二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

養老孟司とベストセラー

2017年08月03日 | エッセイ(国内)
(さて、しばらくぶりに、今回は読書のネタでいってみよう(=_=)


「バカの壁」を読んだのはいつだったろう?
名著といえるたぐいの本だとは思えなかったけれど、これは歴代屈指のベストセラー、友人に「おもしろいぞ!」といわれて手に取った。

現代はネットで何でも調べられるから、読書とWebサイトと、いくつかの方向から、再び
養老孟司先生の周辺をうろうろしている(・_・?)

「バカの壁」を読んだあとしばらく離れていたのは理由がある。
「しゃべれば出版社が本にしてくれ、その本が飛ぶように売れて、印税がザクザク入ってくる。その印税でお好きなことを、自由気まま、思うように出来る。こんな幸せなご隠居はそう滅多にいないだろう」と、いささかシニカルな気分になったからである。

■歴代書籍ベスト10
1位 580.9万部 窓ぎわのトットちゃん
2位 520万部  道をひらく
3位 510万部  ハリー・ポッターと賢者の石
4位 479.3万部 五体不満足
5位 439.5万部 バカの壁
6位 433万部  ハリー・ポッターと秘密の部屋
7位 410万部  脳内革命(脳から出るホルモンが生き方を変える)
8位 383万部  ハリー・ポッターとアスガバンの囚人
9位 360.2万部 チーズはどこへ消えた?
10位 360万部  日米会話手帳
※出典はこちら↓
http://www.rache1.com/entry/2015/05/23/sekaju
(2015年現在)

この一覧の中で、わたしが読んだのは「バカの壁」だけ。
皆さんはどうだろう?
ミリオンセラーというのは、ある意味「時代の産物」といえる存在。
したがって、ベストセラー、ミリオンセラーが即名著というわけではない。

「唯脳論」を読んだころから、養老先生が、楽隠居とはいえ、現代における、最も興味深い人物のお一人であることには気が付いていた。
ただし、論壇における内田樹さんとならんで、非常に多くの本をお書きになっているので、2~3冊を読んだくらいでは、養老さんを知ったことにはならない・・・と思っていた。
ご専門の分野だけでなく、論の対象領域は驚くほど広範囲、多岐に渡っている(^^;)

ところで「お書きになっている」といったが、じっさいには、新潮新書など、養老先生が話した内容を編集者がまとめ、それをご当人が推敲して一冊の本に仕立てたものである。
人の考えは、書くと難解になるけれど、しゃべるとわかりやすいというケースにしばしばぶつかる。
異論があるかも知れないが、対談集、講演集は、いわばサブテキストとして評価されるべきものだろう。速記だとか、テープ起しだとかをへて本=書籍に形をなしていく。つまりご当人にかかる時間的、精神的な負担が少なく、素早く本=書籍の出版にこぎつけることができる。

TV、ラジオその他のマスコミでよく登場なさっているため、知名度抜群。
現在なら、養老先生の本は、BOOK OFFその他の中古市場に豊富に出回っているから、手に入れるのは容易。



元が「しゃべり」なので、論理的にしばしば飛躍する。十分な論証もないし、そのおつもりもきっとないのだ。じゃつまらないかというと、そんなことない。
宇宙論、人生論、教育論、環境論、社会論、政治論etc.
そこに世を憂う、警世家がひそんでいる。
したがって、一字一句飛ばさず、じっくり味わって読む本というより、読者は自分の知見、経験で内容を補い、想像力を働かせ、横町のご隠居の話に耳をすますo・_・o
目は粗いけれど、スケールの大きな網をもっているし、論点をあぶり出すことにかけては、じつに鋭利なセンスがある。
「私は普段から、しょっちゅう議論に水をかけています。それは、かなり意識的に心がけてそうやっているのです」
(「自分の壁」新潮新書143ページ)

養老先生は、現代では貴重な存在となった反骨精神旺盛な方である。
ある本のあるページを読みながら、金子光晴の「おっとせい」を連想し、
苦笑せずにいられなかったことがある。
しかしながら、反語、逆説に出会って、読者の思考回路は活性化する。
というわけで、わたし的には、養老先生に対し、そういったアプローチでイイのではないかと考えている。むろん、じっさいには「横町のご隠居」どころか、現代のわが国における最高の知性のお一人、といえる存在なのだが・・・。


(今回興味深かったのは「自分の壁」。“壁”とは養老用語でいろいろな意味に用いられる。斜め読みしてもいいような、ラフな書きぶりだが、ご自分の体験を語り出すと、俄然おもしろくなる。)

「バカの壁」だけでなく、年間ベストセラーランキングの上位にしばしば顔を出すのだから、資金はきっと豊富にある。
別荘を趣味の空間、「養老昆虫館」にしておられるのは、羨ましいかぎり♪
しかし、調べたら、一般公開はされていないようである。所在地も公式にはアナウンスされていない。
ゾウムシの研究家、蒐集家としては、おそらく日本のトップクラスに君臨するだろう。


写真右はファーブル昆虫記の新訳で有名な奥本大三郎さん(^ー^)ノ
横にいてお話しが聞けたら、サイコーに愉しいに違いない。

これらの本、読みおえてレビューが書きたくなったら、後日UPする。






※岩波文庫のベストセラー=ロングセラーはこちらを参照↓
http://www.1book.co.jp/005540.html

※画像は以下のサイトからお借りしました。
http://globe.asahi.com/feature/side/2014022700001.html
朝日新聞“GLOBE”(Webオリジナル記事)

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