地域循環共生圏概論 56

2022年07月15日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.7.15|更新日:2022.7.
地域循環共生圏概論 56


□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題Ⅱ
国内の自治体の「ごみ処理場施設管理」は大災害などの非
常事態に備え管理区内及び外の廃棄物の一時保管スペース
がネットワークが設計構築されている(今回の彦根市の設
備老朽化による三重県への余剰ごみ処理委託などの事例が
そうであるように、充全ではないが)。周知の通り、滋賀
県は、京都府・福井県・石川県に原子力発電所及び関連施
設が日本海に集中し万一放射性物質が該当設備より飛散拡
散された場合、住民は避難するとともに、汚染された周辺
地に拡散した「汚染物の一時的な中間的集積場として使用
すするシーンのワークフロー化」しておく必要があり、さ
らには福島第一原発事故にならって中間処理場として、拡
散防止・外部との遮断手段及び汚染の除及びに集約保管並
びに搬出手順を明確にして於かなければならないはずだ。
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□ 放射性物質の除外処理をどうするか ②
6.2.7 バグフィルターの健全性の維持
 バグフィルターはろ布が張られた筒状のものであり、大
規模施設では数百本が設置され、
ろ布が全く破れないとい
うことはないが、その対策として、ろ布にばいじんが堆積
することによる圧力損失の上昇や、重さによるろ布の脱落
等を防ぐため、表面の堆積層 は「パルスジェット」と呼ば
れる一時的な衝撃により順次払い落とす。払い落とし時に
若干のフィルター効果の低下するが、フィルター効果を維
するためにろ布にはプレコートがなされており、大きな
影響はないといえる。また、払い落としは全てのろ布に同
時に行われるわけではなく、順次行われるので、全体とし
てのフィルタ効果は維持される。また、ダストモニタをバ
グフィルタの後段に設置することで、ろ布の健全性を常に
確認することができる。さらに、点検時などを利用して定
期的にろ布の強度劣化や目詰まり程度を計測することで、
事前の交換を行うという予防処置もとられている。
 


図6.6 既存焼却施設内の空間線量と付着灰の放射性 Cs の
実態調査の結果例 

6.2.8 プロセス内への蓄積挙動
 施設を維持管理する作業者の安全性への配慮も必要です。
放射性 Cs の設備材料等への蓄積が生じると、施設内の作
業空間において、定常的な設備点検時あるいは長期的には
施設更新時に十分に留意することであり、放射性 Cs の蓄
積挙動を解明することが重要。実態調査結果の一例を図6.6
に示す。耐火物表面の付着灰の放射性 Cs 濃度が低いにも
かかわらず、耐火物が存在する場所(高温になる炉内など)
の空間線量が高い。このことは、耐火物への蓄積を示唆し、
耐火物の深さ方向における濃度分布の測定結果からも、内
部に浸透、蓄積している現象が確認されている。
付着灰の濃度は後段に行くほど高くなっており、排ガスの
冷却とともに揮発した放射性セシウム化合物が凝縮して、
固体化していくことを反映していると考えられる。

6.3 焼却処理における放射性セシウムの挙動 
放射性セシウム(Cs)に汚染された都市ごみを焼却処理す
ると、放射性 Cs が濃縮された主灰と飛灰が処理残渣とし
て生じる。放射性 Cs の濃縮割合に加えて、放射性 Cs の
溶出性も主灰と飛灰とでは著しく異なる。これは、各灰に
含まれる放射性 Cs の化学形態が違うことを示唆。また、
下水汚泥の焼却灰中の放射性 Cs の化学形態についても同
様に、その溶出性の違いから都市ごみの飛灰中の形態と異
なり、燃やすもの、つまり、被焼却物の組成が放射性 Cs
の化学形態----Cs塩の生成・分解挙動に影響を与えている
ことを意味する。この化学形態の違いの説明には熱力学平
衡計算をそれらの焼却系に適用。まず、焼却施設の焼却炉
を一つの系として捉え、平衡計算を行い、つぎに実際の焼
却施設は様々な処理過程からまる施設内の全体の挙動を把
握するマルチゾーン平衡計算を適用し、加えて、汚染され
た各バイオマスの燃焼に対して平衡計算を適用するととも
に、ラボ熱処理実験を行い、放射性 Cs の挙動を調査して
いる。

※「6.3.2 熱力学平衡計算」の項は一部割愛。
(1) Cs の挙動を再現するための平衡計算法の確立
FactSage には、Cs 化合物に関する熱力学パラメータが少
ないことから、市販の状態で平 衡計算を行うと、Cs はす
べて塩化セシウム(CsCl)ガスとして揮発してしまう結果
となり、本研究では、K の挙動を参考にして Cs の熱力学
パラメータを整備。 パラメータ整備後に、都市ごみおよび
下水汚泥の焼却系について平衡計算を行い、実際の挙動一
致するかどうか確認し、実際の挙動と一致した場合には、さ
らに、ラボ熱処理実験を行う対象(雑草類、落葉(広葉樹)、
落葉(針葉樹)、小枝)にこの計算法を適用する。

(2) マルチゾーン平衡計算
 マルチゾーン平衡計算とは、焼却施設の重金属の挙動を
把握するために Ginsbergらが提案したモデル9。先ず、こ
のモデルを一般廃棄物焼却施設へ適用することにより、Cs
の挙動の理解を試みる。先ず、ストーカ炉型の焼却施設を
図 6.3.1 のように 3 つのゾ ーン(一次燃焼ゾーン、二次
燃焼ゾーン、バグフィルターゾーン)に分け、さらに、一
次燃 焼ゾーンを4つのゾーン(乾燥、熱分解、燃焼、おき
燃焼)に分け、焼却施設を計6つのゾ ーンに分ける。各ゾ
ーンに対して熱力学平衡計算ソフト FactSage(Ver. 6.3)
を用いて平衡計算を行っています。各ゾーンの温度や空気
比(=投入空気量/完全燃焼に必要な空気量)➲ 燃焼条件は
図 6.3.2 のように設定。


 各ゾーンの計算内容を簡単に説明する。まず、ごみを投
入すると乾燥ゾーンに入り、最も上流側の乾燥ゾーンでは、
水分が 蒸発すると仮定する。次の熱分解ゾーンでは、乾燥
したごみが熱分解して低分子となって揮発化すると仮定。
ここでは、ごみが熱分解した割合、すなわち変換率(Rc)
を設定し、Rc については、Ginsberg らの文献値 9 を参考
にして、0.7-0.8 としている。燃焼ゾーンでは、熱分解後
の固形残さを燃焼すると仮定。ここではさらに、変換率に
加えて燃焼ガスへの灰の混入率(φ)を設定。φは、肴倉
らが報告する一般廃棄物の主灰と飛灰の発生量と元素組成
データ8から揮発しない元素を選び、 飛灰への移行率を計
算し、その値を φと挿入。


 最後に、おき燃焼ゾーンでは、未燃焼 炭素を燃やすと仮
定し、一方、一次燃焼後については、二次燃焼ゾーンで、
φ分の灰と一次燃焼の各ゾーンからの排ガスを初期値とし
て、高温で完全燃焼させることを仮定する。最後のバグフ
ィルターゾーンでは、二次燃焼後の排ガスのみが 170℃へ
急冷されるという平衡計算になっている。マルチゾーン平
衡計算の評価・考察は二段階で行った。まず、二酸化炭素
等の主要排ガス成分を計算し、既存のデータと比較。次に、
Csを含む無機元素の各種灰の含有率を計算し、調査結果と
比較している。

(3) バイオマスごとのラボ熱処理実験
A市処分場において野積みされた草、落葉、小枝などを採取
し、それらを室内にて2週間風乾させた。雑草類、広葉樹の
落葉、針葉樹の落葉、小枝を裁断もしくは粉砕し、熱 処理
するサンプルを調製しました。調製したサンプルを図 6.3.3
に示す。小枝は細かく粉砕するとバークとそれ以外の部分
が均一に混じらないように見えたことから、1cm 程度に切
り落としたものをサンプルとした。90×90mmのアルミナ容
器にサンプルを入れ、 図 6-3-4 のマッフル炉(ヤマト科学、
FO100、炉内:100×100×170mm)を用いて熱処理した。放射
性 Csの分析では、灰の体積として U8 容器の高さ5mm ほど
の体積が必要になるため、仕込み量を 5g~13gとして、燃
焼処理および炭化処理を行う。燃焼処理では、空気を約1~
2L/分で流しながら、約10℃/分でサンプルを昇温し、目的
の温度に達したところで1時間30分間その温度を保持した。
空冷後に灰をU8容器に移し、ゲルマニウム半導体検出器を
用いて灰中の放射性Cs濃度を測定しました。処理前後の重
量を測定し、灰化率および炭化率を算出した。得られた熱
処理残渣に対して溶出試験を行い、処理温度と灰からの放
射性 Cs の溶出性を調べる。溶出試験では、残渣に対し50
~200倍の超純水を添加し、6時間振とうさせる。振とう後
に溶出液を0.45µmフィルタでろ過し、ゲルマニウム半導体
検出によりろ液中の放射性Cs濃度を測定。測定値と超純水
の添加量から溶出率を決定した。また、溶出液の電気伝導
度およびpHを測定する。

6.3.3 結果と考察
(1) Csの挙動を再現するための平衡計算法の確立


図 6.3.7 バイオマスごとの燃焼温度とセシウムの分配挙動
  に関する平衡計算結果 (上から、a)牧草、b)ポプラの
  葉、c)松葉、d)廃木材) 

計算結果により良好なが得られたので、牧草、ポプラの葉、
松葉、廃木材を燃やした条件を計算。その結果を上図 6-3-
7 に示す。
1.全体的な傾向として、低温にてアルミノシリケートが
 生成し易く、温度が高くなるとアルミノシリケートが分
 解し、CsCl や水酸化セシウム(CsOH)ガスが生成される
 結果となった。ただし、それらのガスが発生する温度や
 量はバイオマスごとに異なり、Cs の挙動も被焼却物の組
 成依存性を示唆。
2.また、下図 6-3-8に示す Kの挙動と比較すると、通常
 の焼却温度、すなわち 850℃については、 Cs と Kの挙
 動は似ているが、低温下においては化学種の生成挙動が
 かなり異なる。したがって、様々な熱処理条件を予想す
 るには、Kの挙動を Csの挙動として予測することに限界
 があることもわかった。

(2)マルチゾーン平衡計算の適用(一部割愛)



 ここで、焼却灰の放射性 Cs レベルにより、灰の処分方法
も異なってくることから、飛灰もしくは 主灰中の放射性
Cs 濃度を制御するニーズがある
。実際の運転で調整できる
空気比およ び温度です。まず、温度については、比較的
容易に変更できることから、その影響を検討し てみた。
一次燃焼温度を変化させた場合の各ゾーンの放射性 Cs の
組成の変化を図 6-3- 11 に、各種灰への移行率を 6.3.12
に示す。燃焼温度を高く設定すると、燃焼ゾーンから CsCl
として Csの一部がガス化し、それらが冷却過程で固体化す
る結果となりました。したがって、燃焼温度を高くすれば
するほど、飛灰中の放射性 Cs 濃度および飛灰への移行率
が高くなることが示唆された。燃焼温度を高く設定するこ
とは、飛灰へ放射性 Csを濃縮する方法として有効かもし
ない



また、空気比の影響を検討した結果を図 6.3.13 に示す。
空気比が1より低い、つまり、 還元的な雰囲気では、Cs
は CsClガスとして揮発しやすくなることが示唆された。焼
却 処理としてこの程度の低空気比で運転するのは困難だが、
一次燃焼の各ゾーンの空気量 の割り振りを調整することで、
Cs を飛灰へより濃縮させる方法があるかもしれない。ただ
し、空気比と炉内温度は独立な関係ではないことから、実
際の操作ではその関係を踏まえた操作条件の設定が必要に
なる
(3) バイオマスごとのラボ熱処理実験
.3.4 結論 
1.汚染廃棄物の熱処理過程における放射性 Cs の挙動を
 理解することを目的に、平衡計算ソ フト FactSage の熱
 力学データベースに Cs のアルミノシリケートとシリケ
 ートのデータを加 えて平衡計算した結果、都市ごみと
 下水汚泥の焼却時の放射性 Cs の挙動を再現できること
 がわかりました。なお、アルミシリケートには多様な構
 造があることから、パラメータの精 緻化は今後重要な課
 題と考えています。アルミノシリケートは低温では安定
 に生成するものの、高温では分解し易く、分解する温度
 も被燃焼物の組成に依存する。
2.マルチゾーン平衡計算をストーカ炉型の焼却施設に適
 用し、主要排ガス組成の計算値は 既存の文献値と概ね一
 致することがわかった。また、放射性 Csの挙動も比較的
 良好に 再現できたが、実際の挙動を定量的に再現できな
 い元素もあり、更なる改良が必要。
3.挙動の制御という点では、操作条件として温度と空気
 比、組成として Cl 量や Ca/Si が Cs の挙動に与える影
 響を予想したが、さらなる研究調査をおこなう。
4.ラボ熱処理実験により、バイオマスごとの燃焼過程に
 おける放射性 Csの挙動、灰への移行率等を明らかにした。
5.放射性 Csの灰への移行率と燃焼温度の関係はバイオマ
 スごとに特徴があり、除染物の焼却処理では注意が必要
 となる。特に、雑草類は高温処理でも灰への移行率が高
 くなる。放射性Csを主灰もしくは飛灰のどちらかに濃縮
 できる方法が提案できる可能性がある。
6.また、完全ではないが平衡計算によりある程度は Csの
 挙動を再現でき、平衡計算法の有用性が示唆れた

6.4.焼却施設における炉内耐火物等への蓄積挙動調査
6.4.1 はじめに
 放射性物質を含む廃棄物を焼却処理する結果、そのよう
な焼却施設の焼却灰や飛灰から高濃度の放射性セシウム(Cs)
が検出され、問題となる場合がある。このような放射性物
質を含む廃棄物の焼却処理過程でのCsの挙動に関して、多
くの施設で調査が行われているが、焼却施設の維持管理や
廃止後の解体撤去の際における作業者の放射線被ばく防止
の観点、さらに維持管理や解体撤去により生じる廃棄物の
適正処理の観点から、施設設備内における放射性Csの蓄積
等についての現象を明らかにする必要がある。そこで、こ
こでは、焼却施設内の点検補修時に生じた耐火物試料を採
取し、放射性物質等の濃度分布を把握し、既存焼却施設に
おける耐火物への放射性物質蓄積の実態調査を行った。

6.4.2 調査方法
(1) 都市ごみ焼却施設における放射性Csの炉内での蓄積・
分布に関する実態調査------放射性Csの焼却炉内での蓄積・
分布の特徴を把握するため、実施設の炉内から後段の排ガ
ス処理設備にわたる範囲で設備付着物を採取するとともに、
メンテナンス時の被曝評価のため炉内外の空間線量率を測
定。付着物サンプルについては放射性Cs濃度を測定。
(2) 既存施設における耐火物中の放射性Cs及び安定Csの実
態調査----現在稼働している都市ごみ焼却・溶融施設の点
検補修時に生じた耐火物廃材を採取し、採取した耐火物廃
材を図.6.4.1 のように炉内側から原則的に2cmの厚さ毎に
切断し。こうして得た各層試料の測定を行い、それぞれの
測定項目は放射性 Cs(Cs-134、137)、安定Cs(Cs133)、
Si、Al、Ca、Mg、Na、K、Clとした。


  また、ブランク値として焼却施設等で使用される前の耐
火物中の放射性Cs濃度の調査を行いう。調査は焼却施設、
溶融施設で使用される耐火物のうちSiO2-Al2O3系,
SiC
系、Cr2O3 系のものを用いて行った。使用前耐火物に関し
ては、放射性 Cs以外の天然核種 の測定も合わせて行う。

6.4.3 調査結果
(1) ごみ焼却施設における放射性 Cs の炉内での蓄積・
 分
布に関する実態調査
 下図6.4.2 に施設の各サンプリング場所と放射性Cs濃度
および空間線量率について示しす。炉内で比較的温度の高
い箇所(炉下、中、上、ガス冷入口、出口)では炉壁付着物
中の放射性Cs濃度は高くないが、やや温度が低くなってク
リンカができやすい部位では放射性Cs濃度が高いという傾
向が確認された。空間線量率については、いずれも電離則
に基づく管理区域設定の目安である 2.5μSv/h以下の値。
(ただし、常時作業を行わない炉内についても同様の基準
を当てはめるかについては要議論)。しかし、付着物中の
放射性Cs濃度が高い箇所よりも、比較的高温部で耐火物が
設置されている箇所(炉下、中、上、ガス冷入口、出口)
において空間線量率が高い傾向にあり、耐火物内部へ Cs
が浸透していることが予測された。



(2) 既存施設における
      耐火物中の放射性 Cs 及び安定 Cs の実態調査
使用前耐火物における放射性Cs等測定結果の例を表 6.4.1
に示す。耐火物の材質は 溶融施設で使用されることの多い
Cr2O3系耐火物だが、いずれのCr2O3含有量(30%、60%、80%)
の耐火物においても放射性Csは不検出。焼却施設で使用さ
れることの多いSiO2-Al2O3系、SiC系耐火物でも同様の調査
を行ったが、いずれの耐火物においても放射性Csは不検出。
一方で、いずれの材質からも Th-234、Ra-226などの天然核
種が検出されている。これらは、耐火物に使用される鉱物
由来であると考えられ、多い場合で 2000Bq/kg程度になる
ことから、炉内環境調査等において放射性Csでない核種の
影響を考慮する必要がある
考える。


  原発事故以前の耐火物廃材にごく微量でも放射性 Cs が
含まれていたがどうか、ベースとなるレベルを把握、2010
年度に採取した耐火物廃材を用いて原発事故以前調査。そ
の結果、いずれの部位においても放射性Csは不検出。これ
は調査対象が1施設のみ。原発事故以前の耐火物廃材に放
射性Csは含まれていないと考えてよいする(全般的にサン
プルが少ないことが問題で最低3施設は調査すべきでは?)。
 原発事故後の2011年度から 2012年度にかけて各施設で採
取した耐火物については、施設が立地する地域が放射性 Cs
にどの程度汚染されているか、状況は様々であり、放射性
Cs が検出された試料は一部。耐火物中の濃度分布として顕
著な傾向が認められた結果の一例を図 6.4.3に示す。


 いずれの元素も表層から炉内側になるにつれ減衰
する傾向を示した。同族元素である Cs、Na、K も同じ傾向
を示したことから、耐火物内での Cs の浸透・蓄積を知る
うえで、Na、K を指標にできる可能性があると考えられる。
また、Clも Cs と同様の傾向を示す。高汚染地域である施
設の試料に関する放射性 Cs の測定結果を図 6.4.4 に示す。
これより、使用後耐火物の炉内壁面部が最も高く、深くな
るにつれて濃度が減衰していることが分かる。炉の最下層
でも放射性 Cs が検出されていることから、放射性 Cs を
含む廃棄物を長期間処理することで、耐火物全体に全体に
放射性 Cs が浸透している可能性が考えられる。


 次に、ある施設において雰囲気温度の異なる 3箇所から
採取した耐火物および耐火物付 着物の放射性 Csの測定結
果を表 6.4.2 と図 6.4.5 に示す。耐火物付着物から高濃
度の放射性 Csが検出されたが、雰囲気温度別にみると、よ
り低温部で放射能濃度が高い傾向にある。飛灰中に含まれ
る放射性 Cs は CsCl になっていると想定される、この場
合800℃以上では多くが揮発して排ガス中へ移行している
と考えられ、温度が低くなるにつれ凝縮すると考えられる。
このため、二次室・後燃焼室の雰囲気温度よりも上部煙道
部の 雰囲気温度の方が固体中に含まれる放射性 Csの濃度
が高くなると予想され、付着物の濃度に影響したと考えら
れる。

 6.4.5 より、2 つの採取材料からいずれも放射性 Cs が検
出されていることに加え、耐火物表層の放射性 Cs 濃度が
大きく異なっている。雰囲気温度が高い二次燃焼室では
2000Bq/kg程度、雰囲気温度が低い上部煙道では8000Bq/kg
程度。表 2 から、付着物の放射性 Cs 濃度が大きく異なる
ため、とくに表層付近では影響 が大きく現れたと考える。
しかし、炉の内側に移るにつれ上部煙道部と二次燃焼室の
放射性 Cs 濃度はほぼ同じになり、上部煙道部の試料では
内側 10cm 以降はほぼ 0Bq/kg となる。前述同様 CsCl が
化学的に主であるとすると、耐火物内部の温度が浸透に影
響 を与えると考えられる。二次燃焼室では雰囲気温度が
850~900℃であることから耐火物 表層も同程度の温度と考
える。また、焼却施設で使用される主な耐火物(SiC 系など
は熱伝導率が大きいことから、耐火物内部の温度変動は比
較的小さい(100℃程度)と考えられ、気孔を通じて揮発した
CsCl が浸透すると考える。逆に上部煙道部では雰囲気温度
が 550~650℃と低いため、飛灰の付着により耐火物付着物
および耐火物表層の濃度は高くなるが、内部において気相
で移動する CsCl が少なく、その分濃度減衰の勾配が大き
くなり、浸透深さも短くなったものと考える。なお、放射
性 Cs が検出されなかった他の施設で安定 Cs を指標とし
て調査した結果では、 耐火物の深さ方向に安定 Cs が浸透
している結果もあるが、濃度勾配が認めにくい場合もある。
通常の可燃ごみには一定レベルの安定 Cs が含まれていて、
既に長期的に暴露されるため、平衡状態にある可能性が高
い。その場合は、炉材の温度分布に応じた濃度勾配が生じ
る可能性があり、今後は温度分布との関係で考察していく
必要がある。また、炉材の材質や気孔率などにも影響を受
けると考える。
                    この項つづく

【エピソード】






 
相模原市 ごみから貴金属を回収してSDGs推進

 6月16日、神鋼環境ソリューションは、相模原市と共同で
市鉱山と言われる廃棄物に含まれる貴金属資源に着目し、
調査・研究を行った結果、同社が建設した流動床式ガス化
溶融炉から金と銀を回収したことが話題になった。流動床
式ガス化溶融炉はごみを500~550℃の高温で流動する砂に
よってガス化燃焼させる施設。一般ごみとして廃棄された
電子機器等に含まれた貴金属は比重が高いため、炉底部の
砂の中で高濃縮された状態で効率的に回収することができ
る。

図2
出所:特許上図は神鋼ファウドラーの「ガス化溶融炉のス
ラッグ塩基度調製方法及びその装置」(参考)


出所:横浜市➲下水汚泥等の放射性物質濃度(参考)

ごみ焼却炉の技術革新が進み、高温で、効率よく燃焼でき
るようになり、①ダイオキシンなどの有機化合物の無害化、
②ガス化溶融炉のスラグを回収し貴金属などの再資源化で
き、③発生熱の回収利用が可能となっている。④将来的に
は二酸化炭素の回収し、太陽光や電解で水素製造やメタネ
ーションなどの有機化合物合成など分散自在型プラント形
成できると考えています。面白いですね。本当に。

【脚注及びリンク】
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