固有植物プランクトン半減のサイン

2011年01月27日 | 日誌





Pediastrum biwae

琵琶湖の植物プランクトンの種類が過去30年間で
半減したことが、報道されて何となく聞き流して
いていずれ時間があればその意味を考えようと思
っていたがやっとその気になる。滋賀県琵琶湖環
境科学研究センターの調査報告結果によると、緑
藻類が激減する一方で藍藻類が増え、種類の分布
自体が変化したことも確認。同センターは「プラ
ンクトンの種類が偏ると、食物連鎖のバランスが
崩れる」として、琵琶湖の生態系への影響を懸念
している。

Haeckel Melethallia.jpg

それによると、1978年から琵琶湖・北湖の今津沖
中央地点(高島市沖)で行っている月2回の表層
水の調査結果を分析したところ、季節変動はある
が、年ごとの最多種類数を見ると、1ml中に34種
を確認した80年をピークに減少を続け、92年には
初めて20種を下回わる。20種以上は98年が最後で、
2000年以降は15種前後で推移している。年間を通
じた種類分布では、琵琶湖固有種「ビワクンショ
ウモ」など、30年前は全体の46%を占めた緑藻類
が40%に減少。同じく固有種「アウラコセイラ・
ニッポニカ」を含む珪藻類も減った。一方で、藍
藻類が14%と5ポイント増えた。藍藻類は「アフ
ァノティーケ」のように細胞が大きなゼラチン質
で覆われ、ミジンコなどの動物プランクトンが食
べにくいといわれている。 

Oscillatoria sp.jpg

その原因は(1)リン流入量の減少(2)地球温
暖化に伴う水温上昇(3)外来魚増加(4)湖底
の酸素減少が影響しているという。特に、
調査を
始めた翌1979年にリン流入を抑制する県条例が制
定され、植物の成長を促す性質を持つリンの削減
が影響しているのではと推測されている。植物プ
ランクトンは動物プランクトンや魚、貝のえさと
なって琵琶湖の生態系を支える一方、湖の透明度
を下げる要因。異常発生すればアオコや赤潮の原
因ともなる。「植物プランクトンの望ましいバラ
ンスを探る必要がある」と担当者は指摘している。 



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琵琶湖の植物プランクトンの経年変化をみると、
ビワクンショウモ(Pediastrum biwae)は、過去の調
査では秋に南湖で非常に多くみられ、1980年に行
った琵琶湖から流れ出てゆく瀬田川での調査でこ
の種が一番多く観察(優占種)。1980年当時の百
分の1程度まで減少。メロシラ・ソリダ(Melosira
solida
)は、日本では琵琶湖だけに分布し琵琶湖の
代表的なプランクトン。水温の低い時期に多くみ
られ浮遊生活を送るが、水温の高い時期には湖底
で夏を越す。1985年頃までは1月から3月頃の冬
季に北湖全域に多くみられ、毎年のように優占種
となっていたが、その後、約10年間で急激に減少
し最近ではあまり観察されなくなったとされる。




このことから直ちに環境悪化には結びつかないが
「琵琶湖固有種のリン濃度依存性」(仮)という
面白いテーマが浮上してきたように思える。


脚注及びリンク集
______________________

(1)「琵琶湖固有種ビワツボカムリ(Difflugia biwa e
      Kawamur a , 1918
)の分布と消長について」
(2)「13.1 琵琶湖における植物プランクトンの動態」
 
(3)「びわ湖における植物プランクトン量の 長期変
  遷と水質について (1978-2005)」
(4)「日本の淡水プランクトン」 

 



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