二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

花のようにゆらり(ポエムNO.3-93)

2020年07月15日 | 俳句・短歌・詩集
   (ルドンの版画 画像検索によりお借りしました)



歩いているその男はまもなく死ぬが
スケッチブックに描かれた人物のように
すでに足のさきから消えかかっている。
そのそばでオカトラノオがゆらり。

歩いているその女はまもなく死ぬが
朝から晩まで目脂をぬぐっている。
なにもしてはいないのに目脂が出る。
そのそばでアサガオがゆらり。

歩いている人たちすべてはまもなく死ぬが
親からもらった名前を後生大事にかかえ
信号の色がかわるたび 右往左往する。
そのそばでヒマワリと その他夏の花々がゆらり。

国道の急カーヴを曲りきれず
今世紀になって事故が多発している。
シニカルなまなざしでそれら一部始終を見つづける
ルドンの一つ目小僧があの世の花のようにゆらり。

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