先日、2歳半の男の子、●くんのレッスンでこんなことがありました。
●くんは利発で言語能力の高い子で、発達障がいの可能性はないと思われる子なのですが、
神経質でやたら何でも怖がる一面があって、
●くんのお母さんは、独特の育てにくさを感じて子育てしておられます。
●くんのお母さんによると、公園でも 同じ年代の子たちが楽しそうに遊ぶなか、
●くんは一時もお母さんのそばを離れようとしないそうです。
また家のなかでも、一日中お母さんに相手をしてもらいたがり、
ちょっと離れるだけで強い不安にとらわれて、大騒ぎになるそうなのです。
そうした相談だけをうかがうと、2歳児というのは、
まだお友だちと上手に遊べる年ではありませんし、
家では「ママ、ママ」と一日中、甘えているものですから、
●くんのお母さんの気にしすぎのようにも聞こえるかもしれません。
でも、実際、●くんと教室で遊ぶうちに、
●くんの怖がる対象や怖がり方が少し特殊で、
それもあまりに激しいことに気づきました。
●くんの怖がる対象とこわがり方が少し特殊というのは、「時計の針が動くのが怖い」と、
身体をこわばらせて訴えたり、煙突の形を見て、恐怖で動けなくなったりするのです。
●くんは、お化けや虫や暗闇といった
怖がりの子が怖がるものにおびえるのではなくて、
通常、誰も怖がらないような時計の秒針の動きのようなものへの
自分の知覚のあり方のせいで、
四六時中、不安を訴え続けているのです。
そうした怖がる対象や怖がり方は、広汎性発達障がいの子らの
おびえ方に似てもいるところはあるものの、
一方で●くんは、人の気持ちを感じとったり、想像力を使って遊んだり、言葉の意味を正しく理解したり、
流暢に自分の思っていることを話したりできるので、
発達上の心配がない子でもあるです。
だからといって、●くんの神経の過敏さや、不安が強くて怖がりな性質を、
個性の範疇として放っておくと、
もうじき入園するという保育所での集団活動や
今後の発達に影響が出そうでもありました。
写真のように子ども用の椅子と椅子に手作りの線路を渡して遊んでいた時のこと、
わたしが、電車のおもちゃを手にして、「線路を渡ろうかな、でも怖いな」と電車に言わせて、
ガタガタッと軽く線路を揺すって見せると、
●くんは「怖い怖い」と言いながら、身体をこわばらせて、「やめてぇ、やめてぇ」
と懇願しました。
それからは、一切、線路を揺するのをやめたのですが、
わたしが電車を手にして線路を渡らせようとするだけで、表情をこわばらせて、
「やめてぇ!!怖い~怖い~!」と半べそをかきながら言いました。
たいていは、怖がりの子であっても、
自分ではなくてお人形や電車などが、その子が怖がっているようなことにチャレンジする時には、
ニコニコ笑いながら、「先生、もう一回、怖いのして!」「黒猫ちゃんに怖いことさせて!」
と言うなどするのです。
でも、●くんの場合、
自分ではなく電車が何か怖い目に合うかもしれないというだけで、
それも本当に怖いことというより、「怖い、怖い」と口にしたことがあるという事をするだけで、
震えあがって、「やめて!やめて」とやるのを阻止しようとするのですから、
これから過ごす保育園で、心地よく楽しく過ごすことができるのか
とても気がかりではあるのです。
そこで、保育所の入園までに強すぎる不安感を
やわらげる手立てをいくつか打っておく必要を感じました。
次回に続きます。