傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

原発事故:海水注入の中断・・・対策本部の機能不全

2011-05-23 05:26:04 | 社会

福島第一原発事故で海水注入が55分間中断した問題で、諸々と報道され、政府は沈静化に躍起ですが、対策本部が機能不全だったということです。

毎日新聞の記事『福島第1原発:海水注入と中断は東電の判断 官邸は知らず』では、

”「炉心溶融を起こした東京電力福島第1原発1号機で3月12日夜、炉心を冷やすために始めた海水注入が55分間中断した問題で、政府・東京電力統合対策室は21日の会見で経緯を説明した。
12日午後7時過ぎに注入を始めたのも中断したのも東電の判断によるもので、その事実を官邸は最近まで知らなかったとした。
中断が冷却作業に与えた影響について経済産業省原子力安全・保安院は「現時点では分からない」としている。

 説明によると、海水注入は12日午後7時4分、発電所長らの判断で始まった。前後して、官邸に詰めていた東電の武黒一郎フェローが現地と連絡を取り、官邸で核燃料の再臨界の可能性について検討中であることを伝えた。現地は「政府の判断を待つ」として同7時25分に注水を中断。その30分後、菅直人首相の注水指示が出たのを受け、同8時20分に注水が再開された

 官邸では午後6時ごろから海水注入の検討を始め、内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長の指摘に基づき、再臨界を防ぐホウ酸を投入するなど防止策を協議していた。その間に東電が海水注入を始めたことは官邸には伝わっていなかったという。ホウ酸投入は同8時45分に始まった。

 細野豪志首相補佐官は会見で「当時は現地と連絡を取るのにも時間がかかった。政府内では、午後7時半ごろまでは注水は困難という前提で議論しており、7時4分に海水注入が行われていたことも後日知った」と強調した。

 政府の原子力災害対策本部の資料で、午後6時に首相が「真水での処理をあきらめ海水を使え」と指示したとの記述があることについても「正確ではない」と否定。「午後6時の時点では『(海江田万里)経済産業相が東電に海水注入の準備を進めるよう指示した』というのが事実だ」と釈明した。

 1号機では12日早朝には核燃料の大半が溶融、同日午後3時36分には水素爆発が発生した。原子炉を海水で冷やすという決断がどのような経緯でなされ、事態の悪化にどう影響したかは、今後の検証の焦点になるとみられる
。」”

と、政府は、過去に公表した政府資料に「午後6時の首相指示」との記載があることについては「『海江田万里経済産業相が東電に海水注入準備を進めるよう指示した』と記述するのが正確だった」と訂正し説明と報道。

その後、班目春樹・原子力安全委員長から発言内容にクレームがつき、政府は、班目氏が「再臨界の可能性はゼロではない」という趣旨の発言をしたことに更に訂正を発表

当方は、事故当初から、事故の沈静化には、現場体制の整備と外部電源の確保が先決で、経験的に現場作業の環境良化が不可欠と思っていました。

事故当初の事故現場の状況については、朝日新聞の3月18日の記事『「立ち去るわけにはいかない」東電社員、放射線との闘い』で、
”「ポンプ設備や最後の頼みの綱である緊急炉心冷却システム(ECCS)を起動しなければと、社員の自家用車のバッテリーや屋台の小型発電機までかき集めた。それでもシステムは回復しなかった。「外からの電力が断たれたのが一番悔しい」とも言った。

 現場では数百人の社員や作業員が交代で作業にあたった。だが、余震が襲うたび、せっかく修理したところが再び壊れていったという。

 余震で眠れず、備蓄のクッキーやレトルトの五目ごはんはのどを通らない。精神的に追いつめられた。

 放射線をどれだけ浴びたのか。このまま爆発するのか。多くの人たちに放射線を浴びせる事態を招くのか。

 東電の記者会見では、歯切れの悪い問答が繰り返されていた。それを知った社員は「中のことを、外の人は知らないんだ」と思った。「会社には、もうあきらめられているのか」とも。だが同時に「避難している住民が戻ってこられるようになるまで、ここを出てはいけない」と思っていたという
。」”
と、事故現場は、外部電源が喪失により悪戦苦闘を報道していました。

また、保安院も苛酷な現場環境について、産経新聞が3月28日の記事『東電「決死隊」1日2食の劣悪環境 一時は水も1・5リットルのみ』で、3月22日~26日に、福島第1原発を視察した原子力安全・保安院の横田一磨統括原子力保安検査官の会見内容として、
”「さらに、現地は基地局の倒壊などで、衛星回線を除き、固定、携帯電話ともつながらない状況。「作業員らは家族との連絡手段も断たれている」(同)。トイレの水は確保されているが、「手洗いに水が使えず、洗浄用アルコールを用いている」(同)という。

 こうした環境の中、作業員からは愚痴などが聞かれるものの、作業の拒否などには至っていないという。

 ただ、発電所内はテレビを全局見ることができ、24日に3人が被曝した事故のニュースでは、現場の放射線量の高さに衝撃を受ける作業員も多かったという。

 横田氏は自身が5日間の現地確認中に受けた放射線量は計883マイクロシーベルトだったとし、胸部レントゲン約15回分の放射線量にあたる。
 横田氏は「福島第2原発の作業員を第1に投入し、交代を促す」など、第1原発の作業員の過労や、被曝防止の対応が必要との認識を強調した
。」”
と、事故現場と外部との通信手段が衛星回線のみと報道していました。

当方に言わせれば、事故後、2ヶ月経過し、官邸(対策本部)が海水注入の中断を「指示した」「指示しない」とか問題になるのは、対策本部が現場をコントロールできていなかった機能不全の証ですね。
細野豪志首相補佐官が、先の「SPEEDI」試算データの存在や、海水注入の事実を官邸は知らなかったと説明しても、事故当初、対策本部は、”「(地震発生直後)水素爆発が起きることはだれも想定していなかったと述べ、事前に水素爆発の予測に基づく対応がまったく取られていなかったこと」”と発言をしており、現場から遊離した対策本部は、事故全体像を掌握していなかった証ですね。

事故現場は外部電源の喪失で、暗闇の中で、懐中電灯たよりのバルク開口作業や、緊急炉心冷却システム(ECCS)の起動を試み、そして、消防車を転用して海水注入に悪戦苦闘しており、連絡手段のPHSが不通になり、現場把握であろうが作業指示であろうが、人から人への大声での連絡手段しかない状況下を対策本部(東電本店を含む)が把握されておらず、対策本部が、水素爆発の危険性を想定せずに、「SPEEDI」試算データの公開はパニックになるからと隠蔽し、やれ、海水注入は再臨界の可能性(危険性)がどうのこうの議論しているのは、「船頭が多く、現場は犠牲」「トップが馬鹿だから、現場は苦労」しかないのです。

また、3月12日に、「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表していた保安院の中村幸一郎・審議官を、当日の夜、首相と枝野官房長官によって更迭した噂も、官邸は関与していないということですか??

当方は、政府に問いたい。
「外部電源の確保は、何時から作業着手したのか?」
「現場の通信手段は、何時から良化したのか?」
「対策本部の現場の責任者は、誰だ?」

事故は対策本部で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」


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