福島原発事故の沈静・復旧に、自衛隊・消防庁の放水による原子炉の徐熱作業がTV放映され話題になっているが、原発事故を深刻化させたのは、外部電源の確保の遅れが主因であり、現場に遠い原子力安全・保安院もその要因の一つです。
自衛隊・消防庁・機動隊の過酷な条件下で放水が賞賛されているが、事故発生から現場作業員が主役なのに影が薄いですね。
当方は、原発事故発生から、事故の沈静化・復旧は現場作業者であり、現場作業体制を注視してきました。
いかなる機器システム事故現場の沈静・復旧作業の良否は、現場責任者の資質によるが、この度の想定外(冗談じゃないが)の事故の場合には、現場対応の機知と使命感が要求され、現場作業を如何に質量でフォローするバックアップ体制の構築が必須でした。
この度の原発の事故を沈静・復旧には、現場責任者の英知と使命感にかかっていると思い、現場で沈静・復旧に従事する作業員(東電、協力会社ら)が過酷な条件下でも使命感をもって取り組みしてもらえれば、危機を脱出できると希望を持っていました。
それには、非常電源は二次電源に過ぎず、外部電源の確保されれば、後は、マニアルに準拠し、点検し、機器交換がしながらでも安全な状態に出来るという希望を持ち、現場体制を注視してきたが、現場に遠い原子力安全・保安院が前面で会見し、メディアも保安院の会見の補充説明のみで、現場および現場作業については何時になっても見えてきませんでした。
本ブログ「原子力発電事故:現場責任者は東電か?保安院か?」”「原子力発電の専門家と事故現場作業の実務家と守備範囲が違うのに、何か原子力発電の専門家が主役になっており、現場作業への障害になっているとしか思えない。」”
と、現場責任者の見解が報道されないのは、保安院をヘッドにした対策組織が問題と思いましたね。
事故発生の早々で、停電で、非常電源も用を成さず、冷却システムがストップし原子炉が深刻化するのは明白で、現場作業員は基地内の消防自動車を代替し海水を注入する機知で時間稼ぎと現場調査に労力を割いてき、停電と人員不足での環境下で作業を継続してきましたが、翌日は1号機が水素爆発し、原子炉はより深刻になり、現場作業はより過酷な環境になったのです。
もう、最悪の事態であり、東電本社側は協力メーカー、協力会社ら総力を挙げた現場体制を増強し、外部電源の確保と内外に沈静化を広報すべきでしたが、経済産業省配下の原子力安全・保安院を前面のままの緊張感・悲壮感のない会見でした。
これは、東電トップの政治的な互恵を鑑みしたのか、原子力安全・保安院が菅首相を利用し権限保持(組織保全)の思惑か分かりませんが、当方にすれば、船頭が多くて現場が犠牲になり、東電トップが馬鹿だから現場が苦労すると思いましたね。
事故発生し、停電で全システムが停止がなった時点で、外部電源の確保が最優先課題であり、これは現場作業の守備範囲でなく、東電本社・保安院の外部支援部門の責務に関わらず、直近の報道によれば、15日から東電側は外部電源の確保へ準備を始めたとあるが、東電・保安院の会見で「外部電源との接続」が話題にしたのは、17日からで、この初期動作の遅れが原発事故を深刻化させた主要因です。
機動隊・自衛隊・消防庁が放射能に汚染された環境での放水作業については敬意を表しますが、11日から事故現場に残り、より過酷な環境で沈静化に黙々と従事する現場作業員の使命感には頭が下がります。
当方が知る限り、現場作業を称賛した最初の報道は、外電であり、産経新聞の16日の記事『【放射能漏れ】自己犠牲50人「最後の防御」 米メディアが原発作業員を絶賛』で、外電は、”「50名の命賭けの現場作業員を絶賛しているが、50名に日本の国難を賭けるのかという苦言」”であり、日本側の現場作業の支援体制への批判です。
当方は、当初から、東電本社、保安院の姿勢を酷評してきましたが、解決できる主役の現場作業員に期待してきましたが、非常事態の国難に関わらず、菅政府・東電トップ、保安院のイイカッコシーとメディアが事故解決の本質が現場にあるのに政府報道を喧伝しているのには、みんなで責任転嫁としか見えないですね。
現場作業員は、社命でもなく、原発事故の沈静・復旧の使命感に自己犠牲で黙々と従事している様子には、敬服します。
現場作業の苦労・作業員の苦悩については、本ブログで紹介した朝日新聞の3月18日の記事『「立ち去るわけにはいかない」東電社員、放射線との闘い』で、現場作業に従事している作業者の苦労した内容は、”「外からの電力が断たれたのが一番悔しい」”と語っているのを紹介し、自分らは現場から逃げれない苦悩を報道していました。
現場の作業員は、被爆許容限度を例外的に上げさせられ、放射能汚染の危険性と戦いながら、黙々と作業しているのです。
原発の沈静化・復旧の目途がついておらず、現場作業員は真面目な内気のタイプが多く、使命感で黙々と取り組みしているのに、現場映像は自衛隊のヘリコプター、消防車から映像が最初というのは、現場作業のサポート部門の怠慢しか思えないですね。
早期に、現場映像を撮影するぐらいは、現場サポート部門の仕事で、現場環境を放水する消防庁に事前連絡すれば放水も効率よく出来たと思いますね。
放射能物質に汚染され、瓦礫が散在の環境で、放水した消防隊長がTV会見で、家族にお詫びと感謝の涙声の弁が放映されたが、東電社員、協力会社の現場作業員については、最近、報道されるようになりましたが、本来なら東電の現場責任者が事故当初に第一声すべきでした。
現場責任者の資質を疑いますね。
多分、まだ、事故を終息できておらず、弁明できる心情ではないのでしょうね。
東電の現場作業員の退避問題で、菅首相が東電に怒鳴り込んだと報道されたが、どっちもどっちです。
読売新聞の記事『政府と東電すれ違い、作業員退避巡り押し問答』で、
”「14日夜、東電の清水正孝社長と枝野官房長官、海江田氏が電話で連絡を取り合った。政府側は「燃料棒露出を受け、東電側が作業員全員の撤退を申し出てきた」としている。これに対し、東電関係者は「一時退避はあっても、撤退ということはありえない」と反論する。
政府側は、作業員が全員退避すれば原発の制御は不可能になると受け止め、「事態を沈静化させることは可能だ」として引き続き作業にあたるよう求めたという。清水社長は15日午前4時過ぎという異例の時間に首相官邸に駆けつけ、首相と対応を話し合った。この点についても、東電関係者は「首相に呼ばれた」とするなど、主張は大きく食い違ったままだ。
社長が引き揚げた約1時間後、今度は首相が東電本店を急きょ訪問した。「撤退などあり得ない。覚悟を決めて下さい。撤退した時は東電は100%潰れる」と部屋の外にまで響き渡る声で幹部に迫った。」”
と、政府と東電とに不信感があると報道。
そして、読売新聞の15日の記事『会議室外まで響きわたった東電しかる菅首相の声』では、
”「テレビで爆発が放映されているのに、官邸には1時間くらい連絡がなかった。一体、どうなっているんだ」
菅首相は15日早朝、東京・内幸町の東電本店に乗り込み、会議に急きょ出席。その場で同社の幹部や社員らに対し、福島第一原発事故への東電の対応について不満をぶつけた。
首相は、「(原発対応は)あなたたちしかいないでしょう。(原発からの)撤退などあり得ない。覚悟を決めてください。撤退したときは東電は100%潰れる」とまくし立てた。首相の叱責する声は、会議室の外まで響き渡った。
地震や原発事故対策で陣頭指揮に当たる首相の異例の東電早朝訪問と、激しい叱責に、政府内からも、「冷静な対応を国民に呼びかける首相が冷静になっていないのではないか」「現場が萎縮すれば逆効果だ」と疑問視する声が出ている。」”
と、東電社長が事情説明に訪問の1時間後に、東電に乗り込み、東電を恫喝しております。
多分、東電の現場作業員の退避問題は、3月15日の東電のプレスの”「福島第一原子力発電所の職員の移動について」”で、
”「本日、午前6時14分頃、福島第一原子力発電所2号機の圧力抑制室付近で異音が発生するとともに、同室内の圧力が低下したことから、同室で何らかの異常が発生した可能性があると判断しました。
今後とも、原子炉圧力容器への注水作業を全力で継続してまいりますが、同作業に直接関わりのない協力企業作業員および当社職員を一時的に同発電所の安全な場所などへ移動開始しました。
現在、福島第一原子力発電所では、残りの人員において、安全の確保に向け、全力を尽くしております。・・・・・。」”
と、福島第一原子力発電所の名前で発信。
(余談ですが、東電の発表には、東電の名前でプレスの場合と福島第一原子力発電所の名前でのプレスが混在しており、東電側が情報発信が一元化・体系化されていないことです。)
多分、福島第一原子力発電所の現場責任者は、現場状況が変化し、現場体制の見直しが迫られ、東電本社側に発信したのに、東電本社からプレスと扱いになり、政府は、過剰反応したのでしょうね。
要は、東電側も政府側も総力を挙げて現場体制の拡充しておらず、責任のなすりあいしたのでしょうね。
東電側は、3月18日になって、『福島市への当社副社長およびJヴィレッジへの常務の駐在について』で、常務取締役 小森明生氏を福島第一、第二原子力発電所を総括に任命し、3月22日よりJヴィレッジに小森明生常務取締役を駐在させるとプレスしました。
今頃?遅過ぎますね!。
今までは、福島第一原子力発電所長の権限と責任で現場作業をしていたのかと。
当方は、船頭が多く現場が犠牲、トップが馬鹿だから現場が苦労と書いてきましたが、家族を犠牲にして、黙々と現場作業に従事している東電・関連会社・協力会社の社員こそ理解し応援したいと思っています。
本ブログで、現場作業が主体者なのに、官邸主導の組織対策とは、”「組織責任とは責任の分散化であり、誰も責任をとらず、当事者のみが責任を負わされ、順調に終息したら、組織の功績となり表彰されるのが世の常」”と書きましたが、現場作業員の使命感で命賭けで黙々の悪戦苦闘があり、事故は沈静化し、復旧するのであり、東電スタップ、保安院は現場作業を最大限のフォローすることが解決を早めるのです。
それにしても、硬直した日本社会をみている思いです。
これからは国民全員不安院と呼ぶことにしましょう。