現実ですね。

また、報道機関は、「官邸が」「菅首相が」「東電が」という語句で報道しているが、本ブログで、
”「原子力災害対策特別措置法は官邸に対策本部を置くと同時に、現場に近いロケーションに「現地対策本部」をおくことと、その現地対策本部長には広範にわたって首相(本部長)の権限を委譲できるように規定していることと、広報は対策本部主導で行うとしていることです。」”
と書きました。
措置法では、現地対策本部が設置することになり、現地対策本部長が事故現場を仕切ることになっており、現実は、現地対策本部が機能不全だったということなのでしょう。
もし、現地対策本部が機能していれば、昨日、報道されている非公表の原発周辺の放射線量の測定値などは掴んでいたでしょうね。

当方は、事故当初から、事故の沈静化には、現場作業体制の整備と外部電源の確保が先決で、火急事案に忙殺されている現場を後方支援が対策本部の守備範囲で責務という考えでブログに書いてきました。
事故現場は、連絡手段のPHSが不通で、免震棟からの連絡手段は、人から人へ声のリレーで行っていたのであり、過酷な現場の状況を想像できない官邸(対策本部)の安直な作業指示には、現場は「やっていれねぇー」という思いがあるでしょうね。

海水注入中断問題は、現場と対策本部の遊離であり、「事故は対策本部で起きてるんじゃない。現場で起きているんだ!」そのものですね。
作業環境を良化させなければ、現場作業に従事できる作業員不足が深刻な事態になり、工程表など「絵に書いた餅」になるのは確実ですね。




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