二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

千年横町を歩くとき(ポエムNO.2-97)

2017年07月19日 | 俳句・短歌・詩集
夕べ重い鎧戸をガラガラ開けて
七色の帽子をかぶった小人たちがやってきた。
ぼくのこころの中へ入ると
おもいおもいの場所や敷石に腰かけ
ぺちゃくちゃ くちゃと にぎやかにしゃべっている。
しばらくそれを我慢していると

また重いこころの鎧戸を開けて
どこか遠くへと出ていく。
黄色い帽子 赤い帽子 緑の帽子。
まるで信号機みたいに
ならんで遠ざかっていく。
つぎに待つ人のところへと。

おーい と呼んでみてもこだまは返ってこない。
それぞれ 羨望 絶望 不安 殺意 改心 猜疑 欲望
・・・と そんな名がついていた
けれど もうよく覚えてはいない。
ケケッという笑い声を残し
一晩のうちに 何千人という単位で

眠っている人のベッドを訪れるのが
七人の小人たちの仕事。
そのため あのリメイクされたおとぎ話から抜け出してきたんだ。
ぼくのこころを 古びた一冊の書物を読むように
読んでいた。
たしかに ぼくのこころを隅から隅まで読んで 出ていった。

老いれば老いるにしたがって
いろいろな秘密がふえていく。
彼らはだれが放った密偵だろう?
アリが餌をよいしょ! とはこぶように
ぼくの秘密をはこんでいく。
はこんでいく。

重そうだな いや
軽そうに走っていくやつもいる
そうさ 人生に草臥れた(・・・と思っている)男の秘密など
所詮たかが知れている。
ろここのくぼ
をお尻の方からガリガリ囓る。

「アハハ 腹のたしにはなるまい
お粗末さま」
小人たちがはこび出してくれたので
身も心も少しは軽くなったな。
明日は久しぶりに カメラを手にして千年横町を歩こう。
それは すぐそこにあるけど

出かけるとなると なにか
地図に似たものか 
じいさんのガイドが必要になる。
それらがぼくをみちびいてくれる。
空海が残していった端切れや芭蕉の句集
漱石が愛用した万年筆。

とりあえずそんなものを見つくろっておこう。
錆びたドラムカンを背負い 千年横町を歩くとき。

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