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地域循環共生概論 65

2022年12月25日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.12.25|更新日:2022.12.
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅺ

 



選択肢は2つ。協力するか、滅びるか

災害多発年のCOP
11月にエジプトで開かれた「COP27」は、予定されでいた会期
を延長して交渉が続けられた。話し合いがまとまり難い要
因に、経済的な負担問題、先進国と後進国との思惑の差が大
きい。最終的弧は、気:象災害づの被害の受けやすい途上大
国側が求める「損失と損害」の支援について、基金の創設を
盛り込むことに決まるが、気温が上昇を続け、気候変動はす
でに後戻りできない段階に来ているという。※

※ 森田正光著 コラム『一体何が問題なの』(環境ビジ
ネス  2022年冬季号)

それによると、地球温暖化は猛暑の頻度を上く、極端に雨
の増
える地域を生み出す原因にもなる。 気温が1℃上がる
と水蒸気
の量が7~8%増え、それだけ降水量が増えるこ
とにつながる。
なお、気象災害が世界各地でさらに増えると、「気候難民」の
問題が深刻化する。気候難民とは、 異常気象により作物め
収穫<や家畜の維持が困難になり、住む土地を離れるしかな
い人々を差して使われる。現在でも年平均で2000万人以上
が住む場所を追われているが、世界銀行の報告によると、
2050年までに日本の人口のおよそ2倍弱、2億人以上もの気
候難民が、アフリカ・サハラ砂漠以南の地域を中心に発生-
中略-
さらに、気になる報告もある。世界の平均気温は、産
業革
命前と比べてすでに約1.1℃上昇し、さらに、GHG
(温室効果ガ
ス)を今後、迅速かつ大幅に削減しても、今
世紀半ばにかけて1.5
℃の気温上昇は続くだろうと予測され
干ばつの頻度は1.1℃の
気温上昇で、産業改革前と比べて
1.7倍。これが1.5℃上昇する
と、2倍になるとされま
す。大雨の頻度は、同じく1.3倍から1.5倍
に増えると予
測され、昨今の現状よりも厳しくなることは確実視さ
れてい
るとのこと。とすると、琵琶湖からの蒸発量が増し、気候変

動の大きさにされやすくなり、水位変動に左右され、渇水
(干魃)
と冠水(洪水)が多く発生し(わたしの予感では
水位低下が多くな
るのではとおもっています)、さらに、
昨年の大雪被害などのよう
な記録的な被害が増えることも
が予想されます。

                                 この項了
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9. 埋立処分過程における挙動と制御
9.1 モデル解析からみる挙動と埋立工法
9.1.1 放射性物質に汚染された廃棄物の埋立方法 
 第 1 節でも述べられているように、放射性物質に汚染され
た廃棄物であったとしても、 既存の管理型廃棄物最終処分
場に埋め立てられることが示された。これは、覆土等に よ
って地域住民に対する被曝量を制御することが可能であるこ
とや、跡地利用制限することで一般公衆に対する被曝線量も
制御可能であることが理由として挙げられる。管理型最終処
分場は、底部に遮水工があり、水が場外へと漏洩しない封じ
込め施設として建設されており、処分場内の水は、集排水管
によって集められて水処理後に放流する仕組みとなっている。
よって、浸出水に対する配慮も求められる。水処理技術が確
立していない現時点においては、水処理によって放射性物質
を止めることは合理的でないことから、浸出水へと溶出させ
ないことが必須と考えられる。放射性物質の固体濃度が
8,000Bq/kg 以上の廃棄物や、8,000 Bq/kg 以下であっても
溶出しやすい煤塵等の廃棄物に関しては、上部隔離層の役割
が重要になる。廃棄物処分場内 へと浸透する降雨量を涵養
量というが、この涵養量の大小によって浸出水への溶出は大
きく変化する。上部隔離層に求められる性能は、遮水性と変
形追従性、施工性、(放射能に対する)遮蔽性。遮水性は、
透水係数を小さくすることと、排水勾配を設けることによっ
て確保可能。

排水勾配は、不同沈下のことも考慮すると、5%は必要と考
える。透水係数としては、周辺の廃棄物地盤よりも少なくと
も 2オーダーは低い透水係数を与えることで、十分な遮水性
を確保することが可能です。変形追従性は、不同沈下対策と
して求められる機能。一般的には、自己修復性 を有する膨
潤性粘土鉱物を用いることで対応がとられる。

上部隔離層は、中間覆土代替として設置されることから、数
日から数週間に1度の施工となり、連続施工とはならない。
特殊な重機等を用いないと施工できない方法では、維持管理
が困難にる。このことから、通常の管理型最 終処分場で用
いられるシャベルカー等を用いた工法を採用する必要がある
と思われる。 

遮蔽性は、隔離層の充填密度(かさ密度)と厚みによって制
御される。これまでの報告だと、通常の締固め土壌であれば
50㎝の厚みで十分とする。

上部隔離層についてのみを詳述したが、セメント固化の強度
が十分でなく、溶出しにくいと判断できない8,000~100,000
Bq/kg の廃棄物については、側面にも隔離層が求められるが、
必要な性能は上部隔離層と同様である。

次に、これまでの埋立や仮置きに関する通知文等に一貫して
述べられていることとして、廃棄物の下には土壌層を敷設す
ることが示されている。これは、廃棄物から溶出した放射性
物質を吸着させることが目的であり、土壌層には、吸着能と
通水性の2つが求められる。ただし、これまで吸着層という
設計が行われた事例は少なく、どのような土壌 であれば良い
か、どのように敷設するのかという具体的方法を示すことは
難しいのが現状。土壌層という名前であることから、砂や礫
、スラグ等は使用できず、真砂土やシル ト質土壌等が対象と
なる。これは、砂や礫だと通水性は確保できるが、セシウム
吸着能が低く、吸着性能が悪いことが理由。また、吸着能の
みを考えれば、粘土質土壌が最も性能が良いが、粘土分(75
μm 以下の粒径)が多いと、通水性が悪く、浸透水が吸着層
内に入り込まない可能性が高いため、吸着層としての機能を
果たさないことになる。よって、適切な土壌が手に入らなけ
れば、通水性と吸着能を両立する材料を配合して人為的に作
ることが求められます。土壌層の設計が容易でないことから、
最も重要な対策は上部隔離層と側部隔離層であり、下部の土
壌層は、仮に水が入ってしまった時の補助的な役割であり、
フェイルセーフ 機能の一つとして考える方が無難です。これ
までの通知では、埋立や仮置きにおいて、下部にも隔離層(
遮水層)が必要という ことになるが、水を集水しない構造で
下部を遮水する行為は、工学的には危険と考えられる。溜ま
った水の処理を行うことができない。原発事故時に降下した
セシウムは土壌表面から数センチ以内に留まっている。この
ことを考えると、セシウムについては、土壌層を通水させて
も系外には漏洩しない、といえる。よって、下部は遮水性能
の隔離を行うのではなく、吸着層としての隔離に留めるべき
と考える



9.1.2 放射性物質の溶出量を考慮した浸出水への影響評価
焼却灰に吸着したセシウムは、その全てが水へと溶出するわ
けではない。下水汚泥焼却灰からの溶出率は、固体濃度に対
して 3%未満であることが報告されている。一方で、一般廃
棄物の焼却飛灰からの溶出は、キレート処理やセメント添加
処理にかかわらず数 十%になることも報告されている。例
えば、10,000 Bq/kgの焼却灰から10%溶出すること、100,000
Bq/kg から 1%溶出することは、水にとっては同じ負荷量と
なる。溶出時間と側面もあるが、放射性物質の移動や減衰の
時間からすると、溶出時間は短く、影響評価においては大き
な影響を及ぼさない。本節では、JIS K 0058 から求められ
る溶出率等を利用し、不溶態のセシウムの存在を考慮した合
理的な評価を行うことで、適正な埋立処分を行うための基礎
データを構築する。 図 7.1.1 には放射性物質に汚染された
廃棄物の埋立イメージの一例を示す。

廃棄物は 1日に 300 cmまでしか埋め立てることができない
ため、フレキシブルコンテナ に入れられた廃棄物であれば、
おおよそ 3 段積みとなる。上部には遮水性を有する隔離層
が必要であることから、厚さ50 cm程度の難透水性土壌層が
設置される。土壌層としているのは、廃棄物の圧縮沈下等に
伴う不同沈下に対する変形追随性を持たせることが理由。
多少の沈降があったとしても、透水係数が極端に増加するこ
とのないような材料を用いる必要。また、廃棄物層の下部に
は吸着を目的とした土壌層が必要。上部も下部も隔離層とい
う概念だが、その目的は異なる。下部の吸着目的の隔離層に
は、セシウムが吸着する材料を選択する必要がある。土壌層
と書いたが、人工的な材料でも変形追随性と吸着性、地耐力
があれば問題ない。

図 7.1.1 には、数値モデルの条件設定も示す。上部の隔離
層である難透水性土壌層の透水係数と、地域の降雨量、廃棄
物の透水係数によって、この隔離層を通過する流量は変化。
ここでは、この通過水量を涵養量とした。上部の隔離層の遮
水性は 25 年間は発揮されるが その後、徐々に機能劣化が
起こることを想定し、涵養量が 50 年後には当初の 5倍にな
ることを模擬しました。実際、粘土等を用いた遮水であれば
その機能が 劣化することはなく、ここで安全側の計算がで
きるように安全率を設置したことになる。廃棄物層からの溶
出は、例えば、JIS K 0058(JIS 攪拌溶出試験)による溶出
試験結果 から得られた濃度を用いることになる。

JIS 撹拌溶出試験は、廃棄物を構成している粒子を、廃棄物
の10倍の質量の水で溶出させることになる(液固比が 10と
いうこと)。 実廃棄物層では、粒子が撹拌されることなく、
粒子同士の間隙を涵養した水が通過することになるので、こ
こでも安全側の計算を行っていることになる。溶出試験結果
で 100Bq/Lである場合、液固比が 10であることから、実廃
棄物層の間隙水のセシウム濃度は 10 倍の 1,000 Bq/kgとな
る。JIS 撹拌溶出試験は、6時間で溶出させるので、セシウ
ム の移動や減衰挙動を評価する上では、微々たる時間であ
ることから、JIS 撹拌溶出より得ら れた溶出量が、初期に
瞬時に間隙水に溶出すると仮定した。

下部の隔離層である土壌吸着層には、バッチ吸着試験より得
られた分配係数を用いることとした。この分配係数は、使用
する材料にもよるが、塩分濃度の影響を強く受けるので、実
際の処分場の浸出水や溶出水等を用いてセシウムの分配係数
を求める必要がある。本解析では、まさ土にて求められた分
配係数 Kd = 10 L/mg を用い
た。 なお、本解析では、134Cs
の半減期が短く、本計算上では影響を及ぼさないことから、
137Cs のみに着目して実施する。



(あ)涵養量の条件設定 本計算で与えた涵養量のパターン図を
図 7.1.2 に示す。涵養量 10 mm/yr とは、年間 降雨量が 1,800 mm
と仮定した場合に、透水係数 10-6~10-8 cm/s の透水係数を有す
る隔離 層を設置した場合に相当します。涵養量が 100 mm/yr で
あれば、透水係数で 10-5~10-6 cm/s 相当になる。この涵養量は
、不飽和浸透特性に影響を受けることから、単純に透水係数 で
求めることができないため、比例計算等で涵養量を求めることは
困難。

(い)計算結果 図 7.1.1 における濃度測定点(下部土壌層の下端)
での濃度変化を図 7.1.3~7.1.5 に示す。それぞれ、涵養量毎で図
化した。凡例に示される溶出濃度は 1~500 Bq/L として計算した。
1 Bq/L は検出限界に近い値であり、例えば土壌などの溶出試験
で N.D.と なった場合には、この 1 Bq/L の溶出濃度を用いて評価
することが可能。 図 7.1.3 の涵養量 10→50 mm/yr の場合では、
溶出試験結果が 500 Bq/L であった場合に、 濃度限界である 90
Bq/L を超過することになる。溶出試験結果が 500 Bq/L であるの
で、初期の液相濃度は 10 倍の 5,000 Bq/L となります。これでも、
小さい涵養量を確保可 能な上部隔離層を用い、分配係数 10 程
度の土壌吸着層を用いれば浸出水濃度を約 90 Bq/L まで抑制す
ることが可能になる。


 ピーク濃度に着目して整理すると、図 7.1.6 のようになる。それ
ぞれの涵養量毎に整 理すれば、ピーク濃度は溶出濃度の関数
となる。よって、溶出試験による濃度が分かれば、相当する涵養
量の近似式を用いてピーク濃度を評価することが可能。図には
500 Bq/L の溶出濃度までしか描いていないが、750 Bq/L までは
線形関係が保たれることを 確認している。理論上はそれ以上の
濃度でも予測可能である。
                               この項つづく
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【エピソード】




彦根城に飾られた『特大のしめ縄』…猫の手も借りたい!
と「ひこにゃん」もお手伝い


彦根市は21日、新しいキャラクター「わるにゃんこ将軍」を発表。
市は原作者のもへろんさんに「ひこにゃんの絵本」の制作を依
頼しており、今年度中に三部作の絵本が完成する予定。その絵
本にひこにゃんのライバル役として、わるにゃんこ将軍が登場。
絵本の発表を前にそのイラストを公開するという ???...




誠に申し訳ございませんが、昨年、今年のごとく、総会(
新年会)は中止させていただきます。年明けて、新型コロ
ナや自治会の状況をみて、四月ごろ、お花見会を計画しご
案内させて頂きます。
                      幹事敬白

PS. 佐々木さんが「飲みたい」と元気にリクエストされる
限り続けていけたいと考えております。


【脚注及びリンク】
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地域循環共生概論 64

2022年11月30日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.11.30|更新日:2022.
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅹ


PP.149-
8.4.6 洗浄不溶化試験
放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分具体的に
は、上述のベンチ試験装置を用い、飛灰洗浄において水に
溶解する際に放射性セシウムを不溶化するための吸着剤を
添加して飛灰中の放射性セシウムを不溶化する方法 (洗
浄不溶化方式)の実証試験を行う。放射能濃度が 22,000~
27,000 Bq/kg程度の原飛灰 40kg に対して吸着剤としての
ゼオラ イトを 10~30%添加し、溶解液固比を5倍、リンス
液固比を 2.5倍、吸着時間を 1時間として不溶化処理を行
った。フィルタープレスで脱水・排出された不溶化飛灰の
溶出試験を行ったところ、溶出性が著しく低減されている
ことが確認した。また、ゼオライトの添加率が高いほど溶
出濃度は低くなるが、10%添加でも溶出濃度はNDレベル(
10 Bq/L 以下)となることがわかった(図 8.19)。


図 8.19 ゼオライト添加率と不溶化飛灰からの放射性セシ
ウム溶出濃度の関係

なお、洗浄不溶化した際の排水中には数百 Bq/L 程度の放
射性セシウムが残留しているため、後処理を行って除去す
る必要がありますが、洗浄不溶化で使用する吸着剤と同じ
ものを吸着塔に充填して通水することにより、NDレベル(
10 Bq/L 以下)まで除去できました。また、この後処理で
使用したゼオライトは吸着容量が十分に余っているためこ
れを粉砕して洗浄不溶化に再利用できることも確認した。
従って、飛灰溶解時に添加する吸着剤の量に合わせて後処
理吸着の条件を調整することで、二次廃棄物を発生させる
ことなく不溶化処理が可能であることがわかった。

8.4.7 放射線管理
飛灰洗浄ベンチ試験を実施したエリアの空間線量率をモニ
タリングしたところ、飛灰洗 浄による事業所外部への汚
染の拡大は見られませんでした。但し、飛灰を大量に搬入
するとその周辺は線量率が上昇するため、必要に応じて遮
へい等の対応を検討する必要がある。一方、放射性セシ
ムを吸着・濃縮する吸着ユニットや廃吸着剤を保管する

管スペー スは鉄板やコンクリートによる遮へいを行っ

おり、十分な被ばく防護が確認した。
また、電離則で定め
られている作業環境測定を作業環境測定士により 1cm 線
量当量率、床面の表面密度、空気中放射性物質濃度の測定
を行った結果、特段の汚染は認められず、適切にプロセス
を管理できることがわかった。なお、原料飛灰は一定の水
分を含んでいるため、溶解作業中に粉塵として舞うことは
ほとんどない。
 作業に従事した作業員が作業により受けた被ばくについ
て、表 8.7 に示す。作業従事者の被ばくは 0~2μSv/日
程度で、試験期間に最も放射線量を受けた作業員(E)で
も約 1 年間で 0.25 mSv 程度であり、法律で定められて
いる年間 50 mSv、5 年で 100 mSv と比較 して非常に低
い値で管理できる。規模が大きくなると処理する飛灰量が
増加するために放射線量の増加が考えられるが、実設備で
は飛灰溶解作業の自動化による作業時間の短縮、吸着塔の
遮蔽とデータの自動測定等により、作業員が受ける放射線
量を低減することが可能である。

8.4.8 ベンチ試験のまとめ 
以下に、飛灰洗浄ベンチ試験で得られた結果をまとめた。

飛灰洗浄による放射性セシウム除去率は概ね 90%以。 
・洗浄後の飛灰には放射性セシウムが 10%程度残存したが、
 8,000 Bq/kgを大きく 下回り放射性セシウムの溶出濃度・
 溶出性も著しく減少した。
• 洗浄排水中の放射性セシウムは、吸着塔で除去・回収さ
 れ、処理水中の放射性セシウム濃度は ND レベル(<10
 Bq/L)。
• 一連のプロセスを通して、適切に放射線管理が可能。
クリーンセンター等では排水できないケースが多いため
 処理水の蒸発固化が必要であり使用水量の削減が重要
 となる。
現時点では二次廃棄物(廃吸着剤)の搬出先がないため
 放射性セシウムを濃縮した二次廃棄物を放射能濃度に応
 じて遮へい容器等に収納し、場内に一時保管する必要
 ある。
• 放射能濃度の高い二次廃棄物は、一度保管したら移し替
 え等は困難であるため、中間貯蔵および最終処分におけ
 る廃棄体と保管形態・容器等の条件を整理しておく必要
 がある。

以上7項を挙げている(測定値の「分散リスク解析」は無)。

8.5 飛灰洗浄技術の開発状況
8.5.1 飛灰の洗浄方法
飛灰中の放射性セシウムを溶解、洗浄して分離させる技術
としては、本稿で示した方法を 含め、以下のような技術開
発が進められている。 

⮚水洗浄
飛灰に対して数倍程度の水を加えて溶解させた後、フィル
タープレス等で脱水することにより、放射性セシウムが除
去された洗浄飛灰と放射性セシウムを含む排水とを分離す
る方法。(国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼環境ソ
リューション)
・本稿 8.4 
放射性物質に汚染された飛灰の洗浄による埋立前処理に関
する研究(2013) 第 34回全国都市清掃研究・事例発表会
講演論文集、313-315.
・飛灰中のセシウムの洗浄分離に関する研究(2012)
第23回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集、573-574. 
・水洗浄+磁気分離
飛灰の水洗浄の際、もしくはその後に磁性吸着剤を混合す
ることで水溶性の放射性セシウムを除去し、放射性セシ
ウムを吸着した磁性吸着剤は超伝導磁気分離装 置で分離・
回収する方法。吸着剤は繰り返し使用可能。これにより、
水洗浄と洗浄排水の処理を同時に行うことができ、システ
ムをコンパクトにできることが期待される。なお、磁性吸
着剤を工夫することで、高pH耐性と磁力の向上を図り、磁
気分離に永久磁石を用いることも試みられている。
(三菱製紙(株)・(株)MS エンジニアリング、他)
・磁気分離法による飛灰浄化方法の検討(2012)第1回環
境放射能除染研究発表会
・磁性吸着剤を用いた放射能除染システム(2012)月刊
 JETI2012 年 12 月号 (大成建設(株)) 
・平成 25 年度除染技術実証事業

⮚ 飛灰を造粒して水切りフレコンで固液分離飛灰をセメ
ントにより造粒固化してから水洗浄することで、その後の
固液分離に水切りフレコンを用いることができ、コスト削
減が期待される方法。 ((株)大林組) 
・飛灰の放射能濃度低減を目的とした造粒固化洗浄 (2013)
大林組技術研究 所報 No.77 
・平成 24 年度除染実証事業報告

⮚散水による極小水量での洗浄技術 機械撹拌等を用いるこ
となく、間欠散水・通気を利用して使用水量および洗浄排
水の量を極端に少なくする洗浄方法です。実証試験では、
液固比 0.5程度で洗浄を行い、環告13号法による溶出(液
固比 10)と同程度の洗浄効果が得られてい ます。
(株)フジタ 
・平成 25 年度除染実証事業報告書

8.5.2 洗浄排水からの放射性セシウムの除去方法
高濃度の塩類を含む排水から放射性セシウムを効率的に除
去するため、以下のような技 術開発が進められている。
⮚プルシアンブルー
造粒プルシアンブルーを吸着塔に充填し、飛灰洗浄排水を
通水する方法。(国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼
環境ソリューション) 
・本稿 8.4 
・洗浄・水処理プロジェクト(2013.7) http://www.nies.go-
.jp/shinsai/hokoku_senjou.pdf

・一般廃棄物焼却設備の飛灰除染一貫処理システムを開発
(2013.8)
http://www.kobelco-eco.co.jp/topics/news/2013/20130806.htm
フェロシアン化鉄(プルシアンブルー)を飛灰溶解液中で
合成し、セシウムを吸着するとともに、凝集沈殿する。さ
らに、凝集沈殿物をアルカリ溶液で分解し電気透析で放射
性セシウム濃縮液を作り、ゼオライトに吸着させる。(ア
タカ大機(株))焼却飛灰等の水洗浄除染とその水処理(
2014)第 35 回全国都市清掃研究
・事例発表会講演論文集、318-320. 
溶融飛灰からの放射性セシウムの分離除去技術について
(2012)環境技術、 41(9)、41-46. 
飛灰からの放射性セシウムの分離除去に係る新技術の開発
について(2013.8
http://www.atk-dk.co.jp/xml/docs/ATK_214.pdf

ナノ粒子化したプルシアンブルーで高効率にセシウムを吸着す
る方法す。 (産業技術総合研究所、他) 
・Adsorption removal of cesium from drinking waters: A mini
review on use of biosorbents and other adsorbents (2014) Biores-
ource Technology、印刷 中
(DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.biortech.2014.01.012) 
・ナノ粒子化したプルシアンブルーでセシウム吸着能が向上(
2012.2) http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/
pr20120208/pr20120208. html 
植物系放射性セシウム汚染物を除染・減容するための実証試
験プラント (2012.11)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20121112/
pr20121112.h tml
⮚ゼオライト
天然ゼオライト(モルデナイト)を吸着塔に充填し、飛灰洗浄液
を通水すること により放射性セシウムを除去する方法。吸着剤
の放射能濃度を制御すること で、保管・管理方法を選択できる。
また、飛灰洗浄時に一定量添加 することにより、不溶化処理を
行うこともできる。 (国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼環境
ソリューション
・本稿 8.4 
⮚クラウンエーテル洗浄排水中の放射性セシウムをクラウ
ンエーテルにより吸着した後、溶離工程により濃縮・回収
する方法。
((株)タクマ)
・繰返し使用可能な吸着剤を用いた焼却飛灰からの放射性
セシウムの分離除去 システム(第 2 報)(2014)第 35
回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文 集、324-326.
・繰返し使用可能な吸着剤を用いた焼却飛灰からの放射性
セシウムの分離除去 システム(2013)都市清掃、66(313)、
306-309.
・焼却飛灰中の放射性セシウム除去システムを開発(2013.1)
http://www.takuma.co.jp/news/2012/20130123.html

9. 埋立処分過程における挙動と制御
9.1 モデル解析からみる挙動と埋立工法
現時点で放射性物質に汚染された廃棄物(焼却灰等含む)
の埋め立ては、濃度によって分類されており、その値は、
作業者の被曝線量率から求められた 8,000 Bq/kg(廃棄物
中に含まれる放射性物質濃度:以下、固体濃度とする)が
採用されている
。重金属やその他の有害物質に関して、廃
棄物最終処分場への埋め立ては、固体濃度ではなく、廃棄
物処分 場から発生する浸出水に対する影響という観点から、
溶出試験によって分類されてき た。したがって、現時点
では、浸出水への影響よりも作業者の被爆が優先されてい
ることになる。当然、埋立後の地域住民に対する被曝線量
を十分に低くしなければならないことから、固体濃度によ
る規制も必要だが、放射性物質を含む浸出水が発生した場
合に、既存の水処理施設では十分な対応が取れないことか
ら、被曝量と同時に、浸出水への影響も考える必要があす。
放射性物質に汚染された廃棄物には、放射性物質を溶出し
やすい廃棄物と、しにくい廃棄物がある。溶出しやすい廃
棄物としては、家庭や事業所から出される一般廃棄物の焼
却飛灰が挙げられる一方で、一般廃棄物の主灰からは溶出
しにくく、下水汚泥の焼却灰(飛灰)や上水汚泥からも溶
出しにくいことが確認されている。ここでは、放射性物質
に汚染された廃棄物の埋め立て時において考えなければな
らない共通事項や留意事項 を示すとともに、溶出量の大小
における浸出水への影響について述べる。
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【エピソード】

  
にわか読書棚



ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機(天
然ガス・石油の供給不足による電力不足)や気候変動によ
る農産物不足(ウクライナ進行による小麦供給不足/米国
やトウモロコシ供給不足)の食糧・食品・電気料金の高騰
と、全国の原発の一斉再稼働への加速が起きており、国民
生活・健康破壊が懸念されます。

  

脚注及びリンク】
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地域循環共生概論 63

2022年11月25日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.11.25|更新日:2022.11.26
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅸ


放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分

8.4.3 使用水量の低減  
▶ PP.141~147


8.4.3 使用水量の低減 本システムでは、洗浄排水を RO膜
ユニットに通すことにより、放射性セシウムを除去・分離
した透過水と濃縮水を得ることができる。この透過水を洗
浄水として再利用する ことは、システム全体の水使用量お
よび排水量を低減することができ、省コスト化、省スペー
ス化において重要。図 8.11 は RO 膜処理による放射性セ
シウムの除去効果を示す。ここで、縦軸は放射性セシウム
濃度の監視基準の算定式である Cs-134÷60Bq/L+ Cs-137
÷90Bq/L で換算した値。


RO 膜処理水は、1 段処理では原水の濃度の変動により濃度
基準が 1 を超えることがあったが、放射性セシウムの除去
率は 95%以上であり、1 段処理水を洗浄水として再利用可
能と班名する。さらに 2 段処理を行うことにより、RO処
理水は十分に濃度基準を満足することが判明。

使用水量を低減させる別の方法として、溶解水やリンス水
もしくはそれらの吸着処理水の再利用が考えられる。特に、
飛灰を溶解させた飛灰溶解水をろ過した後に行うリンスで
は、塩類等がある程度低下するため、リンス水中の塩濃度
は飛灰溶解水よりも低くなっており、再利用の有効性が高
いと考えられえる。そこで 1 度使用したリンス水を飛灰溶
解 水として再利用した場合の飛灰の洗浄効果の変化につい
て、検討を行いました。 試験は、溶解水の液固比を 5~10、
リンス水の液固比は逆に 10~5とし、トータル液固 比は
15 で固定して行った。リンス水を溶解水として再利用した
場合としない場合の放射性セシウム除去率の比較を図8.12
に示す。この結果から、溶解水の液固比によらず、 リンス
水の溶解水としての再利用は洗浄効果に悪影響を与えない
ことがわかる。なお、トータル液固比を 10(溶解液固比
5 倍)に下げた試験では、リンス水の再利用により 洗浄効
果の若干の低下が見られましたが、それでも除去率は 90%
を超えており、その影響は軽微であると考える。このよう
に、水を繰り返し使用することで、洗浄効率を維 持しつつ、
使用水量を削減できることが判明。使用水量の削減はシス
テムの省コス ト化、省スペース化に重要であり、限られた
スペースで本技術を活用する上で、その適用性・ 有用性の
向上に大きく貢献するものと考える。


8.4.4 洗浄排水からの放射性セシウムの除去
飛灰の溶解液および脱水ケーキのリンス水を混合した洗浄
排水には、飛灰に由来する多 量の塩類とともに放射性セシ
ウムが含まれている。洗浄排水に含まれる放射性セシウム
を除去するためには、高塩濃度条件下で効率的にセシウム
吸着・除去する必要。 そこで、共存する陽イオン濃度が高
い環境でもセシウム選択性の高いプルシアンブルー(フェ
ロシアン化鉄)を粒状に成形した吸着剤(東亞合成(株))
を用いて吸着処理試験を行う。プルシアンブルーは一般的
には青色顔料として身近なところで使われているが、セシ
ウムの吸着剤として高い吸着容量と選択性を有す。但し
高pH環境下では分解してしまうこと、排水基準項目である
シアンの溶出が有り得ることなどから、取扱には注意が必
要。吸着試験条件を表 8.3 に示す。洗浄排水は pHが12程
度と高いため、塩酸によりpHを中性にしてから吸着処理を
行う。その結果、図 8.13 に示す通り、吸着処理の原水中
の放射性セシウム濃度は洗浄する飛灰の濃度で変動し、
1,000~3,400Bq/kg の間で推移。これに対して吸着処理水
は常に 10Bq/kg 未満。従って、高濃度の塩類を含む飛灰洗
浄排水においても、含有する放射性セシウムを効果的に吸
着除去きることが実証。なお、処理フローではRO膜処理に
より洗浄排水を濃縮した後に吸着処理を行うが、上述のリ
ンス水の再利用を行った場合は、RO膜処理を行わなくても
洗浄排水が高濃度となるため、直接吸着処理を行った。そ
の場合においても、吸着処理の性能に変化は見られず、十
分な処理性能が得られている。

一方で、プルシアンブルー吸着剤に濃縮された放射性セシ
ウムの状況を把握するため、吸着塔表面の放射線量率を測
定す。図 8.14は第 1 吸着塔の流入部表面の放射線量率の
経時変化を示す。処理を進めるにつれて放射線量率が上昇
し、洗浄排水から放射性セシウムが吸着除去されている様
子がうかがえる。

また吸着塔内の吸着剤の放射性セシウム吸着量の推定および
分布の把握を行う。ここで吸着量は、吸着塔に投入した総
ベクレル数から処理水に含まれる総ベクレル数の差を吸着塔
内の吸着剤重量で除して、平均吸着量を求めると同時に、
予め、吸着塔表面の放射 線量率と吸着量を換算する係数を
求めておき、吸着塔毎の放射線量率を測定することで、各吸
着塔における吸着量を算出。図 8.15 に示す通り、吸着塔
へ投入した総ベクレル数が 10,000 Bq の時には吸着塔 Aの
下部(1 段目の入口)の吸着量は 20 万 Bq/kg程度だが、
総ベクレル数が 300,000 Bqの時には 2百万Bq/kg 程度まで
吸着された。このとき、吸着塔 Aの上部(出口側)ではまだ
吸着量に余裕があるとともに、吸着塔 D(4塔目)までにほ
とんどの放射性セシウムが吸着される結果となった。


また、原水の放射性セシウム濃度の上昇に伴って吸着量が
増加することも確認された。原水の放射能濃度は最大で
3,000 Bq/kg 程度で、その際の吸着量は吸着剤の充填率を
加 味すると約 1,000 万 Bq/kg となる。この結果を元に、
飛灰の放射能濃度を 20,000 Bq/kg と仮定したときの物質
収支を図 8.16に示す。


一方で、廃吸着剤の放射能濃度を 10 万 Bq/kg 以下に制御
する方法も検討した。この場合、単位吸着剤量あたりの放
射性セシウム除去量が少なくなるので、より多くの吸着剤が
必要となる。そこで、安価で汎用性の高い天然ゼオライト
を焼成したモルデナイト 型ゼオライト(ゼオフィル、新東
北化学工業(株))を使用。 ゼオライトを用いた吸着試験
の条件と結果を表 8.4 に示す。なお、廃吸着剤の放射能
濃度を 10 万Bq/kg 以下に制御するため、ゼオライト吸着
剤を砕石と混合して試験を行った。この場合でも、吸着原
水で 3,900 Bq/Lあった放射能濃度が吸着処理水では検出下
限値(10Bq/L)未満となり、十分な処理性能が得られた。


ここで、処理対象飛灰 1,500t、放射能濃度 20,000 Bq/kg
の条件で、飛灰洗浄による減容化率を試算。表 8.5 に示
す通り、プルシアンブルー吸着剤を用いた高濃度濃縮の場
合では、廃吸着剤量は 2.7t(3.4m3)となり、減容化率は
極めて高く、原飛灰の 0.19%の容 量となる一方、ゼオラ
イト吸着剤を用いた中濃度濃縮の場合の減容化率は 13.5%
で、高濃度濃縮ケースに比べると減容化率は低くなるが、
放射能濃度は 10 万 Bq/kg 以下に制御されることから、一
時保管における遮へいに要するコスト・スペースが小さく
なる。いずれのケースでも、廃吸着剤では原飛灰と異なり、
放射性セシウムの溶出性が極 めて低くなっていることから、
速やかに中間貯蔵施設や国の最終処分場に搬出されること
が期待される。


8.4.5 洗浄飛灰に含まれる
       放射性セシウムの水への溶出性

飛灰洗浄による溶出性低減効果を確認に、放射能濃度の異
なる原飛灰を洗浄し、放射能濃度の変化を確認するととも
に、洗浄飛灰の溶出試験を行う。溶出試験は JIS K0058-1
に基づいて行い、ゲルマニウム半導体検出器を用いて放射
能濃度を測定した。 表 8.6 に示す通り、原飛灰で 8,000
もしくは 26,000 Bq/kg 程度であったものが、洗浄後には
それぞれ 400、2,200 Bq/kg 程度まで低減しており、洗浄
飛灰の溶出濃度は
ての放射性セシウム溶出率は 23%程度が、洗浄前(原 飛灰
)の状態から考えると、2%程度となる。原飛灰からの放射
性セシウム溶出率が 90% 超であることを考慮すると、大幅
な溶出性の低減が図られたと言える。

上述した溶出試験は特措法に基づくものだが、溶出時間が
6 時間であるため、念のため、約 1 ヶ月の溶出試験を実施
しました。先ほどとは別の洗浄飛灰(1,453 Bq/kg)を同じ
ように 10 倍量の水と混合し、30 分後、6 時間後、7、17、
29 日後に溶出液中の放射能濃度 を測定。その結果、6 時
間後の溶出濃度は 19 Bq/L(溶出率 13.1%)であり、その
後、顕著な変化がなかったことから、洗浄飛灰に残存する
放射性セシウムの大部分は不溶性であると推察(図 8.17)。



なお、環境庁告示第 13 号(昭和 48 年 2 月 17 日)に
基づいて溶出試験を行った結果、鉛 について基準値を超え
る値が検出されることがありましたが、液体キレートを飛
灰溶解水 に添加(重量比 2%)することで、洗浄飛灰から
の鉛の溶出を抑制することが可能であることが確認できて
いる。

8.4.6 洗浄不溶化試験
8,000 Bq/kg 超 100,000 Bq/kg 以下の指定廃棄物は、埋
立後の放射性セシウムの溶出リス クを低減するため、セメ
ント固型化や隔離層の設置が義務づけられています。しか
し、当該 廃棄物からの放射性セシウムの溶出量が少なけれ
ば(基準値:溶出試験で Cs137 が 150Bq/L 未満)、セメ
ント固型化をせずに埋立処分することができ、埋立時の隔
離層の設置について も上部の不透水層以外は不要となる。
そこで、ここまでに示した飛灰洗浄技術を応用し、埋立処
分の前処理として飛灰中の放射性セシウムを不溶化する方
法(図 8.18)を検討した。       

  
リスク除外技術手法についこのまま、最後まで読み進めて
いく。
                         この項つづく

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【ごみ焼却場建設問題再考Ⅳ】

広域ごみ施設
処理方式変更に質問相次ぐ
「東近江の失敗繰り返さぬよう」
彦愛犬1市4町の新しい広竣ごみ処狸施設について協議す
る彦根愛知犬上広域行政組合の議会臨時会が15日に開かれ、
議員からは管理者の和田裕行市長が示した処理方式を「熱
焼却」から「好気性発酵乾燥(トンネルコンポスト)」方
式への変更を検討することに対しての質問が相次いだ。
 トンネルコンポスト方武は生ごみや鰍プラスチックなど
が混在する可燃ごみを粉砕し、専用のコンクリート製の槽
べ投入することで、微生物が生ごみだけを発酵分解。その
際の熱を使って乾燥処理された紙やプラスチックなどは工
業用RPF(固形燃料)となる。熱焼却方式と比べ、煙やダ
イオキシンなどが発生せず、乾燥の工程で化石燃料を使わ
ないため二酸化炭素の排出量が削減できるといい、設備投
資やランニングコストも抑制できるという。同方式は香川
県三豊市が6年前に国内で初めて導入した。同行政組合は
同方式の実現可能性を検証するためのコンサルタント業者
への委託費(552万円)と、三豊市のバイオマス資源化セン
ターみとよへの組合議員の視察経費(76万円)などを盛り
込んだ補正予算案(1124万円)を臨時会に提案した。

固形燃料の買い手先は?
議員指摘に市長「営業努める」
臨時会では市町の4人の議員が登壇。彦根市の伊藤容子市
議の建設候補地の変更の可能性やスケジュールについての
質問に、事務局は「今回の予算は調査費のみで、建設候補
地の検討は入っていない。今年度中に判断材料を集めたい
」とした。
 愛荘町の瀧すみ江議員は、犬上郡や愛荘町、旧愛知郡の
ごみを処理している湖東広域衛生管理組合リバースセンタ
ー(東近江市)で処分後に出る固形燃料(RDF)の買い手
が県外で、赤字状態が続いている点を紹介した上で「同じ
失敗が繰り返されるのではないか。RPFを引き受ける近隣
の企業はあるのか。RDFを燃やすには専用の焼却炉が必要
になるが』と指摘。事務局側は「近隣に買い手となる事業
者があるのかも含めてコンサルで調査してもらう」と答え
た。
 甲良町の西渾伸明議員は「廃棄物の分別が崩れる可能性
や購入先などRPF万全ではない。ごみの減量や分別回収の
徹底は継続して必要だ」と質問。和田市長は『広域ごみを
巡っては何度もちやぶ台が返されてきたが、(トンネルコ
ンポストは)ヨーロッパでは当たり前の方端事業者への営
業に努めたい」と述べた。提案された補正予算案は全会一
致で可決された。(via しが彦根新聞 2022.11.19)
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※【RPFとRDF
 RPFは主に民間企業の排出、RDFは自治体による収集と
の違いがある。ほかにRPFは異物混入が少なく、含水率が
い低い。一方、RDFは家庭ごみのため、分別に限界があ
り水分率も高い。このためRDFは複数の装置や設備が必要
になる。一般的には下表の性状の違いがある。

RPFとRDFとの比較表 (下表クリック)



❏ 予定より大幅な考察の遅れとなっているが、この議論を
 深め、本論の展望の構築をはじめる。

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【エピソード】



いざ、蓬莱山はびわこテラスへ!

正午から琵琶湖テラスに向かい、蓬莱山(打見山)か
ら琵琶湖を
一望する。


南湖を望む


北湖を望む


明日のメタセコイヤ並木は雨模様......?



ところで、水耕栽培と養殖を掛け合わせた、次世代の循環
型農業を意味する「アクアポニックス」が話題にとなって
いる街が、2022年8月に高島市は「BIWAKO AQUA PONICS
」(ビワコアクアポニックス)がオープンしている。「植
物工場」「垂直農法」に興味あり見学をブッキングするこ
とに。滋賀県は面白いね。



【脚注及びリンク】
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地域循環共生概論 62

2022年11月09日 | 防災と琵琶湖

 


 作成日:2022.11.08|更新日:2022.11.09
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅷ



放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分
8.3. 飛灰洗浄技術の概要
8.3.3 飛灰の性状
焼却施設においては、排ガス処理過程で消石灰(水酸化カ
ルシウム)が使用されることが多く、その場合、飛灰には
多量のカルシウムが含まれる。また、重金属溶出抑制のた
め、キレート剤やセメント等が添加されている。使用され
ている薬剤の種類や量、混練の有無等の影響で、飛灰の物
理的状態(粉状、粒状、硬さなど)は施設によって異なっ
ています(図 8.3)。複数の一般廃棄物焼却施設の飛灰を
調査したところ、含水率 10~20%程度、かさ比重0.8 程度
のものが多く見られた。



8.3.3 飛灰からの放射性セシウム等の溶出特性
焼却施設の運転方法やごみ質等に由来する飛灰の性状の違
いは、放射性セシウムの水への溶出性に影響を与える可能
性がある。また、飛灰の保管期間中に性状が変化する可能
性も考えられる。そこで、複数の一般廃棄物焼却施設から
排出された飛灰について、放射性セシウムの水への溶出特
性を調査。試料採取は10施設にて実施し、フレコン等で保
管されている飛灰について、可能な限り発生時期(保管期
間)の異なる複数の試料を採取した。採取した試料は粒径
5mm以下に揃え、JIS K 0058-1の方法で溶出試験を行った。
その結果、多くの施設の飛灰は高い放射性セシウム溶出率
を示し、同一施設で保管期間の異なる飛灰の溶出率は大き
く変わらなかった。但し、同じタイプの炉であっても施設
によって溶出率が低いケースがあり、全体として40~95%
程度と大きく異なることがわかった(図 8.4)。このこと
から、飛灰の保管期間は放射性セシウムの溶出性に影響せ
ず、施設毎のごみ質や運転方法の違い大きく影響している
と推察される。

 
溶出率に影響を及ぼす因子としては、排ガス処理方法が考
えられる。排ガス処理に活性白土を使用している施設(E、
F)では、飛灰からの放射性セシウムの溶出率が著しく低
下していたことから、飛灰抽出液を用いて活性白土の吸着
試験を行いました。その結果、活性白土に対する放射性セ
シウムの分配係数は 27.6 ml/gで、ゼオライト(345 ml/g)
と比べると 1 オーダー低いものの、高塩濃度・高pH条件
下においてもセシウムを吸着することが確認できた(表8.1、
図 8.5)。なお、今回の結果を第5章(放射性セシウムの
土壌等への吸着特性)で示された分配係数と比較すると、
ゼオライトの分配係数が約半分になっているが、これは今
回の供与液の共存イオン濃度が高いためと考えられ、これ
までの検討で、EC(導電率)が10倍になるとゼオライトの
分配係数が 1/10 になる結果が得られており、ベントナイ
トや茨城真砂土などでも、程度は異なるものの、同様の傾
向が認められている(廃棄物・土壌処分技術手法開発等プ
ロジェクト報告、p.15 、 http://www.nies.go.jp/shinsai /hokoku_
haikibutsu.pdf
)。今回の供与液(飛灰抽出液)の EC(5,540
mS/m)での分配係 数を比較すると、活性白土はベントナイ
トと同程度の吸着能を有していると言えます。また、検体
数は少ないのですが、セメント固化を行っている施設(A)
も若干溶出率が低いことから、セメント固化も溶出性への
影響があると考えられます。その他の要因としては、消石
灰による固結や主灰の吹き上げなどが考えられるが、いず
れにしても、主灰や下水汚泥焼却灰などと比べて、どの施
設の飛灰においても放射性セシウムは水への溶出性が高い
といえる結果となった。


8.3.4 溶出液の特性
焼却飛灰を埋め立てた最終処分場の浸出水は高濃度の塩類
を含み、pHも高いことが知ら れています。同様に、飛灰
の洗浄水も塩濃度、pHが非常に高くなります。実際に、上
記の溶出試験の結果、ろ液のpHは平均で12.5(10.5~12.9)、
ECは4,451mS/m(1,750~ 7,220)と高pH、高塩濃度となる
飛灰洗浄は、放射性セシウムが溶出した洗浄排水を処理す
る必要があるので、大量の水を使って洗った場合、洗浄排
水の処理に要するコストや用地が大きくなる
。そこで、洗
浄排水を繰り返し洗浄に使用により、実質的な使用水量の
削 減可能性を検討した。液固比は10、
溶出時間は 1 時間
としてビーカー試験を行ったところ、4 回までの繰り返し
使用では、ECおよび放射性セシウムともに同程度の効率で
飛灰から溶出しており、4 回目の洗浄排水の放射能濃度は
9,100 Bq/L、ECは 13,200 mS/mとなった(図 8.6)。この
結果、洗浄時の液固比は10だが、繰り返し使用により、実
質的な使用水量の削減が可能である。なお、このときの塩
化物イオンは 55g/L、カルシウムイオンが22 g/L、ナトリ
ウムイオンが8.2 g/L、カリウムイオンが12 g/Lで、試料
重量の約1割がこれらのイオンで占められ、非常に高塩濃
度であることがわかった。


8.4 一般廃棄物焼却施設での飛灰洗浄ベンチ試験
飛灰を埋立前に洗浄することは有意義であると考えられ
るが、これまで、放射性セシ ムを含む飛灰の洗浄処理を
一般廃棄物の焼却施設等で実施することは過去に例が無い
ため、上述した原理に基づき、実用化に向けた技術の確立
を目的として、試験研究を実施 (図 8.7)。


 8.7 飛灰洗浄ベンチ試験のイメージ図 

8.4.1 試験方法・設備 
今回の飛灰洗浄ベンチ試験の処理フローを図 8.8 に示す。
飛灰洗浄技術は、飛灰から放射性セシウムを除去する溶解・
脱水工程と飛灰を洗浄した排水から放射性セシウムを除去
する処理工程の2つに分けられる。溶解・脱水行程では、
飛灰を水に所定時間溶解し、脱水機でろ過した後、脱水機
内に水を供給し、濯ぎ(リンス)を行ってから脱水した。
リンスされた脱水ケーキは洗浄飛灰として取り出した。洗
浄排水の処理工程では、排出された放射性セシウムを含む
洗浄排水をRO(限外濾過)膜にて濃縮して透過水を回収し、
回収された透過水は放射性セシウムおよび塩類が除去され
ているので、溶解水およびリンス水として再利用した。一
方、濃縮水中には放射性セシウムおよび塩類が濃縮されて
いるので、吸着処理により効率的に放射性セシウムを除去
した。なお、洗浄排水の繰り返し使用等により洗浄排水の
塩濃度が高い場合はRO膜処理は不要とし、直接、吸着処理
を行った。



8.4.2 飛灰の洗浄効率
飛灰の洗浄効率の最適化を図るため、溶解槽(500L)に数
十kgの原飛灰と水を投入し、原飛灰と溶解水の液固比(重
量比)や溶解・撹拌時間をパラメータとした最適化試験を
行った。なお、脱水はフィルタープレスを用いて行い、リ
ンス水は投入した原飛灰の重量の0~数倍程度で試験した。
なお、放射性セシウム濃度は NaI(Tl)検出器 (AT1320A、
株式会社アドフューテック社)を使用した簡易スペクトロ
メータを用いて測定。飛灰の溶解を液固比 10倍、溶解時
間6時間で行い、フィルタープレスでリンス(リンス 液
固比 5倍)を行った結果を図 8.9 に示す。原飛灰の放射
能濃度は約 8,000 Bq/kgたが、溶解・脱水により約 1,000
Bq/kgとなり、さらに残存する溶解液をリンス水で追い出
す(濯ぐ)ことにより、550Bq/kgまで低下した。このこと
から、飛灰洗浄の仕上げとしてリンスが有効であることが
わかった。なお、脱水ケーキの放射能濃度は脱水機内部の
どの場所でも顕著な違いは認められず、脱水機内で均等に
リンシングが行われていることがわかった。


ここで WETベースは原料飛灰および脱水ケーキの有姿の値
であり、DRYベースは含水率を考慮して水分を含まない場
合に換算した値です。埋立時の放射能濃度の判断は有姿(
WETベース)で行うが、脱水ケーキの含水率にバラツキが
ある場合や物質収支を把握すること考慮し、DRYベースの
評価も併記しています。
また、飛灰と水の混合時間(撹拌・溶解時間)が放射性セ
シウム除去率に及ぼす影響を明らかにするため、溶解液固
比を10倍、リンス液固比を 5倍とし、溶解時間をパラメー
タとして行った試験結果を図 8.10に示す。溶解時間30分
ではわずかに除去率の低下が見られるものの、1時間以上
では WETベースでも除去率90%を超え、放射性セシウムの
除去率に顕著な差は認められない。従って、飛灰の溶解時
間は1時間程度の短時間で十分に洗浄効果が得られること
がわかった。なお、本試験では 8,000~27,000 Bq/kg の
飛灰について同様の試験を行い、飛灰洗浄技術は原飛灰の
放射能濃度によらず、同程度の洗浄効率を発揮することが
確認できた。
また、飛灰洗浄の効率と水温の関係を解析した結果、洗浄
効率の温度依存性は非常に小さく、水温が0℃に近い低温
であっても顕著な放射性セシウム除去率の低下は認められ
なかった。従って、冬季および寒冷地域においても加温処
理等を必要とせず、効果的な飛灰洗浄が可能であると考え
られる。
                    この項つづく

10月31日、彦愛犬1市4町の新しい広域ごみ処理施設につ
いて、彦根愛知犬上広域行政組合の管理者と副管理者を務
める首長5人らが事務局がある豊栄のさとで記者会見し、
ごみ処理方法をこれまでの熱焼却方式から環境負荷が小さ
い好気性発酵乾燥方式(トンネルコンポスト方式)に変更
できるかの調査を行うと発表。管理者の和田裕行市長は調
査の結果次第では建設候補地の西清崎地区を変更する可能
性も示唆したという(しが彦根新聞、2022年11月2日)。
この件については同時掲載していくが、「焼却」から「脱
炭素」へ調査との市長発言の背景を考えてみる。




まず、環境省 環境再生・資源循環局資料(2021.08.05)
「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出
実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)」から「第3章 中
長期シナリオにおいて見込んだ対策:実質ゼロに向けて必
要となる取組と留意点」を参考にすると、①資源循環を通
じた素材毎のライフサイクル全体の脱炭素化、②地域の脱
炭素化に貢献する廃棄物処理システムの構築(一般廃棄物
処理システムを中心に提示)、③廃棄物処理施設・車両等
の脱炭素化が掲げられ、②では、(1)有機性廃棄物対策
:焼却施設の新規整備と合わせたメタン発酵施設導入の想
定➲新規に整備する「焼却施設での処理量+メタン発酵
施設の処理量」のうち、メタン発酵施設での処理量は一人
当たり50kg/人年を想定。(残りは焼却されると想定)、
(2) 廃棄物エネルギー利活用(発電)では、社会導入
される廃棄物発電の効率は、国の政策と民間事業者の技術
開発が相まって向上し、発電効率決定の主要因となる ボ
イラ蒸気条件は、従来の高効率発電の目安の4MPa, 400℃
を最近の導入事例では超えつつある。⇒「6MPa,450℃」へ
の高温高 圧化を対策として見込んでいる(下図参照) 。 


また、(2)廃棄物・資源循環分野におけるCCUSの技術要
素---- CCSとCCUの両方を指し、二酸化炭素回収・有効利用・
貯留のこと。 ここで、CCSはCarbon dioxide Capture and
Storageの略で、二酸化炭素回収・貯留のこと。 また、CCU 
とは、Carbon dioxide Capture and Utilizationの略で、
二酸化炭素回収・有効利用のこと----では、CCUSを前提と
した廃棄物処理システム・施設のあり方を調査研究・技術
開発していく必要があるが、ただし、300t/日規模の焼却施
設にて二酸化炭素分離回収し、輸送のため液化まで行っ
た場合、現状 の性能の二酸化炭素分離回収施設を単純に
追加すると、蒸気消費に伴う発電量の低下及び消費電力
の上昇により、売電が行えなくなるとの試算もあるという。


さらに、③の重点対策領域Ⅲ: 廃棄物処理施設・車両等の
脱炭素化で、(1)省エネ化・電化・バイオマスエネルギ
ー利用に関しては、エネルギー消費量の大きい施設等とし
て、①焼却施設、②し尿処理施 設、④収集(自動車)に
ついて、 「エネルギー消費量の削減」及び「利用エネル
ギーの転換」を想定。 


①焼却施設における対策:所内動力の削減:焼却施設にお
ける電気使用量(原単位)は、同一の処理方式の中でも差
が見られ る。外部へのエネルギー供給の拡大の観点から
も、省エネルギー化が必要。助燃燃料の削減:焼却施設に
おける燃料使用量は、処理方式(施設種類)による違いも
大きい。多 数を占める焼却炉方式では立上時等の使用割
合も多いとみられ、ダイオキシン類発生防止等と両 立し
た省エネルギー化が必要。 
②し尿処理施設における対策(し尿・浄化槽汚泥と生ごみ
のメタン発酵での統合処理効果)➲生ごみとメタン発酵
で統合処理し、消化液を液肥利用すれば、エネルギー起源
CO2排出量は劇的に 減少。 
③収集車両(電動パッカー車):
・EVトラックシャシとの組み合わせで、走行から積込まで
 を全て電動化したパッカー車両は既に実現。
・現在のリチウムイオン電池を前提にすると、容量約80kW
 hで走行距離100kmのトラックに架装すれば、積込を含め
 約85kmの走行距離が確保できるが、大容量バッテリパッ
 ク重量も加わると、電費悪化に 加え、最大積載量減少可
 能性があるため、バッテリを縮小し、休み時間中に急速
 充電でカバーする運 用対策が考えられる。
・一方、バッテリパックを交換式とすれば、ごみ処理施設
 において交換することで、速やかに対応できる。
・電動化で、走行時に加え、積込も電動パワーユニットで
 騒音対策可能性が高まり、静粛化可能。

 以上、詳細及び追加事項は適宜、時宜をみて掲載する。

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【エピソード】



拝啓
中国からの五百万人の拡散にはじまるウイルス感染パ
ニックは四年目に突入。新年の総会(顔見せ)をどう
しょうかと迷っております。メッセージ、ライン、メ
ールなんでもかまいません、ご意見を待っています。
                    幹事敬白 

【脚注及びリンク】
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地域循環共生概論 61

2022年10月27日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.10.27|更新日:
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅶ


7.5 鉄筋コンクリート製の最終処分場設計
7.5.3 アルルカリ骨材反応の定量的評価と抑制

(2)コンクリートバー法の加速倍率の推定の基本概念
図 7.5.8 にコンクリート 供試体を用いたアルカリ骨材反
応の温度による膨張挙動の違いを示す。この図における各
供試体の膨張曲線は、用いる骨材、コンクリート配合が異
なるのもですが、以下のように考察することができる。①
何れの供試体も養生初期には膨張が開始するまでの誘導期
を有し、その後、加速度的に膨張速度が増加し、減衰して
最大膨張量に達する、②温度が高ければ膨張は早期に生じ
るが膨張曲線の差異は小さい。③最大膨張量は温度が高い
ほど小さくなる。

これらのことから、膨張挙動は、用いる骨材、配合、温度
に係らず、同一の曲線として表すことができる可能性があ
る。また、アルカリ骨材反応における膨張は、直線的に生
じるものではなく、また、試験におけるコンクリートの膨
張測定では、最大膨張量に達するまでに時間を要するため
に限られた時間範囲での試験にならざるを得ないのですが、
膨張は直線的に生じるものではないため、単に、ある時間
における膨張量を把握しただけでは加速倍率を求めること
ができない。従って、ここでは、膨張挙動を曲線として捉
えることで、膨張挙動を表し、膨張曲線に与える様々な要
因をパラメータ化して膨張挙動の特性値として用いること
で、加速倍率を求めることとした。初期に誘導期を有して
時間とともに加速し、その後に緩やかとなって最大値に達
する曲線として、以下の式1に表されるロジスティック曲
線を仮定しました。この式における L∞は時間∞における
極大値を示し、b は傾きを、また、c はロジスティック曲
線の立上り開始までの時間を表す。
  
RILEM で開発された AAR-3(38℃)および AAR-4(60℃)のア
ルカリ骨材反応における膨 張試験結果[2]のデータを元に、
式1で示される式を最小二乗法によって近似させた。アル
カリ骨材反応における膨張曲線は実測値とほぼ一致し、ロ
ジスティック曲線式で膨張挙動を表すことができると考え
られます。なお、この式をアルカリ骨材反応の膨張に適用し
た場合には、 L∞ は、限られた試験における時間から推定
される終局的な最大膨張量を示し、bは膨張における傾き、
cは膨張開始までの時間を表し、bはアルカリと骨材中のシ
カとの反応速度、c は骨材中にアルカリが浸透するまでの
時間と負の相関を有すると考えることができ、これらは化
学反応速度では温度による活性化エネルギーが関与すると
みなすことができる。(3)膨張曲線におけるパラメータ既往
の室内試験および暴露試験で得られた各種の反応性骨材、
配合による膨張において、前述の膨張モデルのパラメータ
に対する影響を調査した。
用いたデータは、14カ国の24機関が参加した、欧州で実施
されたアルカリ骨材反応抑制のための規格化プロジェクト
で実施された試験結果[3][4][5][6]のうち、屋外暴露試験、
AAR-3、および AAR-4 試験のデータである。収集した試験
体のデータは AAR-4(60℃)が 32データ、AAR-3(38℃)が26
データ、暴露試験が24データで、これらデータの総アルカ
リ量は、何れも5.2kg/㎥~5.5kg/㎥です。収集したデータ
を、式 1 を用いて最小二乗法で近似させ、L∞、bおよびc
を求めた。(4) 加速倍率の推定方法 以上の検討より、AAR
-4または、他の温度条件でのコンクリート試験から、暴露
環境など、任意の温度および総アルカリ量での膨張曲線を、
図 7.5.9で示したフローで求めた。なお、選定した関係式
からの変換式以下の通り。


推定における精度を検証するため、膨張曲線推定フローに
おける各式を用い、屋外暴露試験体から加速試験における
膨張量を推定。暴露試験体は、著しいペシマム現象 gを示
す安山岩骨材をペシマム条件で用い、約 2 年間暴露した3
つの試験体で、アルカリ総量はそれぞれ 3.25kg/m3、2.6kg
/m3および1.95kg/m3 である。推定では3.25kg/m3 を基準と
し、アルカリ量および温度の差異による L∞(T2R2)、b(T2R2)、
c(T2R2)を求め、ロジスティック曲線を用いて対象とした試
験 体での膨張率と比較しました。なお、暴露試験体は、暴
露環境温度の平均値である 17℃として計算。使用した骨材
はアルカリ反応性が極めて高いため、推定膨張曲線は文
値から最もアルカリ濃度依存性が小さい骨材の値
を用いて
計算し、結果 を図 7.5.10 に示す。推定膨張曲線と実測値
はほぼ近い値を示した。この結果から、膨張曲線の推定で
コンクリート中アルカリ量に対する骨材の反応性を適切
に評価することで、より適切に膨張予測が出来ると考える。

g ある種の高い反応性を示す骨材は、単独では膨張を示さ
ない場合があるが、ある一定割 合(例えば 30%)で反応性
を示さない骨材と組み合わされることで著しい膨張を示す
ようになることが知られており、これをペシマム現象と呼
ぶ。
膨張曲線推定には、未だ課題は あるものの、検討した膨張
曲線推 定法を用いて加速倍率の推定を行う。基準とした膨
張量測 定データは、AAR-4 による試験 [2]で、アルカリ骨
材反応の反応性 が"Normal"に分類される骨材 G1 を用いた
結果であり、ここでは、アルカリ骨材反応による劣化は、
膨張率が 0.05%に達した時にコンクリートにひび割れを生
じ劣 化が開始すると仮定する。結果を図 7.5.11 に示す。
60℃における AAR-4 に対して、修正 JASS 5N に相当する
40℃の試験の加速倍率は 3.8 倍、AAR-4 と同じ総アルカリ
量 5.5kg/m3 で 20℃環境下の暴 露試験では 15.6倍、総ア
ルカリ量を 4.5 kg/m3 とした場合は 23.4 倍、さらに総ア
ルカリ量 を 3.5 kg/m3 とした場合は膨張を生じず、加速
倍率は無限大(∞)となる。 これら加速倍率は、用いる骨材
により、あるいは、暴露における湿度や日射の有無などの
環境条件によって異なるものであり、また、課題として、
アルカリ骨材反応を生じたコンクリートの長期間における
膨張曲線に関するデータが極めて少なく、長期における膨
張の 推定結果の検証が難しいこと、先に示したように最大
膨張量に与える総アルカリ量の影響が挙げられ、例えば、
アルカリ量を変化させて試験を行うなど、今後のデータ蓄
積が必要。

7.6 まとめ
セメント・コンクリート技術を汚染廃棄物の処理・処分に活
用する観点から種々の情報を説明。まず、セメント・コンク
リート技術の活用の全体像を説明。さらに ここの技術の展
開について、以下のような説明を行う

・ 汚染コンクリートについては表面汚染を除染することで
汚染廃棄物量を減量できる可 能性がある。
・ コンクリートの放射能汚染は表面数 mm に留まり、より
高濃度の汚染があったとして も汚染深さは限定的と考えら
れる。
・ 鉄筋コンクリートせいの処分場で安定的に処分するには
水溶性の Cs を高い割合で含有 する焼却飛灰が問題となる。
・ 飛灰は吸湿・潮解性の高い CaCl2 を塩化アルカリと同時
に含む。
・ 飛灰をフレコンに入れ保管すると通常の温度湿度条件で
は 100 年は潮解による漏水は 起きないと予想できる。
・ 水溶性 Cs の固定化を混合セメントやゼオライトなどを
用いて行おうとしても効果は限 定的である。
・ 飛灰をセメント固型化することにより溶出速度を大幅に
低減できる。
・ フェロシアン化ニッケルを用いることで、飛灰中の水溶
性 Csを不溶化でき、かつ、高pH を示すセメントを用いた固
型化も可能である。
・ 環境省が提示している遮断型相当の鉄筋コンクリート製
最終処分場(コンクリートピット)の平常時、事故時、万が
一の事故時に発生しえる現象を整理した。
・ コンクリートピット内への水の浸透防止が最も重要であ
るが、処分場は多重の遮水構造となっており、安全である
と考えられる。
・ 万が一の事故時を想定すると、塩害、アルカリ骨材反応
(ASR)、化学侵食へ備えることが好ましい
・ コンクリートへの飛灰からの漏出液によるCsの浸透予測
 を行ったところ、Clの浸透に比べ、Csの浸透は大幅に少な
 く、塩害に十分抵抗性を持つコンクリートからはCs漏洩は
 起きないと考えられる。
・ 長期間にわたるASRの抑制効果は、加速コンクリートプ
 リズム試験を行い、試験の加速倍率を考慮することで予測
 可能である

放射能汚染のレベルが高い焼却飛灰などは、鉄筋コンクリー
ト製の遮断型相当の最終処分場建設が予定されている
が、
飛灰の特性を考慮し、安全安心の観点から万が一のの事故
にも耐える対策を講じることが必要となる可能性もありえ
る(当然、費用対効果の観点での検討も必要)。上記の研
究成果を最終処分場建設に活かすことが今求められている。
国立環境研究所では、汚染廃棄物処分にかかわる事業の安
全確保に資するため、最新の知見をまとめ、最終処分場の
設計と施工に活用するべく、コンクリートに関する専門家
の協力を得て、「汚染廃棄物等最終処分場へのセメント・
コンクリート技術適用に関する研究」に係る研究会を設置
し、以下の内容に関して検討を重ねております。
・ 処分対象物の特性を考慮した処分場の評価シナリオの設

・ 設計すべき事象、事故時などマネージメントすべき事象
の整理
・ 望ましい構造や材料の例示(例えば構造として、上部か
らの漏水を防止、検出、補修が 可能なプレストレストコン
クリートによる屋根構造、コンクリート容器、材料として
フライアッシュセメント、膨張材、エポキシ塗装鉄筋など

8.2 飛灰洗浄技術の導入による汚染廃棄物に関する課
題の解決
8.2.1  焼却施設における保管スペースのコンパクト化
発生した飛灰をそのままフレコンで保管する場合と、飛灰
洗浄を適用して二次廃棄物(廃吸着剤)のみを保管する場
合を比較すると、例えば、原飛灰が2万Bq/kgであったとす
と、二次廃棄物の放射能濃度を 10万 Bq/kgまで濃縮した
場合の減容率はおおよそ 86%(約 1/10 に減容化)、1,000
万Bq/kgまで濃縮した場合は 99.8%(約 1/1,000 に減容化
)と大幅に保管スペースを小さくできる可能性がある。(
詳細は 8.4.4 洗浄排水からの放射性セシウムの除去を参照)

8.2.2 地域の除染の促進
一般廃棄物焼却施設において、飛灰処分ができずに保管し
きれなくなった場合、焼却施設 でのごみの受入を停止せざ
るを得ないという危機的状況に陥る危険性がある。また、
地域で進められる除染事業においては、可燃性の除染廃棄
物が発生することが想定されるが、焼却施設への受け入れ
により飛灰濃度が上昇し、保管せざるをえない状況になれ
ば、 除染自体に支障をきたすことにもなりかねない。除染
廃棄物の仮置場の設置は困難であり、また設置できた場合
でも、最終処分場や中間貯蔵施設(福島県の場合)での受
入が始まるまでに腐敗・変質することが危惧され、管理上
の大きな支障が生じる可能性もる。一般廃棄物焼却施設に
おいて、飛灰洗浄技術を適用し、当該除染廃棄物を受け入
れることにより、上記のような問題を回避でき、仮置場の
運用がスムーズに進むことで、地域に散在していた除染廃
棄物を適切に処理し、集中的かつ安全に管理できるものと
考えられる。

8.3 飛灰洗浄技術の概要
8.3.1 飛灰洗浄技術の基本原理
飛灰洗浄技術の基本原理を図 8.2 に示す。飛灰中の放射性
セシウムは水に溶けやすいため、保管や処分においては十
分な管理が必要となりますが、本技術は、水に溶けやすい
という特性を逆に利用し、保管・処分の前処理として、水
洗浄を行おうとする。水に飛灰を加えて一定時間撹拌し、
これを脱水機で絞ると大部分の放射性セシウムが除去され
た脱水ケーキ(洗浄飛灰)が得られる。飛灰の性状にもよ
るが、ビーカー試験やベンチ試験において、概ね 8~9割
程度が除去される結果が得られる。水(洗浄排水)に移行
した放射性セシウムは吸着法等によって水から除去・濃縮
することができます。このとき、水中には放射性セシウム
とともに飛灰から溶出した塩類(Na、Ca、K等)が多く含
まれている。このような共存するイオンはしばしば放射性
セシウムの吸着を阻害することが指摘されておりますが、
セシウム選択性の高い吸着剤の使用や工学的なプロセス設
計により、十分に吸着・除去可能であることがビーカー試
験やベンチ 試験において明らかとなった。


                    この項つづく
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【エピソード】


□ 地球温暖化はなぜ起きる Ⅱ 
海洋研究開発機構・環境変動予測研究センタ・河宮未知生
氏の「その仕組みや2050年カーボンニュートラルの必要性
の概説」 via 環境ビジネス 2022年秋季号
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1.運動方程式(ニュートンの法則) 2.連続の式 3.
熱力学第一法則 4.状態方程式

これら基本的な方程式に基づき地球の気候をコンピュータ
ーでシミュレーションする「気候モデル」を最初につくった
のが真鍋淑郎氏でノーベル物理学賞の快挙になった。同氏
は、大気の高さ方向の温度分布を明らかにする3次元のモ
デルをつくり、大気中の二酸化炭素濃度が変化すると気温
がどう変化するのか研究を行ってきた。1989年に同モデル
を使ってシミュレーションした予測結果は、その後の約30
年間に観測された気候の変化パターンをよく再現している
といわれる。


その後、より解像度の高いシミュレーションモデルが確立
され、現在も将来の気候予測や過去の気候の再現などに活
用されている。
現実とは違う地球環境を作り出せるため、例えば人間が二
酸化炭素排出してこなかった場合のシミュレーションも可
能で、逆に、人為的な二酸化炭素排出量を組み込んだパタ
ーンにすると、実際の観測でみられる近年の気温上昇が再
現される。
近年の温暖化傾向を人間活動の影響によることに疑う余地
がないと断言した(IPCC第6次評価報告書を引用して海洋研
究開発機構作成)が、変化すると気温がどう変化するのか研
究を行ってきた。1989年に同モデルを使ってシミュレーシ
ョンした予測結果は、その後の約30年間に観測された気候
の変化パターンをよく再現しているといわれる。

その後、 より解像度の高いシミュレーションモデルが確立
され、現在も将来の気候予測や過去の気候の再現などに活
用されている。現実とは違う地球環境を作り出せるため、
例えば人開か二酸化炭素を排出してこなかった場合のシミ
ュレーションも可能で、逆に、人為的な二酸化炭素排出量
を組み込んだパターンにすると、実際の観測でみられる近
年の気温上昇が再現される。
近年の温暖化傾向を人間活動の影響によることに疑う余地
がないと断言した(IPCC第6次評価報告書を引用して海洋研
究開発機構作成)が変化すると気温がどう変化するのか研究
を行ってきた。1989年に同モデルを使ってシミュレーショ
ンした予測結果は、その後の約30年間に観測された気候の
変化パターンをよく再現しているといわれる。

□ 2050カーボンニュートラルその背景には科学的根拠
昨年公表されたIPCC第6次評価報告書では、「人間の影響が
大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことにぱ疑う余地
がない」と初めて明
記された。つまり、地球の気温上昇は
人間がどれくらい二酸化炭素を排出するかに強く依存して
いるといえる。
シミュレーションでは、気温上昇を産業革命前に比べて2
℃未満に抑制するためには、2070年頃までに二酸化炭素排
出量を実質ゼロとする力-ボンニュートラルの達成が必要
とされる。また、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締
約国の目標である1.5℃目標の達成には、2050年頃までにカ
ーボンニュートラルを実現しなければならない。「2050年
カーボンニュートラルを掲げる背景には、こうした科学的
根拠があることを意識してもらいたい」と河宮氏。

二酸化炭素排出シナリオを気候モデルにインプットすれば、
気温と降水量などの変化を予測することもできる。「気温
が上昇すると大気中に含まれる水蒸気が増えて、それが降
水量の増加を引き起こす。気温が1℃上がると降水量は7
%増えるといわれている。降水量が10%
えると、洪水の確
立は約2倍になる
予測されており、近年の豪雨や水害に
地球温暖化が関係している可能性が高いと考えられていま
す」と話す。
近年の温暖化に関して、一部では「過去に氷期(寒冷期)
と間氷期(温暖期)がほぼ周期的に繰り返されてきたため、
この気候変動も自然のサイクルの一つではないか」という
懐疑論もささやかれている。これに対して、府営氏は「過
去には約10万年ごとに寒冷期と温晩期が繰り返されており、
現在くらい暖かい時期も確かにありました,けれど、ここ
百年、20世紀後半からの温暖化に関しては人間活動による
温室効果ガスの排出が最も大きな要因だと考えられる。気
候変動シミュレーションでは、温室効果ガスの急速な増加
がなければ、近年の温暖化傾向は算出されません。46億年
という地球の長い歴史を考えれば、現在の温暖化はとるに
足らないことなのかもしれません。ただ、私たち人間は現
在の気候状態で暮らし、そこに調和してきた。その環境が
大きく変わろうとしていることに、強い危機感を抱くべきで
す」と警鐘を鳴らしている。
                      この項了

                       -

「桐一葉落ちて天下の秋を知る」落葉が早い 青桐 あおぎり
の葉が一枚落ちるのを見て、秋の来たことを知る。わずか
な前触れから将来の大きな動きを予知できることのたとえ
ではないが、つるべ落としのごとく一年が過ぎようとして
います。昨日、"街活"で彦根市に要望書を提出と相談で町
役員と窓口出かけたところ、「婚姻・出生届で記念撮影」に
出合い驚きました。『秋のひこにゃん大躍進!商標使用料
の無償化、婚姻・出生届で記念撮影』(10.10「しが彦根新
聞ウエブ」)ということでした。冠婚葬祭、訃報、少子
高齢化、空き家問題、出口の見えないコロナパンデミック
に、豪雪被害対策等々。気がつけば手詰り状態の日々。皆
様方のご健勝を祈念いたします。
                     幹事敬白

【脚注及びリンク】
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