「発達に凹凸のある子たちのグループレッスンの様子を記事にしてほしい」という
要望をいただいていたのに、なかなか時間が取れずにいました。
レッスンで気をつけていることと子どもたちが成長していく姿を
少しだけ言葉にしておこうと思います。
発達の凹凸のある子たちのグループレッスンでは、半分くらいを子どもたちだけの
自由活動の時間、残りの半分を学習時間にあてています。
子どもたちだけの活動時間は、ゲーム、実験、工作、ごっこや劇遊びなどから
自由にやりたいことを選ばせて遊んでいます。
といっても、あまりに自由に選ばせていると、
やることが偏ったり、遊びが発展しにくかったり……。
選ぶめんどくささから「何もしたくない」という態度につながるかもしれません。
適度に枠を作って、新しいチャレンジに対して意欲に火がつくように
いろいろな工夫をしています。
学習以外の活動では、子ども自身の「こんなことがやってみたい」という気持ちに応える
ことを重視しています。大人にやらされるのではなく、自分の発想や想像力や創造力や
思考力を自由にふんだんに使える環境を目指しています。
また、それぞれの子の個性的な才能を伸ばすことにも配慮するようにしています。
でも、発達の凹凸のある子の中には、
小学生になっても、1歳くらいの子の探索活動のように、あっちの引き出し、
こっちの戸棚とあれこれ取り出して広げるものの、即座に飽きて、
うろうろするばかりの子もめずらしくありません。
どんなことがしたいか、何をやってみたいのか、目で見て比べられる
遊びの例を提示しても、返事もせずに、箱に入った積み木をぶちまけたり、
物を投げたり、お友だちやわたしにちょっかいを出すことに終始する子もいます。
そのため、発達の凹凸のある子たちのグループレッスンの開始時は、
カオスな状態になることも多々あるのです。でも、2回、3回とレッスンの回を
重ねるうちに、たいていの子は落ち着いて取り組めるものが一つ二つと増えてきて、
物作りに熱中したり、友だちと一緒にゲームや実験に興じたりするようになっていきます。
その過程で感じるのは、ひとりの子の成長の筋道の多様さです。
DIR/フロアタイムで知られるグリーンスパン先生が、
「多動で扱いにくい子を育てている親が、あまりの大変さに、
自己防衛として非合理的な考えに飲み込まれてしまう」ということを
書いておられました。
食べ物の添加物、学校の環境、テレビの影響のような単純な原因にばかり
吸い寄せられて、その結果、現実にある複雑な要因に目を向けられなくなる、
とありました。
実際には、発達に気がかりのある子の行動や伸びを左右する要因は、多種多様で、
日常のあらゆる場面に散らばっています。
成長のきっかけも成長していく道筋も数えきれないほどあります。
ですから、子どもが園や学校でちゃんと座っていたかや
勉強で何ができるようになったかだけで、子どもの真の姿がわかるわけではありません。
それは子どもの育ちのほんの一部分にすぎないのです。
わたしが学習時間同様に、むしろそれ以上に自由な活動の時間を大切にしているのも
ひとりの子どもの複雑さにより近づきたいと願うからです。
発達の凹凸のある子たちといっしょにする活動では、グリーンスパン先生の挙げる
七つの目標のうち①~⑤を常に念頭に置き、スースホステルでのレッスンでは親御さんと
ゆっくり話しあうことで、⑥⑦にも対応するようにしています。
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①運動機能を伸ばす
②動きや考えを、組み立ててつなげるようにする
③感覚の反応を調整する
④振り返って考える
⑤自己肯定感を確かなものにする
⑥家族内のダイナミクスを変える
⑦健康的な環境におくこと
『ADHDの子どもを育む』
スタンレー・グリンスパン・ヤコブ・グリーンスパン著/広瀬宏之監訳(創元社)
固い書き方になってしまいましたが、次回は具体的にレッスンで起こったことを中心に、
どのようにして①~⑤の対応しているのか書かせていただきますね。
(前回までの記事の続きも近いうちに書きます)