二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

詩人の食卓(ポエムNO.2-70)

2016年01月17日 | 俳句・短歌・詩集
たてがみのあることば
浴槽にしずみ温まっていることば
世界がそこからはじまった 最初のことば
萌黄色のことばと駱駝色のことば
頭の一隅にあるどんぶりにたくさんのことばたちを盛りつけ
さて 今日もぼくは見えない食卓につく。

仲間はずれになったことばたちが
ぼくの後ろや横に立って しげしげとのぞきこんでいる。
見知らぬ盗賊のように
見知らぬ娼婦のように。
ことばを愛し ことばを憎悪する。
それはいまにはじまったことではないが・・・。

たとえば散歩から帰ってくる。
すると「ゆ」という文字が
着物をさらりとぬいで 朱鷺色の柔肌を見せながら
うれしそうにぼくを出迎えてくれる。
あるいは「朱欒」(ざぼん)という文字が
気むずかしい顔をしてこっちを睨みつける。

どちらにも朱という文字が使われているが
親戚なのだろうか・・・ぼくはあやしむ。
ガタンと大きな音がして床に落ちたのは
悪魔ということばかもしれない。
さっきまでキラキラ輝き はしゃぎまわっていたが。
しかし・・・。

しかし いくら食べてもことばでは満腹にならない。
ラーメンを食べに外出しようとすると
葦がそよぐように たくさんのことばが一斉にこちらを振り返る。
「ではいってくるからな。もう戻らないかもしれないが」
折れ釘のような小さな黒っぽいことばたちは
そのとき 声をしのんで泣き 涙を流すのだ。 

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