皆さま
私、野寺秀徳は、昨日行われた全日本選手権を走り終え、長らく走り続けた夢の中から、無事引退する事ができました。
応援して頂いた皆さま、誠にありがとうございました。
幼少時代、ボロボロの自転車で、時間の経過も忘れ、田舎道を駆けずりまわっていたのが、つい最近のように感じます。
より早く、より遠く、どこまでも、未知の世界を見させてくれるこの乗り物に、私はどんどん魅了されていきました。
そんな私がいつしか夢描いた場所、それがサイクルロードレースの世界です。
私は、この乗り物と共に夢を追い求める過程で、多くの人々に出会い、苦楽を共有できる素晴らしい仲間を得る事が出来ました。
強さを手にするたびに、自らの弱さを思い知らされ。
強くある為に、謙虚である事の大切さを教えられました。
失うもの、犠牲にする事もありましたが、得たものはその何倍も大きなものであったと確信しています。
私は、長年の競技生活の中で、大きな夢を幾つか掴む事が出来ました。
その一つ一つは、自分の実力を大きく超えた、自分でも信じられないような大きな物です。
重圧の渦中から、夢を掴んだ瞬間の喜びは、忘れる事の出来ない物であります。
しかし、本当に尊く大切なものは、夢の実現ではなく、仲間と共に夢を追い求める、その過程にあったのではないかと今は感じております。
体に恵まれたわけではない、特別な素質があったわけでない私が、ここまで来られたのは、その過程で出会った、多くの方々の支えに他なりません。
手の掛かる子供だった私に、自転車を買い与えてくれた両親。
我儘な、選手としての生活を支えてくれた家族、
快くご指導頂いた先輩方、
多くの声援と勇気を下さったファンの皆様、
高き目標として胸を貸してくれた、ライバル選手、
共に挑み、ぶつかり合い、一緒に笑ってくれたチームメート、
全ての人への感謝の気持ちは、今ここで私の不器用な言葉では伝えきれません。
ただただ感謝するばかりです。
皆さまに、心から感謝を申し上げます。
そして、これからはシマノレーシングの監督と言う重責を任される事になりました。
私は、シマノの一員となったその日からこれまで、現監督である今西さんに頼り続けながら選手を続けてきました。
今西さんほど多くを頼れる優秀な指導者を、私は他に知りません。
その立場をこれから引き継ぐ事は、正直不安であり重圧を感じております。
しかし、今まで私が受けてきた多くの恩と同じものを、これからは選手達に返していきたい。
共に成長を続け、まだ見ぬ世界へ共に挑戦していきたい。
挑戦する勇気を、達成する喜びの場を私が作っていかなくてはならない。
そう強く感じております。
これからは、選手を支える立場として、また新たなチャレンジが始まります。
皆さま、これからもご指導よろしくお願いします。
そして、共にシマノレーシングを支えて下されば嬉しいです。
長くなりましたが、感謝と決意の言葉とさせていただきます。