福島第一原子力発電所の爆発・放射線汚染事故における保安院・東電の会見が悲壮感・緊迫感がないのは、現場の臨場感の絵(映像)も声(現場責任者の肉声)がないからですね。
不測の事故には、常識的な手段では解決せず、原子力技術者が現場を解決できないのに保安院・東電の会見は、事故対策への技術支援に特化すべきで、主体者の東電側は現場作業を重点的にプレスすべきと思いますね。
当方が、事故当初から、現場作業体制と外部電源の確保に関心がありました。
東電の最初の事故に関するプレスは、事故当日11日の【午後3時30分】「現在の設備への影響」が第一報で、翌日12日の【5時10分現在】では、移動式モニタリングポストで発電所周辺の放射能は、通常と同じ値であり、現時点で周辺環境への影響はないとしたが、同日【午前6時現在】では、
※福島第一原子力発電所の半径3km以内の地域住民に対して、国より避難指示が出されております。
※モニタリングカーにより発電所構内(屋外)の放射性物質(ヨウ素等)の測定の値が通常値より上昇しております。また、モニタリングポスト1カ所での測定値も通常値より上昇しております。
引き続き、排気筒や放水口等からの放射性物質の放出の可能性について詳細に監視してまいります。
※原子炉隔離時冷却系などによる所定の注水がなされていることが確認できない号機については、安全に万全を期すため、原子炉格納容器内の圧力を降下させる措置を行うことといたしました。
と、1時間後に、異常を発表しています。
東電側は、事故の全貌を把握しておらず、危険性を軽視していました。
そして、3月15日に、「福島第一原子力発電所の職員の移動について」で、
”「本日、午前6時14分頃、福島第一原子力発電所2号機の圧力抑制室付近で異音が発生するとともに、同室内の圧力が低下したことから、同室で何らかの異常が発生した可能性があると判断しました。
今後とも、原子炉圧力容器への注水作業を全力で継続してまいりますが、同作業に直接関わりのない協力企業作業員および当社職員を一時的に同発電所の安全な場所などへ移動開始しました。
現在、福島第一原子力発電所では、残りの人員において、安全の確保に向け、全力を尽くしております。・・・・・。」”
と発表。
15日までには、事故が深刻な状況になったが、事故対策に要員が補充されたか疑問ですね。
3月17日に、柏崎刈羽原子力発電所から支援・協力で、柏崎刈羽原子力発電所の普及作業を一部見合わせを発表し、
3月18日に、「福島市への当社副社長およびJヴィレッジへの常務の駐在について」で、
3月22日からJヴィレッジ(福島県楢葉町にあるナショナルトレーニングセンター )に、立地地域をはじめ県民の皆さま方の声をお伺いするなどの活動を総括に小森明生・常務取締役を、事態の拡大防止および一日も早い設備の安全性の確保に向け、福島第一、第二原子力発電所を総括に皷紀男・取締役副社長を常駐とプレス。
18日になり、東電の役員クラスが、現場責任者に指名されたということですね。
東電による「外部電源」関連については、3月17日の【午前1時現在】で、”「3月18日、外部送電線から予備電源変電設備までの受電を完了。現在、当該設備から建屋側へのケーブルの敷設中」”と発表のみ。
保安院による「外部電源」関連の発表については、
3月17日(7時30分現在)で、
”「・東北電力の送電線から受電するケーブルを敷設予定。(17日7:30)」”
3月17日(17時30分現在) で、
”「・東北電力の送電線から受電するケーブルを敷設。放水作業後に2号機へ接続予定(17日17:30)。
・6号機の非常用D/G(1台)は運転可能。これにより5,6号機に電力供給中。MUWC(復水補給水系)を用いて使用済燃料プールへ注水をしている。原子炉圧力容器には外部電源の復旧を待って注水を予定。」”
3月18日(6時30分現在)
”「【電源復旧】
・1から4号外部電源の復旧等に係る作業内容(東北電力(株)送電系統からの受電、自社変電所よりルート変更を介しての受電)を確認中(18日 06:30現在)」”
3月18日(15時00分現在)
”「【電源復旧】
・各号機への外部電源について検討開始。(18日 23:00現在)
[1,2号機]
3/19までに外部電源を確保すべく配電盤、ケーブル布設・接続工事を予定。
[2号機]
外部送電線から予備電源変電設備までの受電を完了し、そこから負荷側へのケーブル敷設を実施中。(18日 22:00現在)
[3,4,5,6号機]
3/20までに外部電源を確保すべく配電盤、ケーブル布設・接続工事」”
と報道。
保安院の報道では、外部電源については、3月17日からですね。
今回、原発事故を深刻化させたのは、外部電源の確保を軽視し、火急的な事柄のみに注力したことです。
当方は、3月15日の本ブログ「東日本大震災:原子力発電の爆発・放射線漏洩(所感)」で、何故、外部安定電源をも最優先で確保しなかったか疑問とし、
”「現場の責任者にとっては、優先順位は核分裂を抑えることと放射線漏洩はさせないと判断すれば、解決すべき問題別に担当責任者を任用し、外部電源を確保に非常手段を講じたと思いますね。」”
と書き、現場作業は、原発技術者では解決できないのであり、現場作業を技術的サポートするだけであり、現場責任者が与えられた人的資源で非常手段(現場の智恵)で復旧作業するのであるが、何をするにも電源が不可欠なのに、東電・保安院は、現場作業に不可欠な外部電源の確保が後手後手になっているのは現場知らず無能としか思えないのです。
非常電源が使用不可能を把握した時点で、火急的な対処を現場に任せ、外部電源の確保、外部支援は東電本社・保安院の責務です。
特に、東電のトップは、想定外の事故(冗談じゃないが)を軽視し、現場体制を当時の作業部隊だけに委ねた判断は、事故を深刻させた主犯です。
多分、現場からの悲痛な声で、外部電源の確保に着手したのでしょうね。
放射能の危険性があり、照明も不十分な環境で、外部電源の接続作業に従事している作業員には、頭が下がります。
船頭の多い体制で、現場に余計な負担をかけさせ、馬鹿なトップのおかげで現場作業員は苦労しており、メディアは保安院の説明を報道しているだけで、事故現場を命賭けでの取材活動もせず、臨場感のない報道では、現場作業員は浮かばれないですね。
外電が50名の命賭けの現場作業員を賞賛しているという報道は、50名に、日本の国難を賭けるのかという苦言ですね。
昨日から、報道は、外部電源の確保、メーカーの技術者支援らを積極的に取り上げていますが、報道機関は原発の専門家の意見のみ重視し、現場作業を軽視してきた証です。
現場には、技術者と異なる現場のノウハウがあるのです。
「追記」
当方が事故現場作業を最重点とし、現場作業体制と外部電源の確保に関心があり、現場作業の後方支援体制と二次電源は限界であり、外部電源の確保は後方の責務とし、保安院・東電本社を批判してきました。
石田慈宏氏が言論プラットフォーム「アゴラ」に寄稿の『デスマーチの責任 - 石水氏の責任論への批判』の意見は同感ですね。
石田慈宏氏の
”「想定外のことが起きたら、無関係な人間が出張るのではなく、現場に任せて、逆に後方から使えそうなリソース情報を提供したり、バックアップ要員をおくりこんだり、指揮権も大幅に委譲するしかないでしょう。
想定外のことが起こったら、現場をしらない経営者や管理者、コンサルなんて、糞の役にもたたないと知るべきです。」”
意見は同感しますね。
現場責任者に原子力発電炉を廃炉(廃棄物)にする権限委譲し、現場責任者は燃料棒の余熱を止める徐熱作業に手段を選ばないことですね。