二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

記憶のガレリア(ポエムNO.3-92)

2020年07月10日 | 俳句・短歌・詩集
   (原宿 1990年代)



どこへいっても意味をさがしている。
野良犬が野良犬のにおいを嗅ぎながら
街角から街角へとうろつくように。
昨日はどこにもない

昨日はどこにも存在しない。
鍵束の一本を使って ある部屋のドアをあけたら
そこに いいにおいがする昨日がある
そうだったらいいのに。

記憶のなつかしいガレリア。
何万何十万という絵が壁にかかっている。
だけどそれをわざわざ見にくる人はいない。
名画ではないからだし

どういうわけか一枚一枚が日付を持っている。
きみのガレリアはきみの
ぼくのガレリアはぼくの。
そしてそれだけ 悲しいことに。

きみがぼんやりたたずんでいるので訊ねたら
「二十二年ばかりまえの絵を見ていたの。
ちゃんと日付のある あたしが描いた絵」
そういっていたずらっぽくウインクした。

愉しみは無尽蔵なのだよ。 
二十二年まえどこでなにをしていた 記憶のガレリア。
ただし見学者はこの世で一人しかいない ご自分専用の記憶のガレリア。
名画になりそこねた はるか遠い秋の一日。

永遠の十二歳や二十五歳がそこで途方にくれて
野良犬のようにこちらを見学している。
ああ だれもが自分自身を救出せねば。
・・・自分自身を。



※ガレリアは英語でgallery(ギャラリー)のこと。

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