虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

『9歳の壁』でつまずくか つまずかないか を左右する抽象概念の理解力 5

2015-08-30 07:58:28 | 教育論 読者の方からのQ&A

小3の女の子たち中心のユースホステルでのレッスンでの算数の時間。

遊び体験が豊富で工作好きの子どもたちです。

普段とはちょっと異なる目新しい課題を用意したところ、

ほとんどの子が「いつの間に身に付けたのかな?}と驚くほどの数学的な思考力を

発揮していました。

 

『スーパーエリート問題集 小学2年』に、

絵を描きながら難問と解くという問題集が付録としてついていたのですが、

2年生の問題集についていたとはいえ、初めてするなら高学年でも難しいような

内容でした。

「誰か絵を描いて解いてみたい人?」とたずねると、小3の4人がいっせいに

手を挙げました。絵を描いたり物を作ったりするのが好きな子たちなので、

未知の問題とはいえ、絵を描くと聞いただけでワクワクしたようです。

そこで4人で相談しながら描いてもらうことにしました。

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今日は まんかいの さくらの下で、お花見です。ごちそうは 金太郎あめと

銀太郎あめの やわらかステーキです。

金太郎あめは 銀太郎あめの3ばいの 長さです。

みんなで午前中に 金太郎あめと銀太郎あめを ちょうど半分ずつ 食べたところ、

のこりの 長さを合わせると 16㎝でした。

では、金太郎あめは もともと 何㎝ だったのでしょうか。

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金太郎あめはやたら太くて、銀太郎あめはただの棒では……とつっこみたくなるような

絵ではありましたが、「銀より3倍大きい金を半分にして、

銀も半分にしたということは、

半分にしたって、3倍というのは変わらないと思う」とひとりが言うと、

他の子らが、「それは、そうよ。最初が3倍なら、それぞれを半分にしたって、

何倍かっていう違いは変わらないもの」と口ぐちに言う姿に、

3年生ならではの知恵に感心しました。

 

「それなら答えは?」とたずねると、

「16㎝を金の側3つと銀の1つの4つに分けて、4㎝が元の金太郎あめだと、

3倍にしたのが元通りにするから、もうひとつ分あるって

ことだから24㎝ってことでしょう?」と、次々正解を出していました。

そうした子どもたちの姿に、いっしょに参加していた幼い子のお母さんは

とても驚いたようでした。

 

算数の時間に、『だいたい いくつ?数えてみよう・はかってみよう』という絵本を

みんなで楽しみました。

絵本の画面を埋め尽くす大量のハチを見て、「ハチはだいたいなん匹だと思う?」と

たずねると、「横と縦の一列に何匹ずついるか数えて、かけ算で計算したら、

だいたいの数がわかると思う」

「線を入れて切ってみて、その中に何匹いるか数えて、その切ったのが

いくつぶんあるか見たらわかると思う」などのアイデアが出ました。

 

 

これまでしたことがない一風変わった問いを投げかけると、

遊びの質の大切さを実感します。

縦にして並べた飛行機の半分弱のサイズふが10mと示してある写真を見て、

「それならピサの斜塔は~mくらいだ、自由の女神は~mくらいだろう……」活発な

意見が交わされていました。

比で比較してだいたいのサイズを予想したり、

単位を変換して表現したりすることができていました。

何よりこうした頭の体操を心から楽しめているのがいいな、と感じました。

 

高さについてのおしゃべりついでに、「自分の身長がわかる人?」とたずねました。

身長がわかる子もいれば、わからない子もいました。

正しい身長がわかっている子たちのサイズを書きだしてから、

身長がわからない子のサイズを予測することにしました。

 

身長がわからないAちゃんの妹のBちゃん。

106㎝とわかっているもうすぐ3歳のCちゃんと120㎝のAちゃんといっしょに

並んで立ってもらうことに……。

話しあいの結果、「Bちゃんは、106㎝のCちゃんとの身長差の方が、

120㎝のAちゃんとの身長差より大きいこと」が判明しました。

また、Cちゃんとの差もAちゃんとの差も3㎝以上はあるようです。

 

とすると、Bちゃんは何㎝から何㎝の間の身長だと予測できるのでしょうか?

 

図を描いて比べて考えました。

 

『だいたいいくつ?』の本に面積比べもありました。

Dちゃんのこんな考え方に感心しました。

「もとになる1平方センチメートルのクラッカーのだいたい4つ分が大きいクラッカー。

調べたい野球のCDは大きいクラッカーのだいたい5つ分(4つ敷き詰めた後、

半分に割ったものを底部分にふたつ敷くことができる)だから、

4×5で20平方メートルくらいじゃないかな?」

とのこと。確かに小さいサイズのものがいくつ分か考えるよりも、

先に大きいサイズで考えたほうが、すばやく正確に把握することができますね。

 

間違えやすい10000-3や10000-305といった

計算を、ミスしないように解く方法を学びました。

 

子どもたちにページ当てクイズを出しました。

9ページの次の一枚を抜かした後にあるのは何ページか?という問題。

3年生より幼い子たちは、「9の裏が10で、その次が11と12で、

その次だから……」とカウントしながら考える問題。

さすが3年生。「わかった、奇数になるでしょう?奇数が、9、11、13……

と続くことを考えて、11のページを抜かすから、答えは13でしょう?」とのこと。

紙に書いて説明してもらうと、

「9、11、13……と続いている奇数は、2ずつ大きくなるでしょ……」と

説明してくれました。