二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

2012年ベストセレクション第7回「フィルム写真 35mm」

2012年12月22日 | Blog & Photo
<赤い自動車>アルバム「風味絶佳」4.25


いつも同じような文体ではあきてしまうので、今回はセルフインタビュー形式で書いてみよう。
■ M:Mikeneko
■ I:インタビュアー

I:なぜいまごろになって、フィルム写真に復帰したんですか? 便利か不便かといったら、デジタル画像とは比較にならないし。コストもそうですね。

M:その通り。不自由で不便。どんなふうに写っているのか、その場ではわからないですからね。だけど、10代の終わりころから、50才くらいまで、そういう写真に魅せられ、そういう写真を撮ってきたんですね。デジタル時代になって写真と出会い、写真を撮るようになった世代とは、そこが決定的に違います。

I:だけど、もうもどれないといっていたのでは? コストの問題は無視しえないし。

M:60才というのは、区切りの年齢ですね。暦が一巡したんです。だから、再スタートという意味合いもありますね。
60才になって、隔週ですが、連休をとることにしたんです。わずかですが、年金も入ってくるようになった(笑)。 フィルム写真は、現像があがってくるまで、何日も待たされます。どんなふうに撮れているのか、おおよそはわかるけれど、ほんとうのところはわからない。だから、二度味わえるんですね、撮影時の興奮のようなものが。

I:フィルムに帰ってきて、どうですか? デジタルとは違った写真が撮れる?

M:そう・・・。違った写真が撮れます。いろいろな選択肢があって、まだ迷ってはいますが、いままで見えなかったもの、知らなかった感覚、忘れてしまった感触といったものと、あらたに出会って、テンションがあがりました(笑)。そういったことは過去の日記にせっせと書いたから、ここではくり返しませんけど。
フィルムの曖昧さ。ソフトなグラデーションや、フィルムでないと辿りつけない色再現が、人肌のぬくもりのように感じられるんですね。
「おれの眼にはこう見えたけれど、このレンズ、このフィルムを使うと、こんな描写になるんだ」というのもおもしろい。むろん、デジタル画像とは違う。

I:だけど、パソコンに取り込む段階で、スキャンしたりして、結局はデジタル化しているではありませんか(笑)。

M:そうそう。それは否定しません。わたしはプリントしてそれをスキャンするのではなく、フィルムをスキャンしています。基本はネガカラーからですね。ネガカラーのポテンシャルを、あらためて見直したんです。市橋織江さんや川内倫子さん、その他の女性写真家の写真集を何冊か買ったんですが、ちょっと「眼からうろこ」の体験をしています。だから2012年のわたしのキーワードは、フィルム&女性フォトグラファーかも(笑)。

I:Mikenekoさんは、昆虫写真を撮っていた時期が長かったけれど、普通の写真にもどってきて、今年はフィルムにも手を出した。そういう変化は、アルバムを見ていると理解できます。2WAY、つまりデジタルとフィルムのカメラを同時に持ち歩いているんですか?

M:はい、そういうへんてこりんな経験を、今年はしています。おもしろかったなあ。このところ、ある事情でまた金銭的なピンチに陥ってますけれど、たとえばローライフレックス3.5Fと、標準ズーム付きオリンパスE-P3を2台というのは、理想的なスタイルだと思ってました(笑)。

I:今日はフィルムカメラ、つぎの日はデジタル一眼・・・じゃないのですね。混乱しませんか?

M:はい、たびたび混乱しました。だけど、その混乱はすぐに終息します。終息してみると、「写真的なもの」の領域がずいぶん・・・二倍くらいに拡がっているんですね。これは愉しいぞ、なんです(笑)。

I:じゃ、ここいらで、個々の写真についてコメントを。まずは「赤い自動車」。

M:35mmネガは、そんなに枚数を撮ってないんです。理由はコスト問題。惜しみおしみ撮っているというか、一枚一枚心をこめているというか(笑)。 まあ、ほんとうはこの倍くらいのハイペースでやっていこうと考えたんですが、うまくいかなかった。
このベストショット(・・・とわたしが考えているもの)は、隠さずにいえば、市橋織江さんへの礼状なんです。彼女と出会って、その写真の魅力に目覚めたため、撮れた写真だから。撮影したのは、赤城山麓。写真からはわからないけれど、かなりの傾斜地です。



<遺品>アルバム「風味絶佳」5.27

M:これが二枚目。もうずいぶん以前になくなった愛犬「ムク」の遺品の首輪なんです。カメラを手にして、家の裏藪をぶらぶらしていたら、これがここにあった。遺骨は裏の畑に葬ってあります。父がやったんですね。亡くなる1年くらいまえから、白内障で眼が見えなくなっていました。散歩から帰ったとたん、わたしの腕の中で、一瞬で息をひきとった。わたしは子どものように、大声で泣いてしまって。愛犬の病が、そんなに重いなんて、気づきもしなかった。ようやくこの首輪を、冷静に見て、55mmF3.5という古いニコンのマイクロレンズで撮影できるようになった。

I:プライベートな、思い出の写真ですね。フィルム特有の描写性能だとおもいます。

M:F3.5開放絞りですが、フルサイズ(135mm)なので、ボケが大きいですね。やわらかい、好ましいボケだと考えています。発色はややイエローに寄ってますが、それもふくめて、ソフトでなだらかなグラデーションがいいんですね。そういうものを「風味絶佳」と名づけているんです。



<井戸端の光>アルバム「セピアな気分で」5.27

I:これはめずらしくモノクロですね。

M:はい、イルフォードXP-2という個性派フィルムです。モノクロなのに、カラー現像するフィルで、軟調フィルムとして有名。

I:いまでも手に入るんですか?

M:はい、現行品だとおもいますよ。これは6×6=ローライフレックスなんですが、35mmでも、一本だけ使用しています。ネガの濃さによって、あるいは現像のちょっとした時間の長短によって、セピアになるんです。グリーンかぶりする場合もあるから、予測がつかない。窯変みたいなね(笑)。

I:意外性があるってことでしょうか?

M:そうそう。緊張感のない写真に向いてます。脱力写真みたいな、ね。コンテストに応募し、入選を・・・というアマチュアはやめたほうがいい(笑)。 わたしはこういう写真を「微笑する風景」なんて呼んでますけど。

I:また復帰しますか、銀塩写真へ。

M:もちろんそのつもりです。冷蔵庫に未撮影のフィルムが、ブローニー、35mm合わせて、20本くらい眠っています。春までには、活動を開始しようと考えています。少数のフィルム・ファンの方はいましばらくお待ち下さいませ(笑)。

I:では、それを期待しています・・・ということで終わりにします。ありがとうございました<(_ _)>

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2012年ベストセレクション第6... | トップ | 三毛ネコの「二毛」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Blog & Photo」カテゴリの最新記事