Hidenori Nodera 野寺秀徳『輝く路の上で』

SHIMANO Racing野寺監督のブログ

アドレナリンと上手につきあう

2015-12-21 17:15:14 | 日記
久しぶりに土日の連休を頂いた週末。

土曜日には選手と大阪の山をマウンテンバイクで走行してまいりました。

しばらく風邪が治らず、運動不足であった私の身体は悲鳴を上げていましたが、山の中に広がる非日常的な光景やオフロード走行独特の危うさに、アドレナリンがどんどん放出され、苦しさまでもが楽しさに変換されるような感覚がありました。


シマノレーシングの選手の大半は、この冬初めてマウンテンバイクを体験したのですが、やはり楽しくて仕方がない様子。

彼らのブログを見ていても完全に山の人と化しているようです。



これには大久保メカも『そうか。来年は皆マウンテンバイクのフォームになるかー。』

と、ハンドルの位置を上げるスペーサーの在庫を心配している様子です(笑。

私も現役選手の時は、この時期にはマウンテンバイクでのトレーニングを頻繁に行っていました。

シマノレーシング加入当初は、チームの先輩方に誘われ行っていましたが、
その後はチームにマウンテンバイクを所有する選手が居なくなり、
一人で静かに山に挑んでいました。

そのコースを多人数で走行すると、また違った感覚で走行している事に気づきます。
人気が無く物静かな山中で抱く独特の不安が軽減され、楽しさだけが先行する気がします。
もちろん自然の中には危険が多く、それなりの準備と覚悟も必要なのですが、仲間が居れば安心も倍増しますね。

がしかし、氷点下の山でテンションあがりすぎて、泥沼目がけダッシュし案の定ドロドロにクラッシュしたり、技量棚上げ度胸先行型の猛烈な突込みで岩場に挑み案の定クラッシュして青アザ作ったり、神隠しにあったかのように一瞬にして姿を消したと思ったら案の定、道脇の草むらの中で発見されたりする姿を思い出すと・・・不安倍増な要素もあります。

脳内麻薬とも言われる、アドレナリンと言うものは中々にして便利かつ恐ろしいものですね。


と、いう事でこのままではシマノレーシングはマウンテンバイクチームになってしまいそうなので、ロードの事も少々思い出したいところです。



『ツール・ド・沖縄』でチームカーに同乗したライターの光石氏によるサイドストーリー的な記事がリポートブログにUPされました。
普段我々スタッフが行っているレース中の行動が
垣間見えるものとなっています。

自分にとってはレース中に起こる諸々のトラブルは日常的な事で、特に特別とも感じなくなっていますが、このようにオフシーズンの落ち着いた時間に記事になったものを読むと、改
めて『色々無茶だな…』と、思います。

この記事内に車がパンクした時の様子が書かれています。
>ここでも冷静だったのは野寺監督だ。

と。

さすが野寺監督。

と、いう話では終わりません。
その時のことを良く思い出してみると、私の心境は全く逆でした。

もう10分以上前にドリンクを要求していた選手、彼に10分後に渡すと約束した事。この先数十分がルール上のタイムリミットで補給を渡す事ができなくなる事。210㎞の長丁場で、最後の勝負に挑むためには車からの補給が必要不可欠という事。

ジャッキUPの道具が見当たらず時は経過するばかり、車のパンク修理がいよいよ不可能なのではと絶望感があらわれたあたりに、私の緊張のリミッターは崩壊し、やんばるの森に向かって私は叫んでいました。

『うおぉぉぉぉdxx!楽し~!ーこれだからロードレース止められねー!!!』

むしろ半狂乱です。

そして、そんな状況の中、ゆっくりと森との境に設けられた鉄パイプの柵に歩み寄り、何やら考えている大久保メカを見て、今度は心の中で叫びました。

(うおぉぉぉx!大久保さん鉄パイプバラして車の底に入れて自力ジャッキアップ考えてるよぉぉ!やっぱ考える事ハンパねえぇぇぇぇぇ!)

と。

そんなこんながあり、奇跡的に『説明書』の存在に気が付き、ホイール交換成功に至ったのです。

結果的にはリミット寸前で入部キャプテンに追いつき、要求していた補給を手渡す事ができました。

これが結果を左右したかは誰にもわかりませんが、我々スタッフはレース中、常に選手にとってマイナスとなる状況を回避するために何をしたらいいか考え、プレッシャーを抱え行動
しています。

上手くいかない事も多く、ネガティブにもなりがちな行動の中でいかに自分をコントロールす
るか。

選手だけでなくスタッフにも大切な要素と言えるでしょう。
とっさに『楽し~!』と叫んだ私の行動は、後から考えれば、後ろ向きになりそうな自分の思考を前向きに保つ術だったのかもしれません。

こんな術も、その昔マウンテンバイクで泥や岩や草むらに突っ込んで転んで、高笑いしながら養った能力なのかもしれません。

アドレナリン、うまく使いこなせば精神衛生上有益かも。

あ、結局マウンテンバイクに話が戻ってしまいました。

とにかく、ロードレースは自転車の集団の中だけでなく、車の隊列の中でも様々な激しい動きがある事を知って頂く事で、ロードレースを見る面白さが増えるかもしれませんね。



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バイクの進化、ディスクブレーキ。いいです。

2015-12-04 09:52:49 | 日記
ディスクブレーキ。

ついに我々が出場するロードレースでも使用が認められる方向のようですね。
チームスタッフの立場から見ると、今までに無かった新たな機材が投入されることは、正直、
不安や煩わしさもあったりします。

がしかし、いち自転車ファンの立場から見ると実にワクワクする出来事でもあります。

かれこれ15年ほど前にディスクブレーキがマウンテンバイクの機材として世に出た時は
『かっこいー!』とか『制動力が大きすぎて前転とかしないの?』とか思っていました。
それまで主流であったVブレーキも当時としては感動モノの制動力があったので、
ディスクブレーキの必要性に対しても『見た目だけ?』程度に考えていたのですが、
実際使用すると、それが無くてはならないものだと気が付いたのです。

『効きすぎる』と言う不安は一切なく、少し慣れてしまえば微妙なスピード調整も、
瞬時にストップする制動も非常に行いやすい。

マウンテンバイクで山を下るときなどは、振動で握力が奪われてしまうので制動力は絶対必要。
それまで使用していたブレーキでも不安になってしまうほど信頼できるものでした。

ロードレースの場合、記事中にもあるように、使用に関して様々な問題が予想できます。
がしかし、ブレーキとしての信頼性が圧倒的に高い事は間違いありません。

チームでは現在シクロクロスに参戦している横山選手がディスクブレーキ仕様の
バイクの使用を開始しました


実は私も、先日出場した『Rapha スーパークロス野辺山2015』では今年手に入れた
GIANT・TCXのディスクブレーキ完成車を使用しました。

photo:Hideaki TAKAGI(http://www.cyclowired.jp/)

普段運動時間を沢山確保できるわけでなく、体力はもちろん年々落ちる一方ですが、
世の中の機材の進化のおかげで、苦しいながらも楽しんで自転車を走らせることができます。


photo:Kei Tsuji (http://www.cyclowired.jp/)

思わず(調子にのせられて)、階段なんかも登ってしまうわけですが?
やはりこんな動作の中にもブレーキを握りこんだりリリースしたりの微妙な動きがあり、
非常に登りやすかったです。もちろんフレームの反応の良さや軽さもあったと思われます。
(注・自転車は階段を登る道具ではありません。)

機材の進化は、決してトップレベルで争う人だけでなく、趣味で走る人にも
大きな恵を与えてくれますね。

がしかし、だからと言って、張り切りすぎにより身体に受けるダメージは変わりません。
土日のレース参加によるダメージが週末金曜日の今も引きづっています。。。

次は指圧機能付きウェアの開発、誰かしてくれませんかね。
コメント (1)
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