参観日でもめごとを起こしたAくんの話の続きです。
Aくんは感情の面でまだ幼いところがあって、衝動的にふるまうことはあっても、
人をじゃけんに扱ったり、意地悪したり、羨んだり、憎んだりするような気持ちは
ほんのかけらもないような子です。
ただ、身体の不快感や新しいことに対する緊張感が、イライラや攻撃的な言動に結びつきやすく、
いったん怒りを覚えると、気持ちを切り替えるのにとても時間がかかってしまうのです。
それに、自分が感じている不快感にどう対応したらいいかもわかっていません。
そこで、「Aくん、Aくん。参観日は、後ろでたくさんのお母さんやお父さんが見ているし、
失敗したらどうしようって心配だし、心の中に、何だかいやーな気分がもやもや湧いてくる時あるよね。
あー嫌だなって時わかる?」とたずねると、「うん」とうなずきました。
「あー、ぼく、嫌な気分になってる。何だか怖いな、って思ってる、ドキドキしてる、って
思ったら、好きな新幹線(Nくんは新幹線が大好きです)の名前を3つ、心の中で
言うことができる?」ときくと、「うん」とすなおに返事をしていました。
この日、ひっ算の問題をしていたAくんは、ゼロを書く位置が何度もずれて、今にも爆発しそうなくらい
イライラしてきました。「Aくん、あれ、何だかイライラしてきた、
と思ったら、好きな新幹線、3つ心の中で言ってみて」
と言うと、
Aくんは、「まず、ドクターイエローでしょ。」というAくん。わたしは、「ドクターイエロー」と
一語一語ゆっくり小声で言いながら、指を折っていきました。
同じように指を折って、唱えていたAくんに、「でも、ドクターイエローは短い名前だから、こんなに短かったら、
イライラがちいさくならないかな?」と言うと、
「そんなことない。もう、イライラしてないよ。全然!」と
まるで魔法にかかったことを驚いているような口調で言ってました。
他にも、ふたつの名前を考えるうちに、すっかり気分が切り替わって、涼しい顔をしていました。
Aくんのお母さんには、もしAくんが、「イライラしてきた」という時に、何とか自分の気持ちを切り替えて、
その時間を何とかやり過ごすことができたら、
できた、がんばれた、という気持ちを実感できるような
Aくんの好きなものを描いたカードなどを渡すのはどうでしょう?
これから1年くらいかけて、「自分の衝動を、自分の力で我慢することができた」という体験を
積ませてあげえうといいですよね」とお話しました。
「Nゲージ用のジオラマが作りたい」というAくん。
大きな段ボールを切り開いて線路や川を描いて、箱で建物や駅やトンネルを作っていました。