虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

普段の生活で心がけるといいこと、やりすぎてはいけないこと

2014-07-03 22:21:37 | 日々思うこと 雑感

過去記事です。

 

近々、滋賀でワークショップの前に大人向けの勉強会をすることになっています。

そのために、参加者の方々に事前に質問をいただいておいたところ、

『普段の生活で心がけるといいこと、やりすぎてはいけないこと』というものが

ありました。

そのための話の準備もかねて、少し記事にまとめておこうと思います。

 

子育て中の親の周囲には、さまざまな情報があふれ、行き交っていますよね。

子どもの能力を高め、学校で落ちこぼれることがないように、

こんなことをすればよい、あんなことをすればよい~という通信教材やお教室からの

勧誘があります。

テレビからは、音楽や運動で才能を輝かせて、スポットライトが当たる若者と、

そのように育てた親の情報が流れ、幼稚園や公園では親同士のおしゃべりや噂話から、

あこがれや不安を刺激する話が届きます。

祖父母世代は、「もっと厳しくしつけなくちゃダメよ」と言い、

育児書には、いつも温和で子どもを受け入れる親の姿勢を説いています。

近所の小学生の親からは、学級崩壊の話を耳にします。

しつけなくちゃだめなの? 甘えさせなきゃだめなの?

「外遊び?考える力?お友だちと仲良く?……どうすればよいのかわからないけれど、

気分がザワザワして不安だから、つい子どもにいろいろ口を出しすぎてしまう~」と

悩む方は多いです。

そんな悩み真っただ中の親御さんも、自分が一歩その時期を脱して、

外から子育てを眺めれば、リラックスしながら、適度にしつけ、子どもが自分で成長して

いくのを、ほどほどにサポートする方法がわかってくるものです。

子育てって、誰かが上手で誰かが下手というものではなくて、

誰もが、力んでこわばっている緊張をゆるめて、親の自分に優しい言葉や、

褒め言葉をかけれるくらいにリラックスさえ出来たらうまくいくものなんですね。

自分の子どもに近視眼的になるほど、時間の感覚も、空間の感じ方も、

小さな範囲でギューッと密度が高いものになりがちです。

「怪我させないように」「友だちにいじわるしないように」「いじめられないように」

「変な子と見られないように」「ちょっとでも賢くなるように」「服を汚さないように」

「先生や周囲からよりよい待遇を受けるように」「損しないように」

「恥をかかないように」と、一瞬一瞬に、まるで、ビデオテープの内容を確認するように

子どもを観察し、アドバイスし、干渉して、守りはじめると、

考えているだけで窒息しそうですよね。

お友だちのお母さんたちから後ろ指さされたり、園の先生や祖父母から注意を受けたり

しないように、子どもが障害物やトラブルにぶつからないように手を尽くすことが、

本当に子育てなんでしょうか?

それでは、子どもは育成ゲームの主人公。親は、子どもが動く画面の前で

コントローラーを手に待機している人のようではないでしょうか?

子育てって、小さなゲームの画面の中で、得点を争う親や教師用のゲームでも

何でもないのですけど、あれこれ子どものことを気にかけるほど、

「失敗させないゲーム(今、ちょっとでも成功させるゲーム)(今、ちょっとでもよく

見せるゲーム)」というその場限りの大人のこだわりに熱中してしまいます。

子どもは自分でいろんなことを体験し、ちょうどいい手ごたえの困難を選んで、

自分で乗り越えて成長していきます。

うまくいかないことにぶつかれば、問題解決能力が育ちます。

友だちと群れていれば、がまんしたり、リーダーシップをとったり、分けてあげたり

に笑いあったりして、社会性を身につけます。

子どもの潜在的な才能を開花させ、自立に向かわせようと思ったら、

子どもの心も身体も危険のない範囲で解放させてあげて、

たくさん失敗する自由を与えることが大事ですよね。

最初にもどって、やりすぎてはいけないことって、

ずばり、子どもに、「こうしなさい」「これはだめ」「こうしてあげようか?」と、

手出し口出ししすぎることだと思います。(これって、しつけないことでも、

叱らないことでもありません。これについてはまた別の機会にかきますね。)

子どもがいろんなことにチャレンジしたくなり、自分を高めていこうとするには、

3つの環境の豊かさが大事です。


(さまざまな年代の)人

(たっぷりの)   時間

(自由にふるまえる)空間

です。

何かをマスターするには、やりたくなるまで待ってもらい、するときはたくさん失敗し、

何度もていねいにサポートしてもらう必要があります。

つまり子育てはゆっくりでOKです。

あせるときには、良い親になろうと力むより、自分を認めたり、励ましたり、

受け入れたりする言葉を自分自身にかけるよう心がけると、

子育てはずっとラクで楽しいものになるかもしれません。


ダメと言われることをやってみたい!

2014-07-03 13:38:46 | 通常レッスン

年中のAくん、Bくん、Cくんのレッスンで、

『11ぴきのねこ ふくろのなか』という絵本を読んで、工作や劇遊びをしました。

 

読み聞かせを終えるやいなや、

アイデアマンのAくんとBくんが椅子を並べて橋に見立てて、

「先生、このはしわたるなって書いて!」と言ってきました。

それから「紙をちょうだい。丸くするから」「セロテープちょうだい」と

注文が続いて、この通り ↑

 

「はしをわたるな」と立て札があるのに、橋に見立てた椅子の上を渡って行ったり、

「ふくろに入るな」と言いながら、袋ということにしたテーブルの下に

もぐりこんだりして遊ぶ3人。

 

劇や工作の進行を見ながら、年中になると、

話の中にある微妙なニュアンスを感じ取ったり、話にでてくるアイデアを発展させたり、

話から何かを学んだりするようになるんだな、と感心する場面がたくさんありました。

 

子どもたちに人気があったのは、こんなシーン。

「はなをとるな」と立て札にあったのに、

猫たちが「ひとつだけひとつだけ」 ニャゴニャゴと花を取りに行きます。

「だめっ、とってはいけなーい」と注意していたとらねこ大将は、

次のページでは、花を一本ずつ頭にさして歩く仲間の後ろを

自分も頭に花をさしてとぼとぼと歩いています。

欲望に負けてしまったのか、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という気持ちに

流されたのか、情けないとらねこ大将。

 

「○○するな」の立て札に釣られて化け物につかまった猫たちが、

今度は、「たるにはいるな」という札を作って化け物をやっつけます。

子どもたちは、化け物が騙されてやっつけられるシーンに大喜び。

 

でも、それ以上に、化け物の城から脱出した猫たちが、

道路で、「わたるな」の立て札を見て、それまでのように禁止の言葉に反抗して

道路を渡るのではなく、ちゃんと歩道橋を渡った場面で、

子どもたちは目を丸くして驚きながら、「わかったんでしょ?猫たちは、

『わたるな』って書いているところで渡っちゃダメって!!」と、

はしゃいでいました。

 

年中の男の子たちは、「言ってはダメ」と注意されている言葉を使いたくて

しかたがない時期です。

でも、ダメと言われたことをさんざんやりつくした猫たちが危険な目にあって、

それを自分たちで克服したあとで、

自分の意思でダメと言われていることはやらないと決めた猫たちの姿に

ホッとしたり、爽快な気分を味わったようです。

心がちゃんと成長してきているんですね。

 

「先生、いいこと考えたよ」とCくん。「あのね、(教室の)ドアの外のところに、

『はいるな』って書いて貼っておいたら?(お迎えにくる)お母さんたちが、

入れないよ」と笑い転げました。

それを聞いたBくん。いつもほかの子らが悪さをすると、

「そんなことをしたらいけないよ。悪いことだよ」と心配そうに注意するタイプ。

お母さんたちが部屋に入れないのは困るけれど、いたずらはやってみたかった様子。

「それなら、お手紙を書いて、袋に入れて、袋の上のところに、『あけるな』って

貼っておいたら?」と言いました。

 

CくんとBくんのいい考えに、アイデアマンのAくんは黙っていません。

興奮した様子で、「先生、これから、先生とBくんとCくんとぼくとで駅まで行って、

駅の階段の下のところに、『かいだんをのぼるな』って紙を置いてこようよ。

あのね、ぼくどうやるか知ってるんだよ。先生、紙に『かいだんをのぼるな』って

書いてみて、教えてあげるから」と言いました。

Aくんの「どうやるか知っている」とはどんなものなのか気になったので、

『かいだんをのぼるな』と書いてあげると、紙を半分に折って、

ちゃんと紙が立つようにしていました。