虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

友だちとの雑談が楽しい 授業が面白い (息子とおしゃべり) 1

2014-06-30 06:41:03 | 日々思うこと 雑感

夕食後、息子が、「今日、Aと、ライフゲームについてしゃべっているうちに、

物理学も演繹的だろうかって話題になって、ずっと話込んでたんだ。

面白かったよ」と言いました。

 

Aというのは、息子と仲のいい友だちのひとりで、

自分の興味のある分野は学校で習う範囲をはるかに超えた、

専門的な内容にまで精通している一方で、自分が知らなかったことも息子が話を始めると

強い関心を示して、いろいろな疑問を投げかけながら熱心に耳を傾けてくれる子なのだ

とか。

また、他の友だちにはさっぱり通じないような内容でも、即座に急所を捉えて理解して

「……こういう意味だよね」と的確な返事が返ってくるそう……。

物作りが好きな息子の周りには、作曲や料理やプログラミングなど、何であれ

創ることが大好きという友だちが集まっているようで、

一緒にイベントを計画して実行するのを楽しんでいます。

 

 『物理学も演繹的だろうか』という話題は、

息子がゼミでプレゼンするために読んでいる

『ライフゲイムの宇宙』 という本で取り上げられていた疑問なのだとか。

 

息子 「現実の世界と物理学が自由度を持っていたのか、

宇宙は今の状態と違うものになった可能性があるか、考えていくと面白いよね。

物理法則は信じられないほど単純なものだけど、現象も単純かというと

そんなことはないよね。世界はとても複雑だ。

この複雑な世界が、単純な物理法則からできたなんて信じられないくらいだけど、

ライフゲームのさ、パラドックスが生まれないように循環してく……

再帰的に定義したってあるんだけど……2次元の幾何学物体が生み出すシュミレー

ション結果の複雑さを見ていると、納得できるな。

それにしても、シュミレーションの結果が予測できないところはすごいな。

 

情報理論がこれまでの物理学で答え出せなかった概念にどんな影響を与えるのか

すごく興味があるよ。

……前にお母さんの本(『ユーザーイリュージョン』)を借りて読んだあとで、

マクスウェルの悪魔の話をしたことあるじゃん。

あの時は、情報をエネルギーに変換するなんて話を聞いても、

たいして面白いと思わなかったんだ。

でも、情報のこと勉強するほど、いろんな可能性が見えてきて、

物理学がどうしても解決できなかった問いの答えに、情報理論が新しい方面から

近づくんじゃないかと考えるとワクワクするよ」。

 

わたし 「お母さんは意識の話に興味があるから、『ユーザーイリュージョン』を

持っているけど、情報の話題はあまり実感がないのよ。

情報理論のこと、S(息子)は面白い面白いっていつも言っているけど、

何だかピンとこないわ」

 

息子 「情報理論は、シンプルに言うと、質でしか表せないと思われているデーターを

数量化していく理論だよ。

質を数量化しようとするなんて机上の空論かと思われるかもしれないけど、

ジョン・ナッシュのナッシュ均衡って理論にしても、後の経済に大きく貢献しているし、

行き詰っている日本の経済を救う鍵も、この分野の発展が担っていると思っているんだ。

一番の魅力は、有限のものを無限に変える可能性を持っているところかな?

そうだな……バベルの図書館って聞いたことがある?全て同じ大きさで同じページ数で

行数や文字数が決まった本が納められているっていう小説に出てくる

架空の図書館のことなんだけど。

そこの蔵書は、どれもアルファベットで書かれているんだけど、

ひらがなで書かれているとして説明すると、

あああああ……と全て「あ」で書かれた本、

一文字だけが他の文字に入れ換わって、残りは全て「あ」で書かれた本、

次は2文字入れ換わって、残りはすべて「あ」……という具合に、

全ての文字の組み合わせパターンで成り立っているとする。

数学的な文字の組み合わせだけを考えると、文字が変わってもエネルギーデーター量は

同じだし、そこで生まれるものは有限なんだ。

 でも、情報という面を考慮すると、意味のある組み合わせを持つ本と意味のない

文字の羅列で成り立っている本のエネルギー量の大きさは同じとは言えないし、

組み合わせによって生まれるものは無限でもあるよね。

単純に考えても、100ページの本と200ページの本があった時、

文字数というデーター量は200ページの本の方が100ページの本より多いのは確か

だけれど、内容の希少価値とか意味のある情報がどれだけ書かれているかという点を

考慮すると、当然、100ページの本の方が情報量が多い可能性があるよね」

 

 

最近の息子の口癖は、「数理意思決定の授業はいつ聞いても面白い!」で、

ちょっと時間があると、授業で習ったことや自分が思ったことを熱く語っています。

 

何をそんなに面白がっているのか、そういう分野に疎いわたしにはピンとこないこと

ばかりだったのですが、その授業で学んでいるという内容を聞くうちに、

「相手のいる状況下で、合理的に戦略的にどんな行動を取れば

ベストか考えたり、シュミレーションしてみたりする……」って、

息子の性格と脳内にあるものを可視化したような研究がよくあったものと、

妙に納得しました。

 

思い返せば、ごくごく幼い頃から、

遊びの好みもおしゃべりもおこづかいの使い道も、

おもちゃから進路までの選び方にしても、

 「交渉」と「戦略」と「確率計算」につきる子だったし、

ずっとなりたがっていたゲームクリエーターへの夢は、

この数年、「物理や社会実験のシュミレーションのプログラムを作りたい」という

より具体的なものへ変化していましたから、

そりゃ、自分の興味がてんこ盛りの授業があるとなれば夢中になるのも当然ですよね。

 

数理意思決定の授業で世界の金融詐欺のからくりや日本の経済が抱える問題や

他国の政治のあり方を学ぶうち、息子なりに日本の政治や経済の行方について

真剣に考えるようになったようです。