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地域循環共生概論 60

2022年10月09日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.10.09|更新日:



□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅵ
プーチンのロシア軍は戦況打開に核兵器使用をちらつかせ
ていますし、北朝鮮の核兵器開発5カ年計画は最終段階に
入り、9月下旬から弾道ミサイル発射を繰り返えしており、
国内の保守反動派は報復の軍事力拡大を公然と主張し始め
ています。片や、地球恩温暖化による集中豪雨・洪水・干
魃・火災・食料危機の被害が常態化しております。


出所:国際ニュース:AFPBB News
□ 下水汚泥を肥料に活用 国産化進め価格抑制
そんな緊迫した昨今ですが。10月9日、農業現場で主流の化
学肥料は輸入原料に依存し、ウクライナ情勢などの影響で
価格が高騰している。肥料の国産化を進めることで価格を
抑え、農家の経営圧迫や食品価格の上昇を回避を狙い、下
水汚泥を肥料に活用、輸入化学原料の高騰で政府が本腰を
入れる。


グラフ:下水汚泥の再利用方法 国土交通省 2020年度
10月に取りまとめる総合経済対策で、政府は肥料の国産
化を進める方向だ。すでに岸田首相は同対策の策定に向け
て、「化学肥料への依存度を引き下げ、エネルギーや食料
品などの危機に強い経済構造への転換を図る」ことを指示。
10月に取りまとめる総合経済対策で、政府は肥料の国産
化を進める方向だ。すでに岸田首相は同対策の策定に向け
て、「化学肥料への依存度を引き下げ、エネルギーや食料
品などの危機に強い経済構造への転換を図る」ことを指示。


国産肥料の増産を急ぐのは、化学肥料の価格が急騰してい
るためだ。原料となる尿素や塩化カリウムなどは、大半を
海外からの輸入に頼っている。原料価格の上昇が肥料価格
の高騰につながり、農家の経営を圧迫している。これに対
し、下水汚泥を加工した肥料は、価格の安さが最大の特長
だ。下水汚泥の全量を肥料に加工する佐賀市は、汚泥肥料
を1キロ2円で販売する。年間3000人以上が購入し、
6月以降は販売量が例年の2~3倍に伸びている。政府は、
肥料の国産化と低廉化で「一石二鳥」の効果が得られると
みており、肥料の需要が多い地域では、将来的に下水汚泥
の全量を肥料として活用したい考え。
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via 読売新聞オンライン|下水汚泥を肥料に活用、輸入化学
原料の高騰で政府が本腰…国産化進め価格抑制


7.5 鉄筋コンクリート製の最終処分場設計
7.5.1 飛灰の特性を考慮したコンクリートの劣化の可能性
 福島県外の指定廃棄物の処分には、遮新型相当の最終処
分揚が検討されていまナ(図7.5.1)。ここで問題となるのは
前節までにも説明したように、放射性C8が水溶性である割
合が商い焼却飛沢です。環境省から提示された案では、何重
にも飛灰に水が接することがないように配慮されている。
すなわち、覆土に加え、ベントナイト混合土により潅水から
コンクリートピットを遮水。コンクリート自体も遮水性を
有するものを使用。さらにコンクリート内部には遮水シー
トが配置される。万が一、これらが機能しない場合は点検
通路により目視点検し、異常時には補修を行う。
 想定しえる事故を含め、通常の条件では十分に安全であ
ると考えられる。ただし、極めて厳しい事故が発生した場
合についても、最新のコンクリート工学の知見から考えて
おくことは重要。なぜならば、コンクリート材料の劣化に
ついては現在も研究が進行中であり、現在の基準類では対応
できていない現象もあることが分かってきているからだ。
 本節では、これらの可能性を紹介し(表7.5.1、図7.5.2
)、対応策を示す。
 まず、通常の条件を考えます。環境省のコンクリートピッ
トの案では床や壁がかなり厚い60-80cmとなっています。こ
のような厚い部材を製造すると、セメントの水和発熱反応
によりコンクリートの温度が上昇し、温度応力によるひび
れが一定間隔で発生します。この初期に生じるひび割れに
対しては樹脂注入で補修できるのですが、ひび割れが少な
いに越したことはありません。セメントの発熱量を下げるに
はいくつかの方法、例えば材料を冷却する、低熱セメントを
用いる、石炭火力発電所から発生するフライアッシュなど
の混合材を用い圧縮強度を保証する管題材齢を長くする、
などがある。地下ピソトで湿潤雰囲気にあることを考える
と、アルカリ骨桐反応(ASR)が懸念される。
 ASRはコンクリート中の骨材がセメン|ヽからもたらさ
れるアルカリイオンと反応し、膨張性のゲルを生じ、コン
クリートを膨張破壊する現象です。コンクリートの癌とも
言われ、発生すると抑制は困難です。現在もASR抑制対
策かおりますが、その方法には限界かおることが最近指摘
されるようになっており、さらに抑制対策が安全性保証が
必要な長期間にわたり果たして有効であるのか保証がない。




 
7.3節で示した飛灰の特性を考えると、最もコンクリート
の耐久性に強い影響を与えるのが、コンクリート表面の遮
水屑が機能しなくなる場合。遮水屑に欠陥があると、飛灰
は乾燥剤なので、コンクリートが乾燥し、乾燥ひぴ割れが
発生する。さらに、吸湿した飛灰がコンクリートに接する
状況になると、いくつかの劣化現象が促進することになる。
ひとつは、飛灰中の塩素がコンクリート中に進入し、鋼材
を腐食させること(塩害)。鋼材はセメントが生成する高ア
ルカリ雰囲気で酸化に対して安定になっていますが、塩素
が高濃度になるとさびが生じ膨張し、がぶりコンクリート
に大きなひびを発生し、ひどい場合にはコンクリート自体
が剥離する。飛灰中のアルカリがコンクリートに進入する
とpHが増加し、ASRが促進される可能性もあります。さらに
高濃度のCaC12は3CaO・CaC12・15H20という膨張性の鉱物を生
成しコンクリートを膨張破壊する現象がおきえる。
 まとめると、まずは、ピット内部に水が供給されないよ
うに配慮することが最も重要です。飛灰が水に触れなけれ
ば、適切に注意され設計・施工された鉄筋コンクリート個体
は十分に耐久的と考えられる。



安全安心のために、万が一の事故時までを想定すると、塩
害による腐食にはコンクリート中の塩素浸透を抑制すると
共にエポキシ塗装鉄筋を使用するのが望ましい。温度ひび
割れ、塩素浸透抑制、ASR、化学的侵食のすべてにフライア
ッシュは有効なので、効果を確認して積極的に使用するこ
とが環境負荷低減の観点からも好ましいことである。
 以下の項ではコンクリート中のC8の移動を塩素の移動と
比較しながら解析した事例を示す。また、ASRの長期的挙動
の予測を加速コンクリートプリズム試験により行う方法を
示す。最後にこれらの成果を技術資料としてまとめるため
の活動状況を紹介する。


各種の基準にはコンクリートが十分耐久的であると記載さ
れているが、これは施工欠陥を排除する慎重な対処がなさ
れることを前提としており、すべてのコンクジートエ事で
本来の性能が実現されているわけではないという現実には
十分注意すべきである。

この計算には対象元素とセメント水和物との相互作用が溶
解平衡定数として啓えられていなけれぱならない。通常Cs
は考慮されないので、Csとセメント水和物との相互作用を
調べ、セメント硬化体をCsCI溶液に澄清して得られた元素
の濃度プロファイルと比較した。
図7.5.3にセメントペーストのC8とCIの浸透状況を、図7.5、4
に演度プロファイルを示します。水/セメント比60%のセメ
ント硬化体で、セメントとしては、普通ポルトランドセメ
ント(OPC)、高炉スラグにより40%置換した高炉セメント
(BB)、フライアッシュにより30%を置換したフライアッ
シュセメント(FAOの3種類としました。0.5MのCsCI溶液に20
℃で7日間浸漬しました。濃度分布は電子線プロープマイク
ロアナライザ(EPMA)により面分析を行い求めた。
 CsとCIはどのセメントにおいてもほぽ同程度の浸透である
ことが分かる。セメント種類の違いに着目すると、OPCが10
mm程度の浸透深さであるのに比較し、BBとFACでは数m程
度と大幅にCsとCIの浸透が抑制されていることか分かる。
 この浸透プロファイルを熱力学相平衡一各元素移動モデ
ルで再現。図7.5.5に概念図を示す、外環境との元素のやり
取りを、イオンの拡散と固相との相平衡反応を考慮して解
析する。
 解析の結果を図7.5.6に示す。実験結果と同じように、O
PCでは10mm程度の浸透であり、BBとFACでは数mmの浸透
に抑卵』されていることが再現できた,Csに関してはより
深くまで浸透する結果となっている。


実験では濃厚なo、5MのCsCI溶液を用いたが、実際の飛灰か
らの溶出液ではCI濃度は濃厚
、Csはごく希薄。飛灰に10ppm
のCsが含まれ(多い状況)、等量の水が作用した場合を考え
ると、10mg/Lの濃度になりますので、これを境界条件としてC8浸
透を30年にわたりOPCに対して計算した。CIは87000mかLと
した。
解析結果を図7、5、7に他の主要元素濃度とあわせて示す、塩
素浸透は20em程度までおきているか、Cs浸透は5emまでです。
これはCsがごく低濃度でしか存在していないことと対応し
ていますすなわち、コンクリートが塩害に対して耐久的に
設計されているならぱ、コンクリートピットからCsか漏洩す
ることは考えられない、ということになる。

7.5.3 アルカリ骨材反応の定量的評価と抑制
(1)はじめに
 放射性物質に汚染された焼却灰(汚染灰)をコンクリート
施設で最終処分するには、汚染灰に含まれる放射性Csの半
減期から、コンクゾート施設は長ければ100年オーダーにわ
たる耐久性を保有しなければならならない。耐久性のうち
、アルカリ骨材反応QSR)はJISにも抑制対策が定められて
いるが完全なものではなく、より確実な抑制が求められま
す。そこで、反応性の異なる骨材を準備し、国際的最一新情
報を考慮した試験方法により、フライアツシユなどを用い、
ASRを抑制する効果を定量的に評価。

(2)コンクリートバー法の加速倍率の推定の基本概念
 寿命予測における加速試験は、輝々な材料の劣化評価手法
として用いられている,劣化を評価するには求められる寿命
の年月暴露し、あるいは実際の使用に供して評価するのが
最も確実ですが現実的ではなく、過酷な条件の下で劣化を
促進し、長期間に起こる劣化が短期間に進むとみなして、
現実的な時間の試験で長期の劣化に代える必要がある。
 コンクリートにおいて化学的な劣化の進行は、コンクリ
ートが天然に産出する材料を用いた複合材料であること、
コンクリートは主に屋外において用いられるため様々な環
境条件が作用し一義的には評価できないことから、予測は
容易ではない。また、アルカリ骨材反応に間しては、1940
年にカリフオルニアのKing City橋におけるひびわれを調査
したT.E.Stantonによって初めて報告され、未だ70年数年し
か経っていません.従って、アルカリ骨材反応に関する長
期の膨張データは極めて少なく、長期間の劣化予測におけ
る検証が困難です。アルカリ骨材反応に対する劣化モデル
はコンセプトの提示が行われている段階であり、未だ様々
な骨材の膨張柊性を化学的な反応に基づいてモデル化する
には至っていない.
 アルカリ骨材反応は、コンクリート中のアルカリ金属が
骨材中に浸透し、骨材中のシリ力が反応することによって
生じる化学的な反応が主であると見なすことができる。す
なわち、反応速度論に基づいた劣化の進行をモデル化する
ことで、促進試験における劣化進行を、暴露試験の結果と
対比することで、加速倍率を推定できる可能性がある。
 本項では、アルカリ骨材反応における既存のコンクリー
ト試験による膨張に関するデータを整理し、化学的な反応
速度の観点から基礎的な反応モデルを構築し、反応モデル
におけるパラメータを抽出して、暴露試験体における膨張
劣化と比較することで、加速倍率を推定する。
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※骨材の反応性を調ぺる試験には、高温アルカリ溶液への
溶解シリカ量とアルカリ減少量を調べる化学法、粒度調整
した骨材とアルカリ量を増加したセメントでモルタルを作
製し高温養生する方法が日本では主流である。それぞれ、
限界があり、コンクリートによる試験では、骨材組合せや
骨材の粒度調整に起因する悪影響を除去できるため、ここ
ではコンクリート試験により用いるコンクリート配合条件
での挙動を検討する。
                                        この項つづく
【関連技術情報】
1.
放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分 国立
 環境研究所 2014.4.14
https://www.slideshare.net/3tarou/ss-33956703                      

【エピソード】


□ 地球温暖化はなぜ起きる Ⅰ 
海洋研究開発機構・環境変動予測研究センタ・河宮未知生
氏の「その仕組みや2050年カーボンニュートラルの必要性
の概説」 via 環境ビジネス 2022年秋季号
----------------------------------------------------
日本における海洋科学技術の総合的な研究機関として、こ
れまでに多くの成果を生み出してきた国立研究開発法人海
洋研究開発機構(
JAMSTEC; Japan Agency for Marine-Earth
Science and Technology
)。日本最初の深海潜水艇の開発をは
じめ、国際地球観測プロジェクト推進のための研究船など
の開発・運用、気候変動や地震などに関するシミュレーシ
ョン研究などを行う。昨年、ノーベル物理学賞を受賞した
真鍋叔郎氏も、かつて5年間在籍し気候モデリングの研究
をリードしていた。
現在、世界で20以上の団体がIPCC(気候変動に関する政府間
パネル)に地球温暖化予測の計算結果を提出しており、そ
の一角を担っているのがJAMSTEC。世界各地で頻発してい
る異常気象の一因とされる地球温暖化。その仕組みを河宮
氏は次のように説明する。「太陽から地球に届く熱は、地
表面に吸収された後、温められた地表面から赤外線の形で
再び放射されます。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガ
スはこの熱を吸収し、吸収した赤外線の一部を再び下向き
に放射して、地表面や大気を加熱する役割を果たす。現在
地球の平均気温は15℃ですが、もしも地球上に温室効果ガ
スがなかったら、平均気温は-18℃になってしまう」
 従来、二酸化炭素は人開か暮らしやすい気温を保つ上で
重要な役割を果たしている。だが、産業革命以降、その排
出量が増加し続けた結果、熱の吸収量が増えて気温上昇に
つながってしまった。
                    この項つづく






ここ両日の気温変動と夏の暑さの疲れから「えらいことに
!」なって、歳を重ねるってこんなこととになるかとつく
づくと実感しています。皆様はいかがでしょうか?!
先日、コスモス畑麗しい彦根荒神山醸造所でクラフトビー
トビールを試飲してきました。村上春樹の小説『ドライブ
マイカー』の彼女をドライバー役に、いっしょにのみに生
きましょう。最大3名(わたしを入れると残り2名)です。

【脚注及びリンク】
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地域循環共生概論 59

2022年09月16日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.9.15|更新日:


□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅴ
8月5日、欧州最大の出力を誇るウクライナ中南部ザポリ
ージャ原発
が攻撃を受けると事変が発生(ブログ『極東極
楽』2022.8.9
参照)。つづく、16日には、今年8月7日に
米議会上院、そして12日に下院は米国で過去最大規模の気
候変動対策を盛り込んだ「インフレ抑制法案 ( Inflation
Reduction Act: IRA
)」------ 2022年のインフレ削減法は、
クリーン エネルギーを促進しながら、 赤字の削減、処方
薬の価格の引き下げ、国内のエネルギー生産への投資によ
り、インフレを抑制することを目的とした米国の法律 ---
が可決され、16日、バイデン大統領が署名し成立。「米史
上最大の気候変動対策」と呼ばれるこの法律は、2030年ま
でに温室効果ガスの排出量を2005年に比べて40%削減を目
指し、今後10年間で、再生可能エネルギーのインフラ改善、
クリーンエネルギー設備、電気自動車の導入を促進するた
めに約3600億ドルもの予算が割り当てられる。さらに、今


Credit:AP

9月9日、東京都は新築住宅などに太陽光発電パネルの設置
を義務付ける新たな制度について2025年4月の施行を 目指
すことを公表しており、加えて、米国・中国・欧州が電気
自動車普及を目指す『EV元年』がスタートており、「環
境リスク」の調査・研究(➲非営利の『環境工学研究所
WEEF』的なウェブ事務所)の負担が倍増し、やっと本シ
リーズの掲載再開にこぎつける。

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第7章 コンクリートの除染の基礎と汚染廃棄物の
       最終処分へのセメント・コンクリート技術の活用
7-4 Csの不溶化と飛灰のセメント固型化
7-4-1 はじめに
 前節で述べたように、飛灰に含まれる放射性Csの多くは
水溶性なので、吸湿や結露、あるいは外部からの水の流入
により飛灰に水が浸入すると、これが周囲に漏出し、放射
能汚染を引き起こす可能性がある。これを防ぐにはCsに対
して選択係数の高いイオン交換体を飛灰に加え、Csをこれ
に吸着させることが効果的である。Csはイオン半径が大き
く、従って水中ではイオン半径が実質的に最小のイオンと
なるため、イオン交換体に対する選択係数が非常に大きく、
吸着が容易なイオンです。しかし飛灰中には水和イオン半
径の比較的小さいカリウムが多量に含まれるため、これが
Csイオンの吸着を阻害する。カリウムイオンが吸着阻害し
ないイオン交換体としてはプルシアンブルーがよく知られ
ているが、飛灰には塩化水素の中和のために加えた水酸化
カルシウムが多量に含まれているので、これがプルシアン
ブルーを分解してしまう。このため飛灰中の放射性Cs不溶
化法としては、飛灰の洗浄液を中和処理し、その後プルシ
アンブルーに通して吸着させる手法がとられた。高アルカ
リ性溶液中で安定、かつ高濃度のカリウムイオン共存下で
選択的にCsイオンを吸着できる、安価かつ少量で有効なイ
オン交換体があれば、飛灰に直接イオン交換体の懸濁液を
加えるだけで、放射性Csの不溶化が達成できる。また不溶
化処理した飛灰をセメント固型化し、地中に埋没すること
も可能となるという。


7-7-2 固定化材の探索 
まず、適切な固定化剤を探索すべく、いくつかの材料につ
いて、飛灰漏出液を模した化 学組成を有する溶液中での固
定化剤のCs固定化能を調べる。飛灰の一例として、可溶性
塩類として10-4 mol/kg以下のCsClと、各々2mol/kg、1mol
/kg、1mol/kg程度のCaCl2、NaC、KCl、および難溶性の Ca
(OH)2 が含まれていた。よって模擬溶液は、上記組成比の
塩類と過剰量のCa(OH)2に適当量の水を加えて作製した。
CaCl2共存下での溶液のpHは、溶解度積の関係より、pH =
11.9 -0.5log[Ca2+] となる。なお、実際の放射能汚染飛
灰では、これに極微量のCs-134とCs-137が加わることにな
るが、その量は元来含まれている非放射性Csの量に比べ無
視できる。模擬溶液に固定化剤あるいは固定化剤の懸濁液
を加えて撹拌混合後、1昼夜静置し、0.2μmフィルターを
通し上澄み液を吸引濾過し てCsの定量分析用試料とした。
Csの定量は、非放射性Csの場合はICP分析で、放射性  Cs
を用いる場合には NaIシンチレータによるγ線測定により
行った。一部は、実際の放射能汚染飛灰を用いて効果を確
かめた。



Csをイオン吸着する固定化剤としては、石炭フライアッシ
ュなど様々な材料が知られている
。これらの固定化剤の焼
却飛灰に対する有効性を知るため、飛灰模擬溶液に各種固
定化剤を添加し、24時間振盪後、溶液を吸引濾過し、溶液
組成をICP(誘導結合プラズマ発 光)分析しました(表7.4.1)。
石炭フライアッシュはCsを強く吸着することが報告されて
いるが、フライアッシュセメントペーストに固定化能は見
いだせていない。これは石炭フラ イアッシュがCsを特異
吸着しないため、共存するKイオンなどで吸着サイトが占
有されしまったことによる。


同様の現象は高炉セメントペーストや炭酸化セメントペー
ストにも見られた。ベントナイト(モンモリロナイト)やゼ
オライトの一種であるモルデナイトはCs の 固定化に有効
ですが、飛灰と同量程度添加しないとCsの漏出を阻止でき
ない。プルシアンブルーは多量のKイオン存在下でも選択
的にCsイオンを吸着することが知られている。しかしアル
カリ性の飛灰漏出液中では分解し、その固定化能は完全に
失われる

7-4-3 固型化の効果
8k~100kBq/kg の溶出性の高い放射性 Cs を含有する焼却
飛灰等について、管理型相当 の処分場で処分するには、
セメント固型化が求められている。Cs固定以外に、セメン
ト 固型化には、放射性 Cs と水との接触を低減させる効
果があり、8kBq/kg 超の高濃度に汚染 されたキレート処
理溶融飛灰をセメント固型化し、種々の溶出試験により溶
出抑制効果を検証した。固型化に用いたキレート処理溶融
飛灰(以下、キレート処理灰。64,000Bq/kg)を用いて、砕
石骨材有り無しの2種類の固型化体を作製しました。まず
骨材無しの作製では、キレー ト処理物と高炉セメント B
を1:1で混合、金型(φ115×300mm)に水を噴霧しながら
数回に分けて層状に充填し、プレス機(加圧能力:25t)を
用いて圧縮し、膨張を防ぐ蓋をした (圧密成型)。最終的
に水セメント比は 0.19。次に砕石有りの作製では、砕石
無しと同様にキレート処理物とセメントを混ぜ、金型に数
回に分けて充填する際に、つなぎ目に 20mm程度の砕石を
置いて圧密成型した。水セメント比は0.23。以降、砕石無
しの固型化体を C1、砕石有りの固型化体を C2とする。圧
密成型後、金型は室温で保管し、C1では 7日後、C2では
19 日後に脱型し、その後 C1 は 2 週間、C2 は 7 日間気
中養生した。溶出試験は、キレート処理灰と固化体(C1,C2
)を JISK0058-1 に準じて、液固比;10、撹 拌時間;6 時
間の条件で、溶媒を蒸留水または人工海水を用いて行った
(有姿撹拌試験)。 結果を図 7.4.1 と図 7.4.2 に示す。
キレート処理灰の 134Cs と 137Cs の溶出率は 90% 程度
であり、溶出性が高い結果である。放射性 Cs と安定 Cs、
その他の無機イオン類は同程の溶出率であり、溶媒の違い
による溶出率の差は見られませんでした。一方、固型化体
からの放射性 Cs 溶出率は、C1 で 4%、C2 で 1%未満であ
り、セメント固型化による溶出率の低減が確認された。タ
ンクリーチング試験は供試体を有姿のまま溶媒中に静置す
る溶出試験である。浸漬日数を変え、溶媒として蒸留水と
人工海水を用いて調べた。試験結果を図 7.4.3 に示す。
放射性 Cs や無機イオンの溶出率は浸漬日数が伸びるほど
大きくなり同じ挙動を示した。最終的に 32日間の浸漬に
よる放射性 Cs の溶出率は 9~17%程度で、有姿撹拌試験
の結果よりも大きくなったが、固形化により溶出速度を低
減させることができることが示された。

7-4-4 より効果的なCs固定化材
各種の材料の使用やセメント固型化により、放射性Csの溶
出は一定程度抑制できることが分かったが、より効率的な
抑制方法が望まれる。フェロシアン化鉄が高pHを除いて高
効率でCs固定することに着目しさらに検討した。フェロシ
アン 化カリウムと様々な遷移金 属塩を混合すると、プル
シ アンブルー類似の不溶性イオン交換体が生じるが、これ
らもまた、特異的にCs イオンを吸着しす。よってアルカリ
雰囲気下で安定 なプルシアンブルー類似化合物があれば、
飛灰中の放射性Csを不溶化できることとなる。マンガンか
ら亜鉛にわたる遷移金属のプルシアンブルー類似化合物の
懸濁液をCsの133 倍等量加えた際のCs固定化能を表7.4.2
に示す。Csを含む溶液がアルカリ性(pH=12.7、 Ca(OH)2
飽和状態)であっても懸濁液が中性の場合は、Mn、Coは良
好なCs固定化能を示すが、懸濁液がアルカリ性になると固
定化能が低下しする。これに対してNiでは、懸濁液がアル
カリ性になってもCs固定化能は低下しません。よってフェ
ロシアン化ニッケル (NiFeCN)は飛灰からの放射性Csの溶
出阻止に有効であると推論されます。実際、放射能汚染飛
灰に1kg当たり0.01molを加えたところ、無添加の場合61%
であった放射性Csの溶出率が0%に低下した。よって以後
NiFeCNについて、そのCsイオン吸着特性を詳細に述べる。
 Csイオンに加えて飽和濃度のCa(OH)2とNaCI、KCI、およ
びCaC12を含む溶液に、フエロシアン化カジウムとこれの
1.5倍のモル比の塩化ニッケルを加えて作ったNiFeCN懸濁波
を添加した際のCs除去率とNiFeCNの濃度との関係を図7.4.4
に示す。溶液全量に対してのNiFeCNの濃度が2mM以下にな
るとCsの除去が不完全になるように見えるがこれはNiFeCN
の量が不足するためではなく、Csを吸着したNiFeCNの沈降
が遅くなるため、0.2μmのフィルターを通して放射線測定溶
液中に放射性Csが混入することによる。このためCsイオン
濃度と除去率の間に相関は見られない。
 NiFeCNの量を一定とし、Csイオン濃度を増加した際のCs
イオン濃度と除去率との関係を図7.4.5に示す。Csに対する
NiFeCNのモル比が1以上あれば、KイオンやNaイオン、Caイ
オンが多量にあってもNiFeCNはCsをほぼ100%吸着する。
NiFeCN懸濁液作製の際のFe(CN)62'とNi2゛のモル比を1:Iか
ら1:1.5にしてもCs除去率に変化は見られないことから、
NiFeCNの作製に要するフエロシアンイオンとニッケルイオ
ンのモル比は1:1でよいことが分かるす。飛灰には多くて
10ppm程度のcsが含まれているので、放射性セシウム溶出防
止に必要なNiFeCNは、飛灰1トン当たりNiFe(CN)診重量換
算で20g以ト.あればよいということになる。
 NiFeCNのアルカリ耐性を表7.4.3に示す.NiFeCNはpH=14
に近づくと分解することが知られているが、中性のNiFeCN
懸濁液をpH>14の強アルカリ溶液に添加しても、cs固定化能
に変化はない。また懸濁液をpHニ14にしてもかなりのcs固定
化能を示します。これはNiFeCNのアルカリ耐性がCsを吸着
することによって著しく増加したためと考えられる。



7-4-5 まとめ
 放射性Csの処分の難しい点は、安定Csも含めて、焼却飛
灰からの溶出率が悪い。溶出しないのであれば、遮蔽をき
ちんと行うだけで安全に処分できる。Csの溶出を抑制する
方法として、固定化とセメント固型化を検討した。その結
果、フェロシアン化ニッケルを1トンあたり20gという少量
用いることで、セメントが生成する商いアルカリ環境でも
安定してCsの溶出を防止できることを示した。セメント固
型化は他の重金属などの溶出防止にも効果的であるので、
フェロシアン化ニッケルを飛灰に混合し、さらにセメント
旧型化することで安全な可溶性Csを含有する汚染廃棄物の
最終処分が出来ると期待できる。


【関連技術情報】
・放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分 国立環

  境研究所 2014.4.14 
    https://www.slideshare.net/3tarou/ss-33956703                   
                    この項つづく
【エピソード】







図 気候変動リスクの認識 日本の水利の現状と気象変動
 リスクの認識
□ 地球温暖化と琵琶湖
 
琵琶湖の水不足27年前にも「大渇水
昨年11月。滋賀県の三日月知事が懸念を示した、琵琶湖の
水の量を示す「水位」。16日時点でマイナス63センチと14
年ぶりの低い水準となる。過去には、1994年に水位がマイ
ナス123センチに達し、関西各地へ送られる水の量を2割減
らす取水制限が行われている。
琵琶湖の水不足 27年前にも「大渇水」【関西テレビ神
崎デスクの「これホンマ言いたかってん」】2021/11/16 -
YouTube
  
今月5日、TBSテレビは「"水位は史上最低を更新"アメリカ
で加速する「大規模干ばつ」 地下水の利用急増も」を報
じている。
via https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/143499?display=1
干ばつの頻度と期間は、2000年以降、世界全体で29%増加。
* 2
050年までに干ばつが世界人口の75%以上に影響を与える
可能性があることや、その他の気候変動が原因で2億1,500
万人以上が家を追われる可能性があることが指摘されてい
る。via グリーンピース・ジャパン 2022.8.19
国連砂漠化防止条約(UNCCD)の新しい報告書によると、人
類は干ばつの影響により「岐路に立っている。早急に、あ
らゆる手段を用いて緩和を加速する必要がある」と発表。
因みに、米国の43%以上が7月末に干ばつに陥っていたこと
が、*米国政府の全米統合干ばつ情報システムによって明ら
かになった。2022年8月時点で1億3,000万人以上の人々が干
ばつの影響を受けており、2億2,900万エーカー分(北海道14
個分以上の面積)の作物に被害が生じているという。国連に
よると、米国経済は、干ばつと関連する作物の不作により、
推定 2億4,900万ポンド(406億3,300万円)を失っている。*
そこでは、さまざまな要因のなかでもっとも大きな原因の
一つが、人間活動による温室効果ガスの排出が影響し「地
球温暖化」で地球の平均気温が上であると指摘されている。




図2 今津沖中央(水深90m)の観測定点における湖底直
上1㍍の用損酸素濃度の推移


[PDF] 7. 琵琶湖における将来予測・影響評価 - 環境省
                    この項つづく
❏ 報告事項
昨夜、佐々木さんにハザードマップ(洪水/浸水)の対策の
ことで連絡を入れる(改築か
vs.転居か)。コロナの弱毒
化。ピーク・アウト(パンデミックの終息視野に コロナ
死者、初期以来の低水準 WHO,2022.9.13)にあわせ新年会
を企画してみてはとの打診。準備することを回答する。昨
年亡くなられた谷口さんの弔いのことや、今井さんが亡く
なったことなどを報告する。
                     幹事敬白




【脚注及びリンク】
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地域循環共生圏概論 58

2022年08月10日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.8.10|更新日:2022.8.11


出所:国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センタ

□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅳ
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第7章 コンクリートの除染の基礎と汚染廃棄物の
       最終処分へのセメント・コンクリート技術の活用
7-2 実コンクリートへの放射性 Cs浸透解析と再利用
       への考え方
7.2.1 実コンクリートへの放射性 Cs の浸透解析
---------------------------------------------------
7.2.1 に各コンクリート片の放射性 Csの表面濃度の測定
結果(Ge半導体検出器による)を表面線量率(GM管)とあわせ
て示す。コンクリートコアについては上面と側面では、濃
度においても数倍以上の差が認めらた。図 7.2.6 に放射
能の表面濃度と表面線量率の関係を示す。両者には線形

相関がある。


1
,2,3 は擁壁からのコア。uは擁壁上面、sは擁壁側面。
4,5,6 は側溝蓋。A2,A3,B1は二本松市の擁壁側面からの
コア 

図7.2.7にβ線ラジオグラフの測定結果を示す。試験片と
測定結果を重ね合わせた図を見ると線源が表層部分に限定
されていることがまず分かる。また表 2.7.2に示したコア
の放射能濃度の高低にしたがって、濃淡が現れている。
擁壁側面は低レベルであり、上面は高レベルになっている。
また同じコンクリートコアからの試験体であっても、濃度
は mm オーダーで相当程度にばらついていることが分かる。
図7.2.8にコイン状の標準線源とコンクリート試料を比較
し、β線強度分布、すなわち放射性Csの濃度分布を示す。
試料は 2mm前後の厚さを有するため、表面から周囲へβ線
が拡散するため、エッジではなだらかになる。一方で3uの
中央の試料のように別の試料と接する場合には、β線の拡
散がなくなり、比較的シャープなプロファイルが得られる。

ここのプロファイルは内部への浸透においても同等でシャ
ープ。比較のために、飽水したコンクリートを塩水に浸漬
した際の塩素の浸透状況を電子プローブ微小分析 (EPMA)
という方法で分析した例を図7.2.9に示す。この場合は、
内部に向かい、徐々 に塩素濃度が低下し、塩素が見かけ
上拡散により浸透したとみなすことが出来る。 

 また、図7.2.6に示したウォータージェットによるCs濃度
プロファイルと比較すると、コンクリート蓋ごとに、6>4>5
という浸透深さの順も、ラジオグラフの結果では異なり、
ウォータージェットによる測定は濃度プロファイルという
観点では妥当とは考えにくいものである。一方で、ラジオ
グラフの測定は1断面のみであり、ばらつきが大きいこと
も考慮する必要はあると考えられ、原因も含め、今後の更
なる検討が必要。従来からCsは単体であれば、粘土などに
大きな吸着平衡定数を示しますが、共存イオン、特にKや 
NH4があると吸着平衡定数は大幅に低下することが分かっ
ている。セメントには 0.1%オーダーの Kが含有され、Cs
はコンクリートに吸着されにくい状況にあるといえる。コ
ンクリート表面に留まれないCsは事故後、1年9ヶ月が経
過する間に雨水で流出するものはすでに流出していると考
えられている。Cs固定の安定性を検証には、20.1kBq/kg
を示した No.6の試料を用い、純水、1NのKCl及び NH4Cl溶
液でCsの24 時間での再溶出を調べる。その結果、純水で
は 0.1%以下、KCl溶液では 28%、NH4Cl溶液では 25%が溶
出する。このことは汚染したコンクリートがらに雨水がか
かっても、またウォータージェットにより微粉を研削して
も、固体を除去すれば水にはCsは 移行しないことを示す
ものである。
 セメント硬化体を考えると、空隙水の組成は 0.5M程度
の水酸化アルカリ溶液で、主には Naと Kが溶解している。
Kの濃度は 0.1-0.2M程度と考えられる。Csの固定が起きて
いる範囲は中性化とは無関係だが、内部のアルカリの存在
領域と関係しているのかもしれない。すなわち、雨水によ
りコンクリート中のアルカリが表面部分で溶出しているな
らば、選択的Cs固定が表面部分のみで起きていてもおかし
くはありません。さらに、Caの溶脱による効果もあると推
定される。コンクリートの表面放射能濃度とβ線ラジオグ
ラフから読み取ったCsの浸透深さの関係 を図7.2.10に示
す。両者には対数の関係があり、表面濃度が高くなっても
Cs浸透深さはそれほど大きくならないことが分かる。この
関係を外挿して考えると、高濃度汚染地域でのコンクリー
トの除染に要する研削厚さの目安になる。

7.2.2 除染コンクリートの再利用への考え方 
 放射性 Cs に関するコンクリートのクリアランスレベル
は100Bq/kgとされている。クリアランス制度とは、原子力
発電所内の物質を所外に持ち出す際、明らかに非放射性と
考えられるN.R.とされるものとは別に、放射能汚染の有無
の確認が必要なものを、放射性物質として取り扱う必要性
を判断するための基準。種々の再利用シナリオが設定され
追加被ばく線量が10μSv/y未満 cとなるように計算された

詳細は日本建築学会から検討の概要をまとめた資料が提供。
放射能汚染への心配から、クリアランス以下の放射能レベ
ルが求められる風潮にあるが、本来の考え方は追加被ばく
線量により判断されるべきものである。日本建築学会から
示された考え方の図を図7.2.10に示す。東日本一帯は広く
放射能汚染されたのですから、多くのものは N.Dとはみな
せず、汚染レベルの確認が必要。空間線量率や素材ごとの
特性から十分に低いレベルと考えられるものは通常の利用
や処分が出来る。一定レベル以上のものは除染を考慮し、
除染できるものは再利用するのが廃棄物量を減らす上でも
合理的。ここで、放射能濃度が十分に低い、もしくは再利
用の際の基準が単にクリアランスとの比較ではなく、使用
状況に応じ、追加被ばく線量の許容限度(平常時では10μS
v/y、すでに放射能汚染が起きている状況では 1mSv/yとい
うのが一つの考え方)を満たすかどうかが本質的な判断基
準といえるが、追加被ばく線量を求めることは一般には容
易でない。もし、精度は不十分としても生活環境を取り
巻く放射性物質の存在形態(例えば、 自宅近くの側溝や仮
置き場)及び量を指定でき、個々人の生活スタイルを設定
することで、個人が被爆し得る線量を計算できるとすれば、
国民全体の放射能汚染に対するリスクへの理解がより深ま
るものと考えられている。
----------------------------------------------------
※c 日本人の年間平均被ばく線量は1.5mSv/yであり、追加
被ばく線量 10μSv/yはこれに比 べて十分に低く無視しえ
るものと一般に考えられている。ICRP(国際放射線防護委員
会) によると、事故時には 1~20mSv/yで出来るだけ低い追
加被ばく線量に低減することが求められており、日本では
1mSv/yが採用されている。どこまで許容するか、慎重であ
りかつ経済性を考慮したバランスある選択が必要。
----------------------------------------------------
 公的機関からこのような線量計算ソフトを提示することは、
精度に責任を求められるので容易なことではないが
、すで
に多くの事例が過去に計算されており、それを参照するだ
けでも相当のケースに対応できそうだと考える。個々人が
自らリスクを算定することで、リスクとコストをバランス
させた社会が出来るのが望ましい姿と考える。

図 7.2.10 放射能汚染を受けた状況での建築生産と維持管
理に関わる全体スキーム 

7.3  セメント・コンクリートとの関連から考えた焼却飛
の特性
7.3.1 
 はじめに
 福島第一原発の事故によって広域に飛散した放射性セシ
ウム(Cs)の一部は、ごみ焼却飛灰中に濃縮蓄積されている
ため、放射性Csを含む焼却飛灰を長期安定保管することは、
喫緊の社会的課題となっている。飛灰に含まれる水溶性成
分としては、放射性Csを含む塩化アルカリに加えて、多く
の場合、焼却排ガスに含まれる塩化水素の中和過程で生じ
る塩化カルシウム(CaCl2)が多量に存在する。CaCl2は吸湿
剤としても市販されている潮解性の高い物質なので、飛灰
を高湿度の大気に長期間曝露した場合、吸湿・潮解によっ
て生じた放射性Csを含む水溶液が周囲に漏出し、放射能汚
染を引き起こす可能性があります。また、漏出した溶液に
は多量の塩分が含まれているので、これが飛灰貯蔵施設の
コンクリートに侵入し、コンクリートの劣化を引き起こす
可能性もある。よってCaCl2による飛灰の吸湿挙動を明らか
にすることは、飛灰の長期安定保管にとって重要な研究課
題である。本研究では、飛灰の吸湿速度をCaCl2濃度、温度
および湿度の関数として測定することにより、吸湿によっ
て飛灰から放射性Cs等が漏出するまでの時間を予測する。
使用した焼却飛灰の組 成例を表7.3.1に示す。飛灰の主成
分は、塩化水素の中和のために投入したCa(OH)2及び生成物
であるCaCO3、CaCl2と、焼却物から蒸発したNaCl、KCl。
NaClや KClの潮解性は弱いが、CaCl2がもたらす水分で溶解
すると、これもまた水分を吸収することになる。


これらの飛灰10gを開口面積25.1cm2の容器に飛灰入れ、30
℃、相対湿度 (RH)95%で放置すると、200時間後には吸湿に
よって飛灰が完全に水没した。飛灰元来の成分組成では、
吸湿がCaCl2、NaCl、KClの3成 分によって生じるため、吸
湿現象の解析が複雑になるので、水洗し て可溶性塩類を取
り除いた流動床炉飛 灰に、CaCl2を10%、20%、および30%
添加したものを吸湿用試料として実験した。これらを断面
積13.4cm2の透明プラスチック製 100mL、200mL、300mL円筒
容器に充填し、恒温・恒湿槽内で吸湿させました。

 50℃、90%RHで加湿した際の飛灰の様子を図7.3.1に示す。
飛灰に吸収された水分によって上部に黒色の湿潤帯が生じ
ている。50℃、90%RHでの吸湿量の時間変化を図 7.3.2に
示す。吸湿速度はCaCl2濃度に依存するが、吸湿量が飽和
に近づかない限り、飛灰の初期充填量には依存せず、吸湿
初期を除きほぼ(時間) 1/2則d に従います。湿潤帯の幅も、
その先端が容器の底に接近するまでは、飛灰の充填量には
依存せず、ほぼ(時間) 1/2則に従って増大します。飛灰の
吸湿量、湿潤帯幅が共に(時間) 1/2則に従うことより、湿
潤帯が飛灰の底に達するまでは、湿潤帯内の平均CaCl2濃度
はほぼ一定に保たれていることが推論される。湿潤帯内で
のCaCl2溶液の濃度を見積もると、CaCl2含量や充填量にか
かわらずほぼ40~50%となるが、これは飽和CaCl2溶液の濃
度に近い値。湿潤帯が飛灰の底に達したのちは、湿潤帯内
のCaCl2濃度は吸湿と共に低下するため、吸湿速度が減じる
ものと予想されたが、吸湿が飽和に近づいた試料を除き、
湿潤帯が容器の底に達した後も、吸湿量は(時間) 1/2則に
従った。
----------------------------------------------------
※ d 湿潤帯が(時間) 1/2 則に従うということは、これが
見かけ上の拡散現象であることを意味する。
----------------------------------------------------
☈吸湿過程を明らかにすべく、2000時間加湿後の飛灰の吸
湿量とCaCl2含量の深さ分布を測 定しました。いずれの試
料も、吸湿後のCaCl2含量は下に行くほど濃くなることから、
上か ら下へのCaCl2溶液の移動が生じていることが分かり
る。このことは、吸湿で生じた CaCl2溶液が毛管吸引(+
重力)で下部に移動することを示す。毛管吸引だけで溶液
移動が生じるのなら、飛灰表面の含量は極めて低濃度にな
るはずですが、200mL試料で初 期値の1/2、300mL試料で初
期値の1/3程度にしか減らない。これは下部への水分移動
については、毛管吸引だけでなく溶液からの蒸発移動も寄
与していることを示す。以上、吸湿は飛灰表面近傍で起き
ており、生じた溶液の水分は再蒸発により飛灰内部に輸送
されるとともに、溶液の一部は毛管吸引によっても内部に
輸送される結果、表面吸湿層のCaCl2濃度が時間と共に低
下するので、吸湿速度も低下し、結果的に(時間) 1/2則が
成立したものと結論された。


吸湿速度測定に用いた9本の試料の内、20%および30%の
CaCl2を含む100mL飛灰試料2本は、途中で固液分離による
飛灰からの溶液の漏出が生じました。固液分離時の吸湿量
と飛 灰の空隙率、溶液体積との関係を表7.3.2に示す。吸
湿で生じたCaCl2水溶液が空隙を完全に満たすと固液分離
が生じ、飛灰からの溶液漏出が始まることが分かる。すな
わち、

(単位体積中の水溶性成分が吸湿して水溶液となった時の体
積) > (飛灰中の非水溶性成分が作る空隙の空隙率) (1)

の関係が成り立つと、飛灰からの溶液流出が始まる。
例えば空隙率=60%、湿度= 80%では、CaCl2含量>0.14
g/cm3でいつかは溶液漏出が起こるが、同じ条件でもCaCl2
含量<0.14g/cm3なら、いつまでたっても漏出は生じない。



 実際の飛灰では、その重量により空隙率も変化。しかし
ながら飛灰のかさ密度 を0.9から1.14に増やして空隙率を
低下させても、吸湿速度は変化しなかった。空隙率の低下
に伴う水蒸気の実効拡散係数の低下による吸湿減 速とCaCl2
濃度の増加による吸湿加速が互いに打ち消し合うため、実
験範囲内では空隙率変化が吸湿速度に影響を与えないもの
と考えられます。飛灰は一般にフレコンに入れて保管され
ています。フレコンは通気阻害性があるため、飛灰の吸湿
を妨げる効果がある。飛灰の大気接触面をフレコンシート
で覆って吸湿させなかったが、吸湿速度は無いときの6割程
度にしか減少しなかった。飛灰の吸湿は、通気性の悪い飛
灰層を通って水蒸気が内部に侵入することによって生じる
ので、フレコンシートの通気性が少々悪くても吸湿速度は
それほど低下しないものと考えられる。これまでの実験で
は、実験時間を短縮するため、吸湿条件を50℃、90%RHとし
てきましたが、実際の温度や湿度はさまざまです。そこで
温度30℃、20℃、湿度90%、70%で吸湿 速度を測定したとこ
ろ、いずれの場合も、吸湿初期を除き吸湿量は(時間) 1/2
則に従って増大。吸湿量=(k・吸湿時間) 1/2+定数とした
場合の、吸湿速度定数kのCaCl2濃度依 存性を図7.3.3に示
します。kはほぼ濃度の1.5乗で増大するが、温度や相対湿
度、絶対湿度との間には単純な関係は成立しない。ただし
同じ温度なら湿度が高いほうが吸 湿は早いですし、同じ相
対湿度なら温度(絶対湿度)が高いほど吸湿は早い。なお、
含有CaCl2と等量以下の水を飛灰に均一に添加した後の初期
吸湿速度は無添加の場合よりも低下するが、吸水速度定数
自体にはさほどの変化はありませんでした。吸湿量は(時間
) 1/2則に従うので、(1)式の関係が成立するのに十分な量
のCaCl2を含む空隙 率φ、高さLの飛灰の上面から吸湿が
生じた場合、飛灰からCsが漏出るのに要する時間T は、T
= (Lφ)2 /kで与えられることになります。溶液漏出に要
する時間は蓄積飛灰の高さと 空隙率の二乗に比例するの
で、堆積高さが低く、かさ密度が大きい飛灰ほど、溶液漏
出が生じ易くなる。高さ100cm の筒状容器に入れた、空隙
率60%、CaCl2 含量30%の飛灰 を30℃、90%RH の大気中に晒
した場合の漏出時間は6000日ですが、高さが10cmに減少す
ると、漏出時間は60 日に減少。つまり、通常のフレコンに
飛灰を一杯 に充填しておけば、理論上、少なくとも16年は
溶液漏出は生じないことになる。現実の保管環境は、一般
に温度も湿度も上記よりは相当に低く、通常の保管状況に
おいて 100年程度は溶液漏出はないといえる。
                   この項つづく

【エピソード】






ひさしぶりに、八風街道沿いの『ヒトミワイナリー』に出
かけました。コロナウイルス禍で経営は大変だと思いなが
らも、ローケーションや店の佇まいの"奧域の広さ"(わかっ
てもらえるかな?!、竜王のアウトレットの『モンベル店』
にある小さな書籍コーナのように、客がよりそうもない"ム
ダなスペース"が実は、ある種の奧域の拡張現実を備えてい
る商業空間とでも言えるかな)。ただひとつ、気になるの
は駐車スペースが一時的ラッシュ時に対応できないところ
ぐらいだが、それも、電動軽自動車が普及すれば(片道50
㎞以内範囲)それも解決できのではと思ったりして、焼き
たてのパント・旅するイワシトマトソースパスタ・赤ワイ
ン(Shindo Funi Ryuo Yamanoue Bailey A)を帰宅後頂きまし
た。



□ 森田正光の「きょうもどこかで燃えている」はおもし
ろかった(環境ビジネス 2022.夏季号)

【脚注及びリンク】
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地域循環共生圏概論 57

2022年08月08日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.8.8|更新日:2022.8.
地域循環共生圏概論 57


□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅲ
7月15日以来だから24日間の空白の間に、ウクライ侵攻(
ンガリー動乱やプラハの春やを想起させる)やヨーロッパ
最大の原発・ザポリージャ原発やチョルノービリ原発が攻
撃・占領され、ウクライナ市民の人命だけでなく、核爆発
の恐怖を楯にした武力侵略が拡大し、
新型コロナの第7
拡大する最中に、国内の原発が政府と電力会社により、ウ
クライナ紛争によるエネルギー逼迫や大規模気候変動に炭
酸ガス削減を□実にし、老朽原発再稼働させようしており、
片や福島第一原発事故の放射汚染廃液排液の海洋拡散投棄
関連施設の建設が始まり、輪をかけたように、新型コロナ
ウイルス、サル痘のエピデミック・パンデミック禍に覆わ
れ、猛暑、異常気象、核戦争と「世界の終わりの影」を感
じさせる昨今であるが、いまある課題を着実にすすめる。




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第7章 コンクリートの除染の基礎と汚染廃棄物の
         最終処分へのセメント・コンクリート技術の活用
7-1 放射能汚染とコンクリート技術の関連
1.はじめに
がれきや廃棄物の処理・処分をコンクリート技術の観点から
考察。
概要を図7.1.1 に示す。種々の汚染物に除染や固型
化など何らかの処理を施し、まずは再利用することを考え
る。除染処理により放射性 Csbが濃縮された廃棄物や元々
高濃度の汚染物は、Csの水溶性の有無により処分方法を変
えることが必要。放射能濃度と他の有害成分にもよるが、
公共水域の保全の観点からは、Csが水溶性でなければ放射
性Csによる周辺環境による汚染がなく、安定型相当の処分
場でも処分できる、Csが水溶性の場合は放射性Csが環境に
再放出される可能性を否定できないため、溶出を問題ない
レベルに制御する、セメント固型化を施し管理型相当の処
分場に処分する、もしくは環境から遮断可能な遮断型相当
の処分場に処分する等が必要となる。


 コンクリートがらについて考えると、岩手県及び宮城県
でのがれき処理の実情報から、不燃系廃棄物のうちコンク
リートがらは膨大な量だが、全量が路盤材などとして有効
に 活用されている。岩手県や宮城県でのコンクリートが
らもまったく放射性Csによる 汚染がないわけではないが、
十分低いレベルであり、再利用による被爆は無視しえると
考えられる。
しかし、より汚染レベルが高い地域において
は汚染したコンクリート構造物を単に粉砕再利用すると放
射線影響が無視できなくなる可能性もある。ただし、この
場合も、コンクリートの汚染は表層部に留まっている可能
性が高いので、表面部分を研削・除染することで再利用を
促進でき、廃棄物量を削減できる。このための基本情報と
して、環境汚染の程度とコンクリートへの放射性Cs浸透深
さの関係を調べている。
  一方、汚染廃棄物処分において注意を要するのは前述の
ようにCsが水溶性として含有される。ここでは、セメント・
コンクリート技術は二つの役割を持つ
。一つはセメント固
型化による放射性Csを含む有害成分の逸散防止であり、も
うひとつは最終処分場への鉄筋コンクリートの適用があり。
ここで特に重要なのは、第4章でも触れているが、水溶性
Csの割合が高い焼却飛灰であり、その特性を理解したうえ
で処理処分する(要注意)。このため、本章では焼却飛灰
の特性を説明し、その上で、セメント固型化と鉄筋コンク
リー ト施設で最終処分する際の注意事項の説明、及び現在
の研究状況を説明される。
----------------------------------------------------
注:福島第一原子力発電所事故による放射能汚染は放射性
Cs(セシウム)によるものですが、Csという元素は特別なも
のではなく、天然にも安定 Cs(放射壊変しない種類のCs)
が微量ながら普遍的に存在する。放射性Csはこの安定Csに
比較すると、濃度としては数桁以上も低く、化学的挙動は
両者に差はない。本章では放射性Csの固定化による溶出防
止を取り上げるが、固定化は圧倒的多数の安定性Csに対し
ても行われることになる。
----------------------------------------------------
7.2 実コンクリートへの放射性 Cs 浸透解析と再利用への
考え方
7.2.1 実コンクリートへの放射性 Cs の浸透解析
(1) はじめに
高圧水洗浄では、コンクリートの除染効果は限定的だが、
コンクリートを研削する超高圧水やショットブラストによ
る方法では効果があることが示されている。しかし、具体
的な浸透深さや汚染レベルの影響に関する情報はあまりな
い。チェルノブイリの事故の事例では、Cs-137とSr-90は
少なくとも50mmでは浸透していたが、5mm までに 70%が存
在する。このような状況から、福島県の異なる汚染度の地
点からサンプルを採取し、空間線量率と汚染の程度を調査
する。調査方法としては除染の手法としても有効と考えら
れるウォータージェットとCsの分布が直接的に測定できる
β線ラジオグラフを用いた。

(2) ウォータージェットによる汚染コンクリートのCs浸透
深さの実測
サンプルの採取場所は、福島県の居住制限区域で、帰還困
難区域の直前です。より空間線量率(高さ1m の道路上)が
低い 2.7~2.8μSv/hrの地域における擁壁 3 箇所から直径
10cmのコンクリートコアを、より空間線量率が高い 7μSv/
hrの地域における道路側溝から蓋(JIS A 5345 道路用側溝
蓋 3 種蓋 412*95*500mm)を 3 箇所から採取(2012年12月17
日)。外観から劣化度が異なり、新品のもの、表面のセメン
トペーストが多少減少しているもの、劣化が進み粗骨材が
露出していたものである。


図 7.2.1 に空間線量率とコンクリートの表面線量率(コン
クリート表面1㎝以内)の関係を示す。空間線量率が高まる
に従いコンクリートの放射能汚染レベルも高まる。今回サ
ンプリン グしたもっとも高い空間線量率の地域 は、文部
科学省によるデータではおよそ3000kBq/m2 (300Bq/cm2)の
Cs-134と Cs-137の沈着量]。GM管によるとこの地域で採取
したコンクリート蓋の表面線量率は5k~10kcpm程度で、
0kcpmは33Bq/cm2となる。後述の放射能濃度測定でも39Bq/
cm2(2013年3月13日測定)で、文部科学省のデータと比較す
ると、測定地点のコンクリートには降下したCsの約1/10程
度が残存しコンクリート上の土壌を含む植生(コケ)には
1
/3程度が今も残存していると推定する。
 コンクリートコアをウォータージェット(上図 7.2.2)で
研削する前に高圧水洗浄(3MPa)し、付着している泥などを
除去したが、表面線量率の低下は少なく、ほとんど影響が
ないものから最大でも 2割程度の低減でしていた。擁壁の
上面と側面では、明らかに側面の放射能レベルが数分の1
程度に低くなっている。コンクリート蓋はコンクリートコ
アと異なり、高圧水洗浄により 3~4割程度、放射能レベル
が低下しました。側溝の蓋は道路面近くに存在するため、
ほこりを多く付着していたものと推定する。


 また、コンクリートコアをウォータージェット(上図 7.
2.2)で研削する前に高圧水洗浄(3MPa)し、付着している泥
などを除去したが、表面線量率の低下は少なく、ほとんど
影響がないものから最大でも 2割程度の低減だった。擁壁
の上面と側面では、明らかに側面の放射能レベルが数分の
1程度に低くなっている。


コンクリート蓋はコンクリートコアと異なり、高圧水洗浄
により3~4割程度、放射能レベルが低下した。側溝の蓋は
道路面近くに存在するため、ほこりを多く付着していたも
のと推定できる。次にウォータージェット(水圧:150MPa、
ノズル:径 0.1mm×7個、噴射流量:5.58L/min、噴射反力:
50.9N、2012年12月17日)によりコンクリート蓋を研削。研
削による 表面変化を上図7.2.3に示す。コンクリート表面
のセメントペーストが研削され、骨材が露出する様子が分
かる。研削時間と表面線量率変化の関係を図 7.2.4に示す。
研削時間と表面線量率変化の関係はどの蓋でも同様に、研
削時間と共に急激に表面線量率は低下した。研削前後の供
試体質量から、除去深さを推定し、表面線量率との関係を
下図7.2.5 に再表示する。蓋ごとに表面線量率プロファイ
ル、すなわち放射性Csの浸透プロファイルが異なることが
分かる。空間線量率がほぼ同じ地域であり、降雨によりも
たらされた放射性Csに大差ないとすれば、プロファイルの
差はコンクリートの品質に依存するものと考えられる。こ
れ乾いた表面に降雨により放射性Csがアルカリイオンとし
てもたらされたとするならば、拡散ではなく吸水に伴いコ
ンクリート中に放射性Csは移動したものと考えられ、表面
が緻密なほどコンクリートは吸水によるCs汚染の程度が小
さくなったと考える。

 一方、除染ということを考えれば、空間線量率が類似で
あり、類似した量の放射性Csがもたらされたと推定するな
らば、除染にウォータージェットで研削する時間は同じ空
間線量率の場所ではコンクリートの質によらずほぼ一定で
よい可能性があると考える。空間線量率7μSv/h の環境で
は、40×30cmを30秒(250s/m2)研削すれば65~80%の削減効
果が見込め、90秒(750s/m2)研削すれば85~95%の削減効果
が見込まれる。ただし、今回の研削条件はプロファイル測
定の精度を上げるために穏やかに設定したもので、ウォー
タージェットの水圧を高め数倍の効率を得ることは可能。

(3) β 線ラジオグラフによる分布測定
ウォータージェットによる研削では脆弱部分が先行して研
削され、表面から必ずしも均一に研削できているとはいえ
ない。見かけ上は放射性Csの拡散によるとも考えられる濃
度プロファイルが得られたが、別の方法で検証する必要が
ある。放射性物質の分布測定法には、ラジオグラフがある。
放射線に感光する素材の上に放射性物質を置くと、放射線
が照射された位置のみが読み取れる。放射性Csはβ崩壊し、
β線とγ線を放出する。γ線は透過力が強いので、放射線
源がたとえ局部であっても試料内部を拡散するため高い空
間分解能を得ることが困難です。β線であれば、物質透過
能力が低いため(コンクリート中ではおよそ0.06mm)、より
高い空分解能が得られます。ここでは感度が高く測定レン
ジが広いイメージングプレート(IP)を用 いたβ線ラジオグ
ラフを試す。測定はGE Healthcare社製 Typhoon FLA 7000(
空間分解能 50μm)を用い、2013年3月13日から166時間行っ
ている。
                    この項つづく

✔ところで、ごみ処理施設建設問題だけでなく、流域下水
道の終末処理場においても放射性物質の混入も想定できる
のではとハタっと気付き、そのワークフローも作成・プロ
グラミングしなければならない。これでは手が幾つあって
も足りませんねと、小生の"過剰適応症"が首を擡げる。


出所:資源エネルギー庁

 【エピソード】



□ 巻頭絵|「マイクロ水力発電」で
浄水場を再エネ電源に落差34.7㍍で67世帯分を発電


出所:ダイキン工業
□ 
気候変動対策の切り札(
Bargain Power)は植物由来肉
気になる情報として先月30日、投資効率はなんとゼロエミ
ッション車の11倍という見出しが飛び込む。「気候変動対
策への投資」と言うと、ソーラーパネルや風力発電といっ
た再生可能エネルギーの開発に関する技術や、二酸化炭素
を排出しない核融合発電などの最先端技術を思い浮かべる
人は多いだろうが、動物由来の素材を使わずに生産された
代替肉への投資が、他の分野のテクノロジーへの投資に比
べて圧倒的に効果的だという。


$ Food for Thought: The Untapped Climate Opportunity in
 Alternative Proteins, BCG, July 8, 2022

さぁ!この滋賀県で最新鋭の大豆植物栽培工場を建設して
日本を救おう!友よ、夜明けは近い!^^;。

【脚注及びリンク】
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地域循環共生圏概論 56

2022年07月15日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.7.15|更新日:2022.7.
地域循環共生圏概論 56


□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題Ⅱ
国内の自治体の「ごみ処理場施設管理」は大災害などの非
常事態に備え管理区内及び外の廃棄物の一時保管スペース
がネットワークが設計構築されている(今回の彦根市の設
備老朽化による三重県への余剰ごみ処理委託などの事例が
そうであるように、充全ではないが)。周知の通り、滋賀
県は、京都府・福井県・石川県に原子力発電所及び関連施
設が日本海に集中し万一放射性物質が該当設備より飛散拡
散された場合、住民は避難するとともに、汚染された周辺
地に拡散した「汚染物の一時的な中間的集積場として使用
すするシーンのワークフロー化」しておく必要があり、さ
らには福島第一原発事故にならって中間処理場として、拡
散防止・外部との遮断手段及び汚染の除及びに集約保管並
びに搬出手順を明確にして於かなければならないはずだ。
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□ 放射性物質の除外処理をどうするか ②
6.2.7 バグフィルターの健全性の維持
 バグフィルターはろ布が張られた筒状のものであり、大
規模施設では数百本が設置され、
ろ布が全く破れないとい
うことはないが、その対策として、ろ布にばいじんが堆積
することによる圧力損失の上昇や、重さによるろ布の脱落
等を防ぐため、表面の堆積層 は「パルスジェット」と呼ば
れる一時的な衝撃により順次払い落とす。払い落とし時に
若干のフィルター効果の低下するが、フィルター効果を維
するためにろ布にはプレコートがなされており、大きな
影響はないといえる。また、払い落としは全てのろ布に同
時に行われるわけではなく、順次行われるので、全体とし
てのフィルタ効果は維持される。また、ダストモニタをバ
グフィルタの後段に設置することで、ろ布の健全性を常に
確認することができる。さらに、点検時などを利用して定
期的にろ布の強度劣化や目詰まり程度を計測することで、
事前の交換を行うという予防処置もとられている。
 


図6.6 既存焼却施設内の空間線量と付着灰の放射性 Cs の
実態調査の結果例 

6.2.8 プロセス内への蓄積挙動
 施設を維持管理する作業者の安全性への配慮も必要です。
放射性 Cs の設備材料等への蓄積が生じると、施設内の作
業空間において、定常的な設備点検時あるいは長期的には
施設更新時に十分に留意することであり、放射性 Cs の蓄
積挙動を解明することが重要。実態調査結果の一例を図6.6
に示す。耐火物表面の付着灰の放射性 Cs 濃度が低いにも
かかわらず、耐火物が存在する場所(高温になる炉内など)
の空間線量が高い。このことは、耐火物への蓄積を示唆し、
耐火物の深さ方向における濃度分布の測定結果からも、内
部に浸透、蓄積している現象が確認されている。
付着灰の濃度は後段に行くほど高くなっており、排ガスの
冷却とともに揮発した放射性セシウム化合物が凝縮して、
固体化していくことを反映していると考えられる。

6.3 焼却処理における放射性セシウムの挙動 
放射性セシウム(Cs)に汚染された都市ごみを焼却処理す
ると、放射性 Cs が濃縮された主灰と飛灰が処理残渣とし
て生じる。放射性 Cs の濃縮割合に加えて、放射性 Cs の
溶出性も主灰と飛灰とでは著しく異なる。これは、各灰に
含まれる放射性 Cs の化学形態が違うことを示唆。また、
下水汚泥の焼却灰中の放射性 Cs の化学形態についても同
様に、その溶出性の違いから都市ごみの飛灰中の形態と異
なり、燃やすもの、つまり、被焼却物の組成が放射性 Cs
の化学形態----Cs塩の生成・分解挙動に影響を与えている
ことを意味する。この化学形態の違いの説明には熱力学平
衡計算をそれらの焼却系に適用。まず、焼却施設の焼却炉
を一つの系として捉え、平衡計算を行い、つぎに実際の焼
却施設は様々な処理過程からまる施設内の全体の挙動を把
握するマルチゾーン平衡計算を適用し、加えて、汚染され
た各バイオマスの燃焼に対して平衡計算を適用するととも
に、ラボ熱処理実験を行い、放射性 Cs の挙動を調査して
いる。

※「6.3.2 熱力学平衡計算」の項は一部割愛。
(1) Cs の挙動を再現するための平衡計算法の確立
FactSage には、Cs 化合物に関する熱力学パラメータが少
ないことから、市販の状態で平 衡計算を行うと、Cs はす
べて塩化セシウム(CsCl)ガスとして揮発してしまう結果
となり、本研究では、K の挙動を参考にして Cs の熱力学
パラメータを整備。 パラメータ整備後に、都市ごみおよび
下水汚泥の焼却系について平衡計算を行い、実際の挙動一
致するかどうか確認し、実際の挙動と一致した場合には、さ
らに、ラボ熱処理実験を行う対象(雑草類、落葉(広葉樹)、
落葉(針葉樹)、小枝)にこの計算法を適用する。

(2) マルチゾーン平衡計算
 マルチゾーン平衡計算とは、焼却施設の重金属の挙動を
把握するために Ginsbergらが提案したモデル9。先ず、こ
のモデルを一般廃棄物焼却施設へ適用することにより、Cs
の挙動の理解を試みる。先ず、ストーカ炉型の焼却施設を
図 6.3.1 のように 3 つのゾ ーン(一次燃焼ゾーン、二次
燃焼ゾーン、バグフィルターゾーン)に分け、さらに、一
次燃 焼ゾーンを4つのゾーン(乾燥、熱分解、燃焼、おき
燃焼)に分け、焼却施設を計6つのゾ ーンに分ける。各ゾ
ーンに対して熱力学平衡計算ソフト FactSage(Ver. 6.3)
を用いて平衡計算を行っています。各ゾーンの温度や空気
比(=投入空気量/完全燃焼に必要な空気量)➲ 燃焼条件は
図 6.3.2 のように設定。


 各ゾーンの計算内容を簡単に説明する。まず、ごみを投
入すると乾燥ゾーンに入り、最も上流側の乾燥ゾーンでは、
水分が 蒸発すると仮定する。次の熱分解ゾーンでは、乾燥
したごみが熱分解して低分子となって揮発化すると仮定。
ここでは、ごみが熱分解した割合、すなわち変換率(Rc)
を設定し、Rc については、Ginsberg らの文献値 9 を参考
にして、0.7-0.8 としている。燃焼ゾーンでは、熱分解後
の固形残さを燃焼すると仮定。ここではさらに、変換率に
加えて燃焼ガスへの灰の混入率(φ)を設定。φは、肴倉
らが報告する一般廃棄物の主灰と飛灰の発生量と元素組成
データ8から揮発しない元素を選び、 飛灰への移行率を計
算し、その値を φと挿入。


 最後に、おき燃焼ゾーンでは、未燃焼 炭素を燃やすと仮
定し、一方、一次燃焼後については、二次燃焼ゾーンで、
φ分の灰と一次燃焼の各ゾーンからの排ガスを初期値とし
て、高温で完全燃焼させることを仮定する。最後のバグフ
ィルターゾーンでは、二次燃焼後の排ガスのみが 170℃へ
急冷されるという平衡計算になっている。マルチゾーン平
衡計算の評価・考察は二段階で行った。まず、二酸化炭素
等の主要排ガス成分を計算し、既存のデータと比較。次に、
Csを含む無機元素の各種灰の含有率を計算し、調査結果と
比較している。

(3) バイオマスごとのラボ熱処理実験
A市処分場において野積みされた草、落葉、小枝などを採取
し、それらを室内にて2週間風乾させた。雑草類、広葉樹の
落葉、針葉樹の落葉、小枝を裁断もしくは粉砕し、熱 処理
するサンプルを調製しました。調製したサンプルを図 6.3.3
に示す。小枝は細かく粉砕するとバークとそれ以外の部分
が均一に混じらないように見えたことから、1cm 程度に切
り落としたものをサンプルとした。90×90mmのアルミナ容
器にサンプルを入れ、 図 6-3-4 のマッフル炉(ヤマト科学、
FO100、炉内:100×100×170mm)を用いて熱処理した。放射
性 Csの分析では、灰の体積として U8 容器の高さ5mm ほど
の体積が必要になるため、仕込み量を 5g~13gとして、燃
焼処理および炭化処理を行う。燃焼処理では、空気を約1~
2L/分で流しながら、約10℃/分でサンプルを昇温し、目的
の温度に達したところで1時間30分間その温度を保持した。
空冷後に灰をU8容器に移し、ゲルマニウム半導体検出器を
用いて灰中の放射性Cs濃度を測定しました。処理前後の重
量を測定し、灰化率および炭化率を算出した。得られた熱
処理残渣に対して溶出試験を行い、処理温度と灰からの放
射性 Cs の溶出性を調べる。溶出試験では、残渣に対し50
~200倍の超純水を添加し、6時間振とうさせる。振とう後
に溶出液を0.45µmフィルタでろ過し、ゲルマニウム半導体
検出によりろ液中の放射性Cs濃度を測定。測定値と超純水
の添加量から溶出率を決定した。また、溶出液の電気伝導
度およびpHを測定する。

6.3.3 結果と考察
(1) Csの挙動を再現するための平衡計算法の確立


図 6.3.7 バイオマスごとの燃焼温度とセシウムの分配挙動
  に関する平衡計算結果 (上から、a)牧草、b)ポプラの
  葉、c)松葉、d)廃木材) 

計算結果により良好なが得られたので、牧草、ポプラの葉、
松葉、廃木材を燃やした条件を計算。その結果を上図 6-3-
7 に示す。
1.全体的な傾向として、低温にてアルミノシリケートが
 生成し易く、温度が高くなるとアルミノシリケートが分
 解し、CsCl や水酸化セシウム(CsOH)ガスが生成される
 結果となった。ただし、それらのガスが発生する温度や
 量はバイオマスごとに異なり、Cs の挙動も被焼却物の組
 成依存性を示唆。
2.また、下図 6-3-8に示す Kの挙動と比較すると、通常
 の焼却温度、すなわち 850℃については、 Cs と Kの挙
 動は似ているが、低温下においては化学種の生成挙動が
 かなり異なる。したがって、様々な熱処理条件を予想す
 るには、Kの挙動を Csの挙動として予測することに限界
 があることもわかった。

(2)マルチゾーン平衡計算の適用(一部割愛)



 ここで、焼却灰の放射性 Cs レベルにより、灰の処分方法
も異なってくることから、飛灰もしくは 主灰中の放射性
Cs 濃度を制御するニーズがある
。実際の運転で調整できる
空気比およ び温度です。まず、温度については、比較的
容易に変更できることから、その影響を検討し てみた。
一次燃焼温度を変化させた場合の各ゾーンの放射性 Cs の
組成の変化を図 6-3- 11 に、各種灰への移行率を 6.3.12
に示す。燃焼温度を高く設定すると、燃焼ゾーンから CsCl
として Csの一部がガス化し、それらが冷却過程で固体化す
る結果となりました。したがって、燃焼温度を高くすれば
するほど、飛灰中の放射性 Cs 濃度および飛灰への移行率
が高くなることが示唆された。燃焼温度を高く設定するこ
とは、飛灰へ放射性 Csを濃縮する方法として有効かもし
ない



また、空気比の影響を検討した結果を図 6.3.13 に示す。
空気比が1より低い、つまり、 還元的な雰囲気では、Cs
は CsClガスとして揮発しやすくなることが示唆された。焼
却 処理としてこの程度の低空気比で運転するのは困難だが、
一次燃焼の各ゾーンの空気量 の割り振りを調整することで、
Cs を飛灰へより濃縮させる方法があるかもしれない。ただ
し、空気比と炉内温度は独立な関係ではないことから、実
際の操作ではその関係を踏まえた操作条件の設定が必要に
なる
(3) バイオマスごとのラボ熱処理実験
.3.4 結論 
1.汚染廃棄物の熱処理過程における放射性 Cs の挙動を
 理解することを目的に、平衡計算ソ フト FactSage の熱
 力学データベースに Cs のアルミノシリケートとシリケ
 ートのデータを加 えて平衡計算した結果、都市ごみと
 下水汚泥の焼却時の放射性 Cs の挙動を再現できること
 がわかりました。なお、アルミシリケートには多様な構
 造があることから、パラメータの精 緻化は今後重要な課
 題と考えています。アルミノシリケートは低温では安定
 に生成するものの、高温では分解し易く、分解する温度
 も被燃焼物の組成に依存する。
2.マルチゾーン平衡計算をストーカ炉型の焼却施設に適
 用し、主要排ガス組成の計算値は 既存の文献値と概ね一
 致することがわかった。また、放射性 Csの挙動も比較的
 良好に 再現できたが、実際の挙動を定量的に再現できな
 い元素もあり、更なる改良が必要。
3.挙動の制御という点では、操作条件として温度と空気
 比、組成として Cl 量や Ca/Si が Cs の挙動に与える影
 響を予想したが、さらなる研究調査をおこなう。
4.ラボ熱処理実験により、バイオマスごとの燃焼過程に
 おける放射性 Csの挙動、灰への移行率等を明らかにした。
5.放射性 Csの灰への移行率と燃焼温度の関係はバイオマ
 スごとに特徴があり、除染物の焼却処理では注意が必要
 となる。特に、雑草類は高温処理でも灰への移行率が高
 くなる。放射性Csを主灰もしくは飛灰のどちらかに濃縮
 できる方法が提案できる可能性がある。
6.また、完全ではないが平衡計算によりある程度は Csの
 挙動を再現でき、平衡計算法の有用性が示唆れた

6.4.焼却施設における炉内耐火物等への蓄積挙動調査
6.4.1 はじめに
 放射性物質を含む廃棄物を焼却処理する結果、そのよう
な焼却施設の焼却灰や飛灰から高濃度の放射性セシウム(Cs)
が検出され、問題となる場合がある。このような放射性物
質を含む廃棄物の焼却処理過程でのCsの挙動に関して、多
くの施設で調査が行われているが、焼却施設の維持管理や
廃止後の解体撤去の際における作業者の放射線被ばく防止
の観点、さらに維持管理や解体撤去により生じる廃棄物の
適正処理の観点から、施設設備内における放射性Csの蓄積
等についての現象を明らかにする必要がある。そこで、こ
こでは、焼却施設内の点検補修時に生じた耐火物試料を採
取し、放射性物質等の濃度分布を把握し、既存焼却施設に
おける耐火物への放射性物質蓄積の実態調査を行った。

6.4.2 調査方法
(1) 都市ごみ焼却施設における放射性Csの炉内での蓄積・
分布に関する実態調査------放射性Csの焼却炉内での蓄積・
分布の特徴を把握するため、実施設の炉内から後段の排ガ
ス処理設備にわたる範囲で設備付着物を採取するとともに、
メンテナンス時の被曝評価のため炉内外の空間線量率を測
定。付着物サンプルについては放射性Cs濃度を測定。
(2) 既存施設における耐火物中の放射性Cs及び安定Csの実
態調査----現在稼働している都市ごみ焼却・溶融施設の点
検補修時に生じた耐火物廃材を採取し、採取した耐火物廃
材を図.6.4.1 のように炉内側から原則的に2cmの厚さ毎に
切断し。こうして得た各層試料の測定を行い、それぞれの
測定項目は放射性 Cs(Cs-134、137)、安定Cs(Cs133)、
Si、Al、Ca、Mg、Na、K、Clとした。


  また、ブランク値として焼却施設等で使用される前の耐
火物中の放射性Cs濃度の調査を行いう。調査は焼却施設、
溶融施設で使用される耐火物のうちSiO2-Al2O3系,
SiC
系、Cr2O3 系のものを用いて行った。使用前耐火物に関し
ては、放射性 Cs以外の天然核種 の測定も合わせて行う。

6.4.3 調査結果
(1) ごみ焼却施設における放射性 Cs の炉内での蓄積・
 分
布に関する実態調査
 下図6.4.2 に施設の各サンプリング場所と放射性Cs濃度
および空間線量率について示しす。炉内で比較的温度の高
い箇所(炉下、中、上、ガス冷入口、出口)では炉壁付着物
中の放射性Cs濃度は高くないが、やや温度が低くなってク
リンカができやすい部位では放射性Cs濃度が高いという傾
向が確認された。空間線量率については、いずれも電離則
に基づく管理区域設定の目安である 2.5μSv/h以下の値。
(ただし、常時作業を行わない炉内についても同様の基準
を当てはめるかについては要議論)。しかし、付着物中の
放射性Cs濃度が高い箇所よりも、比較的高温部で耐火物が
設置されている箇所(炉下、中、上、ガス冷入口、出口)
において空間線量率が高い傾向にあり、耐火物内部へ Cs
が浸透していることが予測された。



(2) 既存施設における
      耐火物中の放射性 Cs 及び安定 Cs の実態調査
使用前耐火物における放射性Cs等測定結果の例を表 6.4.1
に示す。耐火物の材質は 溶融施設で使用されることの多い
Cr2O3系耐火物だが、いずれのCr2O3含有量(30%、60%、80%)
の耐火物においても放射性Csは不検出。焼却施設で使用さ
れることの多いSiO2-Al2O3系、SiC系耐火物でも同様の調査
を行ったが、いずれの耐火物においても放射性Csは不検出。
一方で、いずれの材質からも Th-234、Ra-226などの天然核
種が検出されている。これらは、耐火物に使用される鉱物
由来であると考えられ、多い場合で 2000Bq/kg程度になる
ことから、炉内環境調査等において放射性Csでない核種の
影響を考慮する必要がある
考える。


  原発事故以前の耐火物廃材にごく微量でも放射性 Cs が
含まれていたがどうか、ベースとなるレベルを把握、2010
年度に採取した耐火物廃材を用いて原発事故以前調査。そ
の結果、いずれの部位においても放射性Csは不検出。これ
は調査対象が1施設のみ。原発事故以前の耐火物廃材に放
射性Csは含まれていないと考えてよいする(全般的にサン
プルが少ないことが問題で最低3施設は調査すべきでは?)。
 原発事故後の2011年度から 2012年度にかけて各施設で採
取した耐火物については、施設が立地する地域が放射性 Cs
にどの程度汚染されているか、状況は様々であり、放射性
Cs が検出された試料は一部。耐火物中の濃度分布として顕
著な傾向が認められた結果の一例を図 6.4.3に示す。


 いずれの元素も表層から炉内側になるにつれ減衰
する傾向を示した。同族元素である Cs、Na、K も同じ傾向
を示したことから、耐火物内での Cs の浸透・蓄積を知る
うえで、Na、K を指標にできる可能性があると考えられる。
また、Clも Cs と同様の傾向を示す。高汚染地域である施
設の試料に関する放射性 Cs の測定結果を図 6.4.4 に示す。
これより、使用後耐火物の炉内壁面部が最も高く、深くな
るにつれて濃度が減衰していることが分かる。炉の最下層
でも放射性 Cs が検出されていることから、放射性 Cs を
含む廃棄物を長期間処理することで、耐火物全体に全体に
放射性 Cs が浸透している可能性が考えられる。


 次に、ある施設において雰囲気温度の異なる 3箇所から
採取した耐火物および耐火物付 着物の放射性 Csの測定結
果を表 6.4.2 と図 6.4.5 に示す。耐火物付着物から高濃
度の放射性 Csが検出されたが、雰囲気温度別にみると、よ
り低温部で放射能濃度が高い傾向にある。飛灰中に含まれ
る放射性 Cs は CsCl になっていると想定される、この場
合800℃以上では多くが揮発して排ガス中へ移行している
と考えられ、温度が低くなるにつれ凝縮すると考えられる。
このため、二次室・後燃焼室の雰囲気温度よりも上部煙道
部の 雰囲気温度の方が固体中に含まれる放射性 Csの濃度
が高くなると予想され、付着物の濃度に影響したと考えら
れる。

 6.4.5 より、2 つの採取材料からいずれも放射性 Cs が検
出されていることに加え、耐火物表層の放射性 Cs 濃度が
大きく異なっている。雰囲気温度が高い二次燃焼室では
2000Bq/kg程度、雰囲気温度が低い上部煙道では8000Bq/kg
程度。表 2 から、付着物の放射性 Cs 濃度が大きく異なる
ため、とくに表層付近では影響 が大きく現れたと考える。
しかし、炉の内側に移るにつれ上部煙道部と二次燃焼室の
放射性 Cs 濃度はほぼ同じになり、上部煙道部の試料では
内側 10cm 以降はほぼ 0Bq/kg となる。前述同様 CsCl が
化学的に主であるとすると、耐火物内部の温度が浸透に影
響 を与えると考えられる。二次燃焼室では雰囲気温度が
850~900℃であることから耐火物 表層も同程度の温度と考
える。また、焼却施設で使用される主な耐火物(SiC 系など
は熱伝導率が大きいことから、耐火物内部の温度変動は比
較的小さい(100℃程度)と考えられ、気孔を通じて揮発した
CsCl が浸透すると考える。逆に上部煙道部では雰囲気温度
が 550~650℃と低いため、飛灰の付着により耐火物付着物
および耐火物表層の濃度は高くなるが、内部において気相
で移動する CsCl が少なく、その分濃度減衰の勾配が大き
くなり、浸透深さも短くなったものと考える。なお、放射
性 Cs が検出されなかった他の施設で安定 Cs を指標とし
て調査した結果では、 耐火物の深さ方向に安定 Cs が浸透
している結果もあるが、濃度勾配が認めにくい場合もある。
通常の可燃ごみには一定レベルの安定 Cs が含まれていて、
既に長期的に暴露されるため、平衡状態にある可能性が高
い。その場合は、炉材の温度分布に応じた濃度勾配が生じ
る可能性があり、今後は温度分布との関係で考察していく
必要がある。また、炉材の材質や気孔率などにも影響を受
けると考える。
                    この項つづく

【エピソード】






 
相模原市 ごみから貴金属を回収してSDGs推進

 6月16日、神鋼環境ソリューションは、相模原市と共同で
市鉱山と言われる廃棄物に含まれる貴金属資源に着目し、
調査・研究を行った結果、同社が建設した流動床式ガス化
溶融炉から金と銀を回収したことが話題になった。流動床
式ガス化溶融炉はごみを500~550℃の高温で流動する砂に
よってガス化燃焼させる施設。一般ごみとして廃棄された
電子機器等に含まれた貴金属は比重が高いため、炉底部の
砂の中で高濃縮された状態で効率的に回収することができ
る。

図2
出所:特許上図は神鋼ファウドラーの「ガス化溶融炉のス
ラッグ塩基度調製方法及びその装置」(参考)


出所:横浜市➲下水汚泥等の放射性物質濃度(参考)

ごみ焼却炉の技術革新が進み、高温で、効率よく燃焼でき
るようになり、①ダイオキシンなどの有機化合物の無害化、
②ガス化溶融炉のスラグを回収し貴金属などの再資源化で
き、③発生熱の回収利用が可能となっている。④将来的に
は二酸化炭素の回収し、太陽光や電解で水素製造やメタネ
ーションなどの有機化合物合成など分散自在型プラント形
成できると考えています。面白いですね。本当に。

【脚注及びリンク】
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