郵政社長問題は、重要な問題であり、解散選挙を迎え、メディアは、日々、洪水がごとく報道していますが、食傷気味になりますね。
そういう中で、軽いノリで、面白いのは、ゲンダイ・ネットの記事ですね。
大手新聞社の偏向・局部の記事・社説より、全体像が分かりやすいですね。
① 西川社長が居残り、鳩山大臣がクビになる世も末
結局、日本郵政の西川善文社長を「続投」させ、鳩山邦夫大臣を「更迭」した麻生首相。
しかし、こんな「不正義」が許されるのか。なぜ、疑惑をもたれている西川社長に軍配を上げたのか。
さすがに、自民党からも「国民感情からすると、鳩山大臣の主張の方がすとんと胸に落ちる」(伊吹文明元幹事長)という声が上がっている。
これでまた支持率が下がるのは確実だ。
●小泉一派の脅しに屈した大バカ首相
「時代劇で『御用商人が悪事をはたらいて懐を肥やしている』と家老が殿様に進言したら、『おまえが腹を切れ』と言われたようなものだ」――。
国民新党の長谷川憲正議員が、今回の一件を分かりやすく解説していた。
ホント、その通りだ。麻生首相はクビにする相手を間違えている。
コトの本質は、国民の財産である「かんぽの宿」を、日本郵政が不当に安く売ろうとしたことの是非だ。
2400億円で建設した施設を109億円で売却しようとした。
固定資産税の評価額でも857億円の価値があるものだ。
しかも、売却先は西川社長とも親しく、郵政民営化の推進派だった宮内義彦社長が率いるオリックス不動産である。
誰が考えたって怪しい。
国会議員の有志12人は、西川社長を「特別背任未遂容疑」で東京地検に刑事告発している。
ここまで疑惑がハッキリしたら、所管の鳩山総務大臣が「これだけのことが起きたのだから、西川社長には責任を痛感してもらわなければならない」と、続投を認めないのは当然のことだ。
大マスコミは、日本郵政の「指名委員会」が西川社長の再任を支持したことを重視しているが、指名委員会のメンバーは、西川社長の友人ばかりだ。
しかも、たった2分間(注釈*1)で再任を決めている。
なのに麻生首相は、鳩山大臣を「罷免」し、西川社長を「続投」させたのだから、どうかしている。
「かんぽの宿の売却について、鳩山大臣が西川社長に説明を求めたのは当然のことです。
民営化されたとはいえ、日本郵政は国が100%株を持っている。
一般の民間企業より透明性が求められる。
なのに、麻生首相は問答無用で鳩山大臣を切り捨てた。
あまりにも民意とかけ離れています」(立正大教授・金子勝氏=憲法)
なぜ、麻生首相はこんな理屈に合わないバカなことをしたのか。
郵政民営化を推し進めた小泉・竹中一派の圧力に屈したのは間違いない。
「西川社長をクビにしたら選挙がモメるぞ」と直接、脅されたらしい。
それ以上に、アメリカや財界を敵に回すことを恐れたという。
「日本郵政を完全民営化させ、日本の郵貯、簡保資金を開放させるのは、アメリカや財界の悲願です。
莫大な財産を山分けしてボロ儲けしようとしている。
西川社長は民営化のシンボル。
解任されたら、民営化がどうなるか分からない。
もし、麻生首相が西川社長を解任したら、彼らが黙っていないはず。
麻生首相はそれを恐れたのでしょう」(霞が関事情通)
「正義」が通じず、こんな「不正義」がまかり通るなんて、この国は世も末だ。
(日刊ゲンダイ2009年6月13日掲載)
(注釈*1)
読売新聞の「日本郵政・指名委の議事録、取締役9人再任の理由記載なし」では、「再任を決めた理由は記載されておらず、所要時間は20分で、指名委員会の場で詳細な検討が行われたかどうか不明だ。」と報道しており、「取締役の履歴資料を除くと、A4判1ページ余りで、9行にわたり審議の手続きや結果が記載されている。」と、所管官庁から業務改善命令が出され、ガバナンスが問われている取締役の再選が「20分 9行」で決定したということが、疑念を生じますね。
町田徹氏が「文藝春秋」(2009.07)に寄稿の「民営化は失敗したのか」で、日本郵政は、当初は、5月22日の決算役員会に指名委員会を予定してが、野党の告発の動きを察知し、指名委員会を18日に繰り上げ開催したと記述しています。
野党議員から告発された取締役の再任はマイナスになるので、続投の既成事実つくりに、繰上げ開催したと記述していますね。
②日本郵政「かんぽの宿問題」より深刻な「お粗末経営」
●当初目標利益を800億円下回る
辞任は当然だ、なぜ辞めない? そんな世間の声は、老獪(ろうかい)にはまるで届かない。
日本郵政の西川善文社長(70)。
かんぽ売却問題で対立していた鳩山大臣が12日に辞任して続投はほぼ確実な情勢になっているが、世間が納得すると思ったら大間違いだ。
TBSラジオの調査でも鳩山辞任を「納得できない」とした人が80%もいたし、自民党の加藤紘一元幹事長は「西川続投では問題が再燃するだろう」と話している。
日本郵政が抱える問題は、かんぽの宿売却だけではない。
肝心の業績が思わしくないのだ。
09年3月期の決算は予想をはるかに下回る結果だった。
日本郵政グループは、民営化前に最終利益の目標額を5080億円としていたが、経営環境の悪化などを理由に民営化後に4600億円に下方修正している。
利益水準のハードルを下げたにもかかわらず、結局、09年3月期の最終利益は4227億円で「計画未達」に終わった。
「金融危機の影響は無視できませんが、日本郵政は大赤字だったメガバンクのような言い訳は通用しません。
総資産の約8割を国債で運用していますし、ゆうちょ銀は法律で貸出業務を制限されていますから、融資先の倒産はなく、貸し倒れがほぼ発生しません。
金融危機の影響は限定的です。
業績が思わしくないのは、経営手腕によるところが大きいでしょう」(経済ジャーナリスト)
不祥事も続出だ。
昨秋、12万通にのぼる大量の郵便物の放置が発覚。
白山会を舞台にした郵便不正事件では、グループ社員が逮捕されている。
投信販売でも、半ば強引ともいえる販売方法が一部で問題になった。
日本郵政グループが扱う「ゆうパック」と「ペリカン便」(日本通運)の統合話も難航したままだ。
当初計画では今年4月の統合だったが、10月に延期された。
これほど問題が噴出しているのに、経営トップは責任を取ろうとはしない。
鳩山前大臣が「西川辞任」を貫いたのも当然だ。
西川続投による懸念は、まだある。
竹中平蔵元大臣や米ゴールドマン・サックスと近い関係にあるといわれる西川社長は、米国の意向をスンナリ受け入れかねない。
例えば、米国債の購入だ。
「日本郵政が完全民営化され、さまざまな制約がなくなれば、西川社長は米国債への投資に動く可能性がある。
表向きは運用益の少ない日本国債より、利率の高い米国債に投資したほうが運用成績が上がるというもっともらしい理由を並べるはずです」(ジャーナリストの大山功男氏)
ゆうちょ銀の預金残高は約180兆円。
国民の財産が、米国債に投資され米国を潤すことになる。
米国が日本に迫っているといわれる郵貯マネーの開放。
西川続投を許したら、米国の思うツボだ。
(日刊ゲンダイ2009年6月15日掲載)
(注釈)
日本郵政の経営実態は、「週刊朝日」(6月29日号)、「文藝春秋」(2009.07)の町田徹氏が偽装決算を書いていますね。
それにしても、日本郵政は、昨年9月に公表を公約していた「中期経営計画」が依然して未公表など許されるのか不可解ですね。
鳩山前総務大臣のいう”日本郵政は「不正義」だ”の意味が連想できます。
③ 中川秀直元幹事長 アンタこそ「国民の非常識
日本郵政トップ人事をめぐる攻防で、西川善文社長を全面擁護していた中川秀直元幹事長に冷ややかな目が向けられている。
中川は10日の民放テレビで、「鳩山さんが政治信念を持ってやるなら堂々と内閣を去るべきだ」「麻生内閣も郵政民営化のもとに今日がある。首相が西川氏更迭を決断すれば本気で戦わなければいけない」と麻生首相を恫喝。
翌11日の政治資金パーティーでは、自民党総裁選について「国民の常識で同志とともに『永田町の常識』という『国民の非常識』と戦い抜く。戦闘宣言だ」と表明。「自民党は改革推進政党だ。改革派であるわれわれが出ていくのではなく、改革派でない方々が出ていくべきだ」と、まあ威勢がよかった。
ところが結果はどうだ。
中川の意見を取り入れ、疑惑だらけの西川ではなく鳩山を切った麻生の支持率はガタ落ち。
世論調査で「鳩山更迭を評価しない」が7割となり、“改革派”中川の主張こそが“国民の非常識”だったのだ。
民意をまったく分かっていないKY丸出しだ。
中川が所属する派閥・清和会の中堅は、こう呆れる。
「戦闘宣言だとか何だとか言っても、中川さんはいつも結局ポーズだけで森さん(元首相)に怒られて日和ってきた。オオカミ少年だから今さら誰も信用していないし、誰も付いていかない」
16日、その森から「やっぱりケンカ両成敗にすればよかった」と言われ、ハシゴをはずされている。
バカみたいだ。
中川は小泉の一の子分を気取り「郵政民営化」の旗を掲げていれば国民は付いてくると勘違いしているが、国民は郵政民営化なんてどうでもいい。
一部財界人と政治家の国有財産山分けのあくどさが許せないのだ。
そこが分からないのだから、党内で誰も付いていかないのも当然だろう。
おまけに中川が必死にかばった西川は、鳩山の後任である佐藤勉総務相との会談後、記者団とのやりとりで、「けじめとは辞任も含めてか。うなずかれたということでいいか」と聞かれ、「失礼なことを言うな! 何がうなずいたんだ!」と罵声を浴びせた。
こんな傲慢な男を改革のシンボルと持ち上げる中川。
ますます2人とも孤立するだけだ。
(日刊ゲンダイ2009年6月17日掲載)
(注釈)
記事にある”「中川は小泉の一の子分を気取り「郵政民営化」の旗を掲げていれば国民は付いてくると勘違いしているが、国民は郵政民営化なんてどうでもいい。一部財界人と政治家の国有財産山分けのあくどさが許せないのだ。」”が的を得た表現ですね。
「一部財界人と政治家の国有財産山分けのあくどさが許せないのだ。」については、本ブログでも紹介させてもらった平沼赳夫元経産相の発言記事「麻生首相よ、日本のために西川社長をクビにしなさい」 記事ですね。
④ 「麻生首相よ、日本のために西川社長をクビにしなさい」
大詰めを迎えている日本郵政・西川善文社長の進退問題。麻生首相は11日、早期決着を示唆したが、昨今の報道はどうも論点がズレている。政府が民間企業の人事に介入することの是非が問われているのではない。平沼赳夫元経産相が斬る西川問題の本質――。
●裏に米国の大掛かりなシナリオ
西川問題がここまでこじれた理由について、さまざまな解説がなされている。
「ここで辞めたら、政府の人事介入を認める前例を残すことになる。だから、西川さんは辞めないんだ」
「鳩山大臣が首切りに突っ走っているのは、政治的パフォーマンスだ。次期総裁選への布石である」
などなどだ。しかし、平沼氏はまったく別の見方をする。
「西川さんが辞めないのは、そもそも就任のときから大きなシナリオがあるからでしょう。
そのシナリオの中では西川さんは必要不可欠の人物だ。
だから、辞めるに辞められないのだと思います。
そのシナリオとは、日本の郵貯、簡保資金の開放ですよ。
私が経産大臣をやっていたころから、郵政問題は日米の政府間協議に上っていた。
何度も政府間協議が開かれましたが、その会合には米国の民間保険会社の社長が来ていて驚いたものです。
年次改革要望書でも郵政問題は取り上げられた。
そうしたら、米国では研究よりも人脈づくりに励んでいたのではないかと思われる竹中平蔵さんが郵政民営化を推し進め、その竹中さんや米国のゴールドマン・サックスと強い絆がある西川さんが、前任者の生田正治氏に代わって日本郵政の社長に就任したわけです。
彼が辞任しないのは、裏の大きなシナリオ抜きには語れない。
鳩山大臣も当然、それを知っているから引けないのでしょう」
実際、ここまで問題がこじれているのに、なお、地位にしがみついている西川氏は異様だ。
「西川さんは国民のお金で2400億円もの建築費をかけたかんぽの宿を109億円で売ろうとした。
それも一括。
どう強弁しても説明が出来ない取引だし、常識的にはありえない話です。
鳩山大臣だけでなく国民も疑いの目で西川社長を見ている。
郵政には不正DMの問題もある。
前任者の不祥事であっても、現在のトップが責任を取るのは当たり前。
ふつうの感覚では辞めるはずです」
それなのに、辞めないのは米国を含めた大きな力が働いているとみるべきなのだ。
「麻生首相と私は仲がいいから、彼が迷うのもわかる。
しかし、ここは敢然と西川氏を切るべきだと思います。
経済学者の中谷巌氏も小泉改革を支持した誤りを認めました。
8兆円も国費を投入した長銀を外資に10億円で売ったのが小泉改革です。
誰が見ても、誤りは明らかなのです。
だとしたら、決断し、大ナタを振るった方がいい。
麻生首相も、西川問題の本質、真相はよくお分かりのはずですよ」
さもないと、国を売り続けることになる。
(日刊ゲンダイ2009年6月12日掲載)
麻生首相は、平沼赳夫元経産相を盟友と広言しており、その平沼赳夫元経産相から「西川社長を辞任」の進言ありながら、小泉元総理の恫喝にビビり、逆に、鳩山総務大臣のみを更迭してしまいましたね。
野党から「告発」されている西川社長を切らずに、所管大臣の首を切った麻生首相は、「漫画」ですね。
「漫画」なら「読み物」で、実害が無く、笑って過ごせますが、「実話」ですから、実害(国を売り続けることになる)が出てきており、笑って過ごせず、ここは、郵政民営化路線は再検証しかないですね。